■日本、オーストリアと勝ちに等しいドロー

 7日夜(日本時間8日早朝)行われた、三大陸トーナメント初戦のオーストリア対日本は、0-0の引き分け、大会の特別ルールにより、直後にPK戦が行われ3-4でPK戦の方は落としてしまいました。

対戦相手のオーストリアを見るのは、98年のワールドカップ以来でした。

このときは、ケルンのポルスター、ブレーメンのヘルツォーク、ドルトムントのファイアージンガーがいたチームで、ここ10年のうちでは、オーストリアの黄金時代だったと言って良いと思いますが、今回見たオーストリアはその時よりもやや経験が浅いチームのように感じられました。

ナポリでプレーするガリクス、ブレーメンでプレーするハルニクらを除いて、国内組を中心した比較的若いチームだったと思います。

オーストリアは次回ユーロの共同開催国で予選免除されてますから、真剣勝負の実績はドイツW杯欧州予選までさかのぼらないといけません。

このときはホームでイングランドと2-2で引き分けていますし、最近のテスト・マッチでもチェコとホームで引き分けているようで、ホームでなら欧州のトップレベルのチームと互角に戦える力はあるわけです。

(イングランドが1位、ポーランドが2位でドイツ行き、オーストリアは3位で予選敗退)

そうしたことを考慮に入れると、日本としては引き分け、できれば点を取っての引き分けという結果が得られれば収穫だと考えていました。

よって0-0で引き分けという結果は、勝ちに等しい引き分けだったと思います。(実際に勝てれば、もっと良かったのですが)

あれがH&Aの一試合目だとすれば、日本のホームではオーストリアに勝つ確率は、かなり高いでしょう。

今回の結果に、日本は自信をもって良いと思います。

スタンドからのブーイングがすべてを物語っていました。

日本もオーストリアも、高い組織力を持っていたので、両チームの戦術と戦術のぶつかり合いは、さながらプロ同士のチェスの試合を見ているようで、私個人としては非常に見ごたえのあるものでした。

PK戦については、勝てれば良かったのですが、クジのようなものですから、結果については仕方ないでしょう。

以前にも言いましたが、日本にはPK戦負けと90分戦っての負けを区別する習慣があまりありませんが、それでは正しい評価ができないと思います。

 それでは試合の経過をおさらいしてみましょう。

試合の立ち上がりは、ホームの声援を背に受けて、オーストリアが押し込みましたが、日本も激しいプレスで対抗、オーストリアに自由にやらせませんでした。

日本の攻撃も、オーストリアの高いレベルの組織的守備によって、なかなかうまく行きません。

しかし、15分過ぎから、日本がいくぶんかボールを持てるようになり、22分、ゴール前の遠藤選手のFKがGKにはじかれたところを、田中達選手がシュート、惜しくもゴールポストに嫌われます。

前半ロスタイム、稲本選手のスルーパスに中村俊選手が反応して、丁寧にシュート、残念ながらGKにセーブされます。

 後半も日本がボールを支配しながら、思いのほかシュートが少ないという、アジアカップのような展開。

25分ごろから、オーストリアの足が止まり始め、いっそう日本が有利になるも、フィニッシュだけが決まらず、ドロー。

中村憲選手の惜しいミドルもあったんですが...

延長戦をやらずそのままPK戦という、ちょっと変わったレギュレーションで、”PK戦負け”で勝ち点1となりました。(たぶん、4チームの総当りリーグ戦ではなく、日本対チリ、スイス対オーストリアをやらない変則トーナメントのせいでしょう)

 それではいつものように試合内容を分析してみます。まず守備から。

守備に関しては、ほぼパーフェクトと言える内容だったのではないでしょうか。

試合の立ち上がりこそ、オーストリアにボールをかなり回されてしまいましたが、すぐに修正し、激しいプレスディフェンスで、試合の主導権を取り返すことができました。

これは試合の終わりまで衰えず、それがオーストリアを追い詰めて、相手のスタミナ切れを誘発させました。

闘莉王・中澤の両センターバックは、カメルーンの強力攻撃陣をストップしたわけですが、この試合でも強いところを見せてくれました。

このセンターバックコンビでドイツW杯に出場していたらどうなっていたかと考えてしまいます。

稲本-鈴木の両ボランチも安定していました。

特に稲本のガツガツ行く守備と、奪ってから攻撃の起点となる動きが良かったです。(心配なのはカードだけでしょうか)

 次に攻撃ですが、アジアカップの総括であげた、バイタルエリアでシュート・クロスの勝負を逃げないという課題が相変わらず克服できていません。

これについてはさんざん述べてきたので繰り返しませんが、いくらポゼッション・サッカーだからといっても、中盤でのやり方と相手ゴール前25mから先のいわゆるバイタルエリアでのやり方は違うというか、まったく逆です。

中盤では、チーム全体でボールを失わないよう、組織的にボールを回しますが、バイタルエリアでは、ゴールを奪うために勇気を持ってボールを”捨てなければ”いけません。

ボールを捨てなければ、絶対にゴールを奪うことはできませんし、中盤でボールを回す最終目的は、ゴールするためなのです。

選手側でその気持ちの切り替えが出来ていないために、「パスを回すためにパスを回すサッカー」になってしまっています。

バイタルエリアでボールを受けたらまずシュートを考え、それが出来ない場合に限ってパスという選択の優先順位を、頭ではなく体に覚えさせる練習が必要でしょう。

クロスも、パスを受けたらファーストタッチでクロスをあげるのが望ましいです。

最低でもツータッチ目でクロスをあげないと、クロスをあげるタイミングが無くなってしまいますし、相手のマークもなかなかズレてきません。

これに関連した話ですが、今回の遠征で、オーストリアは身長が高いからロングボールをトップに放り込んでくるのではないかという話が、マスコミから盛んに出ていたようです。

94年のW杯アメリカ大会欧州予選からオーストリアの試合を見ていますが、周辺のドイツやスイス・チェコのように、中盤を組織的につくって攻撃してくるのが彼らのスタイルで、前述のヘルツォークのように、すぐれた司令塔タイプの選手も輩出しています。

日本サッカー界やマスコミには、「身長が高い選手にはロングボールを放り込むべき」という変な決めつけがあって、珍しく身長の高いFWを持つチームが、ロングボールをFWに放り込んで、それをポストプレーと呼んでいる場合もありますが、こうしたことが何の疑問も無く行われているとしたら、日本が世界の強豪になる日は遠いでしょう。

身長が高い選手がそろっているオランダやドイツ、デンマークがそんなサッカーばかりしているでしょうか。

日本サッカー界に存在するこうした変な決めつけの裏返しとして、「身長の低い選手は、ヘッドでゴールできない」というものがあります。

確かに、身長の低い選手が不利ではありますが、ヘディング・シュートで大事なのは身長がすべてではありません。

むしろ、ゴール前にいる相手選手のマンツーマン・ディフェンスのギャップで、フリーでヘディング・シュートすることが重要であり、そのためにヘッドする選手が相手のマークを外すテクニックと、マンツーマン・ディフェンスのギャップに正確にボールを落とすキッカーの技術が大切なのです。

日本の場合、ヘッドする選手がマンツーマン・ディフェンスのギャップに走りこまずに、その場で立ち止まりながら垂直にジャンプしてヘッドしようとするから、身長の低さが不利になってくるわけで、ふわっとした山なりのゆっくりとしたクロスを使えば、余計身長の低さが不利となってきます。

そうではなくて、速くて鋭く曲がるクロスをマンツーマン・ディフェンスのギャップに正確に落とし、そこへ相手のマークを外した選手が走りこんでヘッドすれば、相手より身長で劣っていてもゴールできる確率はあがります。

アジアカップ準決勝で、187センチの中澤・177センチの阿部の間に入り込んだ、身長167センチのマレクにヘッドでゴールを決められてしまったのは、マレクの身長が高かったからではなく、彼のマークを外すテクニックが優れていたからです。

 日本代表の選手がサイドを突破しても、なかなかクロスを入れず、すぐバックパスしてしまうのは、「ゴール前に人が張っていない、身長の高い選手もいない」ということもあるのでしょうが、ユース時代からこういった戦術論の基礎が教えられていないこともあるのではないでしょうか。

ゴール前に人が張っていなくとも、速くて鋭く曲がるクロスをマンツーマン・ディフェンスのギャップに正確に落とし、そこへ相手のマークを外した選手が走りこんでヘッドするという、戦術の共通理解が日本代表に求められていると思います。

攻撃に関しては、中盤までの組み立ては、まずまずうまく行っています。
攻撃のパズルを完成させるためには、ゴールを奪うというピースをはめるだけでしょう。

オーストリアとのテストマッチは、結果・内容ともまずまず満足のできるものでした。

日本のサッカーが欧州の中堅チームにも十分通用したことは、自信になったのでないでしょうか。

後は、攻撃のパズルの最後のピースをはめるだけなのですが、それが完成すればアウェーでもオーストリアに勝てるようになるでしょうし、W杯のグループリーグ突破も見えてくると思います。

 最後に余談ですが、ヨーロッパの国は国歌斉唱のときにテープではなく生楽団を用意してくれるので大変気持ちが良いですね。

カメルーン戦のとき九石ドームで君が代を独唱された方、微妙に音程が狂っていたような気がするのですが、私個人としては、生楽団の吹奏だけで十分です。

あと、オーストリアの2ndユニフォーム、シャツ・パンツ・ソックスの順で、赤・白・赤だというのは聞いていましたが、見るのは初めてで、新鮮でした。

(ご存知だとは思いますが、1stはドイツと同じ白・黒・白です)

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 2007.9.7 ヒュポ・アレナ(クラーゲンフルト)


 オーストリア 0  -  0  日本
         4 PK 3



 GK ペイヤー       GK 川口

 DF フクス        DF 中澤
   ヒデン          闘莉王
   ガリクス         駒野
   プレドル        (今野 89)
   シュタントフェスト     加地
             
 MF アウフハウザー    MF 稲本
   ライトゲブ       (中村憲 71)
   メルツ          鈴木
  (リンツ 59)       遠藤
   ゾイメル         中村俊
  (ザルムッター 86)
              FW 田中達
 FW クルジッチ       (松井 71)
  (ハルニク 75)      矢野
  (プラガー 84)      (巻 75)




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