■アジアカップ総括(最終回)

 アジアカップ2007の総括、日本代表は何ができなかったのかについて、考察してきました。今日はその最終回です。

「シュート・クロスの決定的場面で勝負から逃げてしまった」「フィジカルで勝てなかった」に続く三点目として、「試合展開に応じた駆け引きができなかった」ということが指摘できるでしょう。

 これもずいぶん前から言われていることですか、日本代表は、常に一本調子で試合をしてしまいがちです。 常に攻めつづけていないと選手たちが不安を感じてしまうからでしょうか。

オシム監督がさずけた組織力で、チームとしてのボールキープ力が格段にアップしましたが、それだけにいっそう、相手の実力・試合展開・点差・時間帯など、ほとんどお構いなしに、いつも攻撃するために前がかり状態になってしまいます。

せめて相手の息の根を止める点をとってくれれば、良かったのかもしれませんが、決定的場面でシュートやクロスなど勝負から逃げてしまうために、それができませんでした。

そうこうしているうちに、前がかりになったところをつかれてカウンターから失点という場面がいくつかありました。

開幕ゲームとなったカタール戦のセバスチャンのFKと、UAE戦のカウンターからサイード・アルカスに奪われたゴールです。

 それには、FWからDFラインまでの間をコンパクトに保てないという理由もからんでいたと思います。

日本代表は昔からチームをコンパクトに保つことが苦手で、点を取りたいと焦るFWと二列目は、なるべく相手ゴールに近づきたいと思って前がかりになり、
失点が怖いDFラインは下がり気味となって、DFラインとボランチの間にポッカリと亀裂ができて、日本代表が”守備チーム”と”攻撃チーム”の二つに分裂してしまう現象がしばしば起こります。

今回のアジアカップでは時間帯に関係無く、チームがいつも前がかりぎみになっており、余計にボランチ1枚と4バックからなる”守備チーム”が、カウンターを食らいやすい状態となっていました。

酷暑という条件下では、最後までチームをコンパクトに保つというのは難しいことですが、これは非常に重要なことです。

4-2-2-2のシステムだとすると、セットプレーなどの例外を除いて、この4つのラインを一定に保てるよう、全体としてコンパクトになるよう、常に注意しなければなりません。

そして絶対に失点してはいけない時間帯では、DFライン+ボランチ2枚はあまり上がらずに(下がりすぎてもやられます)、両サイドもオーバーラップを控えるようにして、守備体勢を崩さないようにしなければなりません。

このあたりの駆け引きはサウジが非常に上手くて、3-2と日本をリードしてから、攻撃に出てくるのは前の3人くらいで、DFライン+ボランチはうかつに前へ出るようなことは止めて、絶対に守備体制を崩そうとしませんでした。

こうなると、日本が押し込んできますが、相手が前がかりになったことで、前に残っている3人によるカウンターがより効果的になってきます。

実際、サウジの鋭いカウンターによって、日本の反撃が思うようにいかなくなりました。

 チームのFWからDFラインまでを、ピッチのどのゾーンへもってくるかは、DFラインが決めるべきだと私は思うのですが、それだと自分のポジションがゴールから遠くなってしまう局面では、2トップ+攻撃的MF2人がどうしても焦ってしまうかもしれません。

しかし、日本代表がコンパクトさを保ち、こちらが程よく押し込まれている時というのは、相手もコンパクトさを保っているならば、相手はバックラインをかなり押し上げていることを意味します。

すると、相手のバックラインの裏に広大なスペースが生まれるわけです。

(逆に相手が間延びしたチームであれば、DFラインの前に広いスペースができているはずです)

そこを効果的に動いて、ワンツーとスルーパスを組み合わせて、オフサイドに注意しながら相手最終ラインの穴をつけば、前の4人だけであっても得点することはそんなに難しいことではありません。

日本の攻撃が一本調子で、あまりカウンターが得意でない原因は、日本サッカー界全体で、このことがよく理解されていないからではないでしょうか。

 反対に、攻撃時にDFラインを速やかに押し上げることも重要で、それによってボール保持者のサポートがしやすくなり、攻撃が楽になるでしょう。

敵がトップ1人を残している状態で、4バックがまるまる自陣に残っているのはムダです。

センターバック1人が敵のトップにマンツーマンでつき、もう一人がその後方からカバーすれば、2人でも守れるでしょう。(それでも自信が無いというならしょうがありませんが)

サウジ戦のマレクに決勝点を奪われたシーンでも、この基本が出来ておらず、
マレク1人に2人が同時にプレスをかけに行ったために、1回のフェイントで2人同時に抜かれてしまいました。

参考

マレクの突破を許し決勝点を奪われたシーンですが、阿部と中澤がマレクのドリブルに応対に行った時、マレクのフェイントで1度に2人とも左へ振られ、シュートを許してしまいました。

そういった場合は、まず阿部がマレクに応対し、中澤が阿部の数mうしろにポジショニングします。

それを確認してから、阿部がマレクにプレスをかけ、最悪抜かれても良いので相手のバランスを崩させ、中澤はそれまで動かずに、後ろからマレクが阿部の左右どちらへドリブル突破をしかけるかを見極め、

いざマレクが阿部を抜きに掛かってバランスを崩し、ボールを体から離した瞬間に、中澤がカバーしてボールを奪うようにすると、相手が個人技に優れた選手でも突破を防ぐことができると思います。

こうした組織的守備戦術はチーム全員ができるよう練習しておかなければなりません。



 システムの話が出たついでに言いますと、今の代表が使っている4-2-2-2のシステムですが、中村憲選手は守備が本職ではありませんし、前へ出ている時間も長いので、4-1-3-2が実質的なシステムでしょう。

これではあまりにも守備が手薄なのではないでしょうか。

実質ワン・ボランチの鈴木選手に負担がかかりすぎていると思います。

しかも、4バックの両サイドはフィジカルが弱く、セットプレーの時に不安です。

サウジ戦の先制点はセットプレーから加地選手が競り負けて、そのこぼれ球からゴールを奪われましたし、あの試合、どうもサウジ側はセットプレー時に、フィジカルの弱い加地・駒野両選手についている味方へボールを合わせようとしていた感じでした。

アジアカップ2007に限って言えば、両サイドバックはクロスやドリブルで勝負することを避け、あまり機能していませんでした。

今の状態では、守備の弱さに目をつぶってまで起用するメリットが感じられません。

これからも4バックで行くなら、多少攻撃には目をつぶっても、両サイドにもっと守備力が高い選手を起用して、中盤をダイヤモンド型にして鈴木選手の左右前方に張り出した2人のMFがサイド攻撃も担当する、

あるいは、中村俊・遠藤・中村憲の誰か1人を削って、守備が本職のボランチをもう一枚入れたほうが良いかもしれません。

別の案としては、中澤・闘莉王の両選手をストッパーにして、阿部選手をリベロにする3バックに変更するというのもあるでしょう。

アジアカップにおいて日本代表は、韓国以外、相手をゼロに抑えることはできませんでした。失点の場面において、代表の守備があまりにも軽い印象を受けます。

このまま現在の4バック・ワンボランチで守りつづけるのは、ちょっときついと思います。

 さらに言えば、カタール戦と韓国戦で採用されたワントップも、やはり機能しませんでした。ゴール前へ飛びこむ選手が少なくなって、ただでさえシュートで勝負する選手が少ないのに、余計にシュートが少なくなってしまいます。

これも再考の余地があるでしょう。

オシム監督がワントップに二度こだわったことについては疑問ですし、韓国戦の延長以降において、フレッシュな交代選手の投入が遅れたことについても、采配に?マークをつけざるを得ません。
 
 そして最後に指摘すべき点は、「基礎が出来ていなかった」ということがあげられます。

どのチームであっても、強豪との対戦・酷暑・連戦の疲労の蓄積・相手にリードされる展開、といった苦しい状況であればあるほど、良くも悪くも自分たちの体に染み込んだ”地のサッカー”が出てしまう、というのが私の持論です。

苦しい状況下では思考力が奪われて、新監督がやってきて授けた戦術などが吹っ飛んでしまって、子供の時からやっている、自分の体に染み込んだサッカーが顔を出すのではないかと思うのですが、それが一番よく現われたのが、サウジ戦の2-3とリードされてからと韓国戦だったと思います。

そこであらわになったのが、基礎力の欠如でした。

いちいちあげていくとキリがありませんが、前述の、1対2という有利な局面からマレクに決勝点を奪われたシーンも守備組織の基礎の欠如です。

攻撃面でも、フリーでタテパスを受けたら、まず前方へターンすることが最優先のはずですし、そうすればムダなパスが必要なくなって自分たちが楽になるのですが、はじめからバックパス100%と決めてつけてプレーしてしまっています。

これはパスを受ける時のボディシェイプが悪いからで、相手ゴールを背にして球を受けるからバックパス100%になってしまうのであって、マークがついているなら別としても、半身になって受ければ、前方が見えて、前へターンしやすくなるのです。

スペースにパスを出してやる時は、敵よりも味方が先に追いつけるように出してやるのが基本ですが、敵に近い方へパス出しする場面も多々ありました。

グラウンダーのパスと浮き球のパスの両方が出せる場面では、グラウンダーの方がより価値が高いということも、理解できているのでしょうか。

 こういうことは選手が悪いというよりは、日本のユース育成システムにどこか問題があるのではないでしょうか。

どうして基礎がおろそかになったまま、大人になってしまう選手が出てくるのか、育成システム全体から指導者のレベルまで洗いなおす必要があるでしょう。

世界の舞台では基礎は出来て当たり前で、その上で応用力がどれだけ素晴らしいかで、W杯やチャンピオンズリーグで活躍できるかどうかが決まります。

日本人選手がこういった大舞台で活躍できるかどうかは、まずどれだけ基礎力を固められるかにかかっていると思います。

参考記事・W杯ブラジル戦直後のエントリー

 さて、ずいぶんと厳しいことを言いましたが、私は現在のところはオシムジャパンの前途に楽観的な見通しを持っています。

以上、見てきたように、現在の日本サッカーが抱える問題点の多くは”個レベル”にあり、個レベルの弱点をオシムの組織力でカバーして勝利し、個人とチームの経験値を上げつつ、長期計画で個のレベルをアップさせていく、という戦略でいけば、日本サッカーは大きな果実を収穫できると考えます。

 かつての日本は、そういう方向性で強くなってきたのですが、それがどういうわけか中断してしまいました。

今はちょうど、2002年W杯直後に戻ったような状態と言えるでしょう。

 最後にオシムジャパンをサポートするべき日本サッカー協会についても触れておきたいのですが、アジアカップの、ほんの直前まで国内リーグをやっていたのは日本ぐらいのものじゃないでしょうか。

しかもアジアカップ直前の6月23日に開催された浦和対清水戦で、闘莉王選手が負傷、アジアカップを回避せざるをえませんでした。

アジアカップ三連覇を逃した、隠された理由として闘莉王選手の負傷・代表辞退をあげておきます。

ドイツW杯の時もそうでしたが、大きな国際大会のある年ぐらい、要領良く国内リーグのスケジュールを調整して代表をサポートできないのでしょうか。

日本代表の発展あってこそ、Jリーグが盛り上がりますし、Jリーグが盛り上がってこそ、良い選手が代表へと供給されるのです。

Jリーグ側がW杯やアジアカップに出場する代表のためにスケジュールをずらしても、ゆくゆくはJリーグ側への利益としてかえってくると思います。

ドイツW杯の時、ジーコ監督が組織力の整備にとりかかるのが遅かったため、日本代表は直前合宿とたくさんのテストマッチをみっちりやる必要があったと思います。

しかし、それをやらずにW杯で惨敗。
最近の代表人気の低落はそれが原因でしょう

アジアカップ2007で、その過ちが再び繰り返されたのではないでしょうか。

日本サッカー協会会長の指導力・マネージメント能力に疑問を抱かざるを得ません。


 次回更新は、カメルーンとのテストマッチ前後を予定しております。



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