■アジアカップ総括(その3)

 「アジアカップ2007において、日本代表は何ができて何ができなかったのか」その総括の三回目です。

前回は「できなかったこと」として、シュートやクロスで勝負すべき時に勝負できなかった、選手個々のメンタルが弱かったということをお話しました。

「できなかったこと」の二点目としては、個々のレベルでフィジカルの勝負に勝つことができなかったということがあげられます。

白人中心のオーストラリア・白人と黒人その混血からなるアラブ諸国(サウジ・カタール・UAEなど)はもちろん、同じ黄色人種の韓国が相手であっても、多くの局面で日本はフィジカル・コンタクトで劣勢でした。

これも、オシムジャパンになって突然あらわれた問題ではなくて、日本サッカーがプロ化する以前からずっと引きずっている問題です。

 ところで、もし「技術は高いがフィジカルが弱いチーム」と、「技術が並でフィジカルが強いチーム」が戦ったとしたら、どっちが勝つと思いますか?

”匠(たくみ)の国”である日本の人は、高い技術にあこがれがあるので、「技術が高い方が勝つ」と答える人が多いのではないかと推測しますが、私の経験上、「技術は並でもフィジカルが強いチーム」の方が勝つ確率が高い気がします。

なぜならば、フィジカルの弱い選手がフィジカルの強い選手に体を寄せられると、どんなに上手い選手でもバランスを崩して、とたんにテクニックが並以下になってしまうからです。

よって、「技術は高いがフィジカルが弱いチーム」と「技術が並でフィジカルが強いチーム」の戦いが、「技術が並でフィジカルの弱いチーム」と「技術が並でフィジカルの強いチーム」との戦いに変化してしまいます。

こうなると、フィジカルの強い方がセットプレーからヘディング・シュートを叩きこんで、それを守りきって勝つ、といったことが起こりやすくなります。(ヘディングの競り合いではフィジカルの強い方が断然有利)

アジアカップ準々決勝のオーストラリア戦は、まさにそういう展開になりかけましたが、オーストラリアよりもフィジカルで劣る分、オシムジャパンは組織力で上回りましたので、90分戦って同点に持ちこむことができました。

ドイツW杯では、日本に組織力が無かったので、フィジカルの弱さを突かれてセットプレーから同点弾を食らい、がっくりしたところにメンタル面でのスキができて、逆転・ダメ押し弾を食らってしまいました。

(もちろんオーストラリアの技術が並だと言っているわけではありません。彼らは日本と同等以上の技術はあります)

技術で相手のフィジカルの強さを弱めることはできませんが、強いフィジカルは、相手の技術を弱めることができます。

足元の技術へのあこがれが非常に強い日本サッカー界で、このことに気づいている指導者・選手は案外少ないのではないでしょうか。
 
 フランスのジダンは、日本でも”マルセイユ・ルーレット”やキックの技術がたいへん注目されましたが、彼は身長も高くフィジカルも強いということは、あまり指摘されません。

(地味であまり注目されませんが、トラップの技術もジダンは世界一だと思います)

マラドーナも身長こそ165cmちょっとですが、横幅は非常にがっちりしていました。

彼らが世界的なプレーヤーになれたのは、フィジカルの強さが並以上あったので、弱いフィジカルが高い技術の足をひっぱるようなことが無かったことも大きいと思います。

 ところが日本の場合、高いテクニックを持つがフィジカルがあまり強くない、という選手がMFを中心にしばしば現れます。(例外は中田英選手でしょう)

現在の代表で言えば、中村俊・遠藤・中村憲の三選手がそれに当たると思います。

アジアカップの六試合を見てもベトナム戦を除いて、相手とのボディコンタクトでは劣勢でした。

テクニックは高いがフィジカルがあまり強く無い選手の場合、大切なのは相手に体を寄せられる前にプレーすること(シュート・パス・クロスなど)です。

つまり、常にフリーでプレーしていれば、こちらの技術の高さをフルに生かせるわけですが、こういう選手に限ってボールを持ちすぎて、相手に体を寄せられてバランスを崩されてから、ようやくパスを出す場面が非常に多いのです。

オシム監督の組織サッカーによって、パス回しは大変良くなったのですが、まだまだそんな場面が多々みられます。

特に中村俊選手は、判断が遅くて中盤の組み立てではほとんど機能していませんでした。

「自分より相手ゴールに近い味方選手がフリーでいたら、オートマチックにパスをはたいて、自分はその選手より前のフリー・スペースへ走りこむ」といった、シンプルなプレーを心がけるべきだと思います。

中盤の三選手はパスをもらうと、ダイレクトで前へはたけるタイミングでも、勝負を避けていったん後ろへ切り返すので、切り返した瞬間に敵選手が3~4人戻ってしまうというシーンもよく見られます。

戻ってきた敵選手を再び抜くのには、余計に体力を消耗します。

中盤の三選手だけでなく皆で、フィジカルが強くないという弱点を認識して、フリーでプレーする、そのために判断力の速さとシンプルなプレーを心がける必要があります。

こういったことも、日本が組織で相手を押し込んだ割には攻撃がつまってしまったことの原因だったと思います。

 当分日本代表は、組織力で個のフィジカルの弱さをカバーするとして、長期的な計画では、最低でも技術の足を引っ張らない程度にはフィジカルの強化をしなくてはいけません。

ただ、これは人種とか食生活だけの問題とは言えないのではないでしょうか。

Jクラブがアジア・チャンピオンズリーグでなかなか勝てないこととも通じることなのですが、日本の選手は、同じ黄色人種で食生活も決して劣っているとは思えない韓国・中国・北朝鮮の選手にも、フィジカルで劣勢なのです。

これは、Jリーグのレフェリーに問題があるのではないでしょうか。

代表にしろクラブにしろ、アジアでの戦いでは「レフェリーの不可解な判定」が日本の障害としてしばしば指摘されます。

逆を言えば、国内リーグのレフェリーの不可解な判定の中で、韓国・中国・北朝鮮の選手はもまれているわけで、Jなら絶対ファールをとってくれるような体と体のぶつかり合いも、アジアレベルは流されてしまうこともあるでしょう。

ファールをとってくれない以上、選手はフィジカルの強さを身につけなければ、上へあがっていくことはできません。

Jリーグの場合、ちょっとぶつかって倒れると、すぐファールを取ってくれます。世界で、ボディコンタクトから選手がもっとも保護されているリーグの一つ、それがJリーグだと思います。

こういった場合、選手はぶつかられて倒れずにがんばるよりも、倒れてファールをもらったほうが得します。

ちょっと触られていちいち倒れていたのでは、フィジカルの強い選手は育ちません。

これが、日本代表やJクラブが、アジアや世界での戦いでフィジカルに苦労する最大の原因ではないかと思います。

 サッカーは、ショルダーチャージなど、ボディコンタクトが認められているスポーツです。

「フェアなぶつかり合いならば、いちいちボディコンタクトでファールをとらずに流す」

日本の選手のフィジカル強化のためにも、Jリーグのレフェリング基準を変えるべきです。フェアプレーが強調されすぎていて、Jのレフェリングは過保護すぎると思います。

日本代表が、”フェアプレー賞コレクター”であることがその良い証拠でしょう。

 1994年にW杯で優勝するまでブラジルが世界でなかなか勝てない時期がありました。

フィジカルの強い欧州チームが、組織力・技術を高めてきたことも、その原因だったと思います。

反面、南米でもフィジカルの強いアルゼンチンが強豪へとのし上がっていったことも興味深い現象です。

ブラジルがなかなか勝てない時代、「欧州の審判は、ファールを取らなさ過ぎる」「FIFAはスライディング・タックルを禁止すべきだ」とブラジルの関係者がブーたれていたこともありました。

しかし、当時のブラジルはただブーたれていたわけではなく、”フィジコ”と呼ばれるフィジカルコーチを導入して、ブラジル人選手のフィジカル強化に力を入れました。

その結果が、94年以降の実績となってあらわれていると思います。




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