■アジアカップ総括(その2)

 日本代表アジアカップ2007の戦いの総括、前回は何ができたのかについてチェックしました。

第二回目以降は、何ができなかったのかについてチェックします。

 オシム・ジャパンの特徴である、ショートパスで中盤を組み立てて、相手ゴール前25mから先のいわゆるバイタルエリアへボールを数多く運び、それによって得点チャンスを増やしていくというサッカーが、オーストラリア、サウジ、韓国といった”アジア”のトップレベルにも十分通用し、日本代表がほとんどのゲームで主導権を握ることができた、内容とともに4位という結果も出すことができました。

(最近、読者の不安をあおって、売上をアップしたいのか、本当にうろたえているのか知りませんが、一部マスコミから「こんどのW杯予選が不安」という声が上がっています。 サウジに一回負けただけで、オーストラリアや韓国と90分戦って互角以上だったという多くの人が目撃した事実が消えて無くなるとでも言うのでしょうか。 日本にはどうも自信が無さ過ぎる人が多いようです)

 ただ、バイタルエリアまでボールを数多くもっていくことには成功しましたが、バイタルエリア内での攻撃がうまく行きませんでした。

バイタルエリアまでボールをもっていく回数は多いのに、それがゴールへなかなか結びつきません。

それは、ゴールするために必要なシュートを打つチャンスが無かったということではなくて、シュートを打つことそれ自体を放棄してしまったことが原因でした。

ゴールを奪えないのでなくて、ゴールを奪おうとしないのです。

当たり前のことですが、ゴールするためにはシュートを打たなくてはなりません。 パスを百本つなげても、それだけでは一点にもなりません。

クロスについても同じことが言え、サイドを崩してクロスを入れたり、ドリブル突破できるタイミングなのに、無意味なバックパスに逃げてしまうことが非常に多かったです。

シュートを打てるのに打たず、クロスを上げられるのに上げない、後ろに下げるパス・パス・パスです。

これは組織に問題があるのではなくて、”個”に問題があるように思えます。

 決勝のイラク対サウジ戦をちらっと見ましたが、どの選手も打てるタイミングで積極果敢にシュートを打っていき、クロスもなるべく最初のタイミングで上げていました。

日本の選手のような迷いは見られず、積極的に勝負していました。

 どうして日本代表の選手はそうなってしまうのか、それはシュートが外れることを恐れ、消極的になってしまったからではないでしょうか。

自戒をこめて言いますが、日本人選手の一番の弱点が消極性と自信の無さであり、日本のサッカー選手・チームの問題点の多くはこれが原因です。

この大会全体を通しても、日本代表は相手から先手先手で点を取るということに消極的で、相手に追い込まれなければ、エンジンがかからないという法則があることに気がつきます。

追い込まれれば点を取るので、始めから点を取る能力が無いということでは無いと思うのですが。

開幕戦のカタール戦から、押し込む割にはなかなかシュートを打たず、ようやく先制点をあげるも、守備の消極性から失点しドローに終わりました。

追い込まれた日本は、ようやくエンジンがかかり、次のUAE戦で3-1と勝利。

首位となって余裕が出たベトナム戦ではやはり先制され、リードされてからエンジンがかかって4-1の逆転勝ち。

準々決勝のオーストラリア戦も、シュートをなかなか打たず相手に先制されてから、すぐ同点弾が飛び出すも、同点になってからは、相手をリードする点がとれません。

準決勝のサウジ戦でも、消極的な試合運び。
常に相手に先制され、追い込まれてからようやく積極的にゴールを奪いに行くという展開となりましたが、相手に三度追いつくことは、とうとうできませんでした。

どんなに強いチームでも、酷暑の中、相手に三度追いつくのは相当シンドイと思います。

シュートへの消極性。それが三連覇を逃した最大の原因でした。

3位決定戦でも、相手に退場者が出て余裕が持てる展開となると、かえってシュートから遠くなってしまうという悪いクセが出ます。結局PK戦にもちこまれての敗戦となりました。

 PKを外したことについて、その選手を責めてはいけないと思います。あれはクジのようなものです。GKがセーブできなかったことについても同様です。

ですが、シュートして得点することが仕事であるはずの攻撃的MFであるその選手が「内心PKを蹴りたくなかった」とコメントしたことについては、ちょっとショックでした。

「シュートをしてゴールする」というのは、サッカー選手にとって最大の喜びのひとつであるはずですが、日本人選手の多くにとって、シュートがいかに精神的負担になっているか、というひとつの証拠ではないかと考えます。

また、シュートが少ないなかで、日本の選手がようやく”決死の覚悟”でシュートを打つ時というのは、ほとんどパニック状態です。

始めからとんでもなくゴールのワクを外れていくシュートも少なくありません。

決定的瞬間でも冷静にシュートを打てるというのは、高原選手ぐらいでしょう。

 日本代表は、シュートを打つということについて非常に消極的です。 そして決死の覚悟でシュートを打つと決断したときは、多くの場合パニック状態になってしまいます。(シュート・シャイと呼ばれる)
 
これは、オシムジャパンになって初めてあらわれた問題ではなくて、ずっと以前からある問題です。

ドイツW杯でのクロアチア戦で、あるFWが決定的なシュートを外した場面がありました。(QBKという新語までできましたが)

私はその選手を「なんでシュートを外したんだ」と責めるつもりは毛頭ありません。

ただ、あの場面はやはりパニック状態だったと思いますし、今後の日本サッカーの発展のため、あえて取り上げます。

あの時、サイドからグラウンダーのクロスが入ってきて、インサイドキックでミートするだけでも十分ゴールできたはずですし、その選手はそれだけの技術を持っていました。

しかし、その選手はアウトにかけたシュートを選択し、そのシュートはクロアチアGKの股間を通過して外れていきました。

インサイドキックで広いゴールマウスに流し込むより、シュートをアウトにかけてゴールマウスよりはるかに狭いGKの股間を通すほうが、確率的によっぽど難しいのではないかと思うのですが、現実にそのようなことが起こってしまいました。

それは技術的な問題というより、冷静な判断力を失っていたというメンタルの問題だったと思います。

 決定力の問題は、ジーコジャパン以前からもたびたび言われてきたことです。

もし、日本代表のシュート決定力が、シュート10本に対し1ゴールだったとします。

日本の選手のシュート決定力をすぐさま二倍に引き上げるというのは非常に難しいことかもしれません。ユースの育成からはじめて何年もかかることでしょう。

しかし確率論から言って、シュートチャンスを二倍にすれば、ゴールも二倍に増える可能性があります。

つまりシュート10本につき2ゴールをあげられるようにするのではなくて、シュートを20本に増やせることができれば、シュート決定率はそのままでも倍の2ゴールあげられるということです。

それは、現在の日本代表でも不可能ではありませんし、実際にシュートチャンスは増えています。

オシム監督の、ショートパスで組織的に中盤を組み立て、ボール保持率を高めることでバイタルエリアへボールを数多く運び、それによってシュートチャンスを増やしていく、というサッカーを私が支持するもうひとつの理由です。

ジーコジャパン時代ですと、中盤の組織力が低いからボールを奪えない、よってバイタルエリアへボールをなかなか運べない、だからシュートチャンスが増えない、シュートチャンスが増えないから、高いとは言えない決定力もあって、なかなかゴールできない、という悪循環でした。

それがW杯での惨敗につながったと思います。

 オシムジャパンはこの一年で、ジーコジャパン時代から一段階ステップアップして、バイタルエリアへボールを何度も運んでいき、シュートチャンスを多くつくる、というところまできました。

この進歩は、はっきりと認識すべきです。

 にもかかかわらず、シュートチャンスでシュートしないのでは、せっかく組織でシュートチャンスを増やした意味がありません。

「シュートを増やすためにパスを回す」のではなくて、「パスを回すためにパスを回すサッカー」になってしまっています。

オシムジャパンがもう一段階ステップアップするためには、重点的にシュート練習に力を入れる必要があると思います。

例えば、ゴールの左右45度から、GKと一対一でシュートする練習を繰り返し、シュートチャンスに慣れることが重要です。

実戦ですと、ゴールから左右45度ぐらいになると、日本人選手の選択は90%パスになってしまう感じです。 残り10%のシュートも、ゴールマウスから大きく外れていくことが多いです。 

日本戦での決勝点となったサウジ・マレク選手のゴールは、角度があまり無いところから決まりましたが、彼のように、角度が無くても積極果敢にゴールを狙うようなタイプの選手は、現在の日本代表にあまりいません。

 日本の選手の場合、GKを見すぎてしまっていてゴールのワクを見ていない気がします。

最悪、相手GKにぶち当たっても良いので、まずシュートをゴールマウスの中に入れることを最優先にすべきです。

そして周りの選手は、GKがボールをこぼすことを予測して、それをプッシュするために必ずつめることが大事です。ボールがどの方向へ跳ね返るか、常に予測して動かなくてはなりません。

そうすればシュートを打つ選手に、「シュートをGKにわざと当てて、敵GKにゴールを”アシスト”させても良いや」ぐらいの冷静さが生まれるでしょう。

冷静にシュートが打てるようになれば、ゴール決定率もあがるといった、好循環を生み出せれば、大きいと思います。

敵GKを外すために、ゴールマウスまで外してしまうのではなく、シュートは出来るだけゴールマウス内に入れることを最優先させる、と心がけることで、ゴール決定率は違ってくると思うのですがどうでしょうか。

ちなみに、ゴール真正面以外からシュートを打つ場合の基本は、ゴールマウス内のファーポスト側に、グラウンダーのシュートを強めに打つことです。

GKは、腰より下のシュートのほうが対応が難しいですし、

ニアに打つと、シュートが強くてキャッチできない場合、GKはボールをナナメ後ろにはじき出してCKに逃げる事ができますが、

ファーに打った場合、ボールをナナメ後ろに出そうとするとオウンゴールの可能性があるので、どうしてもGKは前へボールをはじきます。

そうすると、味方がこぼれ球をプッシュする、セカンドシュートのチャンスができるのです。

 練習だけではなくて、観客が勇気を持ってシュートする選手を育てるということも重要だと思います。

プレミアリーグを見ていると、積極的にシュートした選手には、たとえそれが外れても、必ず大きな拍手が観客席から起こります。

お客さんのレベルの高さがそれだけでもわかるというものですが、Jリーグの場合ですと、シュートが外れた場合「あ~あ」という大きなため息だけが観客席から聞こえてくるのは、非常に残念です。

選手が勇気を持って積極的にシュートできるよう、シュートが外れてもJリーグの観客が大きな拍手で選手をサポートし、お客さんも積極的に勝負する選手を育てて欲しいと思います。

日本サッカー界全体が、リスクをおかしてチャレンジする選手が叩かれるのではなくて、賞賛される社会にならないといけません。

 また、勝負から逃げてしまうという意味では、クロスもそうでした。

アジアカップ後に、引いた相手をどう崩すかということが課題だと、何度も指摘されています。

引いた相手に対しては、スペースがありませんから、正確なクロスを頭にピンポイントで合わせるのが一番有効です。 これだと、必要最低限のスペースでシュートが打てます。

ところが、サイドを崩してクロスをそのまま上げるか、さらにドリブル突破して、えぐってから上げるかしかないのに、ムダなバックパスをしてサイドチェンジ、反対のサイドを突破して、やっぱりバックパスのような、ムダなパス回しが大変多かったです。

これだと、ようやくクロスを上げたときには、たいていゴール前の敵選手が準備をすっかり整えた状態になってしまっています。 いつもこのリズムでクロスを上げるために、相手もそのタイミングに慣れてしまい、なかなかマークがズレません。

中の選手がゴール前へなかなか飛びこまない(特にワントップの時)ということもあるのかもしれませんが、相手がポジション修正する前のなるべく早いタイミングで、できるだけ速く正確なクロスを上げることも必要です。

これも勝負に対する積極性の問題でしょう。

ゴール前でヘッドする選手も、その場でジャンプしてシュートするばかりではなくて、はじめはゆっくりと歩きながら、クロスやCK・FKのボールがゴール前へ飛んできたときにトップスピードで合わせるようにすると、相手のマークを外しやすくなります。

DFというのは、ゴール前を高速で移動する相手を一番警戒し、ゆっくり歩いている相手の警戒レベルは下がるものです。

セットプレーでもそうですが、日本の選手は多くの場合、最初からトップスピードでゴール前へ飛びこむので、DFをなかなか振り切れないように思えます。

 アジアカップ2007の日本代表は、組織力でシュートチャンスを多くつくるということには成功しました。

しかし個のレベルで問題を抱えており、相手から先手先手をとるため積極的にシュートやクロスをして勝負するということから逃げてしまう選手が多いという弱点が露呈しました。

私は、この弱点が無かったら、アジアカップの結果は大きく変わっていたと思います。

 2010年W杯など、日本代表がこの先世界で結果を出していくためには、この課題の解決は避けて通ることはできません。

代表やクラブで重点的に練習して欲しいと思いますし、積極的にシュートを打つ選手には大きな拍手で応えることで、観客も良い選手を育てて欲しいと思います。

つづく



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