■川淵三郎会長の罪と罰(最終回)

前回の続き

 ここまで読んでくださった方の中には、「川淵三郎会長はJリーグをつくり、日本サッカーを発展させた功労者なのだから、今回のことは大目にみてあげたらどうか」と考える人もおられるのではないでしょうか。

確かに、川淵会長はJリーグチェアマンとして日本にプロサッカーリーグを導入し、現在の日本サッカー界発展の基礎をつくった一人です。

それ以前の日本代表は、アジアサッカー界の二大勢力であったイランやサウジなどの中東勢、韓国・中国などの東アジア勢にほとんど歯が立ちませんでした。 決して世界でもレベルが高いとは言えないアジア内でさえ一流とは言えない、タイや香港に平気で負けることもありました。

そんな時代もあった日本のサッカーが、90年代はじめのプロ化によって急激に進歩し、あっというまにアジアトップレベルの国々の仲間入りを果たし、今ではある程度まで世界で戦えるようになりました。

よって、私は川淵会長にそのことを大変感謝しています。

また、それまで企業の福利厚生活動の一環だった実業団チームを、地域密着型のクラブチームに進化させるという、川淵会長が中心となってかかげたJリーグの理念にも、私は強く共感しました。

 こうした日本サッカー界の大革命が可能になったのは、みんなの意見を足して参加者数で割るような、決定までに時間がかかって誰に責任があるかもはっきりせず、しかも誰も十分に満足しないような日本特有の意思決定方式ではなくて、

組織のトップである川淵会長がスピーディーにどんどん決断していく、トップダウンによる意思決定方式であったからこそ、実現したのだと思います。

川淵会長はトップダウンによる意思決定方式を好んでいると、ご自分でもおっしゃっていましたが、私も決断までに時間がかかって思い切った策がなかなか取れない日本式の意思決定方法ではなく、組織のトップがスピーディーかつ大胆にどんどん決断していく、トップダウンによる意思決定方式を支持します。

 しかし、トップダウン方式にも欠点があります。

それは、決断を下したトップが判断を誤った結果、何らかの失敗をして組織に損害を与えた場合、判断を誤ったトップが失敗の責任をとって辞任しなければ、再び同じような判断の誤りを犯して、組織に損害を与えかねないという欠点です。

トップダウンという意思決定方式は、トップの判断に基づく指示に、部下は従わなくてはならないシステムですから、トップが間違った判断に基づいて、適切ではない命令を出しつづけても、部下の誰もそれを修正できません。

たとえ部下から「あなたの命令は間違っています。その結果として組織に重大な損害を与えています」と指摘したとしても、トップが「自分のやったことは間違っていない。よって自分が辞める必要は無い」と言い張れば、以前自分が出した命令が間違っていないことを証明するために、再び同じ命令を出しつづけることになりかねませんし、「自分は組織のトップを辞める」という決断を下さない限り、その人はトップの地位にしがみつづけることができます。

こうなると部下の方も、トップが喜びそうなことばかりを言うようになり、トップがますます間違った判断をするようになります。

わかりやすい例を出せば、ある国のサッカー協会会長が代表選手たちに「足腰をきたえるために、試合前に必ずウサギ跳びを千回やれ」という命令をトップダウンで出したとします。

その結果、代表選手のほとんどがヒザを痛めて引退を余儀なくされてしまい、
副会長から「会長の『ウサギ跳び千回やれ』という命令のせいで代表選手がみんなケガをしてしまった。責任をとって辞任してください」と非難を受けたとします。

こうした場合、会長が自分の過ちを認めて辞任すれば良いですがそうでなく「選手がケガをしたのは、選手個人の体調管理が悪いからだ。よって私のウサギ跳びの命令のせいではない。」と言い張ったら、自分の命令が正しかったことを証明するために「試合前にウサギ跳び千回をやれ」という命令を撤回することは、ますますできなくなります。

もし命令を撤回すれば会長が悪かったことを自分で認めることになりますから。

そして会長はトップの座を失いたくないために、自分を批判した副会長をクビにするという命令を出してしまうと、この会長がトップの座にしがみつづける限り「ウサギ跳び千回」という間違った命令が出し続けられ、その後も続々と代表選手たちがヒザを痛めることになるという最悪の状況が続くことになります。

しかもクビになりたくないために会長を恐れる部下たちも「やっぱりウサギ跳び千回は、代表選手の強化に役立っていますね」と心にも思っていないことを言うようになり、会長も「そうだろう、そうだろう」と言って、「次回からは二千回にウサギ跳びを増やそうか?」と得意になって提案してしまう。

こうなると、その組織は自浄能力を失って破滅します。 この国のサッカー代表は果てしなく弱くなりつづけるでしょう。

トップが自分の過ちを認め辞任しないかぎり、その組織は失敗を繰り返す可能性が高いと言ったわけは、こういうことです。

最近、日本サッカー協会内部で、ジーコジャパンの総括が行われましたが、結論はジーコを評価しないというものでした。

その理由は明らかです。 ジーコを評価すれば失敗だったと結論付けるしかありません。そうなると川淵会長の責任問題が浮上するからです。

日本サッカー協会がジーコの評価と失敗の反省から逃げつづけるかぎり、同じような失敗が繰り返される可能性が高いでしょう。

 もう皆さんおわかりのように、トップダウンで命令を下すという権利が組織のトップに与えられたら、それは失敗したら責任をとって辞めるという義務とセットなのです。

しかし川淵会長は、トップダウンで自分の思い通りに命令を出す権利は手放さないが、失敗したら辞任するという義務は負いたくないという非常に自分勝手な考え方にとりつかれています。 そんなことは許されません。

川淵会長は、組織の先頭に立ってJリーグを生み育てていたころの初心とすぐれた判断力を失って、ただの権力亡者・独裁者に成り下がってしまったのではないでしょうか。 それが残念でなりません。

 現在の川淵会長の言動をみていると、ヒトラーやスターリンのような典型的な独裁者の特徴が見受けられます。

以前お話したように、川淵会長は気に食わない記事を書いたマスコミの記者を平気で攻撃するようですが、歴史上の独裁者たちも自分を批判する者を絶対に許さず、逮捕して牢屋にぶちこんだり、命を奪ったりしました。

W杯前に、FIFAから「誰もさわってはならない」という通達が出ていた純金製のワールドカップが、展示用として日本にやってきましたが、川淵会長は「僕はさわっちゃうよ」と言ってFIFA関係者が渋い顔をするのもお構い無しに、純金のワールドカップにさわっていました。

日本サッカー協会内で、川淵会長の行動を誰も注意できないという現実が、彼のそうした暴走行為の原因でしょう。

 W杯後の帰国記者会見でも、次期代表監督候補として、まだ本格的な交渉も始まっていないオシム氏の名前を川淵会長がポロっとしゃべってしまい、ジェフ千葉から抗議されるという事件もありました。

マスコミでは「わざと言ったのだろう」という意見もありましたが、私は当初は名前は伏せるつもりだったのに本当に思いがけなくペロっとしゃべってしまったのだと思っています。

人間というものは、自分より地位が上だったりコワイ人・苦手な人がいれば、何をしゃべるか気を使って考えながらしゃべるものですが、独裁者同然の川淵会長には、そういった人がいません。

ですから、川淵会長はサッカー協会内で「言いたい事は全て言う」ということを普段やっているために、記者会見のあの場で、本当はしゃべってはいけないオシム氏の名を口にしてしまったのではないでしょうか。

以上のことを考えると、私はたとえ川淵会長がJリーグ創設の功労者の一人であっても、代表監督の人選で致命的失敗を犯したことを、笑って済ますわけにはいきません。

彼がJリーグ創設の功労者であったとしても、それで代表監督選びで失敗したという事実が消えてなくなるわけではないのです。

これはジーコが鹿島を日本の強豪クラブにした功労者だからといって、日本代表監督として良い結果を残せなかったという事実が消えてなくなるわけではないのと全く同じです。

関連記事・ジーコ監督の4年間は何だったのか?(最終回)


 代表監督の人選を独断で決めた川淵会長が責任をとって辞任することから逃げ、権力にしがみつづけるかぎり、間違いに間違いを重ねることになると思います。

Jリーグを創設した偉大なリーダーとしての功績がぜんぶ消し飛んでしまうような過ちを犯すかもしれません。

代表監督選びで致命的ミスをおかした川淵会長が晩節を汚すことなく、自らの責任をとっていさぎよくスッパリ辞任されて後輩への良き手本となり、我々をがっかりさせることのないよう、強く強く希望します。




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■コメント

■ [ギフィー]

今回初めて読ませていただきました。鋭い視線と、解りやすい喩。ボキャブラリーの高さを伺わさせる本格派コラムですね。次回以降、お世話になります。
川淵会長辞任論、納得です。僕もそう思います。
で、質問です。後任会長を選ぶとすれば誰が適任かと思われますか?僕は、鈴木チェアマンがふさわしいかと思います。

■ギフィーさん [スパルタク@管理人]

お返事が遅れて大変申し訳ありません。
ブログに手を入れる時間が無かったものですから。

>で、質問です。後任会長を選ぶとすれば誰が適任かと思われますか?僕は、鈴木チェアマンがふさわしいかと思います。

協会内部のことは、あまりよくわからないのですが、田島幸三氏なんかどうでしょう。

解説者時代に彼の解説を聞いていて納得できることが多かったですし...

■8・9川淵解任デモ トリ・トバ戦後 [tak]

デモするそうです。もしよかったらブログで取り上げてください!

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■「川淵会長にレッドカードを」8月9日デモ実行のお知らせ

川淵会長への意思表明として、日本代表戦試合後、
千駄ヶ谷駅方面行きのデモを企画しました。
所要時間は10分程度を予定していますのでお気軽にご参加ください。

日時 : 8月9日(水) トリニダード・トバゴ戦終了後
時間 : 21時20分(試合終了時間によって前後する可能性あり)
場所 : 日本青年館玄関前 (競技場より徒歩5分)
経路 : 日本青年館前→千駄ヶ谷駅手前にて解散 (所用時間10分)
申請 : 7月28日付けで四谷警察署に申請済み
http://kawabuchi.tv/
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なお、当日はチケットの無い方のために、
集合場所にて代表戦テレビ観戦も予定しているそうです。
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