■川淵三郎会長の罪と罰

 ジーコジャパンはドイツW杯で惨敗を喫しました。

現実離れした理想主義者で監督経験も少ないジーコは、日本というサッカー発展途上国の監督として適切ではなかった、ミスマッチであったことが、惨敗の大きな原因であったということを3回のシリーズで述べてきました。

それでは、日本代表監督には合わないタイプの指導者・ジーコを監督に据えたのは誰なのでしょうか?

まぎれもなく日本サッカー協会会長川淵三郎氏です。

日本サッカー協会内部でトルシエの後任監督を選定しようとしているとき、「ジーコに聞いてみろ」と川淵会長が部下に指示したことが、関係者の証言で明らかになっています。

そして事実上”無職”の状態だったジーコが日本代表監督を引き受け、とんとん拍子で話がすすんでいきました。 よって、川淵会長の一存でジーコの日本代表監督就任が決定したといって間違いないでしょう。

 それでは川淵会長はなぜジーコが日本代表監督にふさわしいと考えたのでしょうか?

その答えは本人にしかわかりませんが、おおかた「ジーコはかつてスーパースターだったから」といったミーハーな理由で、よく考えもせず軽はずみに決定したのではないでしょうか。

川淵会長は「サポーターみんなが納得する人選だ」とおっしゃっていましたが、少なくとも私はジーコ監督就任当初から大いに疑問でした。

 まずジーコに監督としての経験が全くなかったからです。 ブラジル代表にザガロ監督の補佐役として加わったことがあり、鹿島では総監督のようなポジションについていましたが、人選・チームのマネジメント・采配など実務能力は全くの未知数でした。

これまでジーコがつくりあげてきた鹿島が、アジアチャンピオンズリーグなどの国際大会に決定的に弱いことも私にとっては大きな不安材料でした。

 そして一番の重大問題は、川淵会長が初めから「監督はジーコありき」だったことです。

本来なら、まず日本サッカー協会が日本人の長所短所を分析し、日本人に合っていてしかも世界で通用するサッカーはどんなものかを打ち出し、その目標を実現できる監督を招聘するというのが、スジというものでしょう。

たとえ一人の監督が辞任しても、日本が目標とするサッカースタイルは変わらないということを貫き、監督が変わるとそれまで欧州スタイルだったのをひっくりかえして、一から南米スタイルに組み立てなおすといった愚は避けなければなりません。

しかし川淵会長は、そういった日本サッカー界の長期戦略を策定することなく、いきなりジーコ招聘を決めてしまったわけです。

 そして私の不安は的中してしまいました。

ジーコ就任当初、川淵会長は「経験がなくても日本代表監督には問題ない」と強弁しましたが、2006年W杯における日本代表の戦いが終わった今、この4年間を振り返ると、ジーコの監督としての経験の無さが日本代表を長期にわたって混乱させたことは否めません。

少なくとも日本のような発展途上のチームを強化するノウハウも経験もなかったことは間違いありません。

ジーコはW杯後に日本人選手のフィジカルの弱さを批判しましたが、そんなことはまだ日本がW杯に一度も出たことのなかった90年代はじめには言われていたことです。

自由放任の名のもとにチームをほったらかしにして負けた後に、今さら「フィジカルが弱い」と嘆く人物ではなくて、最初からフィジカルが弱いという日本人選手の特徴をふまえた上で、戦術・組織などでどうカバーするかを考え実行できる監督を呼ぶべきだったのです。

ジーコ前監督は、チーム内のモチベーションの維持能力や選手交代など試合中の采配などでも問題点が山積みでした。

 このため、ジーコジャパンは当初から試合内容が不安定で、これまでの4年間でW杯本番でも戦いぬけるような満足できるパフォーマンスをみせたのは、2005年のコンフェデなどわずか数試合でした。

W杯のアジア一次予選も、第一戦のオマーン戦は、相手からのプレゼントボールで試合終了間際にようやくゴールをあげて勝ち、アウェーのシンガポール戦ではあやうく引き分けそうになる始末。

ジーコの「アジアだってレベルアップしている」という言い訳が空しく聞こえました。 そのレベルアップしたアジアがW杯ドイツ大会ではグループリーグで全滅ですから。

この時、ジーコ解任を求める声が高まりましたが、川淵会長はジーコをかばい続けました。

その時のことをNHK教育の”知るを楽しむ”という番組で語っていますが、川淵会長によると「内容なんかどうだっていい、勝ちゃいいんだ、勝ちゃ!」でジーコ続投を決意したそうです。

もうヤケクソとしか思えません。

本来日本サッカー協会が、どういうものが日本人の特性に合っていて世界で通用するサッカーなのか、長期戦略を立てて日本代表を強化し、テストマッチの内容をみながらその戦略がどの程度実現できたか逐一チェックするその先に、日本代表の世界における本当の勝利があるわけですが、

川淵会長はこういった論理的プロセスを一切すっとばして、「勝てばいいんだ」でジーコジャパンの試合内容の悪さ・自らの長期戦略の無さを正当化したのです。

ということは、ジーコが代表監督としてふさわしい理由と、ジーコを監督につれてきた川淵会長の正当性は、ジーコが勝つこと以外に無くなります。

 ジーコジャパンはふらふらしながらも一次予選を突破、二次予選に臨みますが北朝鮮・バーレーンとホームでヒヤヒヤの勝利を繰り返し、なんとか1位通過を決めましたが、試合内容をみるかぎり相変わらずW杯で戦えるようなチームではありませんでした。

ですから私は、ドイツW杯本大会の1年前に「今からでも遅くないからジーコを解任して、本大会までの1年間しっかりとした哲学を持つ監督に代表を任せるべきだ。もし人がいないというのならジェフ千葉のオシム氏はどうだ」と提言したのです。

中田英寿選手も日本がW杯一番乗りを決めた北朝鮮戦後に、「まだ本大会で勝てるチームではない」と警告していました。

しかし「内容なんかどうだっていい、勝ちゃいいんだ、勝ちゃ!」と叫ぶ川淵会長は続投を決めました。

現在、ジーコジャパン惨敗を受けてオシム氏が次期代表監督としてほぼ決まりのような状態になっていますが、1年前にこの決断ができていたのなら、ドイツ大会における日本代表の運命はどうなっていたでしょうか。

そしてW杯まで残された最後の1年間も日本代表はフラフラ不安定な飛行を続けていました。

 そうした現状に不安を抱いたのかW杯の直前に川淵会長があちこちのマスコミに露出して、あたかもジーコジャパンがW杯で負けたときに備えて予防線を張るような発言を繰り返していたのが目につきました。

前述したNHK教育の番組”知るを楽しむ”でも、「トルシエの”がんじがらめの組織サッカー”に慣らされていた選手たちは、ジーコの”自由なサッカー”がなかなか理解できなくて、今まで結果が出なかった」と、日本代表の現在までの不安定な戦いぶりの責任は、”川淵会長が連れてきた優秀な監督・ジーコ”ではなくて、”能力の低い選手たち”にあるという主張を盛んにしていました。

さらに「”個の自由”をかかげるジーコは素晴らしい監督だ。次期監督もジーコ路線で行く」とまで言ったのです。

 こうしてW杯の本番に臨んだジーコジャパンでしたが、試合結果も内容も惨敗。

ジーコが日本代表監督としてふさわしい理由として川淵会長があげた「勝ちゃいいんだ、勝ちゃ!」という最後の砦(とりで)さえ、あっけなく崩壊したのです。

日本の敗退が決まった後、「勝ちゃいいんだ、勝ちゃ!」と言っていた川淵会長はジーコと一緒になって「フィジカルの弱い選手が悪い。それが敗因」と敗戦の責任を選手たちにおっかぶせました。

W杯前にはった予防線のとおりです。 私はあきれ果ててモノが言えなくなりました。

しかもジーコの後任としてオシム氏を招聘することを川淵会長がすぐさま決めたのですが、ドイツで「後任監督をどうしようか」と川淵会長が言ったのを聞いたベッケンバウアー氏から「日本にはオシム氏がいるだろう」と言われたことが、決断の理由だったという話が伝わっています。

これが本当だとしたらとんでもないことです。

「ジーコはかつてスーパースターだったから」といったミーハーな理由で何の考えもなしに川淵会長はジーコを連れてきたのだろうと先ほど言いましたが、
今度はベッケンバウアーがかつてのスーパースターだったから、何の考えもなしにベッケンバウアーの言ったとおりの人間を代表監督に据えるというのでしょうか。

もちろんオシム氏は1年前に私が推薦したとおり、日本代表監督の候補としてふさわしい指導者の一人です。

しかし、代表監督決定のプロセスにおいて、川淵会長が何の考えもなしに気まぐれで頭に浮かんだ人物を、日本代表の目指すべき方向性と合っているのか充分検討することも無く、刹那(せつな)的に決めてしまうという、ジーコを監督に決めた時の失敗を川淵会長は再び繰り返してしまっているわけです。

もう開いた口がふさがりません。

川淵会長の代表監督の人選ミスで、4年間の貴重な時間と数億円の強化費をドブに捨て、選手たちにとってはやり直しのきかないW杯を、むざむざ棒に振ることになりました。

そしてもう一度4年前の失敗をくりかえす川淵会長。

川淵会長は組織の指導者として致命的な欠陥を抱えています。 ジーコが責任を取ってやめた今、川淵会長も晩節を汚さず、いさぎよく責任をとって辞任すべきだと思います。

つづく



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