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■2019年07月

■日本代表のコパアメリカ総括(最終回)

前回のつづき

 今回は、コパアメリカ2019を通しての森保監督の采配はどうだったかを振り返り、この連載の締めくくりとします。

私は、森保監督が2022年W杯でどのような采配をするかのシミュレーションとして今回のコパアメリカを見ていました。

コパアメリカに向かう森保監督に与えられた戦力を踏まえれば、格上2(ウルグアイ・チリ)互角の相手1(エクアドル)との対戦となり、W杯のシミュレーションとしてもうってつけで、この条件で決勝トーナメント進出を達成できれば、カタールW杯に臨む日本代表監督の力量としても申し分ありません。

結論から言えば、格上のウルグアイに引き分ける大健闘を見せてくれましたが、初戦のチリに大敗し、エクアドルとの最終戦で勝てたゲームを取りこぼしてしまい、グループリーグ敗退に終わってしまったことは残念でした。

よって、森保監督の采配を3段階で評価するなら「2」です。

チリに大敗したあと短時間でチームを立て直し、ウルグアイ戦を勝ちに等しい引き分けに持っていった森保監督の手腕は評価できます。

ただ、対戦相手が決まって相手チームの情報を収集し、選手にその試合に向けたトレーニングをさせる下準備の部分はともかくとしても、いざ実際にゲームが始まってから想定外のことが起こり、どうやってその問題を解決してチームの勝利につなげるかの“アドリブ能力”に物足りなさを感じますし、そうした能力が向上すれば森保さんはもっと良い監督になれます。

特に、自分のチームの今どこに問題が起こっているのかをベンチから速やかに把握し、選手交代などの適切な手段で問題解決を図るという部分に課題があるように思われます。

例えばチリ戦では、ボランチとして先発出場させた中山選手がボロボロの出来で、そこをチリに徹底的に突かれて4失点する原因となっていたにもかかわらず、彼を試合終了まで引っ張ってしまったのは疑問でしたし、エクアドルとのゲームでは右サイドバックで先発の岩田選手が空中戦に弱点を抱え、やはり相手からそこを狙われて同点ゴールを奪われる原因となってしまったのですが、最後まで彼を交代させることはありませんでした。

チリに4失点したことがあとあとまで響いて日本が決勝T進出を逃す原因となりましたし、もし岩田選手のところでエクアドルに2点目を奪われていれば、そこで日本の決勝T進出は完全に終わっていた可能性があります。

コパアメリカは若手の成長のために捨ててよい大会ではありませんし、中山・岩田両選手の出来はちょっとひどく、「若手の成長のために多少の失敗は我慢して経験を積ませる」どころのプレーではありませんでした。

ピッチという名の弱肉強食のフィールドの上を、傷ついた小鹿(中山選手や岩田選手のことですが弱点を抱えていたという意味で、彼らが実際にケガをしていたということではありません)がヨロヨロ歩いていたら、南米の“肉食獣”たちが見逃してくれるはずがありません。徹底的にそこを狙ってゴールを奪おうと襲いかかってきます。

監督は自分のチームの今どこに問題が起こっているのかをベンチから速やかに把握し、選手に指示を出してプレーを修正させるなり交代選手のカードを切るなりして、失点という目に見える形の失敗が起こる前にチームの穴をふさがなければなりませんし、どんなに遅くとも相手から何度も弱点を狙われていた選手が失点にからんだ時点で交代させ、傷口がそれ以上広がらないようにダメージコントロールをしなければなりません。

選手交代というカードを切る場合でも、森保監督のチョイスが今一つ効果的ではなかったように思えたのですが、それもやはり自分のチームの今どこに問題が起こっているのかを的確に分析できていなかったからではないでしょうか。

チリ戦では、後半に0-2とされた約10分後に前田選手にかえて三好選手、 中島選手にかえて安部選手を入れたのですが、選手交代というカードを切るなら0-1となったあとでもプレーを修正することができなかった中山選手にかえて別の選手をボランチに入れることでまず守備の立て直しを優先させるべきでしょうし、攻撃の選手をかえるのであれば、プロと戦う能力が不足していることが明らかな上田選手を交代させ、効いていた中島・前田両選手はポジションを変えても良いので残しておくべきだったように思います。

続くウルグアイ戦では、後半14分に2-1とリードしたあと、ウルグアイの猛反撃にあってチームがサンドバック状態になったのですが、そこでベンチがウオームアップを命じたのは上田選手で、その前にチームが耐え切れず、彼の投入は失点後となりましたが、この判断も疑問でした。

ウルグアイの猛攻に日本のDFはクリアするだけで精一杯になっていましたから、チームでボールをキープできるようにタメがつくれる選手、例えば久保選手のようなタイプの投入が望ましかったように思います。

エクアドル戦でも、何度もやられていた岩田選手のところを、まず手当するべきでした。立田選手を投入することはできなかったのでしょうか?

公式戦における森保監督の交代カードの切り方を見ていると、攻撃の選手同士の交代が多い気がしますが、効果が出ているとはいいがたいですね。

点差や試合の残り時間も関係してきますが、ゲーム中に守備と攻撃の両面でチームに問題があると分かった時、たとえば右SBやボランチが一対一で何度もやられていて、同時に攻撃の選手が機能せずFWや2列目の選手を交代させたいという状況の場合、私ならたとえ1点取って勝ちたくても、まず守備の立て直しの方を優先させます。

なぜなら守備の穴を放置しておくと、相手にそこを徹底的に突かれて守りの時間が長くなった分だけ、自分たちが攻撃する時間が削られてしまいますし、その穴が原因で先に失点してしまえば、同点に追いつきさらに逆転までもっていくために、0-0の時よりも何倍ものエネルギーを必要とするからです。

 対戦相手が決まりゲームがキックオフするまでの下準備の部分ではまずまずなのですが、森保監督の先発メンバーのチョイスでは、いくつかのミスがあったように思います。

チリ戦にボランチとして先発した前述の中山選手ですが、ゲームを見ていて「彼よりマシなボランチはいないの?」と何度も思ったのですが、次のウルグアイ戦に出場した板倉選手が出色の出来でしたから、チリ戦に彼が先発していればあの大敗は無かった可能性があり、森保監督はボランチのチョイスを誤ったのではないでしょうか。

ワントップのファーストチョイスが上田選手だったことも明らかでしたが、ケガで思うように起用できなかった面もあったのでしょうが、前田選手の方が現時点では能力的に上だったように見えました。

「練習では悪くなかったのに、実際にゲームに出してみたらひどい出来だった」という選手がいたのかもしれませんし、森保さんはフル代表と五輪代表を兼任していて、なかなかすべての選手を手元に置いてじっくり練習を見てやる時間がなかったのかもしれませんが、将来の伸びしろや各ポジションどうしのコンビネーションを考慮しつつも、現時点における選手間の実力差に基づいたベストな11人を先発としてピッチに送り出してやらなければなりませんし、そうした選択でのミスは許されません。

スタメンのチョイスを含め、この大会の入り方に失敗してしまったことはチリ戦の大敗を見ても明らかで、原因をしっかり分析してW杯の予選や本大会ではこのようなことがないようにして欲しいです。

 最後に、ウルグアイ戦やエクアドル戦でリードしても、それを保ったままゲームをクローズさせることができないという課題が出ましたし、チリやウルグアイのような攻撃力のあるチームに2試合で6失点してしまったり、ロシアW杯に続きこのコパアメリカでも大会を通じてクリーンシートで相手を抑えたゲームが1試合もなかったりと、主に守備面で問題がいくつも露呈しました。

森保ジャパンの発足からずっと指摘していることですが、中島選手や柴崎選手に象徴されるように攻撃力に比べて守備力が不足しており、一つのチームとして攻守のバランスが取れておらず、チームが攻撃に偏重しすぎているように思われます。

相手がアジアレベルの格下であれば、攻撃力がないのでさほど問題にならないのですが、ウルグアイやチリのような攻撃力の高いチームが相手だと、よくて点の取り合いでドロー、悪ければ大敗と、日本代表の守備の弱点がモロに顔をのぞかせます。

この大会にはU-22中心の急造チームで臨まなくてはならず戦術を煮詰める時間が無かったのかもしれませんが、どのレベルの相手でも同じようなスタメン・同じようなシステムで戦っており、ハリルジャパンのように、長期の強化戦略に従った一貫性というものがなく、1試合ごとにシステムもスタメンもとっかえひっかえというのも困りものなのですが、相手の強さや自分たちが置かれた状況(勝利が絶対条件なのか引き分けでも良いのか)に応じて、システムやスタメンを臨機応変に使い分けて戦うことができれば、自分たちが望む結果をもっと出しやすくなったのではないかと考えます。

当研究所が考える現時点での日本代表の基本システムは以下の通りです。


(4-2-3-1)


         大迫



  中島     南野      伊東
        (久保)    (堂安)
                (三好)
 
       板倉   柴崎  
      (遠藤)


  長友   冨安   吉田   酒井
 (杉岡) (植田) (昌子) (室屋)


         GK



川島・権田・シュミットら各選手の差はそれほどないので、正GKはまだ確定していない感じです。

コパアメリカで、植田選手が公式戦で使えるメドが立ったのは大きく、吉田・冨安・昌子選手らのうち調子のよい選手を使えば良いでしょう。

より守備的なボランチはこの大会で一番成長した板倉選手が、シントトロイデンの遠藤選手とあまり差のないところまで追い上げてきています。

大人のフットボーラーとしての肉体が完成してくれば、トップ下として久保選手が最有力候補になってきますし、右サイドハーフとして起用しても面白いと思います。


 対戦相手の攻撃力が高く、やや守備を重視したスタメンは以下の通りです。


(4-2-3-1)


         大迫



  中島     南野      伊東
        (柴崎)    (堂安)
        (久保)    (三好)
 

       板倉   遠藤  
       


  長友   冨安   吉田   酒井
 (冨安) (植田) (昌子) (室屋)


         GK


現時点において長友選手の守備力が不足しているということではないのですが、中島選手のサイドはどうしても守備が手薄になりますので、センターバック2枚は昌子もしくは植田選手を吉田選手と組ませ、攻撃参加を捨てても冨安選手を左SBに持ってきて守備の強化を図るという手もあるでしょう。

ダブルボランチは守備力を重視して、板倉・遠藤のコンビで。トップ下は得点力を優先させるなら南野選手、チャンスメーク能力を重視するなら柴崎選手で。


 さらに守備を重視してカウンター狙い、最悪引き分けでもOKだったり、120分戦って0-0のまま、格上相手にPK戦で決着をつけたいというゲームプランなら次のようなシステムはどうでしょうか。




(5-2-1-2)



             大迫      
        中島  (永井)
 

           柴崎
          (南野)
          (久保)

    
        板倉   遠藤


   
   長友  冨安  吉田  昌子  酒井
              (植田)

           GK

守備の負担が少ないセカンドストライカーに中島選手を、トップ下に柴崎選手をもってきてカウンター狙い。トップ下を中島選手にして、セカンドストライカーに南野選手を持ってくるプランも試す価値はありそうです。


 逆に、攻撃力の低い対戦相手にボールをポゼッションして点を取ってどうしても勝ちたいゲームプラン用の、攻撃力を重視したシステム。


(4-1-2-3)



         大迫


  中島             伊東
                (堂安)
                (三好)
      柴崎     久保 


         板倉     
        (遠藤)


  長友   冨安   吉田   酒井
 (杉岡) (植田) (昌子) (室屋)


         GK



 森保監督の代名詞ともいえる(3-4-2-1)ですが、コパアメリカで板倉選手が急成長を遂げたことは大きかったと思います。

ゲーム中に相手がフォーメーションを変えて、こちらも3バックから4バックに変えたくなった場合、板倉選手がボランチにあがり、柴崎選手をトップ下にすれば交代カードを切らずに4-2-3-1に変更することができます。

また両ウイングバックを、長友・酒井両選手にすれば守備重視、原口選手をいれれば攻撃重視にバリエーションの変化をつけることができます。



           大迫      
         

        中島   伊東
            (久保)       
            (堂安)
    
   長友  遠藤    柴崎   酒井
  (原口)           (原口)

   
       冨安  吉田  板倉  
                   


           GK


 公式戦でちゃんと機能するようにするためには、それなりの量の戦術トレーニングが必要でしょうが、対戦相手の強さや、絶対に勝利が求められるのか、それとも引き分けで十分なのか、ゲームプランによって複数の戦術システムや先発メンバーを上手く使い分けることができるようになれば、自分たちが望む結果を出すために、より戦いやすくなると思います。


    ☆       ☆       ☆


 というわけで、3回にわたってコパアメリカ2019における日本代表の戦いぶりを総括してきましたが、3試合で2分1敗のグループリーグ敗退という結果はとても残念でした。
 
ベストメンバーが招集できず、U-22世代が多いチームで臨んだのですが、それでも決勝T進出の可能性は十分あったのではないでしょうか。

それが達成できなかったのは、選手の経験不足であったり、ベテランが若手の経験不足を上手くフォローしてやれなかったり、森保監督のスタメンのチョイスや交代カードの切り方に改善すべき点があったことが原因だったように思います。

これは直接プレーとは関係ないことですが、日本サッカー界全体として世界を知らなさすぎたというか、ユーロやW杯に次ぐ世界で3番目にハイレベルの大会であるコパアメリカとトゥーロン国際など他の大会との区別がついておらず、「コパアメリカの重み」というものを良く理解していなかったように見えました。

それはコパアメリカ開催中もJリーグを中断せず、地上波でのTV中継が無かったことからも明らかです。

そのため、コパアメリカに臨む日本代表はU-22世代を中心にチームを組まざるを得なくなり、日本の初戦が始まる前に、ベストメンバーを招集したカタール代表が次回コパアメリカに連続招待され、日本が外された代わりにオーストラリアが初参加することが決まったのは、CONMEBOL(南米サッカー連盟)の日本サッカー協会に対する不快感の表明であったことは、これも明らかです。

チリとの初戦に大敗して「まるで大人と子供のサッカー」と南米マスコミから酷評されるなど、日本サッカー界への信頼がガタ落ちになりそうなところを救ってくれたのは、三好選手などウルグアイ戦で互角の戦いを見せてくれた若手選手たちでした。

海外組の選手を拘束する権利が無かったのはやむをえなかったとしても、Jリーグ機構やJ各クラブも含めた日本サッカー界全体がコパアメリカに参加する意味をよく理解し、コパアメリカ開催中はJリーグを中断して国内組の主力級選手、たとえばF東京の室屋・橋本選手や札幌の鈴木選手らをブラジルに連れていくことができれば、チリ戦のような失態は防げたと思いますし、決勝T進出の可能性もあったでしょう。

国内組の代表選手も本気の南米選手とガチンコ勝負を経験することで成長し、ひいては彼らが所属するクラブやJリーグ全体のレベルアップといった利益にもなったはずです。

ところが、日本サッカー界全体としてコパアメリカの重要性が理解できず、あらゆる面で準備不足のまま、大会にふわっとした入り方をして初戦で大敗を喫してしまったのはとても残念でした。

せめてもの救いが、板倉・久保ら若手選手のめざましい成長で、この失敗を決して無駄にしてはいけません。




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■日本代表のコパアメリカ総括(その2)

前回のつづき

 今回はコパアメリカ2019に出場した日本代表各選手のプレーの個別評価です。

評価は3段階でそれぞれの数字は、

1=素晴らしいプレー内容

2=プレー内容は及第点

3=不満の残るプレー内容

を意味しています。




GK

川島選手 2

 ウルグアイ戦の後半10分、カバーニとの一対一から決定的なシュートを止めるビッグセーブ。あれが決まっていたら試合結果がまったく違っていたものになっていたかもしれません。大会を通じてキャッチング・セービングともにまずまず良かったと思いますが、チームがリードしたあとのプレーに課題が残りました。
2-1とリードしてからウルグアイの猛攻にあってチームがサンドバック状態になっていた時、相手の攻撃時間をブツ切りにすることで味方に“息継ぎ”をさせゲームの流れをこちらへ引き戻すためにも、反則に注意しつつボールをキャッチしたらもっと長く時間をかけてからキックしても良かったように思いますし、相手と接触したら長めに時間をかけて治療を受けるのも一つの手です。
エクアドル戦でも1-0とリードしてからパスを細かくつなごうとしすぎて、ゴール前にいた味方へのパスが相手選手へのプレゼントボールとなって決定的なピンチを招き、相手に「いけるぞ」と思わせて反撃を呼び込む伏線となってしまいました。GKは一番後ろからピッチ内の状況が良く見えるでしょうから、「自陣深くでのパスが細かくなりすぎているし、相手にもそれを狙われているな」と思ったら、相手バックが後方にステップしながらヘッドせざるをえないようなロングボールを川島選手が蹴り(そうすることによって相手バックは強いヘディングがやりにくくなる)、味方のトップと競ったボールがバイタルエリアに落ちたところを2列目の選手に拾わせて攻めさせるとか、味方のバックやボランチにも「大きく蹴れ」とハッキリとしたジェスチャーでコーチングしてやって欲しいです。


大迫敬選手 2.5

 チリ戦で4失点しましたが、GKとして最初の3点を防ぐチャンスは無かったように思います。ただし4失点目の場面は、少なくともゴールから離れて前へ出たら絶対に相手より先にボールに触らないといけませんし、相手は冨安選手と並走しながらシュートの角度が無い方向へドリブルしていましたから、あわてて飛び出すのは自重し、冨安選手にファーポスト側へのシュートコースを切ってもらった上で、自分はニアポスト側へのシュートを防ぐことに重点を置きつつ、どちらへシュートが来ても対応できるようにしておけば、あの失点は無かったかもしれません。
大迫選手がそうだというわけではないのですが、JリーグのGKは相手ボール保持者との一対一という状況になると、そのプレッシャーから早く逃れたいがために、軽率に前へ飛び出してしまう選手が多い気がします。そして両手を前方へ出して「今からフロントダイブをしまーす」と全身でアピールしながら相手選手の足元へ飛び込み、結局ボールに触れずに相手の足をなぎ払ってPK献上というマズいシーンも見かけます。攻撃側にとって簡単に倒れてくれるGKほど楽なものはないわけで、自分が本来行きたい方向とは逆へフェイントをかけてGKを寝かせてからシュートを打ったり、GKが自分の足元へ倒れこんできたらボールをチョンとつついて逃がしてやり、そのままGKの両手に突っ込んでいって倒されてやれば「PKゲット!」となるわけです。
先にボールに触れるという確信があれば前へ出ても構いませんが、そうでないときは自重し、相手がペナルティエリアに侵入する瞬間に思い切って前進して、相手をシュート角度が無い方向へ追い込み、その場合も、両方の手のひらを相手に向けながら腰の両脇に置き、腰をやや落として体全体で「面」をつくりながら速やかに前進するのが基本。
 同じくチリ戦の前半16分に味方からバックパスを受けた時、相手FWのプレスをフェイントでかわしたプレーですが、リスクマネジメントの面からGKとしては絶対に避けるべきプレーです。なぜなら相手FWをフェイントで抜いても1点にもなりませんが、もしミスしてボールを失えば確実に失点につながるハイリスク・ノーリターンのプレーだからです。
ともかく日本サッカー界は質の高いGKが不足していますので、経験を積んで良いゴーリーになって欲しいです。

DF

植田選手 2

 初戦のチリ戦では、相手ボール保持者に右サイドバックの原選手が応対している時、植田選手はゴール前中央に張ったままでスライドしないという、ゾーンディフェンス戦術におけるポジショニングのミスが見られましたが、次の試合以降はそれもなくなり、まずまず安定した出来でした。
ウルグアイ戦でカバーニにPKを献上してしまったプレーですが、あれは明らかにシミュレーションであって、気にする必要はありませんが、南米の選手はああいうずる賢さがあるということは覚えていて欲しいです。
空中戦では相変わらず強さを見せてくれましたが、地上戦での一対一には課題があるように思います。サークル・ブルッヘでのゲームを見ていても、うかつに飛び込んで抜かれてしまうシーンが散見されますが、スピードに強みがあるのかドリブルやフェイントなどの技術で抜いてくるのか、それとも強いフィジカルコンタクトとパワーを生かした重戦車系か、マッチアップしている相手のタイプによって適切な間合いを取って応対する駆け引きや読みの部分だったり、味方がボール保持者と応対している時に危険な相手選手やスペースをどうカバーするかといった部分の能力を向上させるともっと良いDFになれます。


冨安選手 2

 チリ戦で自分に当たったボールがゴールになってしまったのは不運でしたし、エクアドル戦でも対人守備は安定していました。
ただウルグアイ戦では、相手のCKからヒメネスとの一対一に敗れ同点ゴールを献上する原因に。たとえ自分の前に入られてしまったとしても体を相手に密着させて強いヘディングをさせないような守備の仕方はできなかったでしょうか。ヒメネスに競り負けたことも含めこの試合を通じて冨安選手はどういうわけか自信なさげにプレーしていて、マッチアップしたスアレス・カバーニを中心に相手選手へのマークが甘かったように見えました。接近しすぎると一発で抜かれてしまうので、あえて相手との距離を取っていたのかもしれませんが、それで相手を自由にプレーさせてしまっては意味がありません。GKにしろCBにしろ、悪いプレーをひきずってしまうと次のミスプレーを誘発して失点にからんでしまうことが良くありますから、常に安定したメンタルを持つことも重要です。
柴崎選手からの「無茶ぶり」のようなパスにも問題があったのですが、エクアドル戦では自らのバックパスが弱くなって相手に奪われ、あわや失点かというピンチを招き、相手を勢いづけてしまいました。「自陣深くでのパスが細かくなりすぎているし、相手にもそれを狙われているな」と思ったら相手バックが後方にステップしながらヘッドせざるをえないようなロングボールを蹴るなど、自らの判断で状況に応じたプレーが選択できるようになって欲しいです。


杉岡選手 2

 ウルグアイ戦では、結果的に彼のクロスがチームの2点目につながったのですが、まだクロスの精度や攻めあがるタイミングなどに改善の余地がありますし、守備面でも一対一、特にフィジカルコンタクトの闘いで体の大きさを生かし切れていない印象を受けます。体の使い方を覚えれば地上戦でも空中戦でも一対一の勝率はもっと上げられるはずです。
代表の左サイドバックは人材が不足していますし、個の能力が高い南米選手との戦いで、Jリーグではわからなかった課題に気づかされたところもあったと思うので、世界に通用する左SBになれるようにハードワークして欲しいです。


原選手 2

 チリ戦だけの出場でしたが、チームが防戦一方となる時間帯が多く、守備に奔走させられることが多かったため、攻撃参加もままならず、ほとんど印象に残るプレーはできませんでした。


岩田選手 3

 エクアドル戦の前半34分、ゴール前ファーサイドにいたミナにヘディングの競り合いに行ったところ、この試合二度目のかぶりで失点の原因に。DFとして世界と戦うには、フィジカルコンタクトも含めた対人守備での一対一にもっと強くなる必要がありますし、右サイドの地上戦でも相手のボール保持者に簡単に食いついてウラを取られ、クロスをあげられてしまうシーンも見られました。ボールの落下点を正確に見極めるトレーニングとしては、野球のボールを山なりに投げてもらってそれをキャッチするトレーニングが有効だと思います。

MF 

柴崎選手 2

 大会を通じて、中盤の底から攻撃をビルドアップしていく時に、バックからパスを引き出す動きが一試合ごとに良くなっていきましたし、長短の攻めのパスでシュートチャンスを創出することにも貢献していました。アジアカップ2019も含めて彼のプレーにはずっと不満を感じていたのですが、このレベルのインテンシティのプレーを毎試合コンスタントにできるのであれば、チームの攻撃はぐっとスムーズになります。ただ、代表のボランチという非常に重要なポジションを任されているわけですから、最低限これぐらいやってくれなければ困ります。
 チリ戦では柴崎選手のヘディングミスから最終的に4失点目につながるなど、彼なりに守備を精一杯やっているのですが、やはりボランチとして守備面で不安を抱えているのは相変わらずです。
エクアドル戦では、敵選手3人からプレスをかけられていた冨安選手の足元へパスをつけ、それが彼がミスパスをする伏線となって、あわや失点かという大ピンチを招くことになりましたが、自陣から細かくパスをつないで攻撃をビルドアップするのか、それともロングボールを使うべき局面なのか、自らのプレーで常に正しい選択をするとともにゲームキャプテンとして味方に大きな声やジェスチャーでハッキリと的確な指示を出してやって欲しいです。


板倉選手 2

 A代表デビューとなったウルグアイ戦の序盤にミスがあったものの、大会を通じてもっとも成長した選手の一人。
恵まれた体格を生かし、個の能力が高い南米の選手が相手でも地上戦・空中戦の両方で対人守備に強さを見せてくれましたし、エクアドル戦では冨安選手が前方へ引きずり出された瞬間、さっとバックラインまで下がってスペースを埋め、左センターバックの役割を一時的に引き継ぐなど、戦術理解や危険察知能力が高いところも好感が持てます。
 攻撃面でも、バックがボールを持っている時に積極的にパス受けの動きをしてサポートしてやり、足元の技術もしっかりしていて自らの正確なパスで攻撃をビルドアップしていくプレーも良いです。現時点では個の能力において、板倉選手>橋本選手(F東京)>守田選手(川崎)と当研究所は評価していますし、今ケガの状態がどうなっているのかわかりませんがシントトロイデンの遠藤選手とも大きな差はないところまで成長を見せてくれたのではないでしょうか。
エクアドル戦で1点リードしてから相手の猛攻にチーム全体がアップアップの状態になってしまったので、そういう時こそボランチがボールを奪い返した直後の味方をしっかりサポートし、パスコースをいくつも用意してやることで、クリアするだけで精一杯という苦しい状況を回避できるようになるとさらに良いですし、相手がパスカットを狙っているのであればロングボールを使うという判断があっても良いでしょう。


中山選手 3

 彼はこの大会に出る準備が出来ていたのか疑問。初戦のチリとのゲームに出場したのですが、試合勘がまったく無かったように見え、パスやトラップといったプレー面でのミスが目立ったのみならず、相手のボール保持者への寄せも遅くルーズで、自分がボール保持者に応対しなくてよい場合でも、どこへ行くべきかわからずピッチをさまっているような状態。相手CK時にジャンプするタイミングが遅れて競り負けたり、ゴール前での一対一で不用意にシュートコースを空けたり、浮き球の落下点の目測を誤ったりして、次々と失点の原因になっていました。
クラブでなかなか試合に出れないせいなのか、ボランチというポジションのことをまだ良く理解できていないのか、その両方なのか原因はわかりませんが、速やかに立て直しを。


久保選手 1.5

 チリ戦でのビダルとメデルをドリブルでかわしシュートを放ったプレーをあいさつ代わりに、南米各国のフル代表を相手にまったく物怖じしない堂々としたプレーでチームの攻撃をリード。エクアドル戦では中島選手や前田選手に決定的なパスを通して次々とゴールチャンスを演出するなど、自分の個人技でシュートまで持っていけるだけでなく、味方を使うプレーもハイレベルにこなせることを証明してみせました。現時点においては南野・堂安両選手よりもパスの精度やチャンスメーク能力で勝っています。狭いエリアで相手からプレッシャーを受けてもミスをせずにドリブルやパスができる正確な技術をもっていますし、俗に言う「サッカーIQ」が高く次にどういうプレーを選択するかの判断が早く的確なところも評価が高いです。
まだ大人のフットボーラーとしての肉体が完成されていないので、スピードやアジリティを落とさないよう注意しながらフィジカルコンタクトの闘いに負けないような体づくりをしたり、コンタクトスキルを身に着けて欲しいです。


三好選手 1.5

 ウルグアイ戦では、右サイドをドリブルで駆け上がるとラクサールを振り切り、GKムスレラの左肩上をブチ抜くファインゴールをゲット。杉岡選手のクロスをムスレラが前へはじく可能性を予測して絶妙のポジションを取り、相手選手に当てないように正確なシュートから2点目を決めてくれました。ラクサールが万全であれば文句なく「1」をつけられたのですが、直前に太もものウラをやっちゃったみたいだったので「1.5」としました。
絶対に勝ちたかった次のエクアドル戦ではあまり印象的なプレーはみられず、毎試合コンスタントにチームに貢献していくことが求められます。


中島選手 1.5

 エクアドル戦では、岡崎選手へのスルーパスがやや長くなりすぎましたが、相手GKがクリアしたボールがちょうど自分のところへこぼれてきて、見事なコントロールシュートで先制点をゲットしてくれました。
ただループシュートが外れた前半39分と後半ロスタイム3分のシュートのどちらかのチャンスは何としても決めて欲しかったところ。
この大会では久保選手のように周囲の味方を使うのが上手なプレーヤーがいたこともありますが、コンビネーションで相手の守備組織を崩していくプレーも一試合ごとに改善が見られました。自分の個人技で局面を打開するところと、無理をせず周囲の味方を使ってチームで相手の守備組織を崩していくところを上手く使い分けることができれば、ゴールやアシストなどの目に見える結果もどんどん残せるでしょうし、もっとサッカーが楽しくできるのではないでしょうか。
 守備面で課題があるのは相変わらずですが、中島選手がいなければこのチームの攻撃力はガクンと落ちてしまいますから、彼のサイドを狙われているからといって外せばいいという単純な話でもありません。理想は中島選手がウルグアイやコロンビアのような攻撃力の高いチームに攻められても耐えられる守備力を身に着けてくれることですが、「角を矯めて牛を殺す」ということもあります。対戦相手の攻撃力に応じて、中島選手を含めたチーム全体の攻撃力・守備力のバランスを考えたスタメンなりシステムなりを用意すべきでしょう。もし中島選手の攻撃力を最大化するために守備を免除するのであれば、ゴールやアシストなどチームの攻撃面でさらなる貢献が求められます。


安部選手 2

 ウルグアイ戦では前半9分の岡崎選手へのクロスや後半8分の三好選手へのラストパスなど、先輩たちがちゃんと決めてくれれば最低でも1アシストはついたはずで、チャンスメークのプレーは悪くなかったと思います。


FW 

前田選手 2

 チリ戦では、体を張った泥臭い守備でチームを助け、攻撃面でも自らのクロスで味方の決定機を作り出していました。エクアドル戦では後半45分に久保選手からスルーパスを受けて相手GKと一対一になった場面は決めたかったですね。自分の目の前にGKしかいないことがわかり、どのようにシュートを打つべきかに気をとられてトラップがおろそかになってしまったのか、それともまだケガの影響が残っていたのでしょうか。
股関節の負傷さえなかったら、このチームのセンターFWのファーストチョイスは彼だったように思います。


岡崎選手 3

 相手のパスコースを消しながらボールホルダーを追い込む前線の守備はさすがで、自分のプレスからボールを奪ってシュートまで持っていくなど彼らしい評価できるプレーもあったのですが、ゴールどころかアシストなど得点にからむプレーがゼロというのはさびしいかぎりです。
加齢によってスピードやアジリティが低下してしまうベテラン選手が多いのですが、岡崎選手は若い時と比べてそれほど顕著なスピードの低下は見られないので、シュートの精度を高める練習をしたり、豊富な経験を生かしてゴール前でフリーになれるポジショニングを取ることができれば、点が取れるFWとしてチームから信頼される選手になれる道はあると思います。


上田選手 3

 ポジショニングの取り方に光るものがありますし将来有望な若手選手ではありますが、いかんせん経験不足で相手選手にプレッシャーをかけられるとシュートをゴールから大きく外してしまうなど、現時点において技術・フィジカルコンタクト能力・スピードなど多くの部分でプロと戦う準備が出来ていないように見えます。
 チリ戦のエントリーで「大学サッカーが彼の成長にとって最善の場所なのか、今一度考える必要がある」と書きましたが、「プロの方がピッチやクラブハウスが整っている」などといったようなことを言いたかったのではありません。プロサッカー選手という職業は不安定ですし大卒という学歴を保険として持っておくという選択肢を否定しませんし、青春の楽しい思い出づくりで大学の仲間と同好会でプレーし、試合が終わったら居酒屋でワイワイやるのもいいでしょう。上田選手は時間軸を長くとって大器晩成型としてじっくり育てる予定で、来年の東京五輪に出場させるつもりはないというのであれば、あのようなことは書きません。
しかし日本サッカー界の目標として「東京五輪は金メダルを目指す」というのを聞いていますし、トゥーロン国際ではなくコパアメリカに招集されたのが東京五輪に臨む代表の主力と目されている選手たちだったはずです。
上田選手は五輪で金メダルを目標に戦うチームのエースFW候補としてブラジルに送り込まれたと考えざるをえないのですが、金メダルを目指すチームのFWとして必要な能力が不足しているように見えたからそう言ったのです。
欧州は五輪サッカーを重視していないのでどういうメンバーを送ってくるかわかりませんが、南米やアフリカの強豪は本気で金メダルを狙ってくるでしょうし、そうした国々のDFはすでに四大リーグかそれに準ずるレベルのリーグでプロとしてプレーしているはずです。ブラジルやアルゼンチンなどの強豪を打ち破って日本が五輪で金メダルを獲得するということが意味するのはそういうことであって、マレーシアやUAEのアンダー世代のバックからゴールを奪うのとはわけが違います。
FWとして結果さえ出してくれればどのカテゴリーでプレーしようが文句は無いのですが、東京五輪までたった1年しか時間が残されていない状況で、ウルグアイのゴディンやヒメネスといった四大リーグクラスのバックに子どものようにあしらわれて、ようやく危機感を覚えているようではいささか遅いのではないでしょうか。
JリーグではトップのCBだった昌子選手もフランスで徹底的に打ちのめされて、自分のどこが足りないのか初めて学び、それが成長につながっていますし、四大リーグとは言わないまでもせめてJリーグでなるべく早いうちにプレーを開始して、外国人を含む20代から30歳オーバーまでいろんな年齢層のDFと戦ってゴールをあげるという経験を積んだ方が、東京五輪を目指す上田選手のためになるのではないか、そういう意味で「大学サッカーが彼の成長にとって最善の場所なのか、今一度考える必要がある」と書いたのです。
いろいろと厳しいことを書きましたが、自分が目標とするべきハードルの高さを体感できたでしょうから、これを良い経験にしてFWとしての自らの能力に磨きをかけていって欲しいです。


名前のあがらなかった選手はプレー機会が少なく評価の対象外です。


 次回は森保監督の采配を振り返ることで、「日本代表のコパアメリカ総括」の締めくくりたいと思います。



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■日本代表のコパアメリカ総括(その1)

 日本代表が20年ぶりに招待されることになったコパアメリカ2019。

この大会は、日本サッカー協会に選手を拘束する権利がないため、内外のクラブから代表招集を拒否されたことで、U-22世代を中心とした若い選手が多いチーム編成となりました。

そうした若き森保ジャパンのブラジルでの戦いぶりがどうだったのか総括します。


    ☆       ☆       ☆


 まず日本代表が戦った3つのゲームを簡単におさらいしておきます。


 初戦の相手はチリでしたが、森保ジャパンはコパアメリカという真剣勝負の場で闘う準備がまるでできていなかったことを露呈してしまいます。

ビダル・アレクシス・メデルら高齢化しているとはいえ経験豊富な実力者を揃えた相手に対策を講じることもなく、ふわっとした試合の入り方をしてしまい、球際での一対一で闘う姿勢が見えず、なんとなく相手のボール保持者を追いかけているだけ。

間延びした陣形のまま前線からのプレスがハマらずチリに好き勝手にボールを回されると、今度は自陣に引いてスペースを埋めるだけで満足してしまいそれを見ているだけ。

コンディション不良のためか一対一でボロボロにやられまくっていたボランチの中山選手のところを徹底的に狙われて4失点の完敗でした。これがあとあとになって響いてくることになります。

 コパアメリカに参加している他国の監督からも若手主体の日本代表に対する批判が噴出するなか行われた第二戦はウルグアイとのゲーム(その1 その2)でしたが、一気に汚名を返上するような大善戦を見せてくれます。

一対一に強いウルグアイに苦しみながらもコンパクトなDF4人MF4人でつくる守備ブロックを保ち、そこから厳しくプレスをかけていってウルグアイに攻撃の自由を与えません。

中島選手を中心に攻撃にようやく連携が生まれ始め、三好選手の2ゴールで一時は2-1とリードしますが、“守備の文化”の無い日本はリードを守り切れず、ずっと課題と言われているセットプレーから同点弾を許し、金星を逃してしまいました。

この試合では、カバーニのシミュレーションがVARによってPKに化けてしまうという、“アウェー”ならではホームタウンデシジョンで失点したことも苦い経験となりました。

 グループリーグ最終戦はエクアドル(その1 その2)とのゲーム。日本は勝利すれば決勝トーナメント進出という状況でしたが、経験の無さが出て、マズいゲーム運びからみすみす勝ち点3を逃してしまいます。

味方を使うのが上手い久保選手が先発に戻ってきたこともあり、攻撃の連携がさらに良くなった日本は、中島選手のゴールで先制しますが、やはりリードしてからの試合運びに問題が出ます。

ボールを大切にしすぎるあまり、自陣深くで細かくパスをつなごうとしすぎてボールを奪われて再三のピンチを招くと、それまで相手の攻撃が良かったわけではないのに何となく劣勢に追い込まれていき、試合の流れは相手側に。

相手が反撃する時間帯が長く続き、空中戦に不安があった右サイドバックの岩田選手が狙われ、そこが守備のほころびとなって同点に追いつかれます。
 
後半30分すぎに相手の足が止まると、日本は決勝T行きをかけて猛攻に出ますが最後までゴールは生まれず、A組のパラグアイに得失点差で及ばず、グループリーグ敗退に終わりました。


    ☆       ☆       ☆

 
 それではコパアメリカにおける森保ジャパンの戦いぶりを総括します。

良かった点は、日本の若い選手がウルグアイのようなワールドクラスの相手とガチンコの真剣勝負をやって2-2のドローという結果を出せたという貴重な経験を積み、自信をつけることができたことでしょう。

これは国内でのテストマッチでは得られない本当に貴重なもので、それだけに、このコパアメリカはベストメンバーで臨みたかったというのが本音です。

ベストメンバーであれば、決勝T進出は夢ではなかったと思いますし、もしそうなれば若い選手も含めてもっと貴重な経験が積めたはずでした。

コパアメリカ参加という願ってもないチャンスを絶対にムダにはできなかったという意味では、若手が得難い経験を積めたことは本当に良かったですし、逆にそれぐらいやってもらわなければ困ります。

もう一つ良かった点は、攻撃面でレベルの高い連携プレーが生まれるようになったこと。

マスメディアから“新三銃士”と呼ばれている中島・南野・堂安選手を中心にしたこれまでの森保ジャパンの攻撃は、あまりにも個人技による単独突破にこだわりすぎていて、必ずしもゴールという結果につながっていませんでした。

3月のコロンビアとのテストマッチにおける日本の攻撃を、メディアや多くの代表サポは高く評価したようですが、まるで「個人によるドリブルシュート大会」で、決して効果的と言えなかったのは記事(その1 その2)に書いた通りです。

しかしこの大会では、試合を重ねるごとに攻撃の選手同士の連携が良くなっていき、特にエクアドルとの試合がそうだったのですが、周りの味方を使うのが上手な久保選手が入ったことにより、彼のキラーパスから何度も決定的なゴールチャンスが生まれていた点は非常に良かったですね。

久保選手のパスから中島選手がループシュートを狙った前半40分のプレーや、後半45分のやはり久保選手から前田選手へのスルーパスもほんの少しだけ弱かったのですが絶妙でした。

中島選手がオーバーラップした杉岡選手を使ってクロス、GKムスレラがはじいたボールを押し込んだ三好選手のゴールもそうですし、代表の攻撃に連携が出てきたのは非常に良い傾向です。

 逆に課題となったのが、大会の入り方。

チリとの初戦は特別な工夫もなく、ふわっとしたゲームの入り方をしてしまい、各選手が球際での一対一で厳しいバトルをする準備が整っていたようには見えず、チーム全体での組織的ディフェンスも、前から一応相手のボール保持者にプレスをかけるのですが、それがハマらずにズルズルと後退し、相手にいいようにパスを回されて失点を重ねていくことに。

相手をリスペクトして「自陣深くまでベタ引きにしてカウンター狙い」というゲームプランを取らなかったことについては全然それでもかまわないのですが、それならそれでDFラインをある程度高くあげても、DF4人MF4人のコンパクトな守備ブロックをつくって自分たちが守るべきスペースを限定し、そこから約束事に従って相手ボール保持者にプレスをかけていくようにしないと、チリのように個の能力が高い選手がそろっているチームを相手に守り切るのはキツイと思います。

次のウルグアイ戦ではそういう戦い方ができていましたから、どうして初戦からできなかったのでしょうか。

もしそれができていれば、勝ち点を取れていた可能性はありますし、同じ負けるにしても最少失点差に抑えることができていたかもしれません。

ウルグアイ戦にしてもエクアドル戦にしても、相手をリードしてからのゲームの運び方がマズく、リードしたままこちらが勝ち切る形でどうやってゲームをクローズさせるのかという部分でも大きな課題が残りました。

リードしたあと、同点に追いつこうと必死になった相手から反撃を受ける時間帯が10分15分と続くのはある程度仕方のないことです。

しかし自陣に引いてコンパクトな守備ブロックをつくり相手の攻撃を跳ね返すという状況に過剰適応してしまい、そのことがルーチン化してしまって同点ゴールを浴びるまでひたすらそれを続けてしまうのは良くありません。

ボールを奪い返したら大きくクリアするだけではなく、ボール保持能力の高い選手がタメをつくって味方の攻め上がりを促したり、あるいはチーム全体でボール保持者のために複数のパスコースを用意してあげて、中盤から攻撃をビルドアップするなりして、自分たちから自発的に守備一辺倒のリズムを打破し、追加点を狙う攻撃をしていく必要があります。

もし自陣にいる味方にパスを出そうとしても安全なパスコースが無かったり、そうしたパスが相手から狙われているなと感じたら、相手バックが後方にステップしながらヘッドせざるをえないようなロングボールを蹴り(そうすることによって相手バックは強いヘディングがやりにくくなる)、味方のトップと競ったボールがバイタルエリアに落ちたところを2列目の選手が拾って攻めるとか、それも無理なら相手陣内深くのタッチライン外へボールを蹴りだすことで陣地を稼ぎ、相手を自陣深くからのスローインという不利な状況に置いてからプレスをかけて、そのボールを奪って攻めたってかまいません。

日本の選手は、味方にパスがつなげない苦しい状況でのクリアか、相手DFラインのウラへ飛び出した味方を狙ったパスぐらいしかロングボールを使いませんが、そういう使い方もあるということを知っておいて欲しいです。

リードしたあと相手の攻撃を耐えきることができないもう一つの理由はずっと言われているセットプレーの弱さです。

今回のコパアメリカでは3試合とも、流れの中からも含めて空中戦でやられて失点を重ねていますが、空中戦に弱いこともセットプレーからの失点を許してしまう大きな原因の一つです。

ゴール前での空中戦に勝つためには、入ってくるボールに対し常にこちらが先に触ることが大事で、そのためには身長の高さやジャンプ力、ボールの落下点をいち早く見極め、最適のコースを通って走りこむ技術も大事なんですが、気持ちで負けないということも実は馬鹿にできない重要な要素です。

「今から飛んでもヘディングで負けそうだ」とか「空中で相手の頭とバッティングしたらどうしよう」みたいな弱気が頭をよぎったら、次の瞬間ジャンプが遅れて、高い打点から相手が放ったヘディングシュートが日本ゴールに吸い込まれるのを見ているだけ、という状況になってしまいがちです。

セットプレーでも流れの中からでも同様ですが、ゴール前に相手のクロスボールが入ってきたら、「何が何でも自分が先にボールに触るんだ」という強い気持ちを持って空中戦を挑むことが大切ですし、たとえ相手の方がジャンプ力に優れていたり、飛ぶタイミングが遅れてしまっても、空中で相手の体に自分の体を密着させることで相手が強いヘディングをできないようにすれば、たとえボールがゴール方向へ飛んだとしても、GKがキャッチしたりセーブしたりできる可能性が高まります。

リードしたあと相手から猛反撃を受けたらどうすべきか、ゲームの流れを読みながらピッチ内の選手たちが状況に合わせて適切な判断をし、マイボールにしてから遅攻・速攻で追加点を奪うか、それができなくてもこちらが攻撃する時間をつくることで最悪でもリードを保ったままゲームをクローズさせることができるようになって欲しいです。

それがロシアW杯の決勝トーナメント一回戦で学んだことですし、そこをクリアしないとその先に進んでいくことが難しくなります。

もしピッチ内の選手たちだけでそれができないのであれば、相手に同点あるいは逆転にもっていかれるまで座して見ているのではなく、ベンチワークで選手にメッセージを伝えて望む結果が得られるようにしなければなりません。

 この大会を通じた各選手の個人評価については次回エントリーとします。




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