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■2017年10月

■読者の皆さんへ

 今回は、記事の最後に読者の皆様へ大切なお知らせがありますので、よろしかったらお付き合いください。

それでは最初の話題です。

 前回エントリーのコメント欄に、おそらく日本代表を長く見てきて、サッカーをよく御存じと思われる読者の方から、「ジーコの時はどうだったの?」という非常に鋭いご質問を頂きました。

あの時、当ブログはどんな記事を書いていたかというと、こんな感じでした。


当ブログ過去記事

ジーコ監督の4年間は何だったのか?(その1)

ジーコ監督の4年間は何だったのか?(その2)

ジーコ監督の4年間は何だったのか?(最終回)


ジーコジャパン時代(2002年7月-2006年6月)に一体どんなことがあったのか、リアルタイムで見ていない代表サポも多くなったんじゃないかと思いますので、ざっと振り返ってみます。

八百長という手段を使わずに2002年W杯で日本サッカー史上初となるベスト16進出に成功したトルシエジャパンは、決して悪い結果ではなかったのですが、大会後に激しい批判が巻き起こります。

その先頭に立ったのが、「私をキャプテンと呼びなさい」と皆に命じた「絶対にその名を口にしてはいけないあの人」で、「トルシエの組織サッカーは代表選手をがんじがらめにし、個性をつぶした」と全否定し、彼が独断で次期代表監督に指名したのが、「個の自由に基づくサッカー」を提唱するジーコでした。

アンチェロッティのミラン、ライカールトのバルサ、モウリーニョのチェルシー、ベニテスのリバプールなど、選手個々の能力が高いのは当たり前、それを優れた戦術でいかに高いレベルのチームとしてまとめあげていくかという争いが、世界のサッカー界の頂点で繰り広げられていたその時、日本サッカーはそれに背を向け、正反対の方向へと突き進んでいくことになります。

そうした意味において、当時の日本サッカー界はまさに「狂気の時代」で、深夜にやっていたサッカー番組でも、マリノス出身の解説者が「神様ジーコ」が提唱する「個の自由」を何度も絶賛していましたし、UEFAチャンピオンズリーグの中継を見ていても、後に水色のJリーグクラブで監督をすることになる解説者が「やっぱり最後に問題を解決するのは個の力なんですね」と力説していました。

「日本人選手が自分の頭で考えて正解を導き出すことができるようになれば、日本サッカーはもっと強くなる」という理由で、ジーコ監督は代表選手に必要最低限の指示しか出さず、あとは自由放任で好き勝手やらせるという指導法が取られたのですが、リンク先の記事に書いてある通り、それはあまりにも非現実的な理想論であり机上の空論そのものだったのです。

当時は代表選手の多くがJリーグでプレーしていましたし、中田英寿選手や中村俊輔選手など少数が欧州でプレーしていたものの、彼らだけでミランやバルサでやっている当時最先端の戦術に対抗できるオリジナルのものを考え出すことなんて、どだい不可能なことでした。

ジーコは、自分がプレーした1982年スペインW杯当時のセレソンが使っていた中盤を台形にした4-4-2で、選手ひとりひとりが瞬間的なひらめきで攻撃も守備もやる“フッチボウ・アルチ”(芸術的サッカー)をやらせたかったようですが、選手たちの希望でトルシエ時代から慣れ親しんできた3-5-2が多く使われるようになります。

しかし初めから意図したものだったとは思えませんが選手たちが「自分の頭で考えた」結果、“フラットスリー”に代表されるトルシエ時代のゾーンで守る3-5-2から、対戦チームのフォーメーションとのかみ合わせでマッチアップする相手にこちらの選手を当てはめて守備をする、1980年代のようなマンマーク・ディフェンスぎみの3-5-2へと流されていきました。

この時代、欧州では10人のフィールドプレーヤーでコンパクトな守備ブロックをつくり、相手が使えるスペースを限定する組織的なゾーンディフェンスが高度な発展をとげていきましたが、日本サッカー界にゾーンディフェンスの導入が遅れた元凶は、このジーコジャパンにあったと思います。

(代表に本格的なゾーンディフェンスが導入されるのはその8年後、南アフリカW杯直前の岡田ジャパンから)

では選手たちに「個の自由」を与えた結果、日本代表の攻撃はどうなったかというと、ボールの出し手と受け手しかサッカーをやっておらず、それ以外の選手は足を止めてひたすらボールウオッチャーになっていて、ボール保持者はパスコースが無いので、前線の2トップへバックからロングボールをひたすら蹴りこむということを繰り返していました。

(あれ? 最近こういうサッカー、どこかで見たような)

こういう「個の能力頼み」のサッカーは、当時の日本代表のような「個の能力が低いチーム」には最悪の組み合わせであり、ジーコジャパンは当然のように、一番大切な舞台で間違った戦術を選択をした「罰」を受けることになります。

2006年ドイツW杯の初戦では、ダラーッと間延びしたマンマークぎみの3-5-2というジーコジャパンの弱点をオーストラリア代表のヒディンク監督に見抜かれ、ロングボールを1トップのビドゥカに当てて、日本の3バックの前方に大きく空いているスペースに彼がボールを落とし、それをキューウェルら2列目が拾ってという攻撃で防戦一方となり、相手のミスで先制したものの最後の最後で守り切れず大逆転負け。

ジーコが事実上、監督としての仕事を丸投げしていましたから、「俺はスタメンで使ってくれなければ、やる気が出ない」などとふざけたことを言い出す主力選手が続出して、チーム内は無秩序状態に陥っていました。(いわゆる腐ったミカン問題)

そこで中田英寿氏が、練習や試合でチンタラやっている味方にカツを入れる「ピッチ内の監督」みたいな役割を引き受けざるをえなくなったのですが、たぶんチームメートから「同じ選手の立場のくせにエラそうに」という反発があったんだと思いますが、中田選手がどんどん孤立していき大会中にチームは空中分解。

大敗を喫したグループリーグ最終戦のブラジルとのゲームの後、ドルトムントのジグナル・イドゥナ・パルクのピッチで仰向けになって寝ながら涙を流す中田選手に、チームメートの誰も近寄らなかったことがそれを象徴していました。

結局ドイツW杯の日本代表は、壊滅的な敗北に終わります。

ジーコジャパン時代というのは、せっかくトルシエジャパンまで強化がうまく行っていたのに、「個の自由」という妄想に憑りつかれた日本が世界のサッカーの進化からどんどん引き離されていった「失われた4年間」でした。

ジーコは、住金サッカー部を日本を代表する強豪クラブに育て上げた功労者であることは間違いありませんが、プロ監督としてはまったくの素人であり、一種の「ハロー効果」で日本サッカー界が「サッカーの神様と言われた名選手だから名監督になるだろう」という錯覚を持ってしまったことが、あのような悲劇を招くことになってしまいました。

当ブログも、「個の自由」ではドイツW杯で勝てないことはわかっていたので、「ジーコジャパンはこのままではダメだよ」という記事を書き続けていたのですが懸念した通りの結果に終わり、当時は「これから失敗することがほぼわかっているのに自分ではどうすることもできない」というもどかしい気持ちでいっぱいでしたね。

前述したように本格的なゾーンディフェンスの導入が遅れるなど、日本サッカー界はその後も長く「組織戦術は個性をダメにする」というジーコジャパン時代の負の遺産を引きずり続けることになるのですが、それが「個の能力を高めるべきか、チームの組織力を高めるべきか」という不毛な論争につながっていきます。

当研究所は「サッカーはチームスポーツなのだから個の能力も組織力も両方高めるべきであり、個の能力を引き上げるのは時間がかかるから、その間は組織力を高めてカバーすべき」という考え方でした。

ところがサポーターも含めた日本サッカー界では、「0か1か」「白か黒か」「個か組織か」という1ビットしか脳ミソの処理能力がない人がいて、サッカーブログ界隈でも「チームの組織力で個の能力の低さをカバーすることはできない。だから個の能力が低いチームは、高いチームに絶対に勝つことはできない」という主張が多かったように思います。

もちろん個の能力が高いに越したことはないのですが、南アフリカW杯での岡田ジャパンは組織的なゾーンディフェンスで、インテルミラノのエトオ・マジョルカのウェボ・トットナムのアスエコトらを擁するカメルーンや、アーセナルのベントナー・フェイエノールトのトマソン・ユベントスのC.ポウルセンらを擁するデンマークの攻撃をしのいで勝つことで、そのような主張は間違いであることが改めて証明されるわけですが。

今も、「カウンターサッカーかポゼッションサッカーか」という「0か1か」の不毛な議論があり、ブラジルW杯以降「カウンターが善で、ポゼッションは悪」と主張する人がこの日本で大変多くなりました。

当研究所は「ポゼッションもカウンターも必要であり、シチュエーションごとに適切に使い分けるべき」という考え方なのですが、「カウンターサッカーが善で、ポゼッションは悪」と考える1ビット脳の人は、自分と違う考え方を持つ人間も全員1ビット脳なんだから「ポゼッションが善でカウンターは悪と考えている」と思い込んでいるようで、「0か1か」以外に「00も01も10も11も110101という選択肢もある」ということが全く理解できないようです。

つまり「ポゼッションもカウンターも必要であり、シチュエーションごとに適切に使い分けるべき」という考え方が。

同じカウンターサッカーをやるにしても、ロングボールをひたすら蹴りこむのではなくて、ボールを奪い返したら相手の守備の薄い方へ薄い方へとグラウンダーのパスをつないで、最後はスルーパスを通してGKと一対一の形をつくってゴールをあげるコレクティブカウンターという頭を使った戦術もあるのですが、今の監督さんの能力では無理みたいです。

これは余談なんですが、キャンプ地選定の失敗から始まったザックジャパンの敗退、開幕試合のブラジル対クロアチア戦での日本人主審による「誤審」騒動など、日本サッカー界にとって2014年ブラジルW杯は「地の利が無かった」というか、ひたすらツイていない踏んだり蹴ったりの大会になってしまいました。

実は大会直前に「絶対にその名を口にしてはいけないあの人」が久しぶりにテレビに出てきて、「自分がジーコを代表監督にしたのは間違っていなかった」みたいな大嘘を言っていたので、それを聞いた(アルトゥール・アントゥネス・コインブラ氏ではない方の)サッカーの神様がお怒りになり、日本サッカー協会にバチが当ったのだろうか?と今もひそかに思っています。

 それでは最後に読者の皆様へお知らせです。

2005年2月に行われたドイツW杯アジア予選の対北朝鮮戦から、2017年9月のロシアW杯アジア予選のサウジアラビア戦まで足かけ12年以上に渡って、日本代表の全ての試合のレビュー記事を書き続けてきましたが、しばらくブログの更新をお休みします。

その理由は、ハリルジャパンがやっているロングボールを前へひたすら蹴りこむ「頭の中まで筋肉」みたいなサッカーが、私にとって「娯楽」ではなく、見ているのがつらい「苦行」そのものだからです。

本当は、「バイタルで香川選手がボールを持って前を向くと、相手DFラインの背後へ左ウイングの乾選手がダイアゴナルラン、相手バックは前へ出てボールホルダーである香川のパスコースを消すか、それともウラヘ抜ける乾へついて行くか一瞬迷ったところで香川からスルーパスが出て、それを受けた乾がGKとの一対一を冷静に制してゴール!いやあ日本代表の攻撃はレベルが高かったですね」みたいな解説記事をいっぱい書きたいんですよ。

しかし現実は、ロングボールをひたすら前へ蹴って相手バックにヘッドでクリアされ、またロングを蹴って相手にクリアされ、ウラヘ抜ける浅野選手へロングを放り込んでもボールに追いつけず相手のゴールキックになり、またロングを蹴って相手バックにヘッドではね返されという作業をひたすら繰り返すだけというハリルジャパンの稚拙なサッカーは見たまんま。

それ以上解説のしようがありません。

昨年10月のイラク戦あたりから、ロングボールをひたすら前へ蹴りこむハリルジャパンの「タテポンサッカー」がひどくなったように思いますが、ドローに終わった今年6月のイラク戦で我慢の限界に近づき、先月5日にポゼッションサッカーのサウジにタテポンサッカーの日本が敗れたことを告げる試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、私の心の中で何かが大きな音を立ててポッキリと折れたような気がしました。

正直言ってサウジ戦のレビュー記事を書きあげるのもやっとのことだったのです。

自分や日本サッカー協会を批判する記事を書いた記者を全員現場から締め出して岡野俊一郎さんから苦言を呈されていた「例のあの人」もそうなんですが、「応援の反対は批判である。だから一切の批判を許さない」みたいな勘違いをしている人が少なくありません。

そのチームなり選手なりを応援していて、もし悪い点があればこうすれば改善されるんじゃないかと思うからこそ批判するのであって、応援の反対は批判ではありません。無関心です。

プロサッカーのような娯楽産業が、観衆から批判されなくなったらおしまいです。

どっかの代表監督も、サッカー記者が自分を批判したという理由で「これからも監督を続けるかわからない」などと突然言いだし、W杯出場が決まった試合の記者会見をボイコットしていましたが、記者から批判されたという理由でいちいち辞任していたら、マルセイユやパリサンジェルマンなんか1年間で365人の監督が必要になります。

ハリルジャパンのサッカーをレストランの料理に例えれば、確かに炭水化物やタンパク質のような最低限の栄養素(W杯アジア予選突破)が含まれているのですが、私にとっては激マズでこれまで完食するのがやっとでした。

料理には、ドイツ・イタリア・スペイン・イングランド・ベルギー産の高級食材(選手)が使われているのですがね...

「ともかくボールがゴールに入りさえすればいい。サッカーは勝てばいいんだよ勝てば」という人にとってはそれで十分ハッピーなのかもしれませんが、もちろん栄養(試合に勝つこと)も大事ですけど、私は食事に味の良さも求めそれを楽しみたいのです。

「味の良さ」とは、選手個々の高い技術であったり、考え抜かれたチーム戦術の見事さであったり、それがサッカーというスポーツが持っている本当の楽しさだと私は考えています。

これからもテレビの前から日本代表を応援し続けますし、ロシアW杯で良い成績をあげることを祈っておりますが、再び「記事を書きたい」と思える試合を見る日が来るまで、代表戦レビュー記事の更新を一旦お休みします。

もしかしたらそれは来月かもしれませんし、来年かもしれませんし、現時点では何とも言えないのですが、気が向いたらJリーグや日本のユース代表の話題を取り上げて、どうしたら日本サッカーはもっと強くなれるのかを提案する記事を書くかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。

それではひとまず、ブログをお休みすることにします。

長い間ご愛読頂きましてありがとうございました。

            国際サッカー戦略研究所所長・スパルタク




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