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■2017年09月

■ハリルホジッチ監督の采配はどうだったのか?

 (日曜に急な仕事が入ったので記事の作成が遅れました。スミマセン)

 今回はかねてからのお約束通り、ロシアW杯アジア3次予選におけるハリルホジッチ監督の采配がどうだったのか、その評価をしたいと思います。
 
 本題に入る前に、日本がロシア行きを決めた今月のオーストラリア戦直後に、それまでハリル監督を批判していたマスコミに対し「手のひら返しだ」という逆批判が多くのサポーターから巻き起こりましたが、

手のひら返しで「当たり前さね!!!」

(某空中海賊の船長の声で脳内変換されてしまった...)

サッカー批評というものは、監督なり選手なりチームなりを、1試合ごとに客観的事実にもとづいて評価し、どうしたらより良いサッカーができるのかを提案していくものであって、監督が悪い采配をしたら批判し、次の試合で好采配を見せたら「手のひら返し」で評価するのは当たり前。

2010年W杯が終わったあと「岡ちゃんゴメン」とか言っているサポーターにも違和感を持ちましたが、「手のひら返し」「岡ちゃんゴメン」などと言っている人は、監督や選手を「好き」という感情で100%支持するか、「嫌い」という感情にもとづいて全否定するかして、「○×が代表監督をやっているかぎり絶対に勝てるor勝てない」という考え方をしているのだと思います。

だからそういう人たちは、その監督が就任してから辞任するまで「良い監督」あるいは「悪い監督」と一貫して同じ評価をし続けなければならないと思い込んでいるのでしょうが、それはサッカー批評ではありません。

「ロシア行きを決めた試合が素晴らしかったから、これまでハリル監督がやってきたことすべてが正解だったんだ」という考え方は、間違いです。

当研究所は、特定の監督や選手をひたすら崇拝するのではなくサッカー批評をするブログですので、お間違えのないようお願いします。

 それではW杯アジア3次予選のハリル監督の采配を大学の成績評価風に、優(80点以上)良(70点以上)可(60点以上)不可(59点以下 落第)で評価するなら、条件つきで「可」です。

なぜ「条件つき」かはあとで述べることにしますが、一つのサッカーチームが勝ったり負けたりするのは監督の采配(戦術の選択や選手の起用法)というたった一つのことが原因ではありません。

そのチームに所属する選手の能力レベル・選手のコンディション・試合をするスタジアムの環境などいくつもあげられます。

ではW杯アジア3次予選グループBの6ヵ国について、各代表選手の能力レベルを比較してみましょう。


 サウジアラビア サウジリーグのオールスターチーム

 オーストラリア イングランド・ドイツ・中国などでプレー

 UAE UAEリーグのオールスターチーム

 イラク 国内組を中心にイタリアやUAE・サウジなどでプレー

 タイ タイリーグのオールスターチーム

これに対して、日本代表を率いるハリルホジッチ監督に与えられた選手は、ブンデス・プレミア・セリエA・リーガエスパニョーラ・リーグアン・ベルギーリーグ等でプレーしています。もちろんJリーグ組もいます。

もしこの6ヵ国を率いる監督さんの能力がすべて同じだったとしても、トップ通過して当たり前の戦力をハリル監督は任されていたと言えます。

ところが、タイに2勝は当然としても、サウジ・UAE相手に1勝1敗、イラクとも試合内容からして2引き分けも同然、オーストラリアに1勝1分が唯一の救いだったわけで、ハリル監督はライバルより優れた戦力を与えてもらっているのに、アジア各国とほぼ互角の勝負を演じてしまっており、監督としての能力に疑問符がつく結果となりました。

最終的にグループ3位に落ちてプレーオフに回ったオーストラリアにしても、今は欧州4大リーグの2部クラブでプレーする選手が多く、リバプールのキューウェルなどプレミアでプレーする選手中心に固められていた2000年代よりも選手が小粒になったように思います。

そのオーストラリアが過大評価されてしまったのは、代表戦を中継したテレビ局が「W杯の予選で日本はオーストラリアに勝ったことがありません」と、盛んに危機をあおったせいでしょう。

「オーストラリアは楽勝の相手です」と言ったんでは、視聴率が取れないからです。

「数字は嘘をつかないが、嘘をつく人間は数字を使う」とは良く言ったもので、これも一種のフェイクニュースだと思います。

確かに数字の上では予選で勝った経験はありませんでしたが、「だから日本はオーストラリアより格下だったんだ。それをハリルジャパンが勝って、初めて日本がオーストラリアの上に行く歴史をつくったんだ」と言えば、それは嘘になります。

2006年以後に限って言えば、アジアカップ2007の準々決勝でPK戦の末オシムジャパンがオーストラリアを破っていますが、2010年南アフリカW杯アジア予選までは、オーストラリアの方が日本より力関係は上だったと思います。

しかし南アフリカ以後、オーストラリアの世代交代失敗が明らかになる一方、本田・長友・香川らの世代が台頭した日本がアジアカップ2011の決勝でオーストラリアを1-0でくだし、アジア最高となる4度目の優勝を飾りました。

「日本とオーストラリアの力関係が逆転するという歴史」をつくったのはまさにこの時であって、それを「報道しない自由」を行使してアジアカップ2011のデータを一切サポーターの目に触れないようにしながら、視聴率をあげるために危機感をあおるだけあおっていた某テレビ局の罪は重いと言えます。

ブラジルW杯アジア最終予選でもオーストラリアと当たりましたが、H&A2試合とも、ポゼッションサッカーで攻める日本に対し、オーストラリアが「弱者のカウンター」で対抗する展開となり、アウェー戦では先制したもののウッチーがもったいないPKを取られ、あともう一歩のところで勝ち切れず、ホームゲームはザックジャパンがちょうど不調の時期に入っていたこともあって2引き分けに終わりました。

データの上では、今回初めて日本がオーストラリアにW杯の予選で勝ったことになりましたが、オーストラリアは以前よりも選手が小粒になっており、日本人選手とのレベルの差を比べれば、日本の勝利はある意味自然だったように思います。

「歴史をつくった」というのは大げさで、テレビ局の宣伝に乗せられすぎです。

 それでは「どうしてここまで日本代表はロシア行きに苦しんだのか」と言えば、原因は3つあると思います。

(1)ハリル監督の選手起用法が適切でない

(2)ハリル監督の戦術が適切でない

(3)ハリル監督は、同じ失敗を何度も繰り返し、学習能力が低い

(1)に関して言えば、ハリル監督は代表各選手の特徴、長所・短所、選手間の優劣を見抜く能力が低く、それゆえチームが機能するように選手を適材適所のポジションに配置することができません。

予選の前半は、高齢化で能力が低下していたり不調に陥ったりしていた本田・岡崎・香川選手らベテラン勢の起用にこだわり、初戦のUAE戦で負け、次のタイ戦にはどうにか勝てたものの、ホームのイラク戦はあともう少しで致命的な引き分けとなるところでした。

サウジをホームに迎えた第5戦で、ようやく清武・大迫選手らロンドン世代を攻撃の中心にすえて勝利を収めることができたのですが、ハリル監督はその選手がプレーしているクラブの「格」で誰を起用するか決めて、新しい選手を起用して失敗することを極度に恐れていたように見え、慎重を通り越して臆病という表現がピッタリでした。

2次予選の段階から、ハリル監督が若手に適切なアドバイスと出場チャンスを与えていれば、宇佐美・浅野・武藤・小林祐希・昌子・植田選手なども、もっと早いスピードで成長し、クラブでも代表でもしっかり実績を残していたはずです。

香川・清武という現世代で最も才能のある選手をハリル監督が使いこなせていないことも大いに問題です。

(2)については、ハリル監督がたった一つの戦術しか使えないことに問題があり、守備戦術は、マークの受け渡しはするものの、フォーメーション上マッチアップする相手にこちらの選手をハメていく、ほとんどマンマークに近い「デュエル」、

攻撃戦術は、バックから前線へ浮き球のロングボールを放り込ませて、FWにポストプレーをさせるか、相手のウラでボールを受けろとひたすら指示する「タテに速い攻撃」です。

守備はともかく、このような攻撃戦術では、相手に引かれてウラのスペースを消されると、とたんに機能しづらくなります。

実際2次予選のシンガポールやカンボジアとのゲームで、相手に「自陣に引いてカウンター」というサッカーをやられて大苦戦したわけですが、3次予選になってもハリル監督は「タテに速い攻撃」が通用しなかった場合に備えた「プランB」を考えておかず、H&Aのイラク戦2試合や、アウェーのサウジ戦のように、相手に先制されたり同点に追いつかれたりして、こちらがどうしてもあと1点取らないといけないという場面で得点力不足に苦しむ原因となっています。

要は、戦術の使い分けが全然できていないということです。ロシア行きを決めたあと、マスコミが「ハリル監督はカメレオンのように戦術を変える」と高く評価していましたが、これについては最後に述べます。

ともかく、ハリルジャパンは攻守にわたってチーム組織のレベルが低く、ただ11人の選手をピッチ上に並べて、あとは選手個々の能力で攻撃も守備も何とかしろという色合いが濃い、選手の能力が高いおかげで勝てているサッカーで、監督の貢献度は極めて低いと思います。

ハリル監督の采配面でもう1点だけ付け加えるとすれば、アウェーのオーストラリア戦とH&Aのイラク戦なんかが典型的なんですが、日本代表は選手の能力が高いので前半の比較的早い時間帯にゴールをあげられることが多いです。

ところが先制したとたん、ハリル監督から「自陣に引いてロングボールを放り込め」という指示が出ると、日本の選手が気持ちで守りに入ってしまい、消極的なプレーで相手に押し込まれる一方となって最後には同点に追いつかれるというパターンが多かったですね。

こういう消極的で臆病すぎる采配も、今回の予選でなかなか良い結果が出ずに日本が苦しんだ原因となりました。

最後の(3)についてですが、どんな名監督でもミスはあるのですが、ハリル監督は同じミスを何度も繰り返し、学習能力というものがあるのか疑問に思うこともしばしばでした。

初戦のUAE戦で、右ウイングにスピードに劣る本田選手を入れ、ポストプレーができない岡崎選手をワントップに入れ、不調に苦しむ香川選手をトップ下で起用して負けるという結果に終わったわけです。

普通の監督さんならもう同じ失敗は繰り返さないはずですが、性懲りもなく第3戦のイラク戦で本田選手を右ウイング・岡崎選手をワントップで使い、あともう少しのところで引き分けるところだったのです。

当研究所は反対ですが、どうしてもベテラン中心のチームをつくりたいならフォーメーションを4-2-3-1から別のものに変え、本田・岡崎選手のプレースタイルに合った別のポジションで起用するなど、いくらでもやり方はあったはずなのですが。

サウジとの第5戦以降、大迫や清武・久保選手ら若手に切り替えて良い結果が出たのに、イラクとの第8戦で再び、右ウイングに本田選手を起用して痛い引き分け、最後のサウジ戦にも機能しないと初めから分かり切っているのに、本田選手を右ウイング・岡崎選手をワントップで使って完敗を喫するなど、ハリル監督に学習能力というものがあるのでしょうか。

 「いや、ロシア行きを決めたオーストラリア戦はハリル監督の采配がバッチリ決まったじゃないか」という反論が、多くの人から返ってきそうです。

確かにホームでのオーストラリア戦は3次予選におけるハリルジャパンのベストゲームだったと言えます。アウェーのUAE戦は、その次に内容の良い試合だったように思いますが、この2試合って本当にハリル監督の戦術で勝ったのでしょうか。

3月のUAE戦は、今野・香川(後半から倉田)の両インサイドハーフがハイプレスをかけ、ボールを奪ったら大迫・久保・原口の3トップ中心にショートカウンターで攻めて2-0で勝ったゲームでしたが、「こういうサッカー、どこか別のチームで見たような?」という既視感が私にはありました。

W杯行きを決めたオーストラリア戦でも、アンカーの長谷部選手が攻守でバランスを取りつつ、井手口・山口の両インサイドハーフでハイプレスをかけ、ボールを奪ったら大迫・乾・浅野の3トップ中心にショートカウンターで相手を攻めて、やはり2-0で勝ったのですが、この試合を見て「疑惑」は「確信」に変わりました。

「これは今シーズン序盤のガンバ大阪の戦術じゃないか」と。

3バック・2トップ(ガンバ)と4バック・3トップ(代表)の違いこそあれ、ボール奪取力に優れるインサイドハーフでハイプレスをかけ、ボールを奪ったらショートカウンターで相手を攻めてゴールをあげることは共通しています。

オーストラリア戦では、アンカーの遠藤選手の役割を代表では長谷部選手が果たし、今野(井手口)・倉田選手の両インサイドハーフの役割は、そのまんま井手口選手と山口選手が果たしているわけです。

こう考えると、なぜハリルジャパンの戦術がカメレオンのように変わるのかが一発でわかりますよね。

UAEやイラクに取りこぼすなど低迷するハリルジャパンにとって、前半戦のヤマ場はアウェーのオーストラリア戦であり、後半戦のヤマ場はアウェーのUAE戦とホームのオーストラリア戦だったわけです。

そして苦しむハリルジャパンがヤマ場を迎えるたびにガンバ出身の西野技術委員長が助け舟を出して、誰を代表に呼ぶかも含め、手取り足取りハリル監督に試合に勝つための戦術を教えてあげていたのではないかという疑惑が浮上してくるわけです。

ちなみにアウェーのオーストラリア戦は、ゾーンで守ってカウンターというサッカーでしたが、これはリオ五輪の手倉森監督(現代表コーチ)の戦術そっくり。

W杯アジア3次予選のハリル監督の采配を「条件つきの可」と評価した理由はまさにこれで、もしハリル監督が自分の実力で予選突破を決めたのでなく、ガンバ大阪の長谷川健太監督の答案を「カンニング」して試験にパスしたのだとしたら「退学処分もの」、つまりクビです。

外国から代表監督を招聘するのは、欧州を中心とした先進的な戦術を日本に導入するという重要な意味があるのであって、その外国人監督がJリーグクラブの戦術を丸パクリして試合に勝ったのだとしたら、高いカネを払ってそもそもそんな人を連れてくる理由があるのでしょうか。

オフトからアギーレまで、いろんな外国人監督を代表戦で見てきましたが、こういう人はちょっと記憶にありません。

これからロシアW杯まで8か月あまりの準備期間があるわけですが、西野さんを含む日本人スタッフの助けを一切借りずに、ハリル監督と彼が連れてきたコーチ陣だけで代表戦の指揮を取らせて初めて、「カンニング」抜きの本当の実力がわかるのではないでしょうか。

それでダメだったら躊躇なく解任すべきです。

日本サッカー協会(JFA)は、もしハリル監督が途中解任されたら後任にル・グエンを考えていたという一部報道がありましたが、彼はやめておいた方が良いと思います。

彼は南アフリカW杯でカメルーンを率いていましたが、インテルのエトオやトットナムのバソング・アスエコトなど、岡田ジャパンよりはるかに能力の髙い選手を任されていたのに負けてしまいましたし、その後オマーン代表を指揮していた時はなおさら、ザックジャパンにコテンパンにやられていた記憶しかありません。

個人的には、東京ベルディのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が、もっと正確に言うと、彼のアシスタントであるイバン・パランコ・サンチアゴコーチが気になっています。

カタルーニャ人の彼はバルサファミリーの一員で、守備的なサッカーが得意なロティーナ監督に、攻撃面でアドバイスをしているそうで、ロティーナ監督も「非常に助かっている」と高く評価しています。

まだ若くて監督の経験は無いみたいですが、「彼に日本最高の選手を与えたらどんなサッカーをやるだろうか」という興味があるのです。

もしイバンコーチだけでは経験面で不安があるなら、西野さんがロティーナ監督とセットで面接して、「日本代表を、ポゼッションサッカーとカウンターサッカーを適切に使い分けることができるチームにして欲しいのですが出来ますか?」と質問して、西野さんが納得できる答えが返ってきたら、東京ベルディの社長さんにお願いして招聘してみてはどうかと思います。

この夏に、かつてベローナを指揮していたマンドルリーニ氏が来日して自分を売り込んでいましたが、スペインやイタリアなどの欧州4大リーグで実績を残してきた監督さんが日本サッカー界に売り込みをかけるケースが増えており、JFAもしっかりアンテナを張っておいた方が良いです。

 というわけで、ハリル監督の3次予選の采配を再評価してみました。

日本代表が予選敗退をしなくて本当に良かったと個人的には思っていますが、ロシアW杯に向けてのワクワク感は正直ありません。

今のところハリルジャパンは、「攻めすぎ」という相手の失敗にツケこんで勝つ、受け身な「カウンターサッカー」という戦術しかできないチームです。

これは2010年南アフリカW杯に出場した岡田ジャパンが「いつか来た道」を、もう一度たどろうとしているのであって、運が良ければベスト16まで行けるかもしれませんが、日本サッカー界にとってそれ以上の意味合いは無いと思います。

ベスト8以上に行けば、何らかの意味が生まれるかもしれませんが...。

ハリルジャパンのサッカーをフィギアスケートに例えれば、失敗する可能性の高い4回転ジャンプ(ポゼッションサッカー)は一切ナシにして、3回転ジャンプだけの演技(カウンターサッカー)で手堅く得点を稼いでオリンピック(W杯)に勝とうとするようなものです。

2014年ブラジルW杯でザックジャパンが4回転に挑戦して転倒してしまったことにコーチ陣(JFA)がビビッてしまったからですが。

そして五輪のアジア選考会(W杯アジア予選)においてオーストラリアは4回転ジャンプで転倒して3位に終わりましたが、サウジは成功させて最後に銀メダルを取りました。

4回転に成功する資格は、4回転にチャレンジし続けた者だけで与えられるのであって、失敗を恐れて困難なチャレンジから逃げようとしているハリルジャパンがロシアで手堅く高得点をまとめたとしても、後に残されるのは3回転しか飛べない選手たちです。

それが本当に日本サッカーのためになるのでしょうか。

ザックジャパンのポゼッションサッカーはアジアレベルでは大成功だったのですから、アウェーのオーストラリア戦は別としても、今回の予選も基本的にポゼッションサッカーで行ってロシア行きの切符をゲットし、W杯本番までのテストマッチで、自分たちより強い相手に最低限でも引き分け、あわよくば勝ちを狙うカウンターサッカーをトレーニングすれば良いというのが私の考えでした。

興味深かったのはこの予選のラスト2節で、オーストラリアは「守ってカウンター」で日本と引き分け、最後のタイ戦に勝てばダイレクトでロシアへ行けたのに、ポゼッションサッカーというたった一つの戦術しかできなかったためにプレーオフに回り、カウンタ-サッカーというたった一つの戦術しかできないハリルジャパンは、最終節でポゼッションサッカーのサウジに先制され、相手が1点を守り切るために自陣に引いてカウンター戦術に転換すると、手も足も出ないまま敗れ去りました。

日本ではいまだに「カウンター」か「ポゼッション」かという、ゼロサム理論でしかサッカーを考えられない人が多いのですが、たった一つの戦術しかできないチームは、それ自体が弱点となるということが、改めて証明されたのではないでしょうか。

サッカーの面白さって、技術や知恵(戦術)でどうやって相手に勝つかというところにあるんじゃないかと思うのですが、ハリル監督の指示でロングボールを前へひたすら蹴りこむ「頭の中まで筋肉」みたいなサッカーが始まると、私にとっての代表戦は「娯楽」ではなく、耐えがたい「苦行」そのものになります。

最近、自分の限られた余暇の時間を日本代表観戦に費やすのが疑問に思えるようにさえなりました。

3度のメシよりサッカーが好きで、奇しくも1990年北京アジア大会の日本VSサウジから代表戦をずっと見てきた私を、たった2年間でそう思わせるようになったハリルホジッチ監督おそるべしと言わざるを得ません。



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■日本代表、サウジに完敗(その2)

(訂正追記あり)

前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍をしたのは、GK川島選手。 
後半10分にアルムワラドとの1対1という決定機に、逆を取られながらも左足1本で相手の強烈なシュートを防ぐビッグセーブ。日本サッカー界においてGKの第一人者であることを証明して見せました。

 逆に本田選手は最大のブレーキ。
2010年W杯から日本のサッカーを「脱アジア化」させた大功労者なので、こういう指摘をするのはつらいところですが、「サウジの選手をドリブルで抜きまくった」みたいな嘘記事を書くわけにはいきませんので、この試合の彼のプレーを見たありのままを述べます。

加齢による身体能力の衰えでプレースピードが絶望的に遅くなっており、若い選手が気を使って右ウイングの彼のところへパスを集めるのですが、タテに相手を抜くことができないため、本田選手が意味の無いヨコパス・バックパスをしている間に、相手チームがすっかり守備陣形を整えてしまい、日本のチーム全体の攻撃が遅くなってしまう大きな原因となっています。

当研究所はそれを、2次予選のカンボジア戦ですでに見抜き、他のポジションへのコンバートを提案したわけですが、ハリルホジッチ監督はそれを見抜けずに、3次予選の初戦となったUAEとのゲームでも本田選手を右ウイングで使って負ける原因をつくってしまったわけです。ホームのイラク戦もあやうく致命的な引き分けに終わるところでした。

C.ロナウドでさえ30歳をすぎてスピードが衰え、サイドを突破できなくなったので、ウインガーからフィニッシャーへプレースタイルを転換したのに、本田選手がどうしてウインガーにこだわり続けるのか意味がわかりません。

それどころかボールキープ力も衰えてきており、サウジの選手からタックルを受けてボールをロストするシーンが二度三度あり、極めつけは前半42分に味方からのパスをトラップミスして奪われ、サウジのショートカウンターからタイシルにあわやというシュートを食らうなど、もはや日本代表レベルのプレー・クオリティさえ維持できなくなっています。

「ロシアW杯予選において、日本代表でもっとも得点をあげているのは本田でしょ」という人がいるのかもしれませんが、カンボジアやシンガポールなどアジアでも最弱レベルの相手から取った得点が多く、3次予選でサウジやオーストラリアからあげたゴールとは難易度が違います。

今年の夏、本田選手がどのようにオフを過ごすのかなと注目して見ていたのですが、あいかわらずビジネスや慈善活動優先で、サッカーのトレーニングは二の次だったんじゃないですか。ビジネスマンの副業で現役のサッカー選手やって成功できるほどプロの世界は甘くないわけで、メキシコリーグで代表にふさわしいプレーを見せるまで、招集は見合わせるべき。

彼がゲームに出たり代表選手23人のワクに入っていることで、若手がワールドクラスの選手に成長するための貴重なチャンスが奪われてしまい、日本サッカー界全体にとって大きな損失となっています。

 岡崎選手はセンターFWとして出場しましたが、ほとんど存在感なし。
大迫選手のように自分のポストプレーでボールを相手ゴール前まで運ぶようなプレーは望めませんし、シュートも不正確でワクに飛びません。
そもそもレスターで彼が成功できたのはワントップでゴールを量産したからではなくて、2トップのセカンドストライカーとして守備で貢献したりバーディをサポートしたからですよね。岡崎選手のプレースタイルをまるで理解せず、3次予選初戦のUAE戦で彼をワントップで使ったことが敗戦につながる一因となったのですが、本田選手と同様に、岡崎選手をどのポジションでどういう役割を与えたら生かせるのか、それをまったく理解していないハリルホジッチ監督が一番悪いと言えます。

 柴崎選手はインサイドハーフとしてチームの攻撃を組み立てる役割が期待されましたが、大きく不満が残る出来。自分がボールを受けたら、それをダイレクトで前方へパスしようとして味方と合わないシーンが目立ちました。受け手がパスを受けられるポショニングを取るまで、自分のところで0.5秒あるいは1秒ほどボールをキープしてから出してやれば、もっと正確にパスがつながるはずです。つまりパスを早く出すことばかりに気を取られていて周囲の状況をまったく見ていないということです。
またパスを受けるための動きも物足りず、味方のボールホルダーの位置をよく見て適切なポジショニングを取ること。
いきなりぶっつけ本番で周囲とコンビネーションを合わせろというのも無理な話ですので、彼には経験を積ませる必要があります。

 吉田選手はプレー判断が遅く、ボールを持ちすぎてプレスをかけてきた相手に奪われそうになるなど、失点にこそつながらなかったものの危ないミスが数度ありました。足元の技術は相手FWの方が数段上ですから無理をせず、早め早めに正確なパスを出していくことです。もしパスの出しどころがなかったら大きく前方へ蹴ってもやむを得ません。失点するよりよほどマシです。

 長友選手は、後半開始早々の相手のチャンスでゴール前へ良く戻り、相手のクロスをクリアしてチームのピンチを救ったのですが、後半10分にアルムワラドとのマッチアップで相手に体を入れ替えられ、川島選手との1対1をつくられる原因になってしまいました。あの場面では重心をやや落としてアルムワラドの太ももの外側に自分の腰あたりをガツンとぶつけて相手のバランスを崩しつつ、自分の右肩&右腕を相手の体の前へ入れながらボールを奪えば、あそこまで簡単にやられることは無かったのではないでしょうか。

 山口選手は前半に惜しいミドルシュートがありましたが、前半20分に後ろの状況をよく見ずにバックパスしたところ相手へのプレゼントボールになってしまい、吉田選手がイエローカードをもらってしまう原因に。ボランチがミスプレーをすると、後ろにはもうバックしかいないのですから安全第一に。周囲の状況をよく確認してからパスをして欲しいです。

        ☆        ☆        ☆

 ハリルホジッチ監督の采配を評価しますと、どんな名監督でも間違いはあります。しかし同じミスを何度も何度も何度も繰り返すのはプロとして絶対に許されることではありません。

ミスをしたらすぐに修正するのが優秀な監督であり、同じミスを何度も繰り返すのは無能な監督です。

2次予選の段階で、右ウイングにスピードの遅い本田選手を入れるとチームの攻めが機能しなくなり、アジア最弱レベルのシンガポールと引き分けてカンボジアには大苦戦、ワントップに岡崎選手を入れても、レスターでそのポジションで成功したわけではないのでポストプレーはできないし、独力でゴールもこじ開けられず、本田・岡崎両選手を間違ったポジションで使ったことが3次予選の初戦で負けた一因だったわけで、その過ちをどうしてこの試合で繰り返したのでしょうか。

サウジに先制された後、相手は自陣に引いてゾーンディフェンスのコンパクトな守備ブロックをつくってきましたが、何の工夫も無いロングボールをひたすら前線の浅野選手らにむかって放り込み、相手バックに跳ね返されるか、ボールがゴールラインを割って相手ボールになるばかり。

カウンターサッカーは相手に引かれると、とたんに点が取れなくなるというのは、2次予選のシンガポールやカンボジアとのゲームで何度も経験したのに、何の打開策も準備しておかず、ハリル監督は無為無策のままサウジに完敗を喫しました。

先制されたあともロングボール攻撃では質の高いシュートチャンスがつくれなかったのですから、そのためには中盤にパサーが必要だったわけです。

サウジの先制シーンのようにバイタルエリアでボールを持って前を向ければ、バック(訂正吉田選手 酒井宏選手)があわてて前進してきてDFラインが乱れ、オフサイドにならずにウラヘ抜けた味方にパスを通してGKと1対1という形がつくりやすくなります。(ファンマルバイクというかオランダ流ポゼッションサッカーの常識)

それを考えれば、トップ下に乾選手のようにキープ力があって正確なパスが出せる選手を交代で入れるべきだったように思いますが、どうしてFWタイプの選手ばかりを前へ並べて、ひたすらロングボールなんでしょうか。

選手の起用法にしろ、戦術の選択にしろ、ハリル監督はどうして同じミスを何度も何度も繰り返すのか理解に苦しみます。

        ☆        ☆        ☆

 ロシアW杯アジア予選の最終戦は、サウジ代表のオランダ流ポゼッションサッカーの前に、結果も試合内容も日本の完敗に終わりました。

これまでの日本VSサウジの歴史をひも解いてみますと、Jリーグができるまではサウジの方が格上で、日本がなかなか勝てない時代が続きましたが、自国開催となったアジアカップ1992の決勝でサウジをくだして初優勝をとげた日本が追いつき、90年代いっぱいまで互角の争いが展開されます。

高原や中村俊輔・小野ら若手が台頭したトルシエジャパン時代に立場が逆転、事実上の決勝戦といわれたアジアカップ2000のグループリーグCの初戦で、ポゼッションサッカーの日本がカウンターサッカーで対抗するサウジに4-1で圧勝、決勝戦でもう一度当たったサウジをねじ伏せ、二度目の優勝を飾りました。

その後2002年W杯でベスト16になった日本が、サウジをリードする状況が続き、アジアカップ2007の準決勝でオシムジャパンがサウジに不覚を取って敗れたことがありましたが、2010南アフリカW杯で岡田ジャパンがベスト16、この間サウジは不振をきわめ、W杯に出られない状況が続きます。

本田・岡崎・香川世代が台頭したザックジャパン時代のアジアカップ2011グループリーグB最終戦で両チームは再度対戦し、ポゼッションサッカーのレベルを高めた日本がサウジに5-0と圧倒的強さを見せつけ、そのままアジア最高となる四度目の優勝を決めました。

「自陣に引いて守り、ロングボールを前線に放り込んでカウンター狙い」というのは、20世紀の昔からサウジを代表とする中東サッカーの代名詞とも言えるスタイルでしたが、ポゼッションサッカーで大きな成功を収め、ACミランやインテルミラノ・マンチェスターUでプレーする選手を輩出するまでになった日本を見習って、アジアでポゼッションサッカーを取り入れる国が急増します。

それが今予選のサウジでありオーストラリアでありUAEでありタイであったわけです。

ところが2014年ブラジルW杯が終わったあと、「ザックジャパンが負けたのはポゼッションサッカーのせいだ」とか言い出した人が日本サッカー協会の幹部にいて、これまでポゼッションサッカーで成功してきた日本の歴史を全否定し、サウジを含むアジア諸国が何十年もやってポゼッションサッカーの日本にコテンパンにやられてきた、ロングボールをひたすら放り込むタテポンカウンターサッカーへ時代錯誤的な大逆行、あげくのはてにハリルジャパンが「弱者のカウンターサッカー」でポゼッションサッカーのサウジに対抗し、試合結果も内容も完敗というのですから情けない時代になったというか、「寒い時代になったとは思わんかね?」

 次回は、ロシアW杯アジア3次予選10試合において、ハリルホジッチ監督の采配がどうであったかを再評価してみたいと思います。今度の日曜をメドにアップする予定です。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇
  2017.9.5 マディナト・アルマリク・アブドラ・アルリヤディヤ
                                (ジッダ)

    サウジアラビア  1 - 0  日本

     アルムワラド 63’



     GK アルムアイフ       GK 川島

     DF マンスール        DF 酒井宏
       (アルゾリ 86)         吉田
        ウマル             昌子
        ウサマ             長友
       (ムタズ 76) 
        アルシャハラニ     MF 山口
                         柴崎
     MF アルファラジ         (久保 80)
        ウタイフ            井手口
        ナワフ     
        タイシル         FW 本田
        ヤヒヤ            (浅野 46)
                         岡崎
    FW アルサフラウィ        (杉本 67)
      (アルムワラド 46)       原口




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■日本代表、サウジに完敗

 ロシアW杯アジア予選の最終戦がサウジアラビアのジッダで行われ、日本はサウジに0-1で敗れました。

対戦相手のサウジ代表は、全員が国内リーグでプレーしています。日本との実力差は、日本のホームで日本の勝利、アウェーで引き分け程度と見ていました。

W杯本大会を見据えれば、ここで勝利してこそチームの成長があるのであって、日本代表選手はブンデス、プレミア、ラ・リーガ、セリエAなどでプレーしている以上、最低でも引き分けにはしておかないと。

そうした意味で、敗戦という結果はあってはならないものでしたし、試合内容も最悪だったと思います。サウジ相手に結果も内容も屈辱的な完敗でした。

それでは試合内容を詳しく見ていきます。

        ☆        ☆        ☆

 この試合の勝敗を決定づけた最大の要因は、ハリルホジッチ氏とファンマルバイク氏の、長期的なチーム強化のプランづくりや適切な戦術・選手のチョイスを含む「プロサッカー監督としての能力差」だったと思います。

前半は、ポゼッションサッカー(パスサッカー)で攻めるサウジに対して、オーストラリア戦のようなハイプレスではなくチーム全体をやや引き気味にして、そこから“デュエル”を仕掛ける日本がボールを奪い返すと、“タテに速い攻撃”で反撃する展開となります。

しかし日本は、選手間に連動性が欠けておりパスがなかなかつながらず、質の高いゴールチャンスをつくることができません。

またしてもまたしてもまたしても右ウイングで起用された本田選手が、相手のサイドを攻略できないばかりか、サウジの選手にチョンと足を出されるとたちまちボールをロストして反撃を食らうシーンが二度三度と目立ちました。

中盤においてパスで攻撃を組み立てられないハリルジャパンがボールを相手ゴール前へ運ぶほぼ唯一の手段は、大迫選手へのロングボール&ポストプレーなわけですが、この日センターFWに入った岡崎選手はそういうプレーがほとんど期待できません。

気温32℃の猛暑では90分間プレーが続かないと見たサウジは「前半は0-0でOK,後半に勝負をかける」というゲームプランだったようで、後半開始からポゼッションサッカーによる攻撃を強めてきます。

対するハリルジャパンはオーストラリア戦のようにプレスがかからず、相手のドリブルやパス攻撃を見ながらズルズル後退するばかり。

後半18分にサウジにきれいにパスをつながれ、日本のDF陣が中央を崩されて失点。

先制したサウジはポゼッションサッカーから、自陣にゾーンディフェンスによる4-4のコンパクトな守備ブロックを形成し、1点を守りながらカウンターアタックでゲームを決定づける追加点を狙う戦術にチェンジします。

これに対してハリルジャパンは、あいかわらず何の工夫も無いロングボールを前線へ放り込み続けますが、サウジにDFライン背後のスペースを狭くされて、浅野選手がウラヘ抜け出してもボールはそのままゴールラインを割り、ボールを受けられず。

かといって、これまでずっとロングボールを使った「タテに速い攻撃」をやってきたせいで、ゾーンディフェンスによってスペースを限定されているサウジの守備ブロックの中でパスをつなぎ、相手の守備を崩すポゼッションサッカーで同点ゴールを奪うだけの力もありません。

最後は吉田選手を前線にあげて、ひたすらロングボールを放り込み続けましたが追いつけず。結果も試合内容もハリルジャパンの完敗に終わりました。

 もう何度も言っているように、ハリル監督は「守ってカウンター」という戦術しかできないのは明白ですが、カウンター戦術は、相手が前へ出て攻めてくることで中盤や相手の背後にできるスペースを利用してゴールをあげようとするものです。

ですから先にゴールを奪われ、相手が自陣に引くことで背後のスペースを消されると、とたんに苦しくなります。

そのようなシチュエーションは、ロシアW杯本大会でいくらでも起こり得ますよ。

だからこの試合のように、自陣に引いた相手にゾーンで守るコンパクトな守備ブロックをつくられても、その守備ブロックの中でパスをつないで相手DFを崩しゴールを奪う「プランBの戦術」、つまりポゼッションサッカーが絶対に必要になるのです。

しかしポゼッションサッカーのように、複数の選手が連動して狭いスペースの中でパスをつないで攻撃するためには、足元の技術と戦術トレーニングのためにそれなりの時間が欠かせません。

普段からポゼッションサッカーをやっているチームに、カウンターサッカーをやらせるのは容易ですが、普段ロングボールを放り込むカウンターサッカーばかりやっているチームに、その戦術が相手に通じなかったからと言って、すぐさまポゼッションサッカーにチェンジしろと指示しても、それはまず不可能です。

この試合のようにね。

それについては、今から2年前の記事で述べた通りです。


(当ブログ過去記事・二手三手先を考えてサッカーをするということ(その1)

(当ブログ過去記事・二手三手先を考えてサッカーをするということ(その2)
   

行き当たりばったりで試合ごとに選手をとっかえひっかえし、長期的なチーム強化のプランを持たなかったハリル監督のツケがこの試合に回ってきた感じです。

 それに比べると、ファンマルバイク氏のプロ監督としての能力の髙さが際立ちました。

日本よりも個の能力で劣り、国際経験の無い選手しか与えられていないにもかかわらず、狭いスペースでもワンツーを挟みながらパスをつないで辛抱強く相手を攻め、ゴールをこじ開けられるだけの戦術を授け、1点取ったらオーソドックスながらも堅実なゾーンディフェンスによるコンパクトな守備ブロックを形成してカウンターで追加点狙いと、巧みな戦術の使い分け。

頭蓋骨の中まで筋肉みたいな、技も工夫もないハリルホジッチ監督の単調なサッカーと比べ、サウジのサッカーからは文化・文明の香りがしました。

そう、オランダ流のポゼッションサッカーというヨーロッパ文化の香りがね。

これでもし、サウジ人選手の「個の能力」が日本人選手より上回るようになったら、本当に手も足も出なくなりますよ。

サッカーは足元の技術だけで勝敗が決まるわけではありませんから、サウジがW杯本大会で必ず成功できるとは限りませんが、日本サッカー界の育成担当者の皆さんは、危機感を持った方がよいです。

ハリル監督が守備のできる選手中心にチームを組んでいるせいもありますが、この試合に出場した選手の平均値は、ボールを正確に蹴る・止める・ドリブルする足元の技術に限って言えば、サウジの方が上だったように思います。

ウマル・アブドルラフマンに代表されるUAEなんかも、足元の技術が高い選手が育ってきており、日本サッカー界も危機感をもって、個のレべルでボールを正確に扱う技術をどうしたらもっと高めることができるか、もう一度見直す必要があるのではないでしょうか。

足元の技術が大切なのはもちろんですが、シュートも含めたヘディングで自分が狙ったところに正確にボールを送る技術が、日本人選手は世界標準から大きく劣っているように見えます。

 というわけでロシアW杯アジア予選最後の試合は、結果も試合内容も日本の屈辱的な完敗でした。

この試合はファンマルバイク監督による、オランダ流ポゼッションサッカーの勝利であり、「ザックジャパンが負けたのはポゼッションサッカーのせいだ」といってハリル監督を日本へ連れてきた霜田正浩・前技術委員長の「妄想」の敗北であったように思います。

選手個々の評価は次回とします。

つづく



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<当ブログ過去記事>

なぜパスサッカーなのか?(その1)

なぜパスサッカーなのか?(その2)

サッカーで強くなるために一番重要なこと



■日本代表、ロシアW杯出場決定!!(その2)

 前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、貴重な先制ゴールをあげた浅野選手。自分をマークしていたスミスが完全なボールウォッチャーになっていたこともありましたが、長友選手のクロスを正確なボレーで決めてくれました。シュートを大振りせず、GKを外してゴールできるよう確実にミートすることだけに集中していたところが良かったです。
 ただ、井手口選手みたいに自分でドリブルしてシュートできるところで弱気になってパスを選択したり、右サイドバックの酒井宏選手とのコンビネーションがかみ合わないシーンも多かったので、そこは課題です。

 長友選手は 左サイドからあげた自らのクロスで浅野選手の先制点をお膳立てしました。あのゴールの半分は彼の正確なクロスで決まったようなものです。これまで相手バックのウラのスペースへクロスを落そうとしてGKに近すぎるところへボールを蹴り、ことごとくキャッチされてしまうケースが目立っていましたが、今回はオーストラリアがDFラインを高くあげていたので、見事にアシストが決まった感じでした。もしDFラインのウラが狭い時は、相手選手の間にボールを落すようにすると、もっとアシストが増えるのではないでしょうか。

 井手口選手は、完全に「個の能力」で奪い取った追加点が圧巻でした。原口選手のプレスによってこぼれて来たボールを拾うと、ドリブルで相手2人の選手をかわして正確なミドルシュートをゴール右上スミに叩き込むスーパーゴール。
セットプレーのキッカーを任されていたことからもわかるようにキックの精度があり、確か前半に左サイドでドリブルしながら右足アウトサイドでゴール前へクロスをあげたプレーがありましたが、ゴールにこそつながらなかったものの、あれはシビレましたね。
これで自らのパスでチーム全体の攻撃を操ったり、スルーパスを出して味方のゴールをアシストする高い能力がついてくれば、代表のインサイドハーフ・攻撃的なボランチはもちろんトップ下も十分任せられます。
サッカー選手として体は決して大きい方ではありませんがフィジカルコンタクト能力が高く、守備での1対1にもほとんど勝ってボールを何度も奪っていました。
これまで日本人MFは、攻撃能力が高いと守備能力が低く、守備力が高ければ攻撃力が低いという選手がほとんどでしたが、彼は攻守両面で世界に通用するポテンシャルを持っているように思えますし、ヤット選手や宇佐美選手が言っていたことの意味がわかった気がします。
不調に陥らない限り代表で継続して使ってあげて、W杯本大会までハイレベルの経験を積ませるべきで、本人も地に足をつけて努力し、天狗になって毎晩クラブで遊んで朝帰りなんてことにさえならなければ、すごい選手に成長する可能性があります。

 乾選手は、左サイドで攻めの基点となり、大きな貢献。
足元の技術が高い彼のところでボールがキープできるので、味方が押し上げるための適度なタメをつくることができました。直前のシリアとのテストマッチで出来が良かったので、6月のイラク戦でもそのまま左ウイングで先発させるべきと考えていましたが、解説者の多くが左ウイングの先発に原口選手を予想し、ハリルホジッチ監督のチョイスは久保選手となりましたが、もしイラク戦で彼を左ウイングに起用していれば、あのような結果にはならなかったんじゃないでしょうか。

 大迫選手は、シリア戦・イラク戦でほとんど機能しなかったポストプレーが突然復活。
前線で体を張ってロングボールを収め、基点となったことは評価できるのですが、周囲の選手とのコンビネーションは今ひとつでした。
ただ、ポストプレーに一生懸命になりすぎると、ゴール前でシュートが打てませんから、チーム全体でパスで攻撃を組み立て、インサイドハーフやウイングがラストパスを供給し、ゴール前の良いところで待っている彼にゴールを決めさせたいところです。

 酒井宏選手は、右サイドの守備で相手とのマッチアップにほとんど勝利し、前へ駆け上がってチャンスメークにも積極的にからみました。ただ、浅野選手とのコンビネーションをもっと高める必要があります。

 逆に吉田選手は、6月のイラク戦の失点シーンとまったく同じミス!
後半4分に、日本のペナルティエリア内へ相手のパスが出て、自分が積極的に関与してタッチラインへ向かってクリアしておけば何の問題もないプレーなのに、背後にクルーズがいたにもかかわらずボールをそのまま見送り、GKの川島選手にキャッチさせようとして2人で交錯して転倒。もしクルーズにうまくボールを突かれていたらまたしても痛恨の失点をしていた可能性があります。こういう消極的で弱気なプレーほど失敗するリスクの高いものはないと何度も何度も指摘してきましたが、いつになったら理解できるのでしょうか。

 長谷部選手は、次にどういうプレーを選択するかの判断が遅く、ボールを持ちすぎて奪われたり、バックパスが相手へのプレゼントボールになってしまうなど、幸い失点にはつながりませんでしたが実戦カンはまだ戻っていないようでした。 
この試合はアンカーで起用されましたが、適材適所で考えれば井手口選手と共にインサイドハーフで並べた方が良かったように思います。

 山口選手は守備でバランスを取っていたものの、インサイドハーフとして攻撃面では不満が残る出来。もっとも彼の個性やプレースタイルから言って、適材適所のポジションはアンカーではないでしょうか。

        ☆        ☆        ☆

 ハリルホジッチ監督の采配を評価しますと、浅野・井手口両選手を起用するなど、この試合で若手の抜擢が当たったのは良かったのですが、2次予選から3次予選の前半まで、結果が出ないにもかかわらず不調のベテランを、しかも不向きなポジションでいつまでも引っ張って使い続け、もっと早い段階から、過去の実績やその選手がプレーしているクラブの「格」ではなく、合宿中のプレーの良し悪しで誰を起用するか決めていれば、ここまで予選突破に苦しむことはなかったはずです。

また、この試合に勝てた最大の要因は、リードしても自陣に引いてその1点を最後まで守り切ろうとせず、追加点を奪うために勇気をもって攻め続けたことだと思いますが、もし「1点取ったら引いて守れ」という指示をハリル監督が出していなかったら、H&A双方のイラク戦はもっと楽に勝てていたでしょうし、アウェーのオーストラリア戦も勝ち点3が取れていた可能性があります。

この試合でようやく、選手起用もチームの戦い方のチョイスも当たったわけですが、同じ采配ミスをもう二度と繰り返さないで欲しいです。

        ☆        ☆        ☆

 ロシアW杯行きがかかったこの試合、2-0で勝利という結果は順当なものでしたし、試合内容の方も、日本代表選手たちの闘志を前面に出した積極的なプレーが非常に素晴らしかったです。

選手たちの積極性あふれる強気なメンタルが、これまで劣勢だったオーストラリアの選手との1対1で互角以上に戦えた最大の要因だと考えています。

もちろん多くの日本人選手が欧州各国リーグでプレーするようになり、普段からフィジカルコンタクトに強くて体格も大きい白人・黒人プレーヤーと戦っている経験も非常に大きいですね。

ガンバ・セレッソ両クラブの育成組織も素晴らしいと思います。

しかしロシアW杯の本番でも、初戦だろうがグループリーグ突破がかかった最後の試合だろうが決勝戦だろうが、こういう積極的で強気な守備や試合運びができなければ全く意味がありません。

抜かれるのが怖いからと、ドリブルする相手が前へ進んだ分だけズルズル後退したり、相手に追いつかれることを恐れ、前半5分に1点取ったら残りの85分をひたすら守ろうとするような、弱気で消極的なサッカーをやってしまったら、過去のW杯と同じ過ちをもう一度繰り返すことになるでしょう。

 ただこの試合の日本代表は、攻撃面における選手間のコンビネーションにはまだまだ大きな課題を抱えており、もっとレベルの高い相手からゴールを奪うためには、このままではいけません。

井手口選手のゴールに象徴されるように個の能力で勝ったような試合でしたが、こちらより個の能力が高い相手と当った時は、たちまち行き詰ってしまうことになるでしょう。

来月に国内でハイチとのテストマッチが予定されていますが、これからはできるだけ強い相手とテストマッチを、それもアウェーでやりたいところです。

同じCONCACAF(北中米カリブ)から対戦相手を呼ぶなら、プリシッチのような将来有望な若手が出てきて、今やメキシコと互角以上に戦えるようになったアメリカなんかどうでしょうか。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

         2017.8.31 埼玉スタジアム2002

        日本 2 - 0 オーストラリア

      浅野  '41
      井手口 '81


     GK 川島        GK ライアン

     DF 長友        DF ミリガン
        昌子          セインズバリー      
        吉田          スピラノビッチ
        酒井宏
                  MF レッキー
     MF 長谷部        ルオンゴ
        井手口        アーバイン
        山口         (アミニ 86)
                     スミス
     FW 乾           ロギッチ
       (原口 75)      (ケーヒル 70)
        大迫          トロイージ
       (岡崎 87)      (ユリッチ 61)
        浅野
       (久保 89)    FW クルーズ




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■日本代表、ロシアW杯出場決定!!

 昨日、ロシアW杯アジア最終予選の対オーストラリア戦が埼玉スタジアムで行われ、日本代表は2-0で相手をくだし、6大会連続でのロシアW杯行きを決めました。

今回の対戦相手・オーストラリアは、イングランド・ドイツ・中国などでプレーする選手を中心に構成されており、日本との実力差は日本のホームで日本の勝利、アウェーで引き分け程度と見ていました。

ただ、前回イラク戦でのハリルジャパンの試合内容・結果が相当ひどかったので、一時はどうなることかと思いましたが、2-0で順当に勝利してくれたのは本当に良かったです。

ゲーム内容の方は、選手ひとりひとりが闘う気持ちを90分間見せてくれ、積極的にプレーしていたところが非常に良かったですね。

それでは、日本がロシアW杯行きを決めた試合を詳しく分析していきたいと思います。

        ☆        ☆        ☆

 この試合に勝てた要因は3つあると思います。

(1)個の能力で相手を上回ることができた

(2)気持ちで守りに入らなかった

(3)オーストラリアの作戦ミス


 まず(1)について。

日本人選手の多くは、ボールを正確に蹴る・止めるといった足元の技術面では、以前からオーストラリアの選手より上回っていましたが、フィジカルコンタクトの能力で劣っていたために空中戦を含めた1対1で劣勢でした。

しかしこのゲームでは、地上戦でも空中戦でも相手との1対1で互角以上に戦うことができていました。

前半15分すぎから、パスサッカーで攻める相手に押し込まれて我慢する時間帯が長く続きましたが、ピンチにつながりそうなタテパスが入ったところで相手選手に厳しくコンタクトしてミスプレーを誘うことで、決定的なシュートシーンをつくられるところまでは行かせず、後半はフィジカルコンタクトでガチガチ行くプレーをさらに強め、1対1に勝ってボールを奪うシーンが増えていきました。

このレベルの守備は、日本サッカーが世界で戦う時に最低限のベースとなるものです。

闘志を前面に出した、気迫のこもったこのような守備がいつでも出来るのなら、ブラジルW杯で日本代表があのような結果に終わることはなかったはずですし、チームの攻撃戦術がカウンターでもポゼッションでも、そう簡単には失点しないはずなので、ロシアW杯はもちろんそれ以後もずっと継続していって、レベルをどんどん上げていって欲しいです。

 次に(2)についてですが、オーストラリア戦に向けた日本代表の課題として、

「先制しても、その1点を最後まで守り切ろうとせず、相手の攻撃を我慢するところは我慢して、積極的に追加点を狙いに行く」

ということをあげておきました。


(当ブログ過去記事・オーストラリア戦・サウジ戦に臨む日本代表メンバー発表


6月のイラク戦では、先制したあと同点に追いつかれることを極度に恐れ、守備ブロックを自陣深くに下げて相手の攻めを受けて立ってしまい、攻撃ではパスカットを恐れて前線へロングボールをひたすら蹴りこむサッカーをやって自滅したわけですが、この試合の日本代表選手から、弱気で消極的なプレーがほぼ消え去っていました。

相手の攻撃に対し、消極的かつ受け身にならなかったこと。それがこの試合に勝てた最大の要因だったように思います。

前半終了間際に先制ゴールをゲットして、後半の立ち上がりから早く同点に追いつきたいオーストラリアに攻められましたが、そこで気持ちで守りに入り、守備ブロックを必要以上にズルズル下げてしまうのではなく、「攻めの気持ち」を持って相手のボール保持者にどんどん体をぶつけていき、何度もボールを奪い返して攻めにつなげていきました。

欧州や南米・アフリカの選手と比べ、日本人選手のフィジカルコンタクトの弱さがずっと言われてきて、当研究所もその対策をずっと提案してきましたが、身体能力やフィジカルコンタクトのスキル以外に、選手個々の気持ちの持ち方も、1対1におけるフィジカルコンタクトの勝敗に大きく関係しているのではないかと考えていたのですが、前述の(1)で述べたように、この試合で日本人選手がオーストラリアの選手とフィジカル面で互角以上の戦いができたのは、「攻めの気持ち」を持って強気なプレーを90分間続けることができたからではないかと思います。

1対1での戦いでもチーム対チームでの戦いでも相手をビビらずに、攻守両面で「攻めの気持ち」を持ち、90分間積極的なプレーを心掛けることは、サッカーの試合に勝つために最も重要な基礎となります。

 最後の(3)についてですが、オーストラリアの作戦は正直すぎたというか、ちょっとナイーブだったんじゃないでしょうか。

オーストラリアの立場からすれば、最終戦は勝ち点3を取れる確率が高いタイとホームで戦えるわけで、同じく最終戦で日本とサウジが星のつぶし合いをやることが分かっている以上、アウェーの日本戦で勝利を目指すは当然としても、どちらかといえば守備重視で「最悪でも0-0でOK」というサッカーをやれば、ロシアW杯行きの確率は高まったはずです。

ほぼカウンターサッカーしか戦術の引き出しがないハリルジャパンにとっては、そういうサッカーをやられた方が確実に苦しかったと思います。

ところが実際は、オーストラリアが普通に前へ出て攻めてきてくれましたので、ハリルジャパンのリアクションサッカーが上手くハマる状況を、オーストラリア自身がつくってしまったところがありました。

6月のイラク対日本戦のスカウティング・ビデオを見て、ハリルジャパンの試合内容がボロボロだったことや、コンフェデで南米王者のチリに善戦したことも、「普通に攻めればたとえアウェーでも日本に勝てるでしょ」というポステコグロウ監督の判断につながったのかもしれませんが...。

オーストラリアのバック陣は、ウエストハムでプレーしていたルーカス・ニールがいたころの固さが無くなっていますし、3バックの両サイドのスペースを日本に徹底的に突かれ、ゲーム中に修正が遅れたことも敗因となりました。

オーストラリアの3-4-2-1に対し、日本の4-1-2-3は左右ウイングがオーストラリアのアウトサイドをマークしていましたから、大迫選手のワントップに対し、オーストラリアがバック3人で守るような形になって、2対1の数的優位をつくっても、なおセンターバック1枚が遊んでしまっている分だけ、攻撃面で不利だったように思います。

日本の4-1-2-3に対して3-4-2-1をぶつけるのは、少なくともマッチアップ的にはアドバンテージが無かったんじゃないでしょうか。

オーストラリア代表がパスサッカーに転換してまだ2年あまりであり、名波・中田英寿選手はおろか、1990年代前半にラモス瑠偉選手が2列目をやっていたころからパスサッカーをやっている日本代表とは年期が違うわけで、何かを判断するのは時期尚早すぎます。

もしオーストラリアのパスサッカーが高いレベルで完成して日本が現状のままだと、いずれ手も足も出なくなってしまう可能性がありますが、さてどうなりますか。

 というわけでロシアW杯行きを決めたこの試合、日本代表の闘志を前面に出した強気かつ積極的な戦いぶりが、かつてないくらい素晴らしかったですし、それが局面局面での1対1に勝利し、試合全体にも勝つことができた最大の要因だったと思います。

日本代表選手個々の評価は次回にしましょう。

つづく



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