■2017年04月

■旭日旗問題を考える(その1)

 川崎フロンターレのサポーターが韓国・水原市で行われたACLの試合で旭日旗を掲げて応援していたところ、対戦相手である韓国Kリーグの三星ブルーウイングス関係者が旗を没収した上でアジアサッカー連盟(AFC)に抗議し、AFCが川崎への処分を検討しているというニュースがありましたので、今回はこの問題について考えてみます。

 本題に入る前に、まず私の思想上の立ち位置をはっきりとさせておきたいと思います。

私は自由民主主義を支持しており、ナチスドイツや現在の中国・北朝鮮のような独裁体制は支持していません。

よって国家あるいは私的な集団(企業や財団法人など)が、市民から人権(思想・言論・表現の自由)を奪ったり抑圧したりすることに断固反対ですし、日をあらためてくわしく述べたいと思いますが、現代のドイツに代表される「戦う民主主義」は支持していません。

たとえ自分の感情として不快に思ったとしても自分とは違う意見を持つ人を尊重し、同じ一つの社会の中において異なったさまざまな意見の共存を認め、話し合いで問題を解決していく。

これが民主的で成熟した市民社会における「良識ある大人の態度」であると信じています。

これから、この大原則にのっとって自らの考えを述べていきます。 

 まず旭日旗についての正確な理解ですが、日の丸あるいは旭日のデザインは、1930年代に成立した日本の軍国主義政府が考案したものではなくて、太陽を神様と考える日本人が大昔から使ってきたものです。

稲作をなりわいとする大多数の日本人にとって、お日さまが照ってくれないとお米ができず生きていかれませんから、太陽がサンサンと輝くことは「おめでたい」ことであり、だから古来より日本人に好まれるデザインになったわけです。

日中40℃を超える灼熱の砂漠で暮らすアラブ人にとっては、月が出る夜こそ「やすらぎ」であり、多くのアラブ諸国で月が国旗に描かれていることの逆と考えることもできます。

いま「差別」という言葉を、自分の感情に基づいたふわっとしたイメージで乱用する人が多い気がしますが、差別の正確な定義を辞典等で調べると、「特定の人種・民族を区別して、不当に扱うこと」などと書かれており、旭日(あるいは月)のデザインのどこにも「差別」を意味するものはありません。

19世紀半ばに鎖国政策をやめた日本が近代国家として生まれ変わったとき、国際社会とお付き合いしていくうえで国旗・軍艦旗が必要となりました。

軍艦旗は、国際法で認められた権利と義務を負う正規の軍艦と海賊船とを区別するために掲げられるものであり、特別に軍艦旗を定めず、国旗を軍艦旗と兼用している国があることからもわかるように「第二の国旗」とも言える重要なものです。

明治政府は、昔からあった旭日のデザインを軍艦旗に採用しただけであって、旭日は軍の旗専用に考案されたデザインでも、1930年代に成立した日本の軍国主義政府がつくったデザインでもないという客観的事実を知っていなければ、この問題を正しく判断することができません。

今、ガンバ大阪のサポーターがナチス親衛隊(SS)のマークと酷似した旗を掲げたことで問題になっていますが、ルーン文字自体は大昔からあったものの、SSのマークはナチス党が出来てから考案されたものであって、この問題と旭日のデザインを混同するのは正しくありません。(この問題も日を改めて述べます)

そして第二次世界大戦の後、日本は民主主義の国として再スタートを切って現在にいたるわけですが、明治時代と同じように国旗を日の丸、軍艦旗(自衛艦旗)を旭日旗と定め、それを認められた上で国際社会に復帰することになりました。

それ以降、現在問題している韓国を含め、公式な外交ルートを通じて「旭日旗を軍艦旗にするなら日本との国交を断絶する」みたいな抗議を外国政府から受けた事実はないはずです。

 実際サッカーの日本代表戦においても、遅くとも1990年代半ばごろから国立のゴール裏スタンドにおいて旭日旗が振られていたのを見ましたし、1998年フランスW杯アジア最終予選、ソウルのチャムシル競技場で行われた日韓戦でも旭日旗をかかげて応援する人がいました。

もし韓国の人々にとって本当に旭日旗が問題であったのなら、今よりも日本による植民地統治の記憶が色濃く残っていたこの時に大きな国際問題になっていたはずですが、そうではありませんでした。

ではどうして今大きな問題になっているのかと言えば、ごく最近ひとりの韓国人のついた嘘をきっかけにして、韓国側が旭日旗を意図的に政治問題にしたからです。

私は、韓国が旭日旗を政治問題化する過程をリアルタイムで見てきましたが、そのきっかけはカタールで開催された2011年アジアカップの準決勝、日本対韓国戦でした。

もともと韓国社会には、日本人を猿と呼んで侮辱するような差別思想が広く存在しています。

黒人選手を猿に見立ててバナナを投げつける行為ほど、ひどい人種差別はありませんが、2010年にソウルで行われた“親善”試合においても、韓国のサポーターが日本側サポーターに向けてバナナが書かれたフラッグを掲げたのです。

その旗にはハングルで「ご飯食べた?」と書かれており、その韓国人は「日本人は猿だから日本人のご飯はバナナである」とでも主張したかったのでしょう。

バナナ

その翌年、有名な例の事件が起こります。

2011年アジアカップ準決勝において、日本から先制ゴールをあげた韓国代表のキ・ソンヨンが、スタンドに向かって猿のマネをするゴールパフォーマンスをしたのです。

monKI
この行為が深刻な人種差別に当たると理解しているパク・チソンが制止しています。

サッカー選手が公然と人種差別パフォーマンスをやったわけですから試合後に大騒ぎとなりましたが、キは、会場で日本人が旭日旗をかかげていたからやったのだと弁解します。

私も試合映像を何度も確認しましたが、ドーハのスタジアムに旭日旗は見当たりませんでしたし、たとえ会場に旭日旗があったとしても、その旗に人種差別的な意味合いは何らこめられていないことは前述したとおりで、それをもってキ・ソンヨンが日本人に対して人種差別パフォーマンスをしたという重い罪を帳消しにしてよい理由にはなりません。

するとキは、「自分がプレーするスコットランドリーグで差別されたから欧米人に向けてやった」と前言をひるがえし、イギリスのメディアから自分の罪を他人になすりつける卑怯な行為であると袋叩きにあったのですが、日本サッカー協会がAFCにキの処分を厳しく求めずウヤムヤにしてしまったことで、何のペナルティも受けなかったキは事件のほとぼりが醒めたその翌年、日本人が旭日旗をかかげていたから人種差別パフォをやったのだと再び自らの真意を告白することになります。

(日本サッカー協会が、この問題をウヤムヤに処理してしまったことがいまだに理解できません)

あやふやな言い訳が二転三転していることからもわかるように、キの主張はまったく信頼できないものでしたが、「憲法の上に国民情緒が存在する」と言われる韓国の国民大多数の民族主義感情をかぎりなく高揚させ、それまでサッカーの日韓戦で振られても特に問題にしていなかった旭日旗を「戦犯旗」と呼ぶようになり、2012年ロンドンオリンピックに出場した体操の内村航平選手のユニホームを韓国マスコミが問題視してジャック・ロゲIOC会長に訴えたように、「太陽から光線が出るデザイン」は差別の象徴であるなどという、何ら事実にもとづかない感情論でもって突然この世界から消滅させるべき対象とされるようになったのです。

 この問題に関して、一部の日本人記者から、FIFAやAFCの規約が禁じている「差別」や「挑発・攻撃的行為」に当たるから、旭日がデザインされた旗や横断幕をかかげてはいけないのだという主張が出ています。

しかし、「差別」や「挑発・攻撃的行為」という言葉の定義はあいまいであり、その言葉を解釈する人によってどこまでがそのような行為に当たるか、大きなズレが生じてしまいます。

民放のあるアナウンサーが、「差別された人が差別されたと感じたら、それは差別なんだ」と主張していましたが、それは日本を含む近代以降の市民社会が成立する大前提、特に「裁判を受ける権利」(日本国憲法第32条)「弁護権」(同第34条ならびに37条3項)を無視した非常に危険な考え方だと思います。

法学の知識がない人にわかりやすく説明すれば、「差別された人が差別と感じれば、それが差別」という主張がもし正しければ、検察官(訴える側の人)が「裁判官、私を殺したのはコイツです」と主張したら、裁判官が「わかりました。被告(訴えられた人)に死刑を言い渡します」みたいなトンデモ裁判が、公然とまかり通ってしまうことになります。

同様に、Aという人が偶然すれ違ったBという人から「おはよう」とあいさつされて、Aさんが「おはようと声をかけるなんてひどい差別だ。慰謝料として10億円支払え」という訴訟を起こし、裁判官が「差別された方が差別と言えば、それは差別なんだ」と言って、Bさんに「Aさんに10億円を支払うように」と命じることも可能になってしまいます。

これは判決を下すための判断を、訴える側の人(原告や検察官)に丸投げしているという意味において、訴える側の人と裁判官が事実上同一人物となっており、一種の罪刑専断主義だと思います。

しかし、こんなことがまかり通るならその市民社会は大混乱に陥り、「不当な判決を下された」と感じた人が自力救済という手段に出て自分を訴えた人に復讐し、こうした行為が連鎖していけば「万人が万人に対して闘争」するような修羅の世界となり、健全な市民社会は完全に崩壊してしまうことでしょう。

日韓間の歴史問題ではいつもそうなんですが、韓国の人々は「自分は差別された、かわいそうな被害者なんだ」と主張して、本来公平中立に問題を裁くべき国際機関の人々を自分たちの味方に抱き込み、原告=韓国人、裁判官=韓国人に肩入れする韓国人の代理人であり実質的に原告と同一人物、被告=日本人という構図をつくって、原告であり裁判官でもある「韓国人」が罪刑専断主義的に被告である日本人を一方的に裁くというシステムを構築しようとすることが本当に多いです。

それに成功すれば、原告であり裁判官でもある「韓国人」が、被告である日本人に好きなだけ無実の罪を着せ、いくらでも有罪判決を下せるようになります。

キ・ソンヨンが「旭日旗がスタジアムにあったから」という嘘をついて、FIFAやAFCという本来どの国に対しても公平中立であるべき国際機関の同情を誘い、自らの味方に引き込むことによって、日本人に差別主義者という無実の罪を着せ、同時に日本人に対する人種差別行為を帳消しにしようとしたことがその典型と言えます。

こういう卑怯な手段が堂々と通用しているのだとしたら、韓国社会はまさしく「ヘル朝鮮」としか言いようがありません。

原告あるいは検察官など訴えた側の人の主張が事実かどうか検証されることなくそのまま判決になってしまうと、人は誰でも嘘をつく能力がある以上、他人に無実の罪を着せることがいくらでも可能になってしまいますからそれを防止するために、市民が法に基づいた公正な裁判を受けたり、弁護士を呼んで自らの立場を弁護する権利が、憲法によって認められているわけです。

「差別」された人は正義であり、法廷で「多少の」嘘は許されると言うのであれば、嘘をついている時点で「正義の人」という前提が崩壊しているのであって、そうした考え方は、
社会に対する甘え以外のなにものでもありません。

もちろん韓国や中国の人々が旭日旗を軍国主義の象徴とみなし嫌悪する感情を持っていることは知っていますが、これまで述べてきたように「韓国の人が差別や挑発と感じたら、旭日がデザインされた旗や横断幕を使うのは差別であり挑発なんだ」という考え方は適切ではありません。

ある主張が正しいかどうかを検証するときに、「逆もまた真なり」が成立するか考えてみるとわかりやすい場合があります。

「差別された人が差別されたと感じたら、それは差別なんだ」という主張がもし正しいのであれば、「竹島を占拠し対馬さえ自国領土だと主張する韓国の国旗・太極旗は日本人に対する挑発であり差別である」と、ある日本人が感じ抗議すれば、FIFAやAFC主管の大会で韓国の人々が太極旗を振ることを禁止しなくてはいけないことになります。

それを韓国の人が受け入れなければなりません。

「韓国人が差別されたと感じたらそれは差別だが、日本人が差別だと感じてもそれだけでは差別とはいえない」というのであればそれこそ人種差別以外の何物でもないのであって、それを「韓国人は正義だから」といって正当化するのは、
単なる甘えです。

日の丸が侵略の象徴であると言うなら、1950年に起こった朝鮮戦争において韓国を侵略した中国の国旗である五星紅旗をかかげることも韓国の人々にとって十分「差別であり挑発的」であるはずですが、中国側に抗議したという話は聞いたことがありません。

「日本人が朝鮮半島を侵略するのは許せないが、中国人がやるのは仕方ない」というのであれば、これも一種の人種差別だと思います。

 それではどうするべきなのかですが、

1.まずAFCやFIFAの規約が定める「差別」や「挑発・攻撃的行為」の正確な定義をAFCに確認し、正確な回答をもらうこと

2.旭日のデザインは古来より日本に存在しており、政府や軍だけでなく民間でも広く使われているものであって、それ自体にAFCやFIFAの規約にある差別の意味合いはまったく無いこと、よってフロンターレ側に無観客試合等のペナルティを課すことは適切でないこと

3.韓国国民に旭日デザインに対する悪いイメージがあることは承知しているが、「差別の象徴」や「挑発行為」に当たるというのは誤解であり、韓国政府からも公式な外交ルートを通じて、同様の理由で旭日旗の使用を禁止せよという抗議が日本政府に寄せられた事実もない事、一部の韓国国民の一方的な意見だけを根拠として旭日デザインの使用を禁ずることは、日本が民主主義国家として国民に保障している基本的人権である「表現の自由」を損なうこととなり、日本側として受け入れられないこと

4.よって、日本国内や日韓以外の第三国で行われるFIFAやAFC主催の大会で、これまで通りサポーターが旭日旗を使用することを認めて欲しいこと、ただし韓国側に配慮して、韓国内で行われる試合においては日本人サポーターが旭日旗の使用を自粛するよう要請する用意があること

AFCとすでに話し合いの場を持っているであろう日本サッカー協会やフロンターレに主張してもらいたいことは以上の4点です。

 また日本代表やJリーグクラブを応援するために外国へ出かけるサポーターの皆さんに注意して欲しいことは、アジアは世界で最も民主主義社会への発展が遅れた地域の一つであり、日本は数少ない先進的な民主社会を持った国だということです。

最近逮捕されたパク・クネ大統領の父親であるパク・チョンヒやチョン・ドファンが代表的な独裁者の例ですが、韓国も1980年代後半までは軍の最高実力者が大統領となって国民を弾圧する軍国主義の国だったわけで、それがようやく民主化されたのが1988年のことです。民主化されてたった30年しか経っていません。

そのため韓国は民主社会への発展がまだまだ遅れており、多様な意見の共存を認めるという民主主義に欠かせない価値観への理解が不足しています。

韓国政府が歴史教科書を国定化して国民に政府の歴史観を押し付けたり、政府や韓国民大多数とは異なる意見を持つ国民を、「亡くなった人への名誉棄損」という名目で訴え、数百万円単位の罰金を科すことで言論・思想弾圧をしているとして国際社会から批判されている国でもあります。

日韓間の歴史問題とは、韓国社会が考える「たった一つの正しい歴史」を外国である日本国内や他の国際社会にも適用しようとして、日本側とトラブルになっている問題であるとも言えます。

独裁国家である中国や北朝鮮はこれよりもっと状況はひどくなります。

日本では私たち市民に対して当たり前のように保障されている基本的人権が認められていない国の方がアジアでは圧倒的に多く、外国に対しては日本の行政権は及びません。

日本人サポーターが外国へ行くということは、自分の命や財産をどう扱うか、その国の政府に全面的にゆだねるということであり、たとえまったくの言いがかりだとしても、外国政府から「お前は犯罪をおかしたから有罪」という判決を受けても、基本的に日本政府は助けてあげることができません。

ですから、米英独仏のような先進的な民主国家は別としても、中国や北朝鮮のような独裁体制を敷く国はもちろん、韓国のような発展の遅れた民主社会を持つ外国で日本国内のように自由に振る舞うことは危険が伴いますし、自分がどういう行動をとればより安全なのかを慎重に考えなければいけません。

韓国・中国・北朝鮮の三カ国については、旭日旗どころか日の丸を振っても身の安全が保障されるとは限りませんから、日本人サポーターが自主的に、そうした行動を差し控えるという判断があっても良いと思います。

日本であれ外国であれ、特定の職業や人種・民族の人たちに対する差別発言は絶対にアウトですし、良識と節度を持ってスポーツ観戦を楽しんで欲しいです。

 ただ、自分が応援するクラブを一番近いところでサポートしたいという気持ちは理解できるのですが、そもそもこの時期に韓国へ旅行することが、適切とは思えません。

現在、北朝鮮と韓国・アメリカは戦争の一歩手前の状況にあります。

フロンターレの試合のあった水原市を含めたソウル首都圏はもちろん、韓国全土が北朝鮮軍の長距離砲や弾道ミサイルの射程圏内にあるのであり、もし戦争がはじまったら韓国全域が火の海となって、戦争に巻き込まれたあなたが命を落としてしまう可能性があります。

日本政府が、国民に対して韓国への渡航延期勧告を出さないのは怠慢以外の何物でもないと思うのですが、この時期に韓国に旅行するのは危険極まりない行為です。家族やお友達にも良く教えてあげてください。

旭日旗の問題が象徴的なのですが、韓国の人々には、日本人の文化や価値観の違いを尊重し、大切にもてなそうなどという気はサラサラ無く、自分たちの考える「正義」を上から目線で一方的に日本人に押しつけてくるだけですから、そういう国に行くこと自体、疑問に思います。

現在、中国では韓国ボイコットが国民レベルで行われており、韓国の観光地から中国人旅行客の姿がほとんど消えているそうです。

その上日本人観光客までがいなくなれば、韓国の観光産業は致命的打撃を受けるでしょうから、日本人が韓国へ旅行に行かないことで、韓国人の「正義」を日本人に一方的に押しつけて断罪するような不当な行為に対する強力な「抗議」の意思表示となります。

もし韓国側がこれ以上、旭日旗の問題を騒ぎ立てるなら、この問題のきっかけになった、キ・ソンヨンの日本人に対する人種差別パフォーマンスをいくらでも蒸し返して、FIFAやAFCに処分を求めたら良いのではないでしょうか。いくらでも証拠映像は残っていますから。

 それにしても、私たち日本の市民がサッカーを純粋にスポーツとして楽しめる日はいつ来るのでしょうか?本当にウンザリします。

つづく



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■アジア8枠という“堕落”(その2)

前回のつづき

 なんでFIFAが2026年からW杯出場国を48に拡大し、アジアを「優遇」して8もの出場枠を割り振ったのかと言えば、ウン十億円単位の移籍金をポンと出して欧州四大リーグから選手を次々に爆買いするような中国マネーに目がくらんだからではないでしょうか。

「アジア枠を8に拡大すれば中国でもW杯に出場できるだろうから、巨額の中国マネーがサッカー界に落ちるだろうし、13億人のマーケットにサッカーを浸透させられる。今から10年後には人口で中国を追い抜くと言われているインドが強くなってW杯に出場してくれたら、もっとカネがもうかる!」

これが今のFIFAのホンネだろうと思います。

FIFAは2年連続で赤字決算が続いており、だから「カネの亡者」になっているのでしょうが、それは自浄能力を欠いた幹部たちの相次ぐ汚職が原因です。

その穴埋めのために、W杯で行われるサッカーの質を落してでも出場国を増やし、サッカーは弱いけどカネをもっている国が予選を突破しやすくなるようにしようというのであれば、クォリティの低いゲームをたくさん見せられる私たちサッカーファンが最大の犠牲者となるわけで、たまったものではありません。

2026年大会で、片方のチームが5バックをゴール前にベタ引きして90分のあいだ専守防衛に努めたにも関わらず、0-7や0-8で惨敗みたいな試合が続出すれば、W杯の権威は失われるでしょう。

どんなお金持ちでも1日に使える時間は24時間しかありません。よってサッカーのようなスポーツは、他の娯楽と消費者の「可処分時間」を奪い合う競争をしているわけです。

W杯の質が落ちてつまらないゲームが続出すれば、目の肥えた消費者はUEFAチャンピオンズリーグなど良質のサッカーコンテンツに逃げるでしょうし、あるいはWBCで盛り上がったばかりの野球やバスケットボール、映画やオンラインゲームなど他の娯楽へ向かうかもしれません。

そうなればFIFAはW杯の放映権料やスポンサー料を高く売りつけることができなくなりますから、めぐりめぐってFIFAの幹部たち自身のクビが締まることになります。

参加国が48にも拡大すれば、一つの国でW杯を開催する場合にそれだけ経費負担が重くなりますし、W杯の人気低下によって放映権や広告を売ることで得られる収入も減少ということになれば、まさにFIFAのオウンゴールであり、「これって誰得?」という話です。

 中国の「爆買いマネー」を当てにして2026年W杯の出場国を48に増やしたのだとして、これから9年も時間があるのにFIFAの思惑通りになるでしょうか?

FIFAの前会長であったジョセフ・ブラッターは、アフリカ諸国から組織票をもらうことで会長選挙に勝利できたので、その見返りとして2010年W杯の開催権をアフリカに与えたと言われています。

そして2004年3月のFIFA会議で実際に2010年W杯の開催地が南アフリカに決まるのですが、有色人種への差別政策であるアパルトヘイトを撤廃し、歴史上はじめて全人種参加の民主的な選挙を行い、ネルソン・マンデラ氏を中心に国づくりを再スタートさせた南アフリカに対する国際社会からのイメージが非常に良かったこと、金やプラチナ・ダイヤモンドなど豊富な地下資源に恵まれた南アフリカがアフリカ大陸随一の経済大国であったことも、開催地決定に大きく関係していました。

2014年W杯がブラジルに決まったのは2007年4月ですが、これも当時のブラッター会長が2014年大会を南米大陸でやるとあらかじめ決めていて、ブラジル以外の南米諸国が開催地立候補を取り下げたため、無投票で決まりました。

そして2010年に、2018年W杯開催国がロシアに、2022年大会がカタールに決まります。

2010年大会が南アフリカ・2014年がブラジル・2018年ロシア、世界経済について良く勉強している人ならこの組み合わせにピンとくるのではないでしょうか。

そう“BRICS”です。

BRICSとは、B=Brazil R=Russia I=India C=China S=South Africaの頭文字をとったもので、世界最大の投資銀行の一つゴールドマン・サックスが最初に提唱した経済用語です。

2003年ごろから始まり2007年いっぱいまで続いた世界経済の拡大局面でこの5つの新興国は好景気に沸き、急速な経済成長をとげたことで世界的に注目を浴びたわけですが、2010年W杯が南アフリカに、2014年W杯がブラジルに決まったのは、ちょうどこの期間です。

2018年W杯開催国がロシアに、2022年大会がカタールに決まったのは、2008年にいわゆるリーマンショックが起こって世界経済が大ダメージを負った直後の2010年でしたが、まだこのときは原油相場が高くて、ロシアやカタールのような産油国に好景気の余韻が残っていた時期です。

で、何が言いたいかというと、FIFAはその時その時の「景気が良くてカネを持っている国」につられる傾向が強いということ。

ところが4年というW杯の開催サイクルよりも速く世界経済というものは動いていくので、FIFAの思惑が大ハズレになることもしばしばなんですね。

南アフリカ大会は何とか乗り切れましたが、リーマンショック以降、原油や鉄鉱石・大豆などの価格が下落してその輸出に頼るブラジル経済は一気に不況へ。

コンフェデをやったW杯の1年前から本番直前までブラジル全土でW杯反対の大規模デモが何度も発生したことは皆さんご存知だとは思いますが、それは「不況で生活が苦しいのに何でカネのかかるW杯なんてやるんだ? そんな予算がブラジル政府にあるなら国民の福祉に回せ」という怒りが原因でした。

スタジアム建設もなかなか進まず、ブラジルW杯はセレソンの成績と合わせてボロボロの大会になってしまいましたね。

そして今現在は原油・天然ガス価格が急落し、その輸出に頼るロシアが不況で苦しんでおり、政府もお金が無くてこちらもカツカツの状態です。

ロシアは事実上の独裁国家なので、W杯反対のデモが起こりそうになれば政府が力づくで押さえつけるとは思いますが、ロシアの原油マネーにつられたFIFAの思惑が外れて、ロシアの副首相が「FIFAに払う2018年W杯のTV放映権料が高すぎる。何とかしてくれ」と、今になってクレームをつけているのはそういう事情があってのことです。

FIFAは2026年W杯で、「選手爆買い」の中国マネーを当てにしているようです。

昨年に外国人選手の獲得に費やした額が円換算で520億だとか、カルロス・テベス一人のサラリーが2年間で94億円だとか言われていますが、サッカーのビジネスとして将来にわたって持続可能なのか疑問に感じます。

どう考えても、中国クラブのサポーターから得られる入場料収入やレプリカユニホームなどのグッズ売上から、爆買いに必要な資金がまかなえているとは思えません。

ではそんな巨額のカネがいったいどこから出てきたのかといえば、やはり中国で現在進行中の「不動産バブル」のおかげでしょう。

中国スーパーリーグ1部16チームのうち、ざっとあげただけでも広州恒大・広州富力・河北華夏・河南建業・石家荘永昌・吉林亜泰・杭州緑城などなど、マンションの建設販売が代表例ですが親会社がなんらかの形で不動産業と関係しているクラブが少なくありません。

中国経済において、不動産業は金融や製鉄・セメント製造・海運などあらゆる業界と密接につながっていますから、もし不動産バブルが崩壊すれば、北京国安や上海上港も含め、ほぼすべてのクラブが壊滅的打撃を受けるのは避けられないと思います。

中国の不動産バブルが崩壊するのかしないのか、するとすればそれはいつなのか、それは誰にもわかりませんが、FIFAの思惑通りに2026年W杯開催の時点でも中国の不動産バブルを資金源とする爆買いは持続可能なのか、疑問に思います。

かつてFC東京がワンチョペを、C大阪がフォルランを獲得して大失敗したことがありましたが、Jリーグでも中国の金満クラブのマネをして大金を払って世界から大物選手を連れて来ようという動きがありますが、それはやめた方が賢明だと思います。

同じお金をかけるなら日本人選手の育成にかけるべきで、Jリーグ各クラブはあくまでも地に足をつけて、長期にわたって持続可能な成長を目指すべきです。

ACLで中国クラブと対戦すれば、日本人選手が欧州四大リーグに移籍しなくてもオスカルやフッキ・パウリーニョみたいなワールドクラスの選手と戦って自分の能力を高めることができるわけですから、そういう形でチャイナマネーを利用すれば十分でしょう。

 それではまとめですが、中国の不動産バブルマネーにつられたFIFAが2026年W杯の参加国を48に拡大したものの、アジア予選が簡単になりすぎて日本代表の強化が難しくなり、予選も本大会もつまらないゲームが増加して、サッカーコンテンツとしての代表戦の魅力が低下してしまったということになれば、われわれサポーターにとって最悪の結末となります。

FIFAは汚職がらみで辞任したブラッター前会長に代わってインファンティーノ氏率いる新体制となったばかりですが、新しくなったFIFA技術委員会がオフサイドを廃止しようと提案して世界中から袋叩きにあったり、サッカーのクォリティ低下やグループリーグを3チームで戦うことによって不公平が生じるなど非常に問題が多い、W杯参加国の急拡大を強行しようとするなど、しょっぱなから迷走しているように見えます。

サッカーを良く知らない素人(本職は弁護士だとか)の方が、世界のサッカーをメチャクチャにしてしまったなんてことにならなければ良いのですが...。

<了>



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■アジア8枠という“堕落”(その1)

 2026年W杯の出場国が48に拡大される予定になっていることは皆さんすでにご存知のことと思いますが、先月30日国際サッカー連盟(FIFA)が各大陸ごとの出場枠を発表しました。

それによりますと、ヨーロッパが13から16に、アフリカが5から9、南米が4.5から6、北中米カリブ海が3.5から6、オセアニアが0.5から1にそれぞれ拡大される予定です。

問題のアジア枠なんですが、現在の4.5から8に拡大されることになっています。これで46ヵ国。

残り2の出場国を決めるため、ヨーロッパを除く各大陸から
1ヵ国づつと、W杯開催国を出した大陸からの1ヵ国を加えた、計6ヵ国で争われるプレーオフも実施されるので、アジアから最大9ヵ国が2026年W杯に出られる可能性があり、この案は5月のFIFA理事会で最終決定される予定となっています。

 W杯出場枠を48に拡大するという案について当研究所は反対というのは以前お話した通りですが、アジア枠が現行のほぼ倍となる8というのは、アジア各国のブラジルW杯における成績を踏まえてみれば、かなり無理があるように思います。

現在行われているロシアW杯アジア3次予選の成績に当てはめれば、A・B組それぞれ4位のシリアとUAEにまで無条件で出場権が与えられることになるわけです。

さらにアジアの8枠を東アジアと西アジアで4づつ分配しようというトンデモナイ話まで出ています。

現時点における東アジア諸国のFIFAランキングをもとに、
日本・オーストラリア・韓国・中国をシード国とし、2026年W杯アジア最終予選・東アジア地区A組の組み合わせをシミュレーションしてみると、例えばこんな感じに。


A組

日本 香港 ベトナム カンボジア ラオス


この予選で1位になったチームがW杯出場権獲得なんて、堕落以外の何物でもありません!

今から10年後に、日本以外の4ヵ国が劇的に強くなってサウジやオーストラリアのレベルになったり、W杯でグループリーグを突破できるぐらいの実力をつける可能性がゼロとは言いませんが、難しいと思います。

クラブと違って代表チームは実質的な活動日数が限られており、W杯予選やアジアカップのような真剣勝負の公式戦は、数少ない貴重なチーム強化の場となっています。

現在行われている予選も、サウジやオーストラリア・UAEのような世界と戦う上で最低限のレベルの相手と、負ければW杯に行けなくなる真剣勝負を繰り広げていることが、日本人選手の成長や代表チームの強化にとってプラスになっていることは間違いありません。

W杯の直前に欧州や南米の強豪国とテストマッチをやればいいじゃないかと言う人がいるかもしれませんが、テストマッチはたとえ負けてもW杯に行けなくなるという実際の痛みを伴わないので、日本人選手はほとんどプレッシャーを感じることなく、自分の実力をほぼ100%発揮してのびのびプレーすることができます。

逆に欧州や南米の強豪国の選手たちにとっても、テストマッチに勝ったところでご褒美としてW杯決勝トーナメントへの出場権がもらえるわけではありませんから、「ケガをしないように適当にプレーしておくか」となりやすく、テストマッチでいくら好成績を残しても真剣勝負であるW杯の本番の成績とはあまり関係がありません。

それは予選突破後のテストマッチで怖いもの知らずでプレーしてオランダと引き分け、ベルギーにアウェーで勝利して大会前に「ベスト8も狙える」と言われたザックジャパンが、ブラジルW杯では「好成績を残さなければ」という精神的プレッシャーのためか各選手が金縛りにあったように動きが重く、先にナーバスな状態から脱して自分たち本来のプレーができるようになったコートジボアールに初戦で逆転負けを喫し、結局グループリーグ敗退に終わってしまったという事実からも明らかです。

2018年からUEFAネーションズリーグが始まる予定であったり、他大陸の国とのテストマッチは最低2試合組まなければ実施できないなどといった縛りができるなど、日本が欧州や南米の強豪国とテストマッチを組むことが年々難しくなっている事情もあります。

ですから日本代表のチーム強化にとって、W杯アジア予選が簡単になりすぎるというのは非常に問題なのです。エンターテインメントとしての面白さ・スポーツファンにとって魅力あるコンテンツという視点からもどうなんですか、これ。

ましてや東アジアと西アジアで4つづつ出場枠を分け合うなんて、とんでもありません!

体の線が細い東アジア人(モンゴロイド)は、体格がゴツい白人や黒人と比べてフィジカルコンタクトに一番弱い傾向があります。

最近はだいぶ改善されてきましたが、足元の細かい技術がそこそこある東南アジアのチームが、これまでなぜW杯出場権やアジアカップの優勝トロフィーが取れなかったのかと言えば、身長が低く(今から10年ぐらい前まではチームの平均身長165㎝とかザラだった)フィジカルコンタクト能力が日本やオーストラリア・韓国・中東各国などと比べて絶望的に低かったからです。

W杯出場権のアジア枠を東西に分け、日本が東・東南アジアのチームとだけ予選をやることになれば、相手のフィジカルコンタクト能力が弱すぎて、日本人選手個々の強化につながらず、W杯の本番で欧州や南米・アフリカのチームと対戦したときに、相手のフィジカルの強さに対応できなくなる恐れがあります。

当研究所としては日本代表の強化にとって何が一番大事かを考えて、W杯出場枠を48に拡大することも、アジア枠を東西で4づつに分け合うことも大反対なんですが、もしアジアの出場枠が8になった場合でも、イラン(ほとんどが白人)やアラブ諸国(白人・黒人とその混血の混成)などフィジカルコンタクトに強い中東のチームと日本が対戦できるようなW杯アジア予選のフォーマットに、せめてなって欲しいものです。

日本サッカー協会からは、アジア8枠はもろ手を挙げて大歓迎みたいな話しか聞こえてこないのですが、何が日本サッカーの進歩・発展のために大切なのか、見失っているように見えます。

ところで、なぜFIFAはW杯の出場国を急拡大したり、アジアを超優遇して8も出場枠をくれたのでしょうか?

次回はそのあたりをツッコんで考えてみましょう。

つづく



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■日本代表、不安の残る大勝劇(その3)

前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、まず香川選手。
ゴール前で久保選手のクロスを受け、シュートフェイントで相手2人を滑らせてから冷静に先制ゴールを決めてくれました。久保選手がクロスボールを蹴る態勢に入った瞬間、もう数歩ゴールから遠ざかってポジショニングすることで自分の前にシュートを打つためのスペースを空けておけば、後ろに戻りながらクロスを受ける必要が無くなるので、もっと楽にゴールできたのではないでしょうか。
ショートパスのコンビネーションからゴール前で山口選手にボールを落してダイレクトシュートを導き出すなど、チャンスメークの面でもまずまず良かったと思います。

当研究所が4-2-3-1のトップ下に求めることは、

(1)ゲームの流れを的確に読み、チームがゴールを必要としているときは中盤で攻撃を組み立てるための前方へのパスを出し、相手に攻められてチームが苦しいときは、味方と協力しながらトップ下が中心となってボールをキープすることでチームに一息つかせるような、いわゆる「ゲームメーク」の仕事。

(2)攻撃の最終局面で、味方のゴールにつながるラストパスを出したり、自分でゴールをあげたりする、いわゆる「結果を出すプレー」。

香川選手の場合、どちらか片方ができるともう一方ができなくなってしまうことが多く、このタイ戦は(2)はできていたのですが、(1)についてはまだまだ課題が多いです。

味方が良い形でボールを奪い返した瞬間、相手の守備態勢が整っておらず、さぁゴールするためにこれから攻め込むぞという局面で、トップ下がボールをキープするためのヨコパス・バックパスをして落ち着かせてしまったのでは、チームから攻撃の勢いがそがれてしまいますし、逆に、中盤でパスがつながらず反撃の手段が見つからないため、チームが敵から波状攻撃を受けてアップアップの状態なのに、トップ下がダブルボランチから遠く離れたゴール前で張っていて、味方からのパスを待っているというのも大きな問題です。

香川選手は、ゲームの流れを的確に読み、今(1)と(2)のどちらの仕事をやるべきなのかを正しく選択するというところに課題を抱えています。(1)(2)を両方そつなくこなすのは大変だとは思いますが、名波・中田英・中村俊・遠藤・本田など代表の歴代ゲームメーカーが乗り越えてきた課題であり、それが日本代表のトップ下、10番のポジションの役割ですのでがんばって欲しいです。同じ課題は清武選手も抱えています。

岡崎選手の正確なヘッドからのゴールは素晴らしかったですね。
ただし、相手バックのレベルが格段に高いプレミアだと、空中戦で競り負けてしまって、あのシュートをワクの中に入れさせてもらえないことがほとんどです。それを解決しないとW杯本大会で代表のセンターFWは任せられません。足のシュート精度が低すぎることも長年の課題です。

久保選手は、右サイドからのクロスで香川・岡崎両選手のゴールをアシストし、スローインを受けてからの正確なミドルシュートで苦戦するチームを助ける、1ゴール2アシストの大車輪の働きは評価が高いです。ダブルタッチで相手を抜くドリブル突破という武器は、ウイングというポジションでこそ威力を発揮しますから、チャンスがあったらチャレンジして欲しいです。
ハリルジャパンの守備戦術にも問題はありますが、相手ボールのときは久保・原口の両ウイングがダブルボランチのラインまで下がって、DF4人MF4人のコンパクトな守備ブロックをつくって守っていたら、あれほどタイに攻められることもなかったと思います。

川島選手は、相手がボールを蹴るギリギリの瞬間まで我慢してからの横っ飛びで見事なPKストップ。タイのワク内シュートもビッグセーブで何本も防いで守備面で最大の貢献。
PKのときに相手が蹴るだいぶ前にヤマをかけて飛び、それを見切った相手にパネンカで逆を取られ失点してしまうようなGKとどっちが実力が上か、プロの監督なら練習中のプレーを見たらわかると思うのですが、ハリルホジッチさんの選手を見る目を疑ってしまいます。
「守備力に自信がないからゴール数で貢献しようというセンターバックを使ってくれる監督さんはまずいない」と以前書きましたが、吉田選手は「守備力を上げるためならどんな犠牲も払う」という努力をしたからこそクラブでレギュラーを取れたわけです。浦和の西川選手もGKとしての守備力向上という課題から逃げてはいけないと思います。

吉田選手は、コーナーキックからの見事なヘディングで久々のゴールをあげてくれましたが、後半に自分の真上に上がったボールから目を離してしまったことでボールのゆくえを見失い、危険なシュートを浴びてしまったことは反省点です。

清武選手は、コーナーキックから吉田選手のゴールをアシスト。セットプレーから正確なキックが蹴れる数少ない選手として貴重です。チームがボールをキープできない状態が続き苦しかったところで、彼が適度にボールをキープすることでタイに行っていたゲームの流れを引き戻したことも評価できます。
ただ、返す返すも日本に帰って来てしまったことが残念。海外でプレーするための障害をクリアできるのであれば、サッカー選手としての実力をあげるためにも、今年の夏あたりにブンデス中堅クラブあたりにセレッソが保有権をもったままレンタル移籍できないものでしょうか。

 逆に、長友選手はゴール前でのクリアが味方に当たってしまったのは不運でしたが、そこから大慌てしすぎてしまいましたね。ボールを蹴ろうとして立ち足がすべり、空振りして倒れたことで、さらに焦って相手を倒してしまいました。ゴールの中にGKとフィールドプレーヤーが2人カバーしていましたから、あそこまで焦る必要はなかったように思います。

森重選手は前半35分、ティーラシンに股間を抜かれるミドルシュートを打たれてしまいました。両足をそろえて立つから股間を抜かれてしまうわけで、片足を前に出して構えておけば、たとえ自分の正面にシュートが来ても足に当てて防げたはずです。
彼のフィードが基点となったゴールがありましたが、ドリブルで前方へ持ち上がってからのパスミスで相手からショートカウンターを浴びてしまうなどミスが多かったです。

山口・酒井高・酒井宏の各選手は、3m前方にいる相手選手にボールをぶつけ、逆襲を食らうようなパスミスが非常に目立ちました。 
ただ、酒井高選手はボランチが本職ではありませんし、中盤にボールをキープしてタメをつくれるような選手を誰も置かなかった監督さんの選手起用のミスもありましたから、責めるのは酷というものかもしれません。
酒井高選手がボールを持ったとき、山口選手が後方に下がってカバーのポジションを取ることが多かったのですが、酒井選手のナナメ後方をバック2枚がカバーしているのであれば、酒井選手のナナメ前方にポジショニングして、トップ下と共に酒井選手に複数のパスコースをつくってあげると、スムーズに中盤でボールが回るようになると思います。

        ☆        ☆        ☆

 それではまとめです。

タイに4-0で勝利という結果は良かったのですが、日本代表のゲーム内容には問題が山積です。

久保選手にロングボールが入って右サイドで基点をつくり、そこからゴール前へクロスを入れて香川・岡崎両選手がゴールをゲットしたまでは良かったのですが、タイが日本の両ウイングをケアすることでそこへのパスが通らなくなると、ロングボールを使ったカウンターサッカーしかできないハリルジャパンはたちまち行き詰ってしまいました。

それならば、タイの守備ブロックの中でショートパスを使ったポゼッションサッカーで相手を崩すという戦術に転換できれば困難な状況を打開できたはずですが、それができませんでした。

タイにプレスをかけられると、個でもチームとしてもボールをキープできないので、ロングボールを前へ大きく蹴るか、3m前の相手にパスをぶつけて奪われ、タイの猛反撃にいっぱいいっぱい。

日本は、DF5人と守備的MF1人にFW4人で組む4-2-4みたいなフォーメーションだったので、そもそも中盤がスカスカでボールをキープしてタメをつくれるような選手が誰もいませんでしたから、カウンターとポゼッション戦術の使い分けなど望むべくもありません。

こういうスタメンを平気でピッチに送り出してしまうハリルホジッチ監督のプレーヤーの特徴・長所短所を見抜く能力に、強い疑問を感じざるをえません。

昨年から当研究所がヘーレンフェーンの小林選手を呼ぶことを推奨している理由は、それが正しいか間違っているかは別として、今回のタイ戦みたいなことが起こらないように、二手三手先のことを考えたからです。

昨年6月のキリンカップでボスニアに負けたことで、浦和の柏木選手や川崎の大島選手のような、小柄で守備力の低いプレーヤーをボランチにいれてしまうと、W杯に出てくるような攻撃力の高いチームが相手だと守りきれないということが露呈しました。それはロシアW杯3次予選のUAE戦・イラク戦でも失点の一因となってしまいます。

そこで遅まきながらハリル監督は、長谷部・山口両選手でダブルボランチを組ませるようになったのですが、今度は逆に中盤でのボールキープ力やパス展開力が不足し、日本の攻撃力が低下してしまうという問題が出てきました。

じゃあ、体が大きくて守備力があって、しかも足元の技術が高く、ボールキープが出来てパス能力もあるボランチを育成すればいいじゃないか、それならオランダでプレーしている小林祐選手が候補の一人になるのではないか、と当研究所は考えたわけです。

今オランダ代表はボロボロですけど、ちょっと前でいえばファンボメルみたいなプレーヤーに成長してくれないかなと思ってます。香川・清武両選手の成長が頭打ちになるようであれば、トップ下のスナイデルでも構いません。

(当ブログ過去記事・オマーン戦・サウジ戦に向けた日本代表発表!) 

確かに小林選手は経験が少ないですし、攻撃的なボランチとして覚えなければいけないことはまだいっぱいあります。しかし「経験が無い」と言って代表に呼ばなければ、永久に経験を積むことはできません。

彼が代表に招集されて、長谷部・山口・今野選手らのプレーを間近で見ることで得られるものもあるでしょうし、W杯予選でも2-0あるいは3-0で日本が勝っているゲームの後半のような、プレッシャーがかからない場面で使ってあげて、少しづつ実戦経験を積ませることもできます。

ところが、失敗が許される昨年11月のテストマッチにせっかく彼を招集しても後半から20分間プレーさせただけで、それ以降は呼ばれもしません。これでは成長できないでしょう。

それで今回のタイ戦では、サイドバックが本職の選手をボランチに入れて、ボールキープも攻めのパスも出せずに苦戦しているのですから、ハリル監督の選手を見る目、二手三手先を考えてチームを強化していく手腕を疑ってしまうのです。

 この試合は、日本の選手が個の能力で相手を上回っていたから勝てただけで、W杯本大会でこちらより個の能力が高い相手と当ったときにこんな低レベルのサッカーをしていたら行き詰ってしまう可能性が高いです。

それに比べれば、選手個々の能力で劣りながらチーム組織でそれを補い、シュート数で日本を上回る攻撃で冷や汗をかかせた、キャティサック監督のパスサッカー戦術は見事だったと思います。

もしタイ人選手の個の能力が本格的に上がってきたら、5年後10年後にタイに圧倒的にボールをポゼッションされた上に、試合結果でも負けてしまうという悪夢のような未来がやってきかねません。

狭いスペースにいる味方に正確なパスを通すことが要求されるパスサッカーという戦術が、足元の技術やパスセンスに優れたプレーヤーを育てるという側面があります。

パスサッカーを掲げたザックジャパンが、ACミランの本田・ドルトムントの香川・インテルの長友といった選手を成功に導き、
日本の成功を見たキャティサック監督のタイ、マフディ監督のUAE、ポステコグロウ監督のオーストラリア、ファンマルバイク監督のサウジなどが続々とパスサッカーに転換する中で、なぜパスサッカーで成功した日本が、今から10年前のアジアでよく見られた、個の能力頼みのタテポンサッカーへ退化しようとしているのかサッパリ理解できません。

霜田さんがJFA技術委員会のトップだったとき、ザックジャパンがブラジルで負けたのはポゼッションサッカーというたった一つのことが原因だという間違った分析をし、ポゼッションサッカーを毛嫌いして、カウンターサッカーしか戦術の引き出しがないハリル監督を招聘したツケが、このタイ戦でも表面化しました。

霜田さんは「日本サッカー百年の計」を誤ったのではないでしょうか。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

          2017.3.28 埼玉スタジアム2002

            日本 4 - 0 タイ

        香川 8'
        岡崎 19'
        久保 57'
        吉田 83' 



        GK 川島        GK カウィン

        DF 長友        DF トリスタン
           森重           アディソン
           吉田           コラピット
           酒井宏         ピーラパット

        MF 酒井高      MF ティーラシン      
           山口           ワッタナ
           香川           タナポーン
          (清武 74)        チャナティップ
                         シロク
        FW 原口          (ヌルン 73)
          (本田 66)    
           岡崎       FW アディサック
           久保
          (宇佐美 84)





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