■2016年12月

■2016年を振り返って

 久しぶりの更新となる今回のエントリーは一年の締めくくりとして、日本サッカー界の2016年を当ブログなりに振り返ってみようと思います。

 まずロシアW杯アジア最終予選を戦っている真っ最中の我らが日本代表ですが、この一年間の戦いぶりを見て一番思ったことは、W杯出場権を獲得できたとしても、ハリルホジッチさんがプロのサッカー監督としての能力をもっともっと上げていかないと、ロシアの地で日本が好成績を収めることはかなり難しいのではないかということです。

ハリルホジッチさんはサッカー監督に求められる最も重要で基本的なスキルの一つ、選手それぞれのプレーの特徴・長所短所・選手間の優劣を見抜くことが苦手のように見え、各選手を適材適所に配置してそれぞれのポジションでどう機能させるのか、隣り合ったポジションの選手同士でどう連携させるのかということがほとんど考慮されず、ただ日本人で有名なサッカー選手をピッチ上に11人並べて「あとは選手個々の力で何とかしろ」というのが彼が最も得意とする“戦術”であり、それを守備戦術で言えば“デュエル”、攻撃戦術で言えば“縦に速いサッカー”ということなんじゃないでしょうか。

多くの人は気づかなかったようですが、そうした不吉な兆候は2次予選からすでに表面化していました。

ハリルジャパンは2次予選も初戦でシンガポールと引き分けてしまい、最悪に近いスタートとなったのですが、今年3月に行われたシリアとの最終戦を大差で勝利し、終わってみればシリアを追い抜いて最終予選へトップ通過を決めます。

しかしそのシリア戦では、日本の選手たちが得点を焦るあまりゴール前に密集しすぎて、間延びした4-1-5みたいなフォーメーションになってしまい何度もシリアの危険なカウンター攻撃を浴びていました。

特に右ウイングで起用された本田選手のスピード・持久力が加齢のせいか著しく低下しており、サイドを個の力で崩すことができないばかりか、彼がいったん相手陣内深くへ攻め上がると、もうバテバテで守備のために自陣へ戻ってくることができないという深刻な問題をこの試合で露呈、本田選手のボランチ等へのコンバートも含めて当研究所はこの2点の問題について早急に解決すべきであることを指摘していました。本田選手の他のポジションへのコンバートについては、当研究所は2015年9月から訴えつづけていました。日本サッカー界の誰も相手にしてくれませんでしたが。

(当ブログ過去記事・シリア相手にゴールもいっぱい、課題もいっぱい) 

ハリルホジッチ監督は無為無策のまま何の修正も行わずに8月末から始まった最終予選に突入、中盤がスカスカの間延びした4-1-5みたいな選手配置、日本の攻撃からスピードを奪ってしまう、ほとんど機能していない右ウイングという前述の2つの問題が敗因となり、UAEとのホームゲームで「よもやの不覚」を取ってしまうわけです。

それでもハリル監督は、絶不調の右ウイング本田・トップ下香川の両選手にこだわり続けて低迷を続け、10月にイラクをホームに迎えて、日本のサッカーが10年退化したようなゲームをやってしまいます。

序盤に清武選手を中心とするコレクティブカウンターから先制したところまでは良かったのですが、その後はロングボールをひたすら放り込む「縦ポンサッカー」がまったく機能せず、それぞれの選手がバラバラにプレスをかける守備戦術“デュエル”をかわされてイラクにボールをポゼッションされて攻め込まれ、とうとう同点に追いつかれるという始末。

危うく予選敗退につながりかねないドローになりかけたところを山口選手の奇跡的なゴールで救われましたが、「勝ちに不思議の勝ちあり」という言葉がピッタリの、ひどい内容の試合でした。

つづくオーストラリア戦で、右ウイング本田選手にひとまず見切りをつけ、守備戦術もコンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守るやり方に修正したことでチームを立て直し、アウエーで貴重な勝ち点1をゲット。さらに11月に行われた「天王山の一戦」首位を走るサウジとのゲームではようやく清武・大迫・久保選手ら次の世代への交代を図って、そこそこ内容のともなった勝利を得ることができました。

ただ、本当に優秀な監督さんなら、もっと早い段階で機能していないポジションの選手に気づき、「名前」ではなくその時点における「実力」を重視して別の選手を試していたでしょうし、そもそもイラク戦のような戦術選択のミスはやらないでしょう。

正直、ザックジャパン時代よりチームの強化が進んだようには見えません。

「日本代表が予選で苦しんでいるのは選手がヘタクソだからであって誰がやったって一緒。ハリルホジッチ監督は悪くない」というサポーターもいるようですが、私はまったく同意できません。

「チームに新しく招聘された監督は、解任されたそれ以前の監督よりも優秀でいて欲しい。いや、少なくとも前の監督より悪いなんてことは無いに決まっている」

代表でもクラブでも多くのサポーターに、自分で新しく買った車が家の車庫に来て、運転席のビニールカバーをワクワクしながら破くような、そんな心理があるように思いますが、ハリルホジッチ監督を無条件で擁護するサポーターも同じような心理状態にあるのではないでしょうか。

新しく買った自動車やスマホならいざ知らず、ことサッカーの監督に関する限り、新しくやってきた監督の方が以前の監督よりひどかったなんて例は星の数ほどあるのであって、もし新しい監督を呼びさえすればチームが必ず強くなるというなら、前年度のシーズンより順位が落ちてしまったり2部に降格するチームなどあり得ないはず。

しかしそうでない理由は、「新監督が前の監督より悪いなんてことは無いに決まっている」というのがサポの単なる思い込みだということです。

1~2ヶ月前どこかのスポーツ紙で「代表のダブルボランチのうち、どちらかというと山口選手が攻撃的で長谷部選手が守備的」という趣旨のハリル監督のコメントを目にして首をかしげました。

たぶんイラク戦でスーパーミドルを決めたから山口選手の方が攻撃的なボランチなんだという認識なんでしょうが、私には、長谷部選手より対人守備力が上で、攻守が入れ替わったとき相手の攻めの起点を真っ先につぶしにいくのが山口選手で、もちろん危ないスペースをカバーするときもありますけど、10月のオーストラリア戦で原口選手の先制ゴールの起点となる絶妙のパスを出したプレーが象徴するように、中盤の底から攻撃を組み立てる役割がより大きいのが長谷部選手のように見えます。

11月22日に行われたCLのドルトムント対レギア・ワルシャワ戦で、クラブでも代表でも絶不調だった香川選手が2ゴール1アシストを決めたのを見て改めて確信したんですが、香川選手はトップ下といってもセカンドストライカータイプであって、独力で中盤からボールを前方へ運ぶ能力はあまり高くありません。

よって中盤でボールをキープして香川選手にパスでボールを供給する能力が高い選手がいないと香川選手を生かすことができないんですが、ドルトムント1~2年目にシャヒンやギュンドアンがそういう役割を担ってくれたからこそ香川選手が輝くことができたわけです。

レギア戦でも常に中盤の底からシャヒンが香川選手を見てくれていて、良いパスでボールを供給してくれたことが、2ゴール1アシストにつながったんじゃないでしょうか。まだヴァイグルとはそこまでの強いホットラインが形成されていないように見えます。

そう考えるとザッケローニ元監督が、クラブでどんなに活躍しても独力でボールを前へ運ぶ能力に欠ける香川選手を代表における不動のトップ下にしなかった理由が見えてきます。

実際、アンマンで行われた南アフリカW杯アジア最終予選のヨルダン戦では本田選手が負傷欠場し、香川選手がトップ下に起用されましたが星を落としています。

そういう大事なところがハリルホジッチ監督の目には見えていない気がします。

W杯の予選で代表がどれだけ不振にあえいでいても、いつまでも機能しないトップ下で香川選手を起用し続け、イラク戦で清武選手を起用して良い攻撃の形がつくれたのに、次のオーストラリア戦では「サプライズを起こしたかった」という謎の理由で、再び香川選手をトップ下で先発させてまたしても機能しないという...。

10月のオーストラリア戦・11月のサウジ戦でチームを何とか立て直したのは良かったんですが、ハリル監督は選手それぞれのプレーの特徴・長所短所・選手間の優劣を見抜いて適材適所で起用する能力をもっと高めないと、本番のW杯に向けての不安をぬぐいきれません。

ハリル監督は、ブラジルW杯でアルジェリアを決勝トーナメントへ進出させたことが評価されて日本代表に招聘されたのですが、本当に彼を優秀な監督だと思っていたならアルジェリアサッカー協会はハリルホジッチ監督との契約をさらに4年間延長したはずですし、アルジェリアがハリル監督をあっさりと手放した理由の一つがそのあたりにあるように思います。

ブラジルでドイツと好勝負を繰り広げたことも当時高い評価を受けましたが、私の記憶が確かならば、あの時のドイツはアルジェリアを甘く見て、負けたら終わりの決勝Tにもかかわらずレーブ監督が新しいシステムを試して苦戦を招いたんじゃなかったでしょうか。

これに関連して、ハリルホジッチ監督を招聘した責任者である霜田正浩ナショナルチーム・ダイレクターが今年いっぱいで退任されるようですが、良い結果となっても悪い結果となっても自分の考えでつくりあげたハリルジャパンがどうなるか、しかるべき立場で最後まで責任を持って見守るべきであって、船長として自分が任された豪華客船が、ハリル航海士の危なっかしい操船でいくつもの大氷山を船体をこすりながらギリギリでよけていくのを見ながら、「後は任せた」といって救命ボートに乗って途中で船を降りるような霜田さんの行為は大変残念であり、非常に無責任だと思います。

 年代別では、8月にU-23日本代表のリオ五輪出場がありました。

1月に行われたアジア予選で優勝して出場を決めた手倉森ジャパンでしたが、リオ五輪では初戦のナイジェリア戦を落とし、2位争いをしていたコロンビアと痛い引き分け、最後のスウェーデンには勝ったものの及ばず、グループリーグ敗退となってしまいました。

「初戦が一番大事」とか言って、慎重に相手の出方をうかがっているうちに、思いっきりきたナイジェリアにキックオフ早々に先制パンチを浴びてしまい、それで動揺したのか普段やらないようなミスから失点を積み重ね、ゲームを落としてしまったのが残念でした。

コロンビア戦もよく引き分けに持ち込んだとは思いますが、やはりメンタル的な弱さから相手にやらなくてもいいゴールを献上したことが痛かったですね。

マジメすぎて過緊張におちいり、「重要な大会になるほど、普段どおりの実力を発揮できない」という日本人選手の弱点がモロに出てしまった大会でした。

 クラブチームに目を転じますと、Jリーグでは上位陣を含めてほとんどのチームが、一対一に負けて抜かれることを恐れ、ズルズルと際限なく後退していく守備のやり方が今年もほとんど改善されなかったように見えました。

それが手倉森ジャパンがリオで惜敗した原因の一つとなるわけですが、鹿島と浦和で戦ったチャンピオンシップ決勝戦では少し改善され、一筋の光明が見えてきたように思います。

今シーズンは最初からチャンピオンシップで王者を決めるというレギュレーションでしたから、鹿島が年間王者であることに間違いはありませんが、来年からは総当たりのリーグ戦による1シーズン制が復活することが決まっており、本来あるべき姿に戻るということでフラストレーションを貯めていた多くのサポがスッキリしたんじゃないでしょうか。

 その鹿島が開催国枠で出場したクラブワールドカップでは決勝戦に進出、欧州代表のレアルマドリードと90分を戦って2-2、延長戦で2失点して惜しくも準優勝に終わるという大健闘を見せてくれました。

特にボールを奪いに行くべきところは自分の体を当ててガチガチ行くという鹿島の守備戦術は評価できますし、レアルとは個の能力で劣勢のところを11人が協力して組織で守ることで補おうとしていました。

ただ、この大会はすべて鹿島の“ホーム”で戦えたという点は割り引いて考える必要があります。

モチベーションの面でもレアルマドリードにとってみれば、リーガやCLで優勝することの方が最優先課題でしょうし、そのためにはこの大会で大ケガをしたり体力を消耗したりしたくないという心理があったはず。

サッカーにおいて、2つのチームの優劣を公平に決めるためには、最低でもH&Aの2試合が必要です。

ですから1stレグにあたる横浜での試合は90分戦って2-2、レアルが全力を発揮できるサンチアゴ・ベルナベウでの2ndレグでも2-2で引き分けられたら鹿島の実力は本物と言えますが、さてどうなるでしょうか。

この大会で目覚ましい成長を見せた昌子選手はもっと信頼して吉田・森重両選手が結果を出せないときは代表でチャンスを与えても良いでしょうし、曽ヶ端選手も招集して西川選手と正GKの座を競わせてもいいんじゃないでしょうか。

 代表選手個々では結婚が続いていて大変おめでたいんですが、個人的にはヒザの故障で長期間のリハビリを続けていたシャルケの内田選手が、時間が少ないながらも公式戦に出場したことがとても嬉しかったですね。焦らずトップコンディションに戻して再び代表のユニを来た内田選手が見れることを楽しみにしています。

 最後にロシアW杯最終予選の開幕ゲームとなった日本対UAE戦で、カタール人審判団が明らかにUAE寄りの疑惑のジャッジを連発して、今年の日本サッカー界に大反響を巻き起こしたことはまだ記憶に新しいところです。

そこで「日本代表の出来が悪かったんだから、浅野選手のゴールが審判によって取り消されて負けてもしょうがない」みたいな主張も日本のサッカーメディアで見かけましたが、当研究所はまったくそうは思いません。

またUAE戦のあと、カタール人審判団による八百長疑惑が持ち上がった時、日本人のサッカー審判関係者のところへ話を聞きに行って、「AFCがW杯に派遣する審判団が不正をすることはまず考えられない」という返答をもらって記事にした記者がいましたが、同じ行くなら、あのカタール人主審のところへ行って「どうして浅野のゴールを認めなかったのか?」と質問してその答えを記事にするべきであって、そもそも話を聞きに行く相手を間違っているんじゃないですか。

前述の鹿島VSレアルマドリードでも、セルヒオ・ラモスを退場させなかったのは誤審ではないかと言って、その試合を裁いたシカズ審判にどうしてあのようなジャッジをしたのかを欧州の記者が聞きに行き、彼の弁明が記事になっていましたが、これこそがニュースバリューのある記事というものです。

同様に、日本サッカー協会やJリーグがUAE戦のあと日本人を対象に八百長防止セミナーを開催していましたが、Kリーグの全北が審判を買収していたことが発覚したように、本当に八百長防止セミナーが必要なのは韓国やアラブ諸国とくにカタールのレフェリー達なんじゃないでしょうか。

どうも日本人のサッカー記者やJFAがやることはピントが外れていますね。

 というわけで思いつくままに、日本サッカー界の2016年を振り返ってみましたがいかがだったでしょうか。
それぞれの出来事について、当ブログの過去記事のリンクを張ろうと思いましたが、やんごとなき事情によりやめました(笑)
興味のある方はそれぞれで過去記事をあたってみてください。

それでは読者の皆さん、良いお年をお迎えください。2017年が皆さんと日本サッカー界にとって素晴らしい年となることを祈っております。



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■ドリブラー養成計画

 今回は「ドリブラー養成計画」と銘打ち、日本人選手の攻撃面における個の能力を高め、世界に通用する優秀なドリブラーを1人でも多く世に送り出すための特別講座を開きたいと思います。

このブログを長く愛読してくださっている方にはもうバレバレのことでしょうが、高いドリブル技術やスピードの緩急で何人もの相手選手をヌルヌル抜いていくウインガーは、当研究所・所長であるスパルタクの大好物です。

パスサッカーを信奉する当研究所ですが、4-1-2-3あるいは4-2-3-1システムを使うなら、高度なドリブル・テクニックを駆使し個の能力で相手チームの守備を崩すことができるプレーヤーをサイドに置くことで、初めて理想のパスサッカー戦術が完成すると考えています。

体が大きくなくてフィジカルコンタクトの能力でも劣勢な日本人選手の、攻撃面での個の能力を高めるためには、やはり足元の技術(具体的に言えばドリブルやフェイント)で一対一に勝って相手を抜くためのスキルを磨いていくことが欠かせません。

 それでは世界に通用するドリブラーになるために何が必要なのでしょうか?

ドリブルで一対一に勝って相手を抜くために必要不可欠だと当研究所が考えているものは、次の2つです。

(1)ボールを自分の意図した通りに動かし、「マシューズフェイント」や「ダブルタッチ」のようなドリブル技を正確に実行できるだけのスキルを持っていること

(2)自分と対面している相手がどういう状態になったらドリブルで抜くチャンスなのか、そのタイミングを知識として持っていること

(1)については、多くのサッカー教本やDVDが販売されており、それらを参考にしながら選手個人で地道に練習していくことでかなりの程度まで上手くなれるはずですし、プロを目指している人がこうした努力を自発的に辛抱強く継続できないようではお話になりません。

ただし市販のドリブル教本では非常に多くのドリブル技が掲載されていますが、コンパクトなブロックをつくって守るべきスペースを限定し、そこからチャレンジ&カバーで組織的にプレスをかけていく守備戦術が当たり前となっている現状では、「シャペウ」や「ヒールリフト」みたいな技は、あまり実用的とは言えません。

守備の組織化・サッカーの高速化を踏まえ、当研究所が習得を推奨する技は「マシューズフェイント」「ステップオーバー」「ダブルタッチ」の3つです。

この3つを完璧にマスターできているなら、世界に通用するドリブラーになるために最低限の準備が整った状態であると当研究所は考えていますので、良く練習しておいてください。

以降この3つの技をすでに習得していることを前提として、この特別講座を進めていきます。

 (2)について、日本サッカー界ではあまり研究されていないようで、相手選手がどういう状態になったらドリブルで抜くチャンスなのかということについて、私が目にした現役Jリーガーが書いたドリブル教本でもほとんど明確にされていませんでした。

他の本でも「相手選手がこう動いたらこちらはこうドリブルする」といったような、受け身のやり方を教えるものがせいぜいでした。

よって、この特集記事では(2)を詳しく取り上げていきますが、当研究所は、攻撃側から積極的にプレーを仕掛けていくことでドリブルで相手を抜きやすいシチュエーションを自発的につくっていくことを目指します。

参考にするのはFCバルセロナに所属するメッシやイニエスタのプレーです。

メッシやイニエスタは世界を代表するドリブルの名手ですが、彼らのプレーを良く観察していると、ドリブル突破に成功した瞬間、対面している守備側の選手の多くが、ある決まった状態になっていることに気づきます。  

裏を返して言えば、メッシやイニエスタは相手を一対一で負けるような状態に追い込んでからドリブル突破を仕掛けることで、勝つべくして勝っているのです。

守備側の選手が攻撃側に対して脆弱になるのは、「両足をそろえて立った状態」の時です。(図1)

図1
ドリブル0
(クリックで拡大)

この状態になると、横方向へあまり大きく移動することはできなくなりますし、左右どちらに対しても一歩踏み出してしまえば、踏み出した足が着地するまでの間、相手選手は反対方向へ移動することが絶対にできなくなります。(図2)


図2
ドリブル1


ドリブラーが意図的に相手選手をこのような状態に追い込み、その瞬間を狙って相手選手が動いたのと反対方向へボールと自分の体を通せば、一対一に勝って相手を抜くことができます。

それでは具体的に自分がプレーしたつもりになって一対一の闘い方をイメージしてみましょう。

当研究所所長であるスパルタクは利き足が左なので、右ウイングのポジションでのプレーを例にあげてみます。(利き足が右の人は、左右を逆に読み替えてください)

自分が右サイドで味方からパスを受けて前方へ数mドリブルすると、守備側の選手が寄せてきたとします。

<ステップ1> そこで相手の背後の状況を見て、左右どちらを抜けばゴールの確率が高くなるか、どちらを抜けば自分でシュートを打ちやすいか、得点につながるラストパスが出しやすいかを考えておきます。

ここでは、こちらから見て相手の左側をカットインドリブルで抜いてから、左足のインにかけたコントロールシュートでゴール左上スミを狙うか、それが難しい状況であれば、DFラインのウラヘダイアゴナルランする味方にスルーパスを出すのを狙うことに決めたとしましょう。

<ステップ2> 相手が最初から両足をそろえて立ってくれれば楽なのですが、セオリー通りに片足を前に出して半身で構えていたら、ドリブルのスピードをやや落とし、ボールを小刻みに動かしながら、図1のように相手の両足がそろうようにゆさぶりをかけます。

<ステップ3> 相手の両足がそろった瞬間がドリブル突破を仕掛けるタイミングです。

ここでは相手の左を抜きたいわけですから、図2のように相手選手が自分の左足を一歩外側へ踏み出すことで、左側(相手から見た場合は右側)へ絶対に移動できないようなシチュエーションを自らつくっていきます。

まず体の重心を落として右足を踏み込み、自分の体重移動で右側(相手から見た左側)を抜くぞと見せかけつつ、左足でボールを右へ動かすフェイント(マシューズフェイントのファーストタッチ)を行います。

左足でのボールタッチだけでなく、体全体の重心移動も使って「右を抜くぞ」というフェイントをしっかりかけることで確実に相手の逆を取ることができ、ドリブル突破に成功する確率も上がります。

<ステップ4> 相手がこちらのフェイントにひっかかり、図2のように左足を外側へ一歩踏み出した瞬間に、マシューズフェイントのセカンドタッチを行います。いったん右へ動かしたボールを左足のアウトサイドで左前方へ押し出し、踏み込んだ右足を踏ん張りながらボールと自分の体を相手の左側を通して逃がすことで、ドリブル突破を図ります。

もし自分の体重移動によるフェイントだけで相手がひっかかり左足を踏み出してくれた場合は、マシューズフェイントから途中でステップオーバーに切り替え、左足でボールをまたいでからアウトサイドで左前方へボールを押し出しつつドリブル突破を図れば、ミスプレーの確率が低くなると思います。

言葉で説明すると長い時間かけてプレーしているような気がしてきますが、ステップ3・4は、相手の左足が浮き上がった瞬間からゼロコンマ数秒、長くても1秒ほどの勝負です。

同じシチュエーションで「ダブルタッチ」も使うことができます。

相手の右を抜くと見せかけた体重移動のフェイントにひっかかり、相手が左足を外側へ一歩踏み出した瞬間、自分の右足でボールをファーストタッチして左へ動かし、左足でボールを前方へ転がして相手の左を突破するわけです。

イニエスタやメッシが得意としているプレーですね。

実は図2の状態以外にも、ドリブル突破する絶好のタイミングがあります。(図3)

図3
ドリブル2


図2の動作の続きで、外側へ一歩踏み出した左足が着地して相手の全体重が左足にかかり、次に右足を左方向へ引いてから着地するまでの間は、その選手は左右どちらへも動くことができません。(無理をすれば慣性の法則でそのまま右方向へ進むことができるかもしれませんが、足がついていかないので最後には転倒することになるでしょう)

こちらがボールを動かしたり体重移動などでフェイントをかけることで相手が図3のような状態になった時も、マシューズフェイント・ステップオーバーやダブルタッチを使って相手の左側にボール(A)と自分の体を通して突破することができますし、この瞬間、相手はこれ以上右側へ移動できないので、ボール(C)と自分の体を相手の右側を通してドリブル突破を図ることもできます。

さらにメッシが時々やりますが、自分がタッチライン際にいてピッチ中央方向へのカットインを狙っている時、相手を図3のようなシチュエーションに追い込んでから、相手の股の間の重心がかかっている左足のすぐ脇にボール(B)を通し、自分の体を相手の左から逃がすことで突破するというやり方もあります。

相手の全体重が片足一本にかかっている瞬間は、たとえその足の10㎝脇をボールが通過してもカットすることができません。

以上がドリブルで相手を抜くときの基本テクニックですが、これをベースにして練習や実戦における相手選手との様々な駆け引きの中からさらに応用技術を磨いていくことで、自分のドリブルテクニックをさらに高めていってくれることを希望します。

それでは座学はこのくらいにして、メッシ先生に実技のお手本を見せてもらいましょう。




このビデオの中でメッシはごく基本的なドリブル技術しか使っていませんが、いずれも両足をそろえた相手が横へ足を出したタイミングで、その逆を突いてドリブル突破を図っているのが良くわかります。

 原口(ヘルタ)・宇佐美(アウクスブルク)・乾(エイバル)・宮市(ザンクトパウリ)・斎藤(横浜M)・中島(F東京)の各選手から建英君ピピ君に至るまで日本のドリブラーの皆さんにとって、何か参考になるところがあれば幸いです。

この特集記事で取り上げたことが完璧にマスターできれば、たとえ欧州四大リーグレベルの選手と対峙しても、ドリブルで相手をヌルヌル抜いていくことができるようになるはずです。あとは自分を信じ、できるようになるまで努力し続けることができるかどうかが勝負の分かれ目。

ワールドクラスのドリブラーになりたいのなら「マシューズフェイント」「ステップオーバー」「ダブルタッチ」の3つは最低限、完璧にマスターしておくべきです。

そして相手がどういう状態になったときにドリブルで抜くチャンスが訪れるのか、その正しい知識を持っていれば、チームの得点力アップのために自分の武器であるドリブルを最大限生かすことができるようになります。

最近シュツットガルトでもサイドで起用されることが多い浅野選手に、「マシューズフェイントを完璧にできるように練習しておくこと」という宿題を出しておきましたが、その理由が今回の特集で良く理解できたのではないでしょうか。

香川・清武両選手のように主なプレーエリアがピッチ中央付近の選手も、「ボールキープ力」や「相手の守備を個で崩す力」をアップさせるために、どういう技術を相手がどういう状態のときに使えば自分のドリブル突破で局面を打開してゴールにつなげることができるのか、その知識を持っておくことは大変重要です。もちろんそれをプレーとして正確に実行できなければ意味がありませんが。

建英君のドリブル突破はあの年代にしてはかなりイイ線を行っていると思いますが、相手を惑わすフェイントにさらなるキレを与えるため、より大きなモーションで体重移動をかければ、もっと楽に相手の逆を取って抜くことができるようになると思います。

逆に守備側の視点で言えば、ワールドクラスのドリブラーが相手を抜くためにどういうことを考えているのか理解できたでしょうし、「両足をそろえて構えるな」と当研究所が口を酸っぱくして言う理由もお分かり頂けたことでしょう。この特集記事を参考にして日本人選手の守備時における一対一の能力をもっともっとアップさせ、相手のドリブラーからどんどんボールを刈り取って行って欲しいです。

それでは、そう遠くない未来に世界屈指の日本人ドリブラーが何人も出現する日がやってくることを楽しみにしています。



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■メデジンの悲劇

 皆さんすでにご存じのことと思われますが、コパ・スッドアメリカーナ決勝戦のため、コロンビアに遠征中だったブラジルのクラブ・シャペコエンセの選手団ならびに記者を乗せたチャーター機が先月28日メデジン市近郊に墜落し、その多くが帰らぬ人となってしまうという大変痛ましい事故が起こってしまいました。

事故に遭われたシャペコエンセの選手・コーチ陣と同行していた記者の方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族やクラブのサポーターなど関係するすべての皆さまに深くお悔み申し上げます。

 これほど多くの大切なサッカーファミリーを一度に失ってしまうというのは、1994年アメリカW杯アフリカ予選のためモロッコへ移動中に、飛行機事故に遭ってしまったザンビア代表以来ではないかと思われますが、こんな悲しい事件は二度と起きて欲しくありません。

シャペコエンセを乗せたチャーター便に使われた機材は「アブロRJ85」という、どちらかというと旧式の小型旅客機で、欧州の大手航空会社のリージョナル路線で一部まだ飛んではいるものの、新型機への取り換えが進んでいる機体です。

燃料切れによる墜落という未確認情報もあり、RJ85に燃料を満タンにしてもノンストップ飛行ができるかどうかギリギリの距離を飛んでいたそうで、同機を所有していたボリビアの航空会社の経営状態が苦しかったことが事故の背景にあるのではないかとも報じられております。

ブラジルであれば、GOLとかTAMとか最新型の旅客機を飛ばしている航空会社がいくらでもあるのに、わざわざボリビアの会社にチャーター便の運航を頼んだのはどういう理由からだったのか気になります。安全性よりも運賃の安さを選んでしまったのでしょうか。

 今だからこそ明かしますが、本田圭佑選手がCSKAモスクワに所属していたころ、ちょっと心配していました。

ロシアは国土が広大なのでモスクワダービーを除けば、国内リーグであってもアウェー戦は時差があるぐらいの長距離移動が当たり前のようにあります。

そのため、CSKAはクラブ専用のチャーター機材をロシアの国営航空会社から借りていたのですが、それが旧ソビエト製のツポレフ154で、旧式機ゆえに事故率も高いといういわくつきの機体でした。

ですから「できるだけ早く欧州四大リーグのどこかへ本田選手の移籍が決まらないかな」と気をもんでいたというのが正直なところだったのです。

サッカーはワールドワイドなスポーツで、H&Aの2試合でワンセットが当たり前ですから、飛行機による移動が欠かせません。

航空会社のチョイスは安全性が何よりも大事です。

最後にもう一度、事故に遭われたシャペコエンセの関係者の皆さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。




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