■2016年10月
■香川選手の新たなチャレンジ
今回のテーマは香川選手についてです。
2016-17シーズンが開幕しても、香川選手はドルトムントでレギュラーポジションを失った状態が続き、代表戦でも不調が続いていました。
そのことについては特集記事ですでに指摘したとおりです。
(当ブログ過去記事・香川選手はどうしたら復活できるか?)
その後、10月2日のレバークーゼン戦で久しぶりに出場機会が与えられ、出場時間は短かったのですが、彼の課題であったバックやボランチからパスを受けてそれを正確に前へつなぐということを地道にやろうとしていたのが見てとれ、ようやく正しい方向へ歩みだすことができていたように思います。
それがトゥヘル監督に認められたのか、CLのスポルティング・リスボン戦でもフル出場の機会が与えられ、ミスはあったものの、バックやボランチからパスを受けてそれを前へつなぐというトップ下の仕事を地道にこなし、チームになんとか勝利をもたらすことができました。
そこからゴールにつながるようなラストパスを出す回数を増やすことが次の課題であるとオーストラリア戦でのエントリーで指摘しておいたのですが、そこで壁にぶち当たっているようでした。
例えばこの場面。(ビデオの3:55ぐらいから)
図1
(クリックで拡大、以下同様)
オーバメヤンがDFラインのウラでスルーパスを受けようとしますが、スポルティングの選手に読まれ密着マークを受けています。
香川選手もそれが十分わかっていたのでスルーパスを出すことができず、次のプレーを迷いながら出したパスを相手選手にひっかけてしまった感じでした。
この局面では図1のように、オーバの動きによって相手バックがつられ、それによってできたスペースにまずスルーパスを通し、左アウトサイドからウラヘ抜けたデンベレにボールを受けさせてシュートさせるか、スポルティングの選手の視線を彼に集中させた上でデンベレからのマイナスの折り返しを香川選手やオーバが決めるといったようなアイデアが欲しかったですね。
つづいて別の決定的なシーン。(4:27ぐらいから)
図1と同じようにバイタルエリアでフリーで前を向いた香川選手。図2の白いラインでスルーパスを出せば、ウラへ抜けたオーバがボールを受けてGKと一対一という場面でしたが...。
図2
香川選手の決断が遅く、ボールを持ちすぎているうちに直前にいた相手選手に詰められてしまい、パスをもらい損ねたオーバもオフサイドポジションへ...。(図3)
図3
苦しまぎれに出したスルーパスは、初めからオーバに通る可能性ゼロでした。このあと香川選手はユニホームを噛んで悔しがっていましたね。(図4)
図4
香川選手は失敗を恐れているのか、次にどういうプレーを選択するかの決断が遅いために、ゴールにつながるようなアシストをするタイミングがあってもそれを逃してしまうことがとても多いですね。
最後に後半のシーンから。(6:01あたりから)
図5
この局面では、ボールを受けた香川選手が大慌てで右サイドにいた味方へパスをしてミスになり、非常にもったいなかったのですが、バイタルエリア(相手バックラインの前のスペース)がたっぷりと広く空いていますし、トップ下としてこんなにおいしい局面はありません。
ただし、スルーパスを出すにはスポルティングの選手2人でつくる“門”までやや遠く、門を確実に通すには強いパスが必要となりますが、それではパススピードが速くなりすぎてオーバが受けられなくなる可能性が高くなってしまいます。
そこで香川選手が数タッチドリブルして相手DFを自分の方へ引きつけてから、タイミングよく適度な強さのスルーパスを出してやると、ウラヘ抜けたオーバも受けやすくなり、GKと一対一の局面をつくりやすいと思います。
ともかくアシストするチャンスが来ても、香川選手は結果を出そうと焦っては絶対にいけません。
常に冷静さを保ち、どこへパスを出せば味方のゴールをアシストできるか、あるいはそのリターンをもらっていかに自分が得点するか、そのアイデアを試合中に楽しみながら見つけだすことです。
前述の3つの例でそのヒントを示しましたので、香川選手自身で良く研究してみてください。
そしてアイデアがゲーム中にひらめいたら「失敗したらどうしよう」などといった邪念は一切捨て、パスを出せる一瞬のチャンスを絶対に逃さずに、勇気をもって自分が決断したことをすぐさま実行に移すこと。
アシストが一本成功したら自分のプレーや判断力に自信がつき、次のアシストやゴールがどんどん決まっていくはずです。
スルーパスの精度を上げたいなら、芝生の上にコーンを2つ置いて相手選手2人でつくる“門”に見立て、その門の間を正確に通しつつコーンの後ろ5mでボールの勢いが弱まるようなスルーパスを出す練習を徹底的にやった方が良いと思います。
ドリブルしながら自分がパスを出す位置とコーンまでの距離や角度を変えたり、パスを出す足を左右で変えたりしながら、練習を数多くこなすことで自信をつけていくべきです。
前述の3つの例も含めてスルーパスを出すときに特別難しいキックは必要ありません。多くの場合、一番基本的なインサイドキックでも十分間に合うはずです。
ゴールやアシストのような価値の高いプレーほど、足のアウトサイドやヒールを使うような難しいキックが必要だと日本の多くのプロサッカー選手が誤解しているようですが、一番簡単で正確性が高いインサイドキックで用が足りるなら、わざわざ失敗する確率の高い難しいキックを選択する必要はないのです。
日本の指導者はほとんどの場合、この重要な事実に気づいていない気がします。
多くの人が、香川選手がドルトムントに移籍して1~2年目のようなプレーを期待しているようですが、それは今のドルトムントでは求められていないように思います。
ユルゲン・クロップ監督のゲーゲンプレスというカウンター戦術のもと、香川選手はセカンドストライカーとしてレバンドフスキのようなセンターFWの周囲を動き回り、味方からパスを受けてラストパスを出したり、自分でゴールを決めたりすることでドルトムント移籍1年目から大活躍したわけです。
しかしゲーゲンプレスが研究され相手チームに引き気味に構えられてしまうとなかなか勝てなくなってクロップ監督は解任、ドルトムントの経営陣はカウンターサッカー一辺倒ではなくポゼッションサッカー導入の必要性を感じたのでしょう、グアルディオラ時代のFCバルセロナのサッカースタイルを強くリスペクトしているトーマス・トゥヘル氏が新監督として招聘されます。
トゥヘル監督が二列目の選手に求めているのはバルサでいう8番や10番のような役割、つまりバックやピボーテ(守備的MF)からボールを受け、それを確実に3トップやオーバーラップしたサイドバックへ配球したり、ゴールにつながるようなアシストをしながらチャンスがあれば自分でもゴールを決めるという役割ではないかと思います。
理想の選手としてはシャビやイニエスタということになります。
逆にゲーゲンプレス時代の香川選手のように、トップ下でありながら中盤でのパス回しにあまり参加せず、センターFWのすぐそばにいて味方からのパスを待つようなセカンドストライカー的なプレーは求められていないので、トゥヘル体制になってから香川選手の出場機会がぐっと減ってしまったのではないでしょうか。
それがトゥヘル監督がいう「シンジは自由にプレーができない」という言葉の真意ではないかと推測します。
ですから、多くの人が期待している香川選手がドルトムントに移籍して1~2年目のようなプレーをし続けるかぎりトゥヘル監督には起用してもらえず、今のドルトムントで香川選手が生き残るためには、味方からボールを受けそれを3トップなどへ確実につないで中盤での攻撃の組み立ての中心となり、そこからゴールにつながるラストパスを数多く出すという、よりパサーに近いトップ下へとプレースタイルを変えていく必要があるように思います。
香川選手が「パサー」という新たな武器を身につけることに成功すれば、現在は彼が出場してもほとんど機能していない日本代表の4-2-3-1システムのトップ下のポジションでも、チームの勝利に大きく貢献する活躍ができるようになるはずです。
香川選手はバルサでプレーすることが夢だと語っていましたが、バルサのポゼッションサッカーを理想とするトゥヘル監督のもとで彼が課題として取り組んでいる「パサーとしてのトップ下」へのプレースタイルの転換は、もし香川選手が今この瞬間にバルサへ加入できたとしても、先発ポジションを獲得するために同じように乗り越えなければいけない課題だとも言えます。
試合に出てゴールがないと、マスコミやサポーターから失望の声が多くあがるかもしれませんが、パサーとして攻撃の組み立ての中心となることでチームを勝利に導き、それをトゥヘル監督が評価してくれるかぎり、香川選手はその他の雑音を気にする必要は一切ありませんし、そうした地道な仕事で自分の足元をしっかり固めた上で、アシストやゴールのような数字に残る結果を積み上げていけば良いのです。
香川選手がドルトムントでレギュラーポジションを手に入れるために「パサーとしてのトップ下」という新しい武器を身につけるチャレンジをしている今はとても重要なときであり、クラブで彼の努力の成果がハッキリと出るまでは辛抱してやり、UAE戦・タイ戦・オーストラリア戦のように中途半端な状態で香川選手を代表戦のトップ下で起用して自信を失わせるような愚は避けるべきです。
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2016-17シーズンが開幕しても、香川選手はドルトムントでレギュラーポジションを失った状態が続き、代表戦でも不調が続いていました。
そのことについては特集記事ですでに指摘したとおりです。
(当ブログ過去記事・香川選手はどうしたら復活できるか?)
その後、10月2日のレバークーゼン戦で久しぶりに出場機会が与えられ、出場時間は短かったのですが、彼の課題であったバックやボランチからパスを受けてそれを正確に前へつなぐということを地道にやろうとしていたのが見てとれ、ようやく正しい方向へ歩みだすことができていたように思います。
それがトゥヘル監督に認められたのか、CLのスポルティング・リスボン戦でもフル出場の機会が与えられ、ミスはあったものの、バックやボランチからパスを受けてそれを前へつなぐというトップ下の仕事を地道にこなし、チームになんとか勝利をもたらすことができました。
そこからゴールにつながるようなラストパスを出す回数を増やすことが次の課題であるとオーストラリア戦でのエントリーで指摘しておいたのですが、そこで壁にぶち当たっているようでした。
例えばこの場面。(ビデオの3:55ぐらいから)
図1
(クリックで拡大、以下同様)
オーバメヤンがDFラインのウラでスルーパスを受けようとしますが、スポルティングの選手に読まれ密着マークを受けています。
香川選手もそれが十分わかっていたのでスルーパスを出すことができず、次のプレーを迷いながら出したパスを相手選手にひっかけてしまった感じでした。
この局面では図1のように、オーバの動きによって相手バックがつられ、それによってできたスペースにまずスルーパスを通し、左アウトサイドからウラヘ抜けたデンベレにボールを受けさせてシュートさせるか、スポルティングの選手の視線を彼に集中させた上でデンベレからのマイナスの折り返しを香川選手やオーバが決めるといったようなアイデアが欲しかったですね。
つづいて別の決定的なシーン。(4:27ぐらいから)
図1と同じようにバイタルエリアでフリーで前を向いた香川選手。図2の白いラインでスルーパスを出せば、ウラへ抜けたオーバがボールを受けてGKと一対一という場面でしたが...。
図2
香川選手の決断が遅く、ボールを持ちすぎているうちに直前にいた相手選手に詰められてしまい、パスをもらい損ねたオーバもオフサイドポジションへ...。(図3)
図3
苦しまぎれに出したスルーパスは、初めからオーバに通る可能性ゼロでした。このあと香川選手はユニホームを噛んで悔しがっていましたね。(図4)
図4
香川選手は失敗を恐れているのか、次にどういうプレーを選択するかの決断が遅いために、ゴールにつながるようなアシストをするタイミングがあってもそれを逃してしまうことがとても多いですね。
最後に後半のシーンから。(6:01あたりから)
図5
この局面では、ボールを受けた香川選手が大慌てで右サイドにいた味方へパスをしてミスになり、非常にもったいなかったのですが、バイタルエリア(相手バックラインの前のスペース)がたっぷりと広く空いていますし、トップ下としてこんなにおいしい局面はありません。
ただし、スルーパスを出すにはスポルティングの選手2人でつくる“門”までやや遠く、門を確実に通すには強いパスが必要となりますが、それではパススピードが速くなりすぎてオーバが受けられなくなる可能性が高くなってしまいます。
そこで香川選手が数タッチドリブルして相手DFを自分の方へ引きつけてから、タイミングよく適度な強さのスルーパスを出してやると、ウラヘ抜けたオーバも受けやすくなり、GKと一対一の局面をつくりやすいと思います。
ともかくアシストするチャンスが来ても、香川選手は結果を出そうと焦っては絶対にいけません。
常に冷静さを保ち、どこへパスを出せば味方のゴールをアシストできるか、あるいはそのリターンをもらっていかに自分が得点するか、そのアイデアを試合中に楽しみながら見つけだすことです。
前述の3つの例でそのヒントを示しましたので、香川選手自身で良く研究してみてください。
そしてアイデアがゲーム中にひらめいたら「失敗したらどうしよう」などといった邪念は一切捨て、パスを出せる一瞬のチャンスを絶対に逃さずに、勇気をもって自分が決断したことをすぐさま実行に移すこと。
アシストが一本成功したら自分のプレーや判断力に自信がつき、次のアシストやゴールがどんどん決まっていくはずです。
スルーパスの精度を上げたいなら、芝生の上にコーンを2つ置いて相手選手2人でつくる“門”に見立て、その門の間を正確に通しつつコーンの後ろ5mでボールの勢いが弱まるようなスルーパスを出す練習を徹底的にやった方が良いと思います。
ドリブルしながら自分がパスを出す位置とコーンまでの距離や角度を変えたり、パスを出す足を左右で変えたりしながら、練習を数多くこなすことで自信をつけていくべきです。
前述の3つの例も含めてスルーパスを出すときに特別難しいキックは必要ありません。多くの場合、一番基本的なインサイドキックでも十分間に合うはずです。
ゴールやアシストのような価値の高いプレーほど、足のアウトサイドやヒールを使うような難しいキックが必要だと日本の多くのプロサッカー選手が誤解しているようですが、一番簡単で正確性が高いインサイドキックで用が足りるなら、わざわざ失敗する確率の高い難しいキックを選択する必要はないのです。
日本の指導者はほとんどの場合、この重要な事実に気づいていない気がします。
多くの人が、香川選手がドルトムントに移籍して1~2年目のようなプレーを期待しているようですが、それは今のドルトムントでは求められていないように思います。
ユルゲン・クロップ監督のゲーゲンプレスというカウンター戦術のもと、香川選手はセカンドストライカーとしてレバンドフスキのようなセンターFWの周囲を動き回り、味方からパスを受けてラストパスを出したり、自分でゴールを決めたりすることでドルトムント移籍1年目から大活躍したわけです。
しかしゲーゲンプレスが研究され相手チームに引き気味に構えられてしまうとなかなか勝てなくなってクロップ監督は解任、ドルトムントの経営陣はカウンターサッカー一辺倒ではなくポゼッションサッカー導入の必要性を感じたのでしょう、グアルディオラ時代のFCバルセロナのサッカースタイルを強くリスペクトしているトーマス・トゥヘル氏が新監督として招聘されます。
トゥヘル監督が二列目の選手に求めているのはバルサでいう8番や10番のような役割、つまりバックやピボーテ(守備的MF)からボールを受け、それを確実に3トップやオーバーラップしたサイドバックへ配球したり、ゴールにつながるようなアシストをしながらチャンスがあれば自分でもゴールを決めるという役割ではないかと思います。
理想の選手としてはシャビやイニエスタということになります。
逆にゲーゲンプレス時代の香川選手のように、トップ下でありながら中盤でのパス回しにあまり参加せず、センターFWのすぐそばにいて味方からのパスを待つようなセカンドストライカー的なプレーは求められていないので、トゥヘル体制になってから香川選手の出場機会がぐっと減ってしまったのではないでしょうか。
それがトゥヘル監督がいう「シンジは自由にプレーができない」という言葉の真意ではないかと推測します。
ですから、多くの人が期待している香川選手がドルトムントに移籍して1~2年目のようなプレーをし続けるかぎりトゥヘル監督には起用してもらえず、今のドルトムントで香川選手が生き残るためには、味方からボールを受けそれを3トップなどへ確実につないで中盤での攻撃の組み立ての中心となり、そこからゴールにつながるラストパスを数多く出すという、よりパサーに近いトップ下へとプレースタイルを変えていく必要があるように思います。
香川選手が「パサー」という新たな武器を身につけることに成功すれば、現在は彼が出場してもほとんど機能していない日本代表の4-2-3-1システムのトップ下のポジションでも、チームの勝利に大きく貢献する活躍ができるようになるはずです。
香川選手はバルサでプレーすることが夢だと語っていましたが、バルサのポゼッションサッカーを理想とするトゥヘル監督のもとで彼が課題として取り組んでいる「パサーとしてのトップ下」へのプレースタイルの転換は、もし香川選手が今この瞬間にバルサへ加入できたとしても、先発ポジションを獲得するために同じように乗り越えなければいけない課題だとも言えます。
試合に出てゴールがないと、マスコミやサポーターから失望の声が多くあがるかもしれませんが、パサーとして攻撃の組み立ての中心となることでチームを勝利に導き、それをトゥヘル監督が評価してくれるかぎり、香川選手はその他の雑音を気にする必要は一切ありませんし、そうした地道な仕事で自分の足元をしっかり固めた上で、アシストやゴールのような数字に残る結果を積み上げていけば良いのです。
香川選手がドルトムントでレギュラーポジションを手に入れるために「パサーとしてのトップ下」という新しい武器を身につけるチャレンジをしている今はとても重要なときであり、クラブで彼の努力の成果がハッキリと出るまでは辛抱してやり、UAE戦・タイ戦・オーストラリア戦のように中途半端な状態で香川選手を代表戦のトップ下で起用して自信を失わせるような愚は避けるべきです。
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■日本サッカー界、混乱の原因
前回記事で指摘したように、ハリルホジッチ監督の戦術選択の誤りによって、イラク戦が致命的な引き分けに終わる寸前だったところを山口選手のスーパーゴールに救われ、「(守備で)デュエルにこだわりすぎた」「監督の指示を聞きすぎてロングボール攻撃が多すぎた」という反省の声が選手たちから上がり、コンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守り、グラウンダーのショートパスを使った攻撃で貴重なゴールをあげたオーストラリア戦。
監督の判断ミスをピッチ内の選手たちが一生懸命カバーしているという日本代表の現状に大いなる不満を感じていますが、アウェーで1-1という結果について現時点では悪いものではないと思っています。
イラク戦のゲーム内容を見れば、ハリルジャパンが攻守両面でチーム組織の構築に遅れていたのは明らかで、アジアカップ2015からポステコグロウ監督が戦術にポゼッションサッカーを採用し、シュウォーツァー・ニール・ブレシアーノらの世代に見切りをつけ、積極的に若手を登用して計画的に世代交代も進めてきたオーストラリアと比べれば、特に試合の後半、守備重視のカウンターサッカーになってしまったことについてはやむを得なかったと思います。
あの試合もデュエルとか言って日本の選手がバラバラに一対一を挑んでいたら自爆していたことでしょう。
W杯の欧州予選・ユーロの予選ですと、あるグループの上位3チームがW杯で決勝トーナメントに行くだけの実力を持っているなんて状況が起こりえますし、予選10試合がすべて終わって勝ち点差1あるいは得失点差・総得点の差で本大会に出場できる、できないが決まるなんていうのもザラ。
だから自分たちと同じぐらいの実力の相手であっても、守備重視のカウンターサッカーでアウェーを戦い、最低でも勝ち点1を確保するような戦術を選択することも良くある事です。
日本サッカー界はこういう経験がまだ足りないように思います。
そんなオーストラリア戦のあと、日本のサッカー言論界を眺めていて強い違和感をおぼえたのが、セルジオ越後氏の「臆病なサッカーにがっかりした」というコラム。
(http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=19579)
「自陣に引いてチャンスを待つだけだった」とハリルジャパンのカウンターサッカーを批判していますが、この人ザックジャパンがブラジルW杯で負けた時、「スペイン・日本のようなパスサッカーは終わった」とかいって、ボールを長い時間支配するサッカーを批判していたんですが、わずか2年前にご自分で何を口走っていたのかもう忘れてしまったんでしょうか?
(http://www.nikkansports.com/brazil2014/column/sergio/
news/p-cl-tp0-20140621-1321445.html)
ブラジルW杯で日本が敗退したときに、「ザックジャパンはポゼッションサッカーのせいで負けた。世界で勝つためにはカウンターサッカーに転換しろ!」という意見が、マスコミを含む日本のサッカー界でかなり多かったと記憶していますし、日本サッカー協会がそういう声に引きずられてハリルホジッチ氏を連れてきたんじゃないですか。
ブラジルW杯のときにポゼッションサッカーを批判していたセルジオ氏が今ごろになってポゼッション派に変節したのだとしても、オーストラリアはアジアでは数少ないワールドクラスの相手であって、その相手にアウェー戦でボールポゼッション率でも
ゴール決定機の数でも上回って勝つようなサッカーをするためには、ザックジャパンが敗退したあともセルジオ氏の主張とは正反対に、ポゼッション戦術が得意な優秀な監督さんをヨーロッパあたりから日本代表に呼んでこなければいけなかったんですよ。
オーストラリアがロングボールをひたすら放り込むカウンターサッカーを捨てて、新しい監督のもとポゼッションサッカーを採用したのとは逆に、ブラジルW杯後に「ポゼッションサッカー悪玉論」が台頭した日本では、「タテに速いカウンターサッカー」をやるハリルホジッチ監督を呼んできて、ベタ引きできたシンガポールやカンボジアにカウンター攻撃のためのスペースを消されて苦しみ、今月のイラク戦ではロングボールの縦ポン・サッカーが機能せずあわやドローになりかかり、アウェーのオーストラリア戦で相手にボールを圧倒的にポゼッションされて「臆病なサッカーだ」と叩く人が出てくる始末。
ブラジルW杯以後の日本のサッカー界は混乱しているというか、本当にうろたえていますよね。
じゃあどうしろと言うのでしょうか。
「ポゼッションサッカー悪玉論」あるいは「カウンターサッカー悪玉論」みたいな、白か黒か・善か悪かの単純な二元論ほど、
日本サッカー界に大きな害を及ぼす考え方はありません。
ポゼッションサッカーとカウンターサッカーを相手やシチュエーションに合わせて両方やれるようにしておけば、戦術選択の幅が広がってより柔軟な戦い方ができるようになりますし、世界で日本が勝つためには理想主義(ポゼッション)と現実主義(カウンター)をうまく使い分けていくことが欠かせないと思います。
具体的にはオーストラリア戦の前半の戦い方をベースに、コンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守るのは同じで、あとはDFラインを低くして守備重視のカウンターサッカーをするか、それとも高く押し上げてパスサッカーをするか戦術を使い分けていくのです。
攻撃は原口選手のゴールシーンが一つの理想型ですが、ボールを奪ったらグラウンダーのショートパスをテンポ良く前方へつなぎ、わざと空けておいたバイタルエリアに侵入した味方にパスを出してラストパスの起点とし、最後はウラヘダイアゴナルランする味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。
カウンターでもポゼッションでも、センターFWが相手ゴールから離れるようにポジショニングすることで相手のバックを引きつけ、DFラインのウラのスペースをできるだけ広く保つというのは同じです。
こういう柔軟なサッカーを相手がサウジだろうがオーストラリアだろうがポルトガルだろうがやらなければいけません。
セルジオ氏と言えば、いつもJリーグ組を代表で使えといっていますね。
彼は、「代表にはコンディションの良い選手を選ぶべき」で「大半の海外組とJリーガーに、大きな力の差はないと考えている」から、代表には国内組を使えと主張しています。
(http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=19197)
私も、本当に実力があるなら国内組にも等しく出場チャンスが与えられるべきだと考えていますが、大半の海外組とJリーガーに大きな力の差はないという彼の意見には賛成できません。
オーストラリア戦の前半のような攻守にわたって組織的でプレースピードが速くプレスの掛け合いも厳しいインテンシティの高いサッカーを、残念ながら今のJリーグでは見ることはできませんし、国内組主体で先発メンバーを組み、ぶっつけ本番であの試合を戦ったら引き分けることも難しいと思います。
原口選手が相手GKとの一対一を制して貴重なゴールをあげてくれましたが、フィジカルコンタクトの強さ・ドリブルのスピードや技術・シュート決定力で彼に匹敵する「個の能力」を持ったJリーガーは、ほとんどいないんじゃないでしょうか。
Jであれだけゴールを量産している小林悠選手も、代表に来ると攻撃では消えている時間が長いですし、単純にJリーグのある選手が昨シーズン20ゴールあげたから、ドイツやスペイン・イングランドのクラブに移籍しても20ゴールあげられるとは言いにくいところがとても残念です。
ところで国内組だけで臨んだ東アジアカップ2015、ハリルジャパンは最下位に終わってしまったわけですが、そのときセルジオ氏はこんなことを言って批判していました。
「Jリーグのレベルが低いからアジアで勝てないということだよ」
(http://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20150810/338855.html)
「アジアで勝てないほどレベルの低いJリーグ」の選手が、ドイツやスペイン・イタリアでプレーしている大半の海外組と大きな力の差がないというのも理解不能なんですが、アジアで勝てないレベルの国内組を「コンディションが良い」という理由だけでW杯のアジア予選に出場させろというセルジオ氏の主張はもっと不可解です。
結局セルジオ氏の主張は「批判のための批判」なんですよね。
ザックジャパンのポゼッションサッカーを批判したかと思えば、ちょっと時間がたつとハリルジャパンのカウンターサッカーを「臆病で情けない」と批判する。
国内組で臨んだ日本代表が東アジアカップで最下位に終わり、「Jリーグのレベルが低いからアジアで勝てない」と断じておきながら、しばらくたつと主力の海外組を招集した代表チームを批判して「JリーガーをW杯のアジア予選で使え」という。
是々非々でものごとを論じるということができずに、日本代表がなにかやるたびにそれを否定し、いつもその正反対をやれというだけで、本当に無責任極まりないと思います。
にもかかわらず「日本サッカー界のご意見番」のように彼の主張をありがたがる一部の記者やサポーターがいて大変困るのですが、こういう無責任な主張に引きずられているから、ブラジルW杯以降の日本サッカー界はうろたえ、右往左往し、混乱しているのではないでしょうか。
サポーターの皆さんは、何も建設的なものを産み出さない「批判のための批判」に耳を貸さないようにしてください。
セルジオ氏のコラムは「絶対に正しいマニュアル」ではありません。絶対に。
10年ぐらい前まではセルジオ氏も日本の解説者のなかではマシな方だと思っていたんですが、実は、日本代表が何をやってもそれを批判するように組まれたアルゴリズムで動くAI(人工知能)が、代表戦が終わるたびにセルジオ氏のコラムを自動生成しているんじゃないかと疑いそうになるくらい、最近は本当にひどいと思います。
最後に余談ですが、中東出身のレフェリーでしたが、オーストラリア戦のジャッジは極めてノーマルでした。だからこそ日本対UAE戦の笛を吹いた、あのカタール人審判団のジャッジの異常さがあらためて際立ちます。
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当ブログ過去記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い
当ブログ過去記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い(その2)
監督の判断ミスをピッチ内の選手たちが一生懸命カバーしているという日本代表の現状に大いなる不満を感じていますが、アウェーで1-1という結果について現時点では悪いものではないと思っています。
イラク戦のゲーム内容を見れば、ハリルジャパンが攻守両面でチーム組織の構築に遅れていたのは明らかで、アジアカップ2015からポステコグロウ監督が戦術にポゼッションサッカーを採用し、シュウォーツァー・ニール・ブレシアーノらの世代に見切りをつけ、積極的に若手を登用して計画的に世代交代も進めてきたオーストラリアと比べれば、特に試合の後半、守備重視のカウンターサッカーになってしまったことについてはやむを得なかったと思います。
あの試合もデュエルとか言って日本の選手がバラバラに一対一を挑んでいたら自爆していたことでしょう。
W杯の欧州予選・ユーロの予選ですと、あるグループの上位3チームがW杯で決勝トーナメントに行くだけの実力を持っているなんて状況が起こりえますし、予選10試合がすべて終わって勝ち点差1あるいは得失点差・総得点の差で本大会に出場できる、できないが決まるなんていうのもザラ。
だから自分たちと同じぐらいの実力の相手であっても、守備重視のカウンターサッカーでアウェーを戦い、最低でも勝ち点1を確保するような戦術を選択することも良くある事です。
日本サッカー界はこういう経験がまだ足りないように思います。
そんなオーストラリア戦のあと、日本のサッカー言論界を眺めていて強い違和感をおぼえたのが、セルジオ越後氏の「臆病なサッカーにがっかりした」というコラム。
(http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=19579)
「自陣に引いてチャンスを待つだけだった」とハリルジャパンのカウンターサッカーを批判していますが、この人ザックジャパンがブラジルW杯で負けた時、「スペイン・日本のようなパスサッカーは終わった」とかいって、ボールを長い時間支配するサッカーを批判していたんですが、わずか2年前にご自分で何を口走っていたのかもう忘れてしまったんでしょうか?
(http://www.nikkansports.com/brazil2014/column/sergio/
news/p-cl-tp0-20140621-1321445.html)
ブラジルW杯で日本が敗退したときに、「ザックジャパンはポゼッションサッカーのせいで負けた。世界で勝つためにはカウンターサッカーに転換しろ!」という意見が、マスコミを含む日本のサッカー界でかなり多かったと記憶していますし、日本サッカー協会がそういう声に引きずられてハリルホジッチ氏を連れてきたんじゃないですか。
ブラジルW杯のときにポゼッションサッカーを批判していたセルジオ氏が今ごろになってポゼッション派に変節したのだとしても、オーストラリアはアジアでは数少ないワールドクラスの相手であって、その相手にアウェー戦でボールポゼッション率でも
ゴール決定機の数でも上回って勝つようなサッカーをするためには、ザックジャパンが敗退したあともセルジオ氏の主張とは正反対に、ポゼッション戦術が得意な優秀な監督さんをヨーロッパあたりから日本代表に呼んでこなければいけなかったんですよ。
オーストラリアがロングボールをひたすら放り込むカウンターサッカーを捨てて、新しい監督のもとポゼッションサッカーを採用したのとは逆に、ブラジルW杯後に「ポゼッションサッカー悪玉論」が台頭した日本では、「タテに速いカウンターサッカー」をやるハリルホジッチ監督を呼んできて、ベタ引きできたシンガポールやカンボジアにカウンター攻撃のためのスペースを消されて苦しみ、今月のイラク戦ではロングボールの縦ポン・サッカーが機能せずあわやドローになりかかり、アウェーのオーストラリア戦で相手にボールを圧倒的にポゼッションされて「臆病なサッカーだ」と叩く人が出てくる始末。
ブラジルW杯以後の日本のサッカー界は混乱しているというか、本当にうろたえていますよね。
じゃあどうしろと言うのでしょうか。
「ポゼッションサッカー悪玉論」あるいは「カウンターサッカー悪玉論」みたいな、白か黒か・善か悪かの単純な二元論ほど、
日本サッカー界に大きな害を及ぼす考え方はありません。
ポゼッションサッカーとカウンターサッカーを相手やシチュエーションに合わせて両方やれるようにしておけば、戦術選択の幅が広がってより柔軟な戦い方ができるようになりますし、世界で日本が勝つためには理想主義(ポゼッション)と現実主義(カウンター)をうまく使い分けていくことが欠かせないと思います。
具体的にはオーストラリア戦の前半の戦い方をベースに、コンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守るのは同じで、あとはDFラインを低くして守備重視のカウンターサッカーをするか、それとも高く押し上げてパスサッカーをするか戦術を使い分けていくのです。
攻撃は原口選手のゴールシーンが一つの理想型ですが、ボールを奪ったらグラウンダーのショートパスをテンポ良く前方へつなぎ、わざと空けておいたバイタルエリアに侵入した味方にパスを出してラストパスの起点とし、最後はウラヘダイアゴナルランする味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。
カウンターでもポゼッションでも、センターFWが相手ゴールから離れるようにポジショニングすることで相手のバックを引きつけ、DFラインのウラのスペースをできるだけ広く保つというのは同じです。
こういう柔軟なサッカーを相手がサウジだろうがオーストラリアだろうがポルトガルだろうがやらなければいけません。
セルジオ氏と言えば、いつもJリーグ組を代表で使えといっていますね。
彼は、「代表にはコンディションの良い選手を選ぶべき」で「大半の海外組とJリーガーに、大きな力の差はないと考えている」から、代表には国内組を使えと主張しています。
(http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=19197)
私も、本当に実力があるなら国内組にも等しく出場チャンスが与えられるべきだと考えていますが、大半の海外組とJリーガーに大きな力の差はないという彼の意見には賛成できません。
オーストラリア戦の前半のような攻守にわたって組織的でプレースピードが速くプレスの掛け合いも厳しいインテンシティの高いサッカーを、残念ながら今のJリーグでは見ることはできませんし、国内組主体で先発メンバーを組み、ぶっつけ本番であの試合を戦ったら引き分けることも難しいと思います。
原口選手が相手GKとの一対一を制して貴重なゴールをあげてくれましたが、フィジカルコンタクトの強さ・ドリブルのスピードや技術・シュート決定力で彼に匹敵する「個の能力」を持ったJリーガーは、ほとんどいないんじゃないでしょうか。
Jであれだけゴールを量産している小林悠選手も、代表に来ると攻撃では消えている時間が長いですし、単純にJリーグのある選手が昨シーズン20ゴールあげたから、ドイツやスペイン・イングランドのクラブに移籍しても20ゴールあげられるとは言いにくいところがとても残念です。
ところで国内組だけで臨んだ東アジアカップ2015、ハリルジャパンは最下位に終わってしまったわけですが、そのときセルジオ氏はこんなことを言って批判していました。
「Jリーグのレベルが低いからアジアで勝てないということだよ」
(http://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20150810/338855.html)
「アジアで勝てないほどレベルの低いJリーグ」の選手が、ドイツやスペイン・イタリアでプレーしている大半の海外組と大きな力の差がないというのも理解不能なんですが、アジアで勝てないレベルの国内組を「コンディションが良い」という理由だけでW杯のアジア予選に出場させろというセルジオ氏の主張はもっと不可解です。
結局セルジオ氏の主張は「批判のための批判」なんですよね。
ザックジャパンのポゼッションサッカーを批判したかと思えば、ちょっと時間がたつとハリルジャパンのカウンターサッカーを「臆病で情けない」と批判する。
国内組で臨んだ日本代表が東アジアカップで最下位に終わり、「Jリーグのレベルが低いからアジアで勝てない」と断じておきながら、しばらくたつと主力の海外組を招集した代表チームを批判して「JリーガーをW杯のアジア予選で使え」という。
是々非々でものごとを論じるということができずに、日本代表がなにかやるたびにそれを否定し、いつもその正反対をやれというだけで、本当に無責任極まりないと思います。
にもかかわらず「日本サッカー界のご意見番」のように彼の主張をありがたがる一部の記者やサポーターがいて大変困るのですが、こういう無責任な主張に引きずられているから、ブラジルW杯以降の日本サッカー界はうろたえ、右往左往し、混乱しているのではないでしょうか。
サポーターの皆さんは、何も建設的なものを産み出さない「批判のための批判」に耳を貸さないようにしてください。
セルジオ氏のコラムは「絶対に正しいマニュアル」ではありません。絶対に。
10年ぐらい前まではセルジオ氏も日本の解説者のなかではマシな方だと思っていたんですが、実は、日本代表が何をやってもそれを批判するように組まれたアルゴリズムで動くAI(人工知能)が、代表戦が終わるたびにセルジオ氏のコラムを自動生成しているんじゃないかと疑いそうになるくらい、最近は本当にひどいと思います。
最後に余談ですが、中東出身のレフェリーでしたが、オーストラリア戦のジャッジは極めてノーマルでした。だからこそ日本対UAE戦の笛を吹いた、あのカタール人審判団のジャッジの異常さがあらためて際立ちます。
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当ブログ過去記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い
当ブログ過去記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い(その2)
■日本代表、オーストラリアと勝ち点1を分ける(その3)
前回のつづき
それではまとめです。
日本代表がこの試合の前半戦で見せてくれた攻守にレベルの高いサッカーをこれからも絶対に続けていくべきです。
というか、ロシアW杯へ行きたいなら絶対に続けないといけません。
センターFWが意図的にゴールから遠ざかることで自分をマークするバックを引きつけ、それによってDFラインのウラのスペースを広く保っておき、ゾーンで守るコンパクトな守備ブロックから組織的にプレスをかけてボールを奪い返したら、自軍ゴールへ向かって走りながら後退する相手を攻め、あえて空けておいたバイタルエリアに侵入した味方にボールを受けさせてラストパスを出す基点をつくり、最後はDFラインのウラヘ抜ける味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。
これこそユーロ(欧州選手権)のようなハイレベルな大会で見られる世界最先端のパスサッカーです。
当研究所が日本代表にやって欲しい「パスサッカー」あるいは「ポゼッションサッカー」とはこれです。(下図)
(クリックで拡大)
しかし、まだまだ改善しなければいけないところはあります。
試合の後半は日本が守備ブロックを下げ過ぎてしまい、「カウンター」または「ポゼッション」の戦術を使い分けて味方の攻撃を再構築できるような、ボールを前へ運べる選手を投入せずに防戦一方になってしまったことについては反省点です。現時点での香川選手はそうした能力が不足しています。
今後のトレーニングでは、コンパクトな守備ブロックを保ったままDFラインを高めに維持し、チームでの組織的なボール奪取力をさらに高め、原口選手のゴールシーンのように、各選手がテンポ良くグラウンダーのパスをつなぐ質の高い攻撃を行うことで得点することを狙い、そのような攻撃を行う回数を1試合の中でどんどん増やしていけば良いのです。
それで1試合のボール保持率が50%を超えてくれば「パスサッカー」あるいは「ポゼッションサッカー」となり、DFラインを引き気味にして保持率が50%を下回れば守備重視の「カウンターサッカー」ということになります。
チーム全体で長い時間ボールを保持していても、選手1人ひとりがボールを持つ時間はできるだけ少なくするのが、世界最先端のポゼッションサッカーなのです。
レーブ氏が監督に就任した2006年時点において、ゲーム中にドイツ代表選手がボールを保持する平均時間は1回につき2.8秒だったそうですが、彼はこれを8年かけてトレーニングで計画的に短縮していき、ブラジルW杯で優勝したときには平均1秒になっていたそうです。
つまり、ドイツ代表はボールポゼッション率が50%を上回ったとしても、1人の選手が1度にボールをキープしている時間は平均1秒ほどしかなく、それだけテンポ良くしかも正確にパスが回るということなのです。
なぜそうするかと言えば、ボールを持ってグズグズしていると、相手ゴール前のスペースがどんどん無くなっていくからで、それはある意味「時間との勝負」だからです。
原口選手のゴールシーンでは、ボールをカットした原口・攻めの起点となるパスを出した長谷部・ラストパスを供給した本田の各選手がボールを保持していた時間はそれぞれ何秒だったか計測してみてください。
どうやら日本サッカー界では、選手がボールを3秒も4秒も持って「どこへパスを出そうかな」とキョロキョロしながらドリブルするサッカーを、1人の選手が1回に長い時間ボールを持つサッカーを「ポゼッションサッカー」だと誤解しているようです。
相手ゴール前に4人も5人もの日本の選手が足を止めてベッタリと張りつき、それによって敵のマーカーをゴール前に集結させ、敵味方の選手で大混雑しているペナルティエリアの周囲を、パスの出しどころが無い選手が左から中央へ、中央から右へと遠巻きにパスを回して、最後は苦しまぎれにクロスをゴール前へ放り込む。(下図)
これがブラジルW杯のギリシャ戦やロシアW杯アジア2次予選のシンガポール戦、3次予選のUAE戦で見られた「日本式ポゼッションサッカー」なのですが、これでは勝てないということは試合結果によって何度も証明されています。
そうではなくて、原口選手のゴールシーンに象徴される、この試合の前半戦で見せてくれたような攻守に高い組織力を誇る
「パスサッカー」をやってこそ、日本代表が世界で勝利するための道が開かれるのです。あとはこの戦術の完成度をどれだけ高めることができるかが勝負になってきます。
第一回の記事を読み、そんな素晴らしいサッカーをこのオーストラリア戦でやったハリルホジッチ監督をどうして解任しなければならないのか?と疑問に思った人もいたのではないでしょうか。
その答えは、こういうサッカースタイルは彼が目指していたものではないからです。
ハリルホジッチ監督がもともと武器としていた戦術は、守備は「デュエル」。
コンパクトなブロックで相手が使えるスペースを限定しながらゾーンで守るのとは正反対で、選手それぞれがバラバラに相手との一対一を仕掛けて勝ち、ボールを奪い返す守備のやり方。
レスターで大活躍したカンテのように個の守備力が高い選手が豊富にいるフランスのクラブならともかく、今の日本代表には現実的な守備戦術ではありません。
攻撃戦術もさほどレベルの高いものではなくて、単純なロングボールを前線に放り込んで一発でウラを狙うタイプのもので、これがハリルホジッチ式の「タテに速い攻撃」と呼ばれるものです。
しかしこれも昨年10月のイラン遠征でまったく機能せず、2次予選でシンガポールやカンボジアのように自陣にベタ引きでカウンターを狙ってくるような相手とばかり対戦したので、「センターバック2枚を残してあとは全員総攻撃だー!!」みたいな、相手ゴール前にこちらの4トップ5トップが張りつく「日本式ポゼッションサッカー」をやるようになっていったのです。
そして3次予選の初戦。
UAEに対してハリルジャパンは守備は「デュエル」、攻撃は「日本式ポゼッション」でいって初戦を落としてしまい、続くタイ戦で攻撃は少し改善されたものの、守備はあいかわらず「デュエル」で決定的なシーンをタイにつくられるなど不安定な戦いぶり。
つづくホームのイラク戦で、ハリルホジッチ監督は攻撃戦術をガラッと変えます。
この試合は清武選手を中心としたコレクティブカウンターから先制するなど前半は良い試合内容だったのですが、しばらくすると清武・柏木両選手が相手4バックの前のスペースに張りつき、吉田・森重の両CBからロングボールを放り込んで一発でDFラインのウラを狙っていく「タテに速い攻撃」をひたすら繰り返したのですが、これがやっぱり機能しません。
こういう攻撃は選手のポジショニング・ミスが原因なのかと思ったら、試合後の選手コメントから見て監督さんからの指示だったみたいですね。
守備もフィジカルの強いイラクの選手に一対一で劣勢となり「デュエル戦術」が崩壊、ボールを何度も奪われて逆にイラクにポゼッションされ、FKから簡単に失点する始末。もう少しのところでイラクと致命的な引き分けを演じてしまうところだったのです。
当研究所はタイ戦のあとにハリルホジッチ監督を解任すべきだと主張しましたが、それはその1試合だけを見て発作的に思いついたことではありません。
2次予選の初戦シンガポールとの試合からずっと彼の監督としての能力を評価し続け、出した結論なのです。
そして日本のW杯予選敗退にもつながりかねなかったあのイラク戦の戦術大転換、その戦術のあまりの低レベルさに当研究所は再度、忍耐の限界に達しました。
この試合の後、本田・清武選手から「タテに速い攻撃をしろという監督の指示を聞きすぎた」「遅攻と速攻を繰り返したり、自分たちで考えながらやらないと」などといった反省の声が一斉にあがり、岡崎選手からは「デュエルにとらわれすぎて相手にかわされてしまった」というコメントもありました。
そしてこのオーストラリア戦では「デュエル」を捨てて、コンパクトなブロックを90分間つくる「ゾーンディフェンス」で守り、攻撃は一発のロングボールで相手のウラを狙う「タテに速いサッカー」をやめ、前半の原口選手の先制ゴールシーンのように、グラウンダーのショートパスをテンポ良くつないで相手を崩す、欧州でみられるような世界標準の「パスサッカー戦術」に再び大転換したわけです。
攻撃 守備
UAE・タイ戦まで 日本式 デュエル
ポゼッションサッカー
イラク戦 ロングを多用した デュエル
ハリル式
タテに速いサッカー
(清武中心の
コレクティブカウンターは除く)
オーストラリア戦 グラウンダー使った ゾーン
パスサッカー
(前半のみ)
イラク戦からオーストラリア戦にかけて日本の戦術がガラッと変わったことに気づかずに、「ハリルが縦に速いサッカーって言っているから、就任してからオーストラリア戦までずっとそうだったんだろ」ぐらいにしか思っていない、ろくにサッカーの中身を見ていない記者や解説者が本当に多いんですが、このことをちゃんと見抜くことができていたのは後藤健生さんぐらいじゃないですか。
オーストラリア戦の守備のやり方は、以前どっかで見たことあるなと思っていたのですが、リオ五輪の手倉森ジャパンと似ていないでしょうか。
そして日本の選手のフィジカルコンタクトのやり方も大きく変わり、自分の太ももの外側を相手に当ててボールを奪い返すというもの。
これでイラクとのボールの奪い合いでボロボロだった日本の選手たちが、イラクよりフィジカルコンタクトに強いオーストラリアの選手たちにガチガチ当たっていき、コンパクトな守備ブロックをつくることで1人ひとりが守るべきスペースが狭くて済むということの相乗効果もあって、前半はオーストラリアからボールを何度も奪い、決定的な仕事をさせませんでした。
中盤の守備の要、山口・長谷部両選手もこの守り方に手応えを感じたのではないでしょうか。
これもアジア予選で選手がイラン・イラクにフィジカル負けしたことで手倉森さんがチームに導入し、リオ五輪の初戦ナイジェリア戦では選手たちがビビッてズルズル下がってしまったのですが、気を取り直して挑んだコロンビア戦やスウェーデン戦で効果を発揮したやり方です。
(当ブログ過去記事・手倉森ジャパンが化けた?)
タイ戦のあとに緊急入閣した手倉森コーチが縁の下の力持ちとなって良い仕事をしてくれたんじゃないかと推測しています。
ヘソを曲げて再びイラク戦以前の戦術に戻されても困るんですが、ハリルホジッチ監督は大事な試合で戦術の選択を何度も間違えており、チームの強化が全然進んでいないということはイラク戦までのW杯予選11試合を見れば明らか。
戦術だけでなく選手の起用法もまずくチームが不振に陥る原因になっています。
彼がこだわっていた本田選手の右ウイング起用ですが、ドリブルするとき左足しか使えずスピードも低下してきているというプレーの内容を見れば、右ウイングというポジションに本田選手が向いていないのは明らかで、当研究所は1年前からセンターFWや攻撃的なボランチへのコンバートを提案してきたのですが、オーストラリア戦での本田選手は「偽の9番」的に動いてチームに先制ゴールをもたらすアシストをするなど素晴らしい貢献をしてくれました。
「ハリルの大バクチが当たった」と書いたマスメディアがありましたが、プレーの特徴を見極めれば本田選手のセンターFW起用はギャンブルでもなんでもなくて「論理的必然」であり、気づくのが遅すぎます。
絶不調の香川選手を彼がボロボロになってしまうまでトップ下で起用し続けるなど、ハリル監督はプレーの特徴や長所短所・能力の優劣を見極めて代表選手を適材適所のポジションで使ってあげるということができていません。
実はオーストラリア代表、この試合のために用意していたゲームプランが失敗していたように思われます。
日本対イラク戦のスカウティングビデオから、ポステコグロウ監督は日本はオーストラリア戦も「デュエル」で来ると予測していたのではないでしょうか。そこでダイアモンド型にした4-4-2でピッチ中央を厚くし、イラクに一対一でボロボロに負けてもなおデュエルを挑んでくる日本を中盤の攻防でコテンパンにやっつけゴールを奪うという腹づもりだったのではないかと思います。
ところがハリルジャパンは全然予想していなかったゾーンディフェンスで守ってきて、日本の守備ブロックの中へ入れる「攻めのパス」がまったくつながらずに大苦戦、そうこうしているうちに先制ゴールを浴びてしまうなどゲームプランを完全に狂わされてしまいます。
サウジからメルボルンへの移動も欧州ーアジア間に匹敵する移動距離であり、オーストラリアの選手も疲労が抜けきっていませんでしたから、できれば日本としては勝っておきたい試合でした。
そこで清武選手のように、中盤でボールを前に運ぶことができて本田・原口・小林の3人に攻めの起点となるようなパスを数多く配球できる選手をトップ下に起用していれば、ゲームプランが狂って苦しんでいた相手から前半にもう1点ぐらい取れていたかもしれませんし、アンカーのジェディナクを守備に奔走させることで相手の攻撃の起点を封じ、それによってこの試合全体のボールポゼッション率を50%ぐらいまで挽回できれば、日本はもっと楽にゲームを進めることができたのではないでしょうか。
相手のフォーメーションに完全に合わせてマッチアップでズレが生じないように守るだけがサッカーではありませんし、90分間香川選手を起用しつづけたことで特に後半は防戦一方になってしまったことについても、ハリル監督の選手起用法に疑問が残りました。
香川選手がパスの起点となるジェディナクを抑えていたのだからあれでいいんだという報道も見かけましたが、ならば同じタスクを清武選手に与えながら前述のような攻めの中心になってもらえば良いでしょうし、90分間守るだけでいいのなら香川選手でなければいけない必然性はなく、もっと守備が得意な選手をトップ下に入れたら良かったのではないでしょうか。
せめて同点にされたあとからでも、ボールを奪い返したあとに日本の選手が攻め上がることができるように中盤でボールを前へ運ぶことが可能な選手を入れるべきでしたが、ハリルホジッチ監督はゲームの流れを見て、適切な交代選手を使っていくということが相変わらずできていません。
ハリルホジッチ監督は頭が固くて思考に柔軟性が乏しく、プレーの中身で評価するのではなくレスターやドルトムントに所属しているからという「ブランド重視」でベテラン偏重の選手起用を繰り返し、若手への世代交代にも失敗しかかっています。
自虐的でドMな一部のサポーターから「日本の選手がヘタクソだから、誰が監督をやっても同じ」という意見があがっていますが、そんなことはありません。より優秀な監督を呼んでくることが最低条件になりますが、リーダー(監督)が変わればチームも試合の内容・結果もガラッと変わるはずです。
以上のことを総合的に判断して、より能力の髙い人材が確保できているなら今のタイミングでハリルホジッチ監督を解任すべきだと思います。
その用意ができていないなら手倉森さんをとりあえず暫定監督にしてその間に優秀な人材を探して次期監督にすえ、もし手倉森さんが次のサウジ戦以降、結果・内容ともに満足のいく采配ができるようなら彼に任せても良いかもしれません。
もちろん手倉森さんに代えて100%W杯へ行けるという保証はありませんし、当然リスクはあります。
しかし私がJFA会長や技術委員長なら、現時点でハリルホジッチ氏を解任しないことの方がリスクが高いと判断しますし、このまま彼に代表チームを任せることでW杯にいけなくなったり、JFA会長や技術委員長としての「サッカーを見る目」や信用に傷がつくことの方を恐れます。
次の日本対サウジ戦は非常に重要な試合となりましたが、サウジ代表のファンマルバイク氏は手堅いサッカーをやってくる手ごわい監督さんで、監督の能力の差が試合の勝敗を決めるという事態は絶対に避けなければいけません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2016.10.11 イティハド・スタジアム(メルボルン)
オーストラリア 1 - 1 日本
ジェディナク52'(PK) 原口 5'
GK ライアン GK 西川
DF スミス DF 酒井高
スピラノビッチ 吉田
セイズンバリー 森重
マクゴーワン 槙野
MF ジェディナク MF 山口
ルオンゴ 長谷部
ムーイ 小林
(レッキー 81) (清武 81)
ロギッチ 香川
原口
FW ギアンヌ (丸山 90+)
(クルーズ 57)
ユリッチ FW 本田
(ケーヒル 70) (浅野 84)
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それではまとめです。
日本代表がこの試合の前半戦で見せてくれた攻守にレベルの高いサッカーをこれからも絶対に続けていくべきです。
というか、ロシアW杯へ行きたいなら絶対に続けないといけません。
センターFWが意図的にゴールから遠ざかることで自分をマークするバックを引きつけ、それによってDFラインのウラのスペースを広く保っておき、ゾーンで守るコンパクトな守備ブロックから組織的にプレスをかけてボールを奪い返したら、自軍ゴールへ向かって走りながら後退する相手を攻め、あえて空けておいたバイタルエリアに侵入した味方にボールを受けさせてラストパスを出す基点をつくり、最後はDFラインのウラヘ抜ける味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。
これこそユーロ(欧州選手権)のようなハイレベルな大会で見られる世界最先端のパスサッカーです。
当研究所が日本代表にやって欲しい「パスサッカー」あるいは「ポゼッションサッカー」とはこれです。(下図)
(クリックで拡大)
しかし、まだまだ改善しなければいけないところはあります。
試合の後半は日本が守備ブロックを下げ過ぎてしまい、「カウンター」または「ポゼッション」の戦術を使い分けて味方の攻撃を再構築できるような、ボールを前へ運べる選手を投入せずに防戦一方になってしまったことについては反省点です。現時点での香川選手はそうした能力が不足しています。
今後のトレーニングでは、コンパクトな守備ブロックを保ったままDFラインを高めに維持し、チームでの組織的なボール奪取力をさらに高め、原口選手のゴールシーンのように、各選手がテンポ良くグラウンダーのパスをつなぐ質の高い攻撃を行うことで得点することを狙い、そのような攻撃を行う回数を1試合の中でどんどん増やしていけば良いのです。
それで1試合のボール保持率が50%を超えてくれば「パスサッカー」あるいは「ポゼッションサッカー」となり、DFラインを引き気味にして保持率が50%を下回れば守備重視の「カウンターサッカー」ということになります。
チーム全体で長い時間ボールを保持していても、選手1人ひとりがボールを持つ時間はできるだけ少なくするのが、世界最先端のポゼッションサッカーなのです。
レーブ氏が監督に就任した2006年時点において、ゲーム中にドイツ代表選手がボールを保持する平均時間は1回につき2.8秒だったそうですが、彼はこれを8年かけてトレーニングで計画的に短縮していき、ブラジルW杯で優勝したときには平均1秒になっていたそうです。
つまり、ドイツ代表はボールポゼッション率が50%を上回ったとしても、1人の選手が1度にボールをキープしている時間は平均1秒ほどしかなく、それだけテンポ良くしかも正確にパスが回るということなのです。
なぜそうするかと言えば、ボールを持ってグズグズしていると、相手ゴール前のスペースがどんどん無くなっていくからで、それはある意味「時間との勝負」だからです。
原口選手のゴールシーンでは、ボールをカットした原口・攻めの起点となるパスを出した長谷部・ラストパスを供給した本田の各選手がボールを保持していた時間はそれぞれ何秒だったか計測してみてください。
どうやら日本サッカー界では、選手がボールを3秒も4秒も持って「どこへパスを出そうかな」とキョロキョロしながらドリブルするサッカーを、1人の選手が1回に長い時間ボールを持つサッカーを「ポゼッションサッカー」だと誤解しているようです。
相手ゴール前に4人も5人もの日本の選手が足を止めてベッタリと張りつき、それによって敵のマーカーをゴール前に集結させ、敵味方の選手で大混雑しているペナルティエリアの周囲を、パスの出しどころが無い選手が左から中央へ、中央から右へと遠巻きにパスを回して、最後は苦しまぎれにクロスをゴール前へ放り込む。(下図)
これがブラジルW杯のギリシャ戦やロシアW杯アジア2次予選のシンガポール戦、3次予選のUAE戦で見られた「日本式ポゼッションサッカー」なのですが、これでは勝てないということは試合結果によって何度も証明されています。
そうではなくて、原口選手のゴールシーンに象徴される、この試合の前半戦で見せてくれたような攻守に高い組織力を誇る
「パスサッカー」をやってこそ、日本代表が世界で勝利するための道が開かれるのです。あとはこの戦術の完成度をどれだけ高めることができるかが勝負になってきます。
第一回の記事を読み、そんな素晴らしいサッカーをこのオーストラリア戦でやったハリルホジッチ監督をどうして解任しなければならないのか?と疑問に思った人もいたのではないでしょうか。
その答えは、こういうサッカースタイルは彼が目指していたものではないからです。
ハリルホジッチ監督がもともと武器としていた戦術は、守備は「デュエル」。
コンパクトなブロックで相手が使えるスペースを限定しながらゾーンで守るのとは正反対で、選手それぞれがバラバラに相手との一対一を仕掛けて勝ち、ボールを奪い返す守備のやり方。
レスターで大活躍したカンテのように個の守備力が高い選手が豊富にいるフランスのクラブならともかく、今の日本代表には現実的な守備戦術ではありません。
攻撃戦術もさほどレベルの高いものではなくて、単純なロングボールを前線に放り込んで一発でウラを狙うタイプのもので、これがハリルホジッチ式の「タテに速い攻撃」と呼ばれるものです。
しかしこれも昨年10月のイラン遠征でまったく機能せず、2次予選でシンガポールやカンボジアのように自陣にベタ引きでカウンターを狙ってくるような相手とばかり対戦したので、「センターバック2枚を残してあとは全員総攻撃だー!!」みたいな、相手ゴール前にこちらの4トップ5トップが張りつく「日本式ポゼッションサッカー」をやるようになっていったのです。
そして3次予選の初戦。
UAEに対してハリルジャパンは守備は「デュエル」、攻撃は「日本式ポゼッション」でいって初戦を落としてしまい、続くタイ戦で攻撃は少し改善されたものの、守備はあいかわらず「デュエル」で決定的なシーンをタイにつくられるなど不安定な戦いぶり。
つづくホームのイラク戦で、ハリルホジッチ監督は攻撃戦術をガラッと変えます。
この試合は清武選手を中心としたコレクティブカウンターから先制するなど前半は良い試合内容だったのですが、しばらくすると清武・柏木両選手が相手4バックの前のスペースに張りつき、吉田・森重の両CBからロングボールを放り込んで一発でDFラインのウラを狙っていく「タテに速い攻撃」をひたすら繰り返したのですが、これがやっぱり機能しません。
こういう攻撃は選手のポジショニング・ミスが原因なのかと思ったら、試合後の選手コメントから見て監督さんからの指示だったみたいですね。
守備もフィジカルの強いイラクの選手に一対一で劣勢となり「デュエル戦術」が崩壊、ボールを何度も奪われて逆にイラクにポゼッションされ、FKから簡単に失点する始末。もう少しのところでイラクと致命的な引き分けを演じてしまうところだったのです。
当研究所はタイ戦のあとにハリルホジッチ監督を解任すべきだと主張しましたが、それはその1試合だけを見て発作的に思いついたことではありません。
2次予選の初戦シンガポールとの試合からずっと彼の監督としての能力を評価し続け、出した結論なのです。
そして日本のW杯予選敗退にもつながりかねなかったあのイラク戦の戦術大転換、その戦術のあまりの低レベルさに当研究所は再度、忍耐の限界に達しました。
この試合の後、本田・清武選手から「タテに速い攻撃をしろという監督の指示を聞きすぎた」「遅攻と速攻を繰り返したり、自分たちで考えながらやらないと」などといった反省の声が一斉にあがり、岡崎選手からは「デュエルにとらわれすぎて相手にかわされてしまった」というコメントもありました。
そしてこのオーストラリア戦では「デュエル」を捨てて、コンパクトなブロックを90分間つくる「ゾーンディフェンス」で守り、攻撃は一発のロングボールで相手のウラを狙う「タテに速いサッカー」をやめ、前半の原口選手の先制ゴールシーンのように、グラウンダーのショートパスをテンポ良くつないで相手を崩す、欧州でみられるような世界標準の「パスサッカー戦術」に再び大転換したわけです。
攻撃 守備
UAE・タイ戦まで 日本式 デュエル
ポゼッションサッカー
イラク戦 ロングを多用した デュエル
ハリル式
タテに速いサッカー
(清武中心の
コレクティブカウンターは除く)
オーストラリア戦 グラウンダー使った ゾーン
パスサッカー
(前半のみ)
イラク戦からオーストラリア戦にかけて日本の戦術がガラッと変わったことに気づかずに、「ハリルが縦に速いサッカーって言っているから、就任してからオーストラリア戦までずっとそうだったんだろ」ぐらいにしか思っていない、ろくにサッカーの中身を見ていない記者や解説者が本当に多いんですが、このことをちゃんと見抜くことができていたのは後藤健生さんぐらいじゃないですか。
オーストラリア戦の守備のやり方は、以前どっかで見たことあるなと思っていたのですが、リオ五輪の手倉森ジャパンと似ていないでしょうか。
そして日本の選手のフィジカルコンタクトのやり方も大きく変わり、自分の太ももの外側を相手に当ててボールを奪い返すというもの。
これでイラクとのボールの奪い合いでボロボロだった日本の選手たちが、イラクよりフィジカルコンタクトに強いオーストラリアの選手たちにガチガチ当たっていき、コンパクトな守備ブロックをつくることで1人ひとりが守るべきスペースが狭くて済むということの相乗効果もあって、前半はオーストラリアからボールを何度も奪い、決定的な仕事をさせませんでした。
中盤の守備の要、山口・長谷部両選手もこの守り方に手応えを感じたのではないでしょうか。
これもアジア予選で選手がイラン・イラクにフィジカル負けしたことで手倉森さんがチームに導入し、リオ五輪の初戦ナイジェリア戦では選手たちがビビッてズルズル下がってしまったのですが、気を取り直して挑んだコロンビア戦やスウェーデン戦で効果を発揮したやり方です。
(当ブログ過去記事・手倉森ジャパンが化けた?)
タイ戦のあとに緊急入閣した手倉森コーチが縁の下の力持ちとなって良い仕事をしてくれたんじゃないかと推測しています。
ヘソを曲げて再びイラク戦以前の戦術に戻されても困るんですが、ハリルホジッチ監督は大事な試合で戦術の選択を何度も間違えており、チームの強化が全然進んでいないということはイラク戦までのW杯予選11試合を見れば明らか。
戦術だけでなく選手の起用法もまずくチームが不振に陥る原因になっています。
彼がこだわっていた本田選手の右ウイング起用ですが、ドリブルするとき左足しか使えずスピードも低下してきているというプレーの内容を見れば、右ウイングというポジションに本田選手が向いていないのは明らかで、当研究所は1年前からセンターFWや攻撃的なボランチへのコンバートを提案してきたのですが、オーストラリア戦での本田選手は「偽の9番」的に動いてチームに先制ゴールをもたらすアシストをするなど素晴らしい貢献をしてくれました。
「ハリルの大バクチが当たった」と書いたマスメディアがありましたが、プレーの特徴を見極めれば本田選手のセンターFW起用はギャンブルでもなんでもなくて「論理的必然」であり、気づくのが遅すぎます。
絶不調の香川選手を彼がボロボロになってしまうまでトップ下で起用し続けるなど、ハリル監督はプレーの特徴や長所短所・能力の優劣を見極めて代表選手を適材適所のポジションで使ってあげるということができていません。
実はオーストラリア代表、この試合のために用意していたゲームプランが失敗していたように思われます。
日本対イラク戦のスカウティングビデオから、ポステコグロウ監督は日本はオーストラリア戦も「デュエル」で来ると予測していたのではないでしょうか。そこでダイアモンド型にした4-4-2でピッチ中央を厚くし、イラクに一対一でボロボロに負けてもなおデュエルを挑んでくる日本を中盤の攻防でコテンパンにやっつけゴールを奪うという腹づもりだったのではないかと思います。
ところがハリルジャパンは全然予想していなかったゾーンディフェンスで守ってきて、日本の守備ブロックの中へ入れる「攻めのパス」がまったくつながらずに大苦戦、そうこうしているうちに先制ゴールを浴びてしまうなどゲームプランを完全に狂わされてしまいます。
サウジからメルボルンへの移動も欧州ーアジア間に匹敵する移動距離であり、オーストラリアの選手も疲労が抜けきっていませんでしたから、できれば日本としては勝っておきたい試合でした。
そこで清武選手のように、中盤でボールを前に運ぶことができて本田・原口・小林の3人に攻めの起点となるようなパスを数多く配球できる選手をトップ下に起用していれば、ゲームプランが狂って苦しんでいた相手から前半にもう1点ぐらい取れていたかもしれませんし、アンカーのジェディナクを守備に奔走させることで相手の攻撃の起点を封じ、それによってこの試合全体のボールポゼッション率を50%ぐらいまで挽回できれば、日本はもっと楽にゲームを進めることができたのではないでしょうか。
相手のフォーメーションに完全に合わせてマッチアップでズレが生じないように守るだけがサッカーではありませんし、90分間香川選手を起用しつづけたことで特に後半は防戦一方になってしまったことについても、ハリル監督の選手起用法に疑問が残りました。
香川選手がパスの起点となるジェディナクを抑えていたのだからあれでいいんだという報道も見かけましたが、ならば同じタスクを清武選手に与えながら前述のような攻めの中心になってもらえば良いでしょうし、90分間守るだけでいいのなら香川選手でなければいけない必然性はなく、もっと守備が得意な選手をトップ下に入れたら良かったのではないでしょうか。
せめて同点にされたあとからでも、ボールを奪い返したあとに日本の選手が攻め上がることができるように中盤でボールを前へ運ぶことが可能な選手を入れるべきでしたが、ハリルホジッチ監督はゲームの流れを見て、適切な交代選手を使っていくということが相変わらずできていません。
ハリルホジッチ監督は頭が固くて思考に柔軟性が乏しく、プレーの中身で評価するのではなくレスターやドルトムントに所属しているからという「ブランド重視」でベテラン偏重の選手起用を繰り返し、若手への世代交代にも失敗しかかっています。
自虐的でドMな一部のサポーターから「日本の選手がヘタクソだから、誰が監督をやっても同じ」という意見があがっていますが、そんなことはありません。より優秀な監督を呼んでくることが最低条件になりますが、リーダー(監督)が変わればチームも試合の内容・結果もガラッと変わるはずです。
以上のことを総合的に判断して、より能力の髙い人材が確保できているなら今のタイミングでハリルホジッチ監督を解任すべきだと思います。
その用意ができていないなら手倉森さんをとりあえず暫定監督にしてその間に優秀な人材を探して次期監督にすえ、もし手倉森さんが次のサウジ戦以降、結果・内容ともに満足のいく采配ができるようなら彼に任せても良いかもしれません。
もちろん手倉森さんに代えて100%W杯へ行けるという保証はありませんし、当然リスクはあります。
しかし私がJFA会長や技術委員長なら、現時点でハリルホジッチ氏を解任しないことの方がリスクが高いと判断しますし、このまま彼に代表チームを任せることでW杯にいけなくなったり、JFA会長や技術委員長としての「サッカーを見る目」や信用に傷がつくことの方を恐れます。
次の日本対サウジ戦は非常に重要な試合となりましたが、サウジ代表のファンマルバイク氏は手堅いサッカーをやってくる手ごわい監督さんで、監督の能力の差が試合の勝敗を決めるという事態は絶対に避けなければいけません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2016.10.11 イティハド・スタジアム(メルボルン)
オーストラリア 1 - 1 日本
ジェディナク52'(PK) 原口 5'
GK ライアン GK 西川
DF スミス DF 酒井高
スピラノビッチ 吉田
セイズンバリー 森重
マクゴーワン 槙野
MF ジェディナク MF 山口
ルオンゴ 長谷部
ムーイ 小林
(レッキー 81) (清武 81)
ロギッチ 香川
原口
FW ギアンヌ (丸山 90+)
(クルーズ 57)
ユリッチ FW 本田
(ケーヒル 70) (浅野 84)
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■日本代表、オーストラリアと勝ち点1を分ける(その2)
前回のつづき
日本代表各選手の個人評価です。
この試合、特筆すべき活躍だったのはまず原口選手。本田選手のスルーパスに絶妙のタイミングでウラヘ抜け出し、ドリブルからGKとの一対一を制して冷静にゴールを決めてくれました。彼のスピードあるドリブルでこの試合何度も左サイドを切り裂き、本田選手のシュート決定機をつくり出すなど攻撃面で最大の貢献。
ただし、相手にPKを与えたプレーは完全に冷静さを失っていました。リオ五輪のナイジェリア戦で塩谷選手が同じようなプレーから痛いPKを取られていましたが、あのような場面でフィジカルコンタクトをするのは慎重の上にも慎重に行くべきですし、相手の足をひっかけないように注意しながらボールだけを自分の足でつついてCKへ逃れるか、ユリッチの背後を右からではなく左から回り込んで自分が守るべきゴールと相手選手との間にポジショニングし、相手のシュートなりパスを足を出して防ぐべきでした。
原口選手は6月のキリンカップ・ブルガリア戦でも同じような形で相手にPKを献上しており、そこでしっかり反省できていなかったのがとても残念。ユリッチはゴールから遠ざかる感じでボールを受け、ゴール前には何人もの味方が守っていて、原口選手の戻りが間に合わないなら間に合わないで、あそこまでパニック気味に体当たりしなくても良かったように思います。原口選手の闘争心あふれるプレーはとても魅力的なのですが、ハートは熱くても頭はいつも冷静にお願いします。
センターFWとしてプレーした本田選手は「偽の9番」ぎみに動いて、特に前半は素晴らしい活躍。
相手ゴールからあえて遠ざかるようなポジショニングでDFラインのウラを広く保っていたのはクレバーな動きで、彼はフィジカルコンタクトに強いので足元にちゃんとボールが収まって前線で攻めの基点をつくることが何度もできましたし、素早い反転から原口選手のゴールをアシストしたプレーは秀逸の一言。左サイドを突破した原口選手に相手の目を引きつけて、彼の中央への折り返しから本田選手がシュートしてもう少しで追加点という良いプレーもありました。
岡崎選手ではこうはいかず、日本代表で2トップのフォーメーションを使う時にだけ、岡崎選手をセカンド・ストライカーとして起用すべきです。
ただこのオーストラリア戦からもわかるように、今のところ本田選手にセンターFWとして90分間プレーするだけの持久力がないというのは以前に当研究所が指摘した通りです。
かねてからお約束していたとおり「本田選手再生策」をここで提案しますが、30歳という彼の年齢は老け込むには早すぎます。本田選手のプレーから急速に持久力やキレが失われたのは、シーズンオフにアジア各国やアメリカで子供たちにサッカーを教えるのに忙しすぎて、走り込みなどのスタミナ強化系のトレーニングが不足しているからではないでしょうか。
本田選手のVO2MAX値が現在いくらか知りませんが、普通のサッカー選手に比べかなり低下している可能性があり、OBLAトレーニングの実施を強くお勧めします。運動開始数分後に心拍数が安定してから毎分140~160回の心拍数を維持するような素走りを30~40分間、専門的に言えばVO2MAX値の50~70%にあたる負荷がかかるようにした持久走を、クラブの練習も含めてできれば毎週2回は行うのです。
例えば日曜の午後にセリエAの試合があって、クラブから本田選手がベンチ外だという知らせが来たとします。そこで日曜の午前中にOBLAトレーニングとして前述の条件を守った素走りを30~40分実施し、午後はクラブの試合をスタジアムで観戦、水曜の夜にコッパイタリアの試合があってやはりゲームに出られなかったら、その日の日中にOBLAトレーニングとして走り込みを実施します。最初はきつくてクラブの練習中も体がいつも以上に重く感じるかもしれませんが、それを乗り切ると本田選手のプレーにスタミナとキレが戻ってくるはずです。乳酸が蓄積しすぎるとケガのもとですので、専門のフィジカルコーチに必ずついてもらって無理のない練習計画を立てて実施して欲しいと思います。このブログを見ている方で本田選手に直接連絡が取れる方は是非ともこのことを伝えてください。
本田選手は自分の長所を生かせない右ウイングでプレーし続けたことで、キャリアの終盤の大事な2年を無駄にしてしまったように思われますが、彼は右ウイングよりもASローマのトッティのように「偽の9番」的なセンターFWとしてプレーした方が適性があるように思われますし、ゴールチャンスを何度もつくったこの試合の自分のプレーにもっと自信を持つべきです。持久力さえ戻ってくれば本田選手の1トップは日本代表の強力な武器になりえます。バッカの牙城を崩すのは容易ではないかもしれませんが、ミランでも「偽の9番」としての起用や、バッカと本田選手の2トップを戦術オプションとしてモンテッラ監督に提案してみてはどうでしょうか。
長谷部選手は、中盤で厳しく相手にプレスをかけてボールをたびたび奪い返すなど好守備が光りましたし、攻めては、的確かつすばやい決断で本田選手に効果的なパスを供給し、先制ゴールの基点となるなど攻守に素晴らしい出来でした。
山口選手は、イラクよりフィジカル能力が高いオーストラリア相手に臆することなくガチガチ当たりに行き、チームがボールを奪い返すことに大きな貢献。不調にでも陥らないかぎり、彼をスタメンから外すべきではないと思います。
逆に酒井高選手は、サイドで数的不利をつくられている状況において、あきらかにプレスが間に合わないタイミングでロギッチへの縦パスに食いつき右サイドを突破され、スミスに中央へのクロスを許してPKを誘発する原因に。このプレーはサウジやUAEなど3次予選の他のライバル国によって必ず研究されるでしょうし、こちらとしても対策を用意しておくことが欠かせません。
高徳選手はアバウトなバックパスを出して、もう少しでオーストラリアの選手にかっさらわれそうになるなど、失点につながりかねないミスを連発しています。彼のプレーの中身を評価するのではなく「HSVで先発しているから」という理由だけで起用するのは本当にやめて欲しいです。
PK戦はキッカー有利というのが当研究所の考え方ですが、西川選手はまたしても下手にヤマをかけて動くのが早すぎたんじゃないでしょうか。ゴールの左右上下の両スミはたとえヤマかけが当たったとしてもGKがシュートをセーブすることはかなり困難ですから、初めから捨ててもやむを得ないと思います。
それよりも、ジェディナクが右利きというデータは事前に頭に入っていたと思いますが、キックモーションに入ってからボールを蹴るギリギリの瞬間まで相手を良く見ていれば、ボールにインパクトする直前に彼の右足首が大きく開くことで、真ん中に立っている西川選手から見て少なくともゴールの左半分にボールが飛んでくると読めるはずです。そこで左に飛べば、ジェディナクのシュートはコースが甘くゴールの真ん中よりやや左にボールが飛んできたので、西川選手がセーブ出来ていた可能性は十分ありました。
プレッシャーに負けて相手より先に飛んでその逆に蹴られてしまうのではなく、ギリギリ最後の瞬間まで相手を良く見ていて、助走の角度やスピード、足首が開く角度を良く観察して、自分の右にシュートが来るか、左に来るか、それともパネンカかを読まないと。
西川選手はGKとして体が小さいのですから、そういう読みのところで世界の誰よりもがんばらないとワールドクラスのGKにはなれません。GKがゴールをアシストするよりもPKや決定的なシュートを1本セーブしてくれた方がよほどありがたいですし、彼の努力の方向性が間違っています。残念ながら現在の日本代表で世界から最も遠いポジションがGKになってしまっています。
香川選手は、守備でそれなりにがんばっていましたが、攻撃では存在感がほぼありませんでした。まだ復調していない彼を代表戦に出すのは早すぎました。
本来であれば先制ゴールの基点となる長谷部選手から本田選手へのパスはトップ下の彼に出して欲しいのです。しかしあれが香川選手だと、自分の正面にいる本田選手を見て、次に左サイドを走る原口選手を見て、さらに逆サイドを駆け上がる小林選手を見て、誰にパスを出すか迷いながらボールを持ちすぎているうちに3人とも相手にマークされ、そうこうしているうちに相手のボランチが迫ってきてクルッと半回転してバックパス、というパターンが代表でもクラブでも本当に多いのです。長谷部キャプテンのシンキングスピードや勇気・決断力を本当に見習ってほしいです。
ブンデスリーガ前節のレバークーゼン戦を見ましたが、出場時間は短かったもののバックやボランチからパスを受けてそれを正確に前へつなぐ、ということを地道にやろうとしていたのが見てとれ、ようやく正しい方向へ歩みだすことができていたように思います。そこから次のステップとしてゴールにつながるようなラストパスを出す回数を増やすことでトゥヘル監督の信頼と先発ポジションを取り戻すように努力すべきです。その試合で唯一のシュートチャンスでは早く打ちたいと焦るあまり大きく外してしまいましたが、右からスライディングに来た相手選手をボールを右側へ動かすことでかわしてから落ち着いてシュートすれば決まったかもしれません。ゴール前での決定機こそ「冷静さ」や「心の余裕」が何より必要です。
小林悠選手は、サイドでの攻防やセットプレー時の守備にがんばっていたのは評価できるのですが、惜しいヘディングシュートが1本あったものの、攻撃面で今ひとつ物足りなさを感じます。現状では小さくまとまったプレーが目立ち、攻撃面で世界に通用しそうな武器や強烈な個性に欠けるように思います。
☆ ☆ ☆
番外編として、この試合に出場はしていませんが宇佐美選手について。
6月のキリンカップではキレキレのドリブルが破壊力抜群で驚いたのですが、たった3か月後のW杯予選、UAE戦での彼のプレーぶりはいかにも体が重そうで動きにもまったくキレがなくなっているのを見てさらに驚きました。アウクスブルクでも完全に出場機会を失ってベンチ外が続いているのはそれが原因なんじゃないでしょうか。
彼がバイエルンやホッフェンハイムで出場機会が得られず、宇佐美選手いわく「しっぽを巻いて日本に帰る」ことになったのは、インテンシティの高い欧州四大リーグで1シーズンを戦い通すだけのスタミナがなかったことが最大の原因だったように思うのですが、このままでは同じ誤りを再び繰り返して、アウクスブルクから日本へしっぽを巻いて逃げかえることになりかねません。
宇佐美選手は子供のときから天賦の才能でセレクションに勝ち抜き、ゲームで大活躍してG大阪のトップチームの選手になれたのではないかと思いますが、それだけにボールを使わない「素走り」のような単調で地道な努力をすることが一番苦手なのではないかと推測され、実際にJリーグの試合中もほとんど守備に戻ることはなく、たぶんそうしたことが原因でプロサッカー選手として必要な持久力が全然身についていません。
このブログを読んでいて宇佐美選手に直接コンタクトが取れる方がおられるなら、是非とも彼に教えてあげて欲しいのですが、足首のケガが治り次第、本田選手と同じようにOBLAトレーニングを始めることを強く勧めます
運動開始数分後に心拍数が安定してから毎分140~160回の心拍数を維持するような素走りを30~40分間、専門的に言えばVO2MAX値の50~70%にあたる負荷がかかるようにした持久走を毎週2回は行うのです。
土曜の午後にリーガの試合があって宇佐美選手がベンチ外だとわかっているなら、その日の午前中にOBLAトレーニングとして前述の条件を守った素走りを実施し、水曜の夜にポカールの試合があってもやはりゲームに出られなかったら、その日の日中にOBLAトレーニングとして走り込みを実施します。
最初はきつくてクラブの練習をやっているときに、いつも以上に体が重く感じるかもしれませんが何週間かしてそれを乗り切れば、持久力がついてくるとともに体が軽くなり、あのキレキレのドリブルが戻ってくるはずです。乳酸が蓄積しすぎるとケガをしやすくなりますので、クラブのフィジカルコーチとも良く相談して必要なら走り込みにつきあってもらい、無理のない練習計画を立てて実践して欲しいと思います。
長谷部キャプテンがボルフスブルクでマガト監督に出場機会を与えてもらえなかったとき、試合にまったく出られなかった3ヶ月間に、普通の選手の2年分くらい走り込みをしたと言っていましたが、宇佐美選手は同じドイツに住んでいるのですから長谷部選手にそのときどういうトレーニングをしたかアドバイスを求めると良いかもしれません。
もしJFAで可能なら、宇佐美選手に専属のフィジカルコーチを派遣しても良いのではないでしょうか。
ドイツで1シーズン戦っても体のキレを最後まで維持することができるようになれば、宇佐美選手は左右ウイングはもちろん、日本代表のトップ下を任せることができるぐらいの能力を発揮できるのではないかと当研究所は考えています。
宇佐美選手が自分が大好きなサッカーをブンデスリーガという舞台でやりたいのなら、どんなに嫌でも我慢して素走りを中心としたOBLAトレーニングを繰り返し、歯を食いしばってでも持久力を身につけるべきです。
それとも「ドイツでプロサッカー選手として成功したい」という宇佐美選手の夢は、「素走りなんてめんどくせえ」という感情に負けてしまう程度の、ちっぽけなものなのでしょうか?
人生はたった1度きりしかありませんし、現役サッカー選手としてプレーできる年数はそれほど長いものではありません。そのあたりを良く考えて、絶対に後悔しないような毎日を過ごして欲しいです。
つづく
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日本代表各選手の個人評価です。
この試合、特筆すべき活躍だったのはまず原口選手。本田選手のスルーパスに絶妙のタイミングでウラヘ抜け出し、ドリブルからGKとの一対一を制して冷静にゴールを決めてくれました。彼のスピードあるドリブルでこの試合何度も左サイドを切り裂き、本田選手のシュート決定機をつくり出すなど攻撃面で最大の貢献。
ただし、相手にPKを与えたプレーは完全に冷静さを失っていました。リオ五輪のナイジェリア戦で塩谷選手が同じようなプレーから痛いPKを取られていましたが、あのような場面でフィジカルコンタクトをするのは慎重の上にも慎重に行くべきですし、相手の足をひっかけないように注意しながらボールだけを自分の足でつついてCKへ逃れるか、ユリッチの背後を右からではなく左から回り込んで自分が守るべきゴールと相手選手との間にポジショニングし、相手のシュートなりパスを足を出して防ぐべきでした。
原口選手は6月のキリンカップ・ブルガリア戦でも同じような形で相手にPKを献上しており、そこでしっかり反省できていなかったのがとても残念。ユリッチはゴールから遠ざかる感じでボールを受け、ゴール前には何人もの味方が守っていて、原口選手の戻りが間に合わないなら間に合わないで、あそこまでパニック気味に体当たりしなくても良かったように思います。原口選手の闘争心あふれるプレーはとても魅力的なのですが、ハートは熱くても頭はいつも冷静にお願いします。
センターFWとしてプレーした本田選手は「偽の9番」ぎみに動いて、特に前半は素晴らしい活躍。
相手ゴールからあえて遠ざかるようなポジショニングでDFラインのウラを広く保っていたのはクレバーな動きで、彼はフィジカルコンタクトに強いので足元にちゃんとボールが収まって前線で攻めの基点をつくることが何度もできましたし、素早い反転から原口選手のゴールをアシストしたプレーは秀逸の一言。左サイドを突破した原口選手に相手の目を引きつけて、彼の中央への折り返しから本田選手がシュートしてもう少しで追加点という良いプレーもありました。
岡崎選手ではこうはいかず、日本代表で2トップのフォーメーションを使う時にだけ、岡崎選手をセカンド・ストライカーとして起用すべきです。
ただこのオーストラリア戦からもわかるように、今のところ本田選手にセンターFWとして90分間プレーするだけの持久力がないというのは以前に当研究所が指摘した通りです。
かねてからお約束していたとおり「本田選手再生策」をここで提案しますが、30歳という彼の年齢は老け込むには早すぎます。本田選手のプレーから急速に持久力やキレが失われたのは、シーズンオフにアジア各国やアメリカで子供たちにサッカーを教えるのに忙しすぎて、走り込みなどのスタミナ強化系のトレーニングが不足しているからではないでしょうか。
本田選手のVO2MAX値が現在いくらか知りませんが、普通のサッカー選手に比べかなり低下している可能性があり、OBLAトレーニングの実施を強くお勧めします。運動開始数分後に心拍数が安定してから毎分140~160回の心拍数を維持するような素走りを30~40分間、専門的に言えばVO2MAX値の50~70%にあたる負荷がかかるようにした持久走を、クラブの練習も含めてできれば毎週2回は行うのです。
例えば日曜の午後にセリエAの試合があって、クラブから本田選手がベンチ外だという知らせが来たとします。そこで日曜の午前中にOBLAトレーニングとして前述の条件を守った素走りを30~40分実施し、午後はクラブの試合をスタジアムで観戦、水曜の夜にコッパイタリアの試合があってやはりゲームに出られなかったら、その日の日中にOBLAトレーニングとして走り込みを実施します。最初はきつくてクラブの練習中も体がいつも以上に重く感じるかもしれませんが、それを乗り切ると本田選手のプレーにスタミナとキレが戻ってくるはずです。乳酸が蓄積しすぎるとケガのもとですので、専門のフィジカルコーチに必ずついてもらって無理のない練習計画を立てて実施して欲しいと思います。このブログを見ている方で本田選手に直接連絡が取れる方は是非ともこのことを伝えてください。
本田選手は自分の長所を生かせない右ウイングでプレーし続けたことで、キャリアの終盤の大事な2年を無駄にしてしまったように思われますが、彼は右ウイングよりもASローマのトッティのように「偽の9番」的なセンターFWとしてプレーした方が適性があるように思われますし、ゴールチャンスを何度もつくったこの試合の自分のプレーにもっと自信を持つべきです。持久力さえ戻ってくれば本田選手の1トップは日本代表の強力な武器になりえます。バッカの牙城を崩すのは容易ではないかもしれませんが、ミランでも「偽の9番」としての起用や、バッカと本田選手の2トップを戦術オプションとしてモンテッラ監督に提案してみてはどうでしょうか。
長谷部選手は、中盤で厳しく相手にプレスをかけてボールをたびたび奪い返すなど好守備が光りましたし、攻めては、的確かつすばやい決断で本田選手に効果的なパスを供給し、先制ゴールの基点となるなど攻守に素晴らしい出来でした。
山口選手は、イラクよりフィジカル能力が高いオーストラリア相手に臆することなくガチガチ当たりに行き、チームがボールを奪い返すことに大きな貢献。不調にでも陥らないかぎり、彼をスタメンから外すべきではないと思います。
逆に酒井高選手は、サイドで数的不利をつくられている状況において、あきらかにプレスが間に合わないタイミングでロギッチへの縦パスに食いつき右サイドを突破され、スミスに中央へのクロスを許してPKを誘発する原因に。このプレーはサウジやUAEなど3次予選の他のライバル国によって必ず研究されるでしょうし、こちらとしても対策を用意しておくことが欠かせません。
高徳選手はアバウトなバックパスを出して、もう少しでオーストラリアの選手にかっさらわれそうになるなど、失点につながりかねないミスを連発しています。彼のプレーの中身を評価するのではなく「HSVで先発しているから」という理由だけで起用するのは本当にやめて欲しいです。
PK戦はキッカー有利というのが当研究所の考え方ですが、西川選手はまたしても下手にヤマをかけて動くのが早すぎたんじゃないでしょうか。ゴールの左右上下の両スミはたとえヤマかけが当たったとしてもGKがシュートをセーブすることはかなり困難ですから、初めから捨ててもやむを得ないと思います。
それよりも、ジェディナクが右利きというデータは事前に頭に入っていたと思いますが、キックモーションに入ってからボールを蹴るギリギリの瞬間まで相手を良く見ていれば、ボールにインパクトする直前に彼の右足首が大きく開くことで、真ん中に立っている西川選手から見て少なくともゴールの左半分にボールが飛んでくると読めるはずです。そこで左に飛べば、ジェディナクのシュートはコースが甘くゴールの真ん中よりやや左にボールが飛んできたので、西川選手がセーブ出来ていた可能性は十分ありました。
プレッシャーに負けて相手より先に飛んでその逆に蹴られてしまうのではなく、ギリギリ最後の瞬間まで相手を良く見ていて、助走の角度やスピード、足首が開く角度を良く観察して、自分の右にシュートが来るか、左に来るか、それともパネンカかを読まないと。
西川選手はGKとして体が小さいのですから、そういう読みのところで世界の誰よりもがんばらないとワールドクラスのGKにはなれません。GKがゴールをアシストするよりもPKや決定的なシュートを1本セーブしてくれた方がよほどありがたいですし、彼の努力の方向性が間違っています。残念ながら現在の日本代表で世界から最も遠いポジションがGKになってしまっています。
香川選手は、守備でそれなりにがんばっていましたが、攻撃では存在感がほぼありませんでした。まだ復調していない彼を代表戦に出すのは早すぎました。
本来であれば先制ゴールの基点となる長谷部選手から本田選手へのパスはトップ下の彼に出して欲しいのです。しかしあれが香川選手だと、自分の正面にいる本田選手を見て、次に左サイドを走る原口選手を見て、さらに逆サイドを駆け上がる小林選手を見て、誰にパスを出すか迷いながらボールを持ちすぎているうちに3人とも相手にマークされ、そうこうしているうちに相手のボランチが迫ってきてクルッと半回転してバックパス、というパターンが代表でもクラブでも本当に多いのです。長谷部キャプテンのシンキングスピードや勇気・決断力を本当に見習ってほしいです。
ブンデスリーガ前節のレバークーゼン戦を見ましたが、出場時間は短かったもののバックやボランチからパスを受けてそれを正確に前へつなぐ、ということを地道にやろうとしていたのが見てとれ、ようやく正しい方向へ歩みだすことができていたように思います。そこから次のステップとしてゴールにつながるようなラストパスを出す回数を増やすことでトゥヘル監督の信頼と先発ポジションを取り戻すように努力すべきです。その試合で唯一のシュートチャンスでは早く打ちたいと焦るあまり大きく外してしまいましたが、右からスライディングに来た相手選手をボールを右側へ動かすことでかわしてから落ち着いてシュートすれば決まったかもしれません。ゴール前での決定機こそ「冷静さ」や「心の余裕」が何より必要です。
小林悠選手は、サイドでの攻防やセットプレー時の守備にがんばっていたのは評価できるのですが、惜しいヘディングシュートが1本あったものの、攻撃面で今ひとつ物足りなさを感じます。現状では小さくまとまったプレーが目立ち、攻撃面で世界に通用しそうな武器や強烈な個性に欠けるように思います。
☆ ☆ ☆
番外編として、この試合に出場はしていませんが宇佐美選手について。
6月のキリンカップではキレキレのドリブルが破壊力抜群で驚いたのですが、たった3か月後のW杯予選、UAE戦での彼のプレーぶりはいかにも体が重そうで動きにもまったくキレがなくなっているのを見てさらに驚きました。アウクスブルクでも完全に出場機会を失ってベンチ外が続いているのはそれが原因なんじゃないでしょうか。
彼がバイエルンやホッフェンハイムで出場機会が得られず、宇佐美選手いわく「しっぽを巻いて日本に帰る」ことになったのは、インテンシティの高い欧州四大リーグで1シーズンを戦い通すだけのスタミナがなかったことが最大の原因だったように思うのですが、このままでは同じ誤りを再び繰り返して、アウクスブルクから日本へしっぽを巻いて逃げかえることになりかねません。
宇佐美選手は子供のときから天賦の才能でセレクションに勝ち抜き、ゲームで大活躍してG大阪のトップチームの選手になれたのではないかと思いますが、それだけにボールを使わない「素走り」のような単調で地道な努力をすることが一番苦手なのではないかと推測され、実際にJリーグの試合中もほとんど守備に戻ることはなく、たぶんそうしたことが原因でプロサッカー選手として必要な持久力が全然身についていません。
このブログを読んでいて宇佐美選手に直接コンタクトが取れる方がおられるなら、是非とも彼に教えてあげて欲しいのですが、足首のケガが治り次第、本田選手と同じようにOBLAトレーニングを始めることを強く勧めます
運動開始数分後に心拍数が安定してから毎分140~160回の心拍数を維持するような素走りを30~40分間、専門的に言えばVO2MAX値の50~70%にあたる負荷がかかるようにした持久走を毎週2回は行うのです。
土曜の午後にリーガの試合があって宇佐美選手がベンチ外だとわかっているなら、その日の午前中にOBLAトレーニングとして前述の条件を守った素走りを実施し、水曜の夜にポカールの試合があってもやはりゲームに出られなかったら、その日の日中にOBLAトレーニングとして走り込みを実施します。
最初はきつくてクラブの練習をやっているときに、いつも以上に体が重く感じるかもしれませんが何週間かしてそれを乗り切れば、持久力がついてくるとともに体が軽くなり、あのキレキレのドリブルが戻ってくるはずです。乳酸が蓄積しすぎるとケガをしやすくなりますので、クラブのフィジカルコーチとも良く相談して必要なら走り込みにつきあってもらい、無理のない練習計画を立てて実践して欲しいと思います。
長谷部キャプテンがボルフスブルクでマガト監督に出場機会を与えてもらえなかったとき、試合にまったく出られなかった3ヶ月間に、普通の選手の2年分くらい走り込みをしたと言っていましたが、宇佐美選手は同じドイツに住んでいるのですから長谷部選手にそのときどういうトレーニングをしたかアドバイスを求めると良いかもしれません。
もしJFAで可能なら、宇佐美選手に専属のフィジカルコーチを派遣しても良いのではないでしょうか。
ドイツで1シーズン戦っても体のキレを最後まで維持することができるようになれば、宇佐美選手は左右ウイングはもちろん、日本代表のトップ下を任せることができるぐらいの能力を発揮できるのではないかと当研究所は考えています。
宇佐美選手が自分が大好きなサッカーをブンデスリーガという舞台でやりたいのなら、どんなに嫌でも我慢して素走りを中心としたOBLAトレーニングを繰り返し、歯を食いしばってでも持久力を身につけるべきです。
それとも「ドイツでプロサッカー選手として成功したい」という宇佐美選手の夢は、「素走りなんてめんどくせえ」という感情に負けてしまう程度の、ちっぽけなものなのでしょうか?
人生はたった1度きりしかありませんし、現役サッカー選手としてプレーできる年数はそれほど長いものではありません。そのあたりを良く考えて、絶対に後悔しないような毎日を過ごして欲しいです。
つづく
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■日本代表、オーストラリアと勝ち点1を分ける
ロシアW杯アジア3次予選、日本代表の第4戦がメルボルンで行われ、日本は1-1でオーストラリアと引き分けました。
対戦相手のオーストラリアは、イングランド・ドイツ・中国などでプレーする選手で構成されており現時点においては日本よりも実力は上、日本のホームで引き分け、アウェーでオーストラリアの勝利ぐらいの実力差と見ていましたが、チーム組織の構築や若手への切り替えが遅れているハリルジャパンの現状を見れば、引き分けという結果は悪くなかったと思います。
ただ、ハリルホジッチ監督の采配がまたしても疑問だらけで、勝てた試合をみすみす引き分けてしまったのではないでしょうか。
日本のプレー内容については改善すべき点はありますが、ハリルジャパンが発足していらい一番良かったです。
☆ ☆ ☆
まず最初に言いたいのは、
だーかーら、本田選手の右ウイング起用がチームが不振に陥っている元凶だと、
言ったでしょーが!!
ということ。
(当ブログ過去記事・イラク戦・オーストラリア戦にのぞむ日本代表メンバー発表!)
これまで右ウイングの本田選手のところにボールがいくと、そこで時間がかかってしまって攻撃が停滞し、彼は守りにも戻らないのでコンパクトな守備ブロックがつくれず、UAEやイラク相手に失点を重ねてしまう原因になっていたのです。
イラク戦とプレー内容がガラッと変わったこの試合では、コンパクトな長方形の守備ブロックの右上角を小林選手がしっかりと埋め、日本の選手全員で規則正しくプレスをかけていくことで、グループ首位を走るオーストラリアの攻撃をおおむね封じ込めることができました。
そして前半5分のゴールシーン。みなさんに繰り返し録画映像を見て欲しいのですが、選手のシンキングスピードといい、パスのテンポといい、
これが、グラウンダーのショートパスを使った世界標準のパスサッカーですよ!!
原口選手や長谷部選手も「あれ? そういえば俺たち普段ブンデスでこういうサッカーやってるよね?」って思ったはず。
(4分40秒からゴールまで)
(クリックで拡大)
上図のように、センターFWが意図的にゴールから遠ざかることで自分をマークするバックを引きつけ、それによってDFラインのウラのスペースを広く保っておき、ゾーンで守るコンパクトな守備ブロックからプレスをかけてボールを奪い返したら、自軍ゴールへ向かって走りながら後退する相手を攻め、あえて空けておいたバイタルエリアにいる味方にボールを受けさせてラストパスを出す基点をつくり、最後はDFラインのウラヘ抜ける味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。
まさにこの試合の先制ゴールシーン。
あの一連のゴールシーンにおいて、バイタルエリア(相手4バックの前のスペース)に日本の選手は何人いたでしょうか?
本田選手と原口選手の2人だけでしたよね。
上の図を見て、「4人のバックに対し攻撃が2枚だけでどうして点が取れるの?」と思った人は、欧州でやっているような世界最先端のパスサッカー戦術というものを知りません。
相手ゴール前に4人も5人もの日本の選手が足を止めてベッタリと張りつき、それによって敵のマーカーをゴール前に集結させることでDFラインの前もウラのスペースも自分たちで消してしまい、敵味方の選手で大混雑しているペナルティエリアの周囲を左から中央へ、中央から右へと遠巻きにパスを回して、最後はクロスをゴール前へ放り込むのが、「パスサッカー」あるいは「ポゼッションサッカー」だと誤解しているのが日本のサッカー界なのですが、それは違います。
コンパクトな守備ブロックをつくって規則正しくプレスをかけていくことは共通ですが、DFラインの高さを相手の強さに応じて「引き気味」「ノーマル」「上げ気味」と使い分けて設定すれば、「堅守速攻のカウンターサッカー」「ノーマル」「攻撃的なパスサッカー」と、シームレスに攻撃戦術を使い分けることができます。
当研究所の定義では、イラク戦の先制シーンは「コレクティブカウンター」であり、この試合の得点シーンは「パスサッカー」ですが、どちらもグラウンダーのパスを使って相手を崩しゴールを奪っているところが共通しています。
(オーストラリア戦の先制ゴールシーンを「タテに速いカウンターサッカー」だと感じた人は、普段Jリーグの遅いプレースピードに慣れきってしまっている人だと思います)
私が「コレクティブカウンターの延長線上にパスサッカーがある」と言ったのはそういう意味であり、この2つの攻撃を日本代表という1つのチームが相手によって、シチュエーションによって、シームレスに使い分けていけば良いのです。
当研究所が、本田・香川・原口選手ら欧州でプレーしている人たちに期待しているのは、この試合の前半のような、自分たちが普段やっている「世界標準のパスサッカー戦術」を代表チームに導入し、日本サッカーのレベルを上げることです。
建英君をはじめ日本のジュニアユース・ユース年代の子供たちも、オーストラリア戦の先制ゴールシーンを繰り返し見ておき、本田選手や原口選手、長谷部選手のポジショニングやプレーを良く研究して自分たちの戦術理解を高め、もしあの場面で自分だったらどういうプレーをするかイメージしながら、近い将来ワールドクラスのプレーヤーになって欲しいと思います。
まだ改善すべきところはありますが、前半に攻守にわたって良い試合内容で先制ゴールをあげ、最難関のアウェーのオーストラリア戦で勝ち点3が取れるかもしれないという絶好のチャンスだったのですが、それをみすみすフイにしてしまったのが、迷走を続けるハリルホジッチ監督の采配です。
そもそも、イラク戦でプレー内容が良く試合に勝つことができた功労者の1人・清武選手を外し、タイ戦の絶不調状態から脱しつつあるも、まったく復調していない香川選手をトップ下で起用したのがまったくの謎で、実際この試合も香川選手はほとんど機能せず。
もし清武選手がトップ下だったら彼から良いパスが出て、前半日本に試合の流れが来ている間に、もう1点ぐらい追加でき、もっと楽にゲームを進めることができた可能性がありました。
ハリルホジッチ監督はイラク戦で、トップ下から香川選手を外し清武選手を起用するという正しい決断をせっかくできたのに、自分の決断の何が成功し何が失敗してあのような試合結果になったのか、まったく分析することができないらしく、UAE戦・タイ戦と同じ過ちをこのオーストラリア戦でも再び繰り返してしまいました。
これではイラク戦で好プレーを見せてくれた清武選手が、勢いに乗って成長していくことができません。
以前にも指摘したとおりハリル監督は、前の試合で活躍することで自信をつけ成長軌道に乗ってきた選手を次の試合でベンチに座らせ、良い流れをブッた切るのが得意技。
イラク戦の終盤、浅野選手が胸トラップからシュートしようとして防がれたことが話題になっていましたが、せっかくタイ戦でゴールして自信をつけたのに次の試合でベンチスタートだと、浅野選手だって「W杯予選でゴールしたのにまだ自分は監督から信頼されていないんだ」とネガティブに考えるでしょうし、そういう微妙な心理状態が影響して「監督から信頼を得るためにはもっとゴールが必要だ。決定機では絶対に外さないように慎重にプレーしよう」と考えた結果が、あの胸トラップからのシュートだったのかもしれません。
W杯予選初ゴールで自信をつけた浅野選手に「お前を信頼しているぞ」と監督が声をかけて次のイラク戦もスタメン起用していたら、彼もさらに自信をもってプレーすることができ、同じ決定機でも思い切ってノートラップでシュートを打ち、ゴールを決めていたかもしれません。
こういう部分でハリル監督は若手選手を育てるのがヘタ。
酒井高選手も守備に不安を抱えているのでそれが解決されないかぎり起用しない方がよいと当研究所は指摘しましたが、オーストラリアにPKを与えた場面では、サイドで数的不利をつくられている状況で、あきらかにプレスが間に合わないタイミングでロギッチへの縦パスに高徳選手が食いついてスミスに右サイドを突破され、中央へクロスを入れられてPKを誘発する原因に。
ウッチーならあのタイミングのパスは食いついていないでしょう。
この試合前に、SBに丸山選手のようなセンターバックタイプを起用することも当研究所は提案していましたが、高徳選手の攻め上がりを捨ててでも丸山選手をキックオフから起用していれば、PKを与えることなく1-0で試合を終わらせることができていたかもしれませんし、終盤に高徳(訂正) 原口選手に代えて丸山選手を入れる必要もなくなり、もし丸山選手を起用しても同点にされていたとしたら、オーストラリアから再びリードを奪うべく、交代カード1枚をフレッシュな攻撃の選手を投入するために使うこともできました。
PKから同点に追いつかれ、後半15分すぎから日本の守備ブロックが下がりすぎて相手にボールをポゼッションされ、ボールを取り返しても前方へロングを蹴るので精一杯となり、防戦一方の厳しい展開になってしまいましたが、どんなに遅くても25分までには交代選手を投入して、悪い流れを断ち切るべきでした。
百歩譲って香川選手のトップ下で行くにしても、後半25分に例えば清武選手を投入してボールの収まりどころをつくり、ボールを奪ったらまず清武選手にパスして、彼が中盤でタメをつくっている間に周囲の選手が攻め上がって反撃することで、試合の流れをこちらへ引き戻すようにするべきだったと思います。
香川選手と清武選手の交代ならば、セットプレー時に守備力が下がってしまうという不安が出ることもないはずです。
先月のタイ戦もそうなんですが、試合の流れを見ながら交代選手を上手く使うということもハリル監督はできないんですよね。
守備力のある選手をサイドバックに起用せず、イラク戦での失点にからむなど守備力に不安のある高徳選手を起用し続けたことからPKを誘発し、不調でほとんど機能していない香川選手を90分間使い続け、トップ下から好調の清武選手を外したことで、日本の手から勝ち点2がスルリと逃げていったんじゃないでしょうか。
この試合ハリル監督の数少ない正しい決断だったのは、本田選手を右ウイングから外しセンターFWで起用したことです。
しかし当研究所は昨年6月のW杯アジア2次予選の初戦、シンガポール戦ですでに本田選手の右ウイング起用に疑問を感じ、昨年10月のシリア戦で本田選手のセンターFWへのコンバートを提案しています。
(当ブログ・2015年6月シンガポール戦記事)
(当ブログ・2015年9月カンボジア戦記事)
(当ブログ・2015年9月アフガニスタン戦記事)
(当ブログ・2015年10月シリア戦記事)
ハリル監督は、本田選手の右ウイング起用が適切でないということに気づいてコンバートを決断するまで、当研究所から1年遅れているわけです。
もし私が監督だったら、1年前のカンボジア戦やアフガニスタン戦から本田選手をセンターFWや攻撃的なボランチにコンバートして試し、右ウイングには原口・宇佐美ら若くてスピードや技術があり個の能力でサイドを突破できる選手を試して競わせながら経験を積ませ、1年後のこのオーストラリア戦に通用するレベルまで成長を促すような選手起用をします。
ところがハリルホジッチ監督は、かたくなに本田選手をまったく機能していない右ウイングで起用し続け、不調の香川選手をいつまでたってもトップ下から外さず、カンボジアやタイに苦しんでようやく勝ちUAEには負けるという危険信号がさんざん出ているのにグズグズと決断が遅れ、ミランやドルトムントの首脳陣も本田・香川の代表での低調なプレーぶりを見たのでしょう、彼らはクラブでの出場機会を失ってしまいました。
ハリルホジッチ監督は「欧州でプレーしている日本人選手の多くが出場機会を失うのを1年前に知りたかった」と言っていましたが、その原因の多くは、選手のプレーの特徴・長所短所・選手の調子の良し悪し・選手間の優劣というものを見極めることができず、選手を不適切なポジションで使い続け、実力以上にヘタクソに見せてしまうハリル監督自身にあると思います。
彼が代表監督をやっていることで、日本のサッカー界全体が「負のスパイラル」に陥っています。
これで本田選手を再び右ウイングに戻したりしたら本気で怒りますけど、そういう不可解な采配をやってしまいかねないのがハリル監督なんですよね。
やれ欧州組は移動があってコンディションが悪いとか、出場機会を失ってどうのとかグチグチ言ってますが、日本代表選手の士気にも悪い影響を与えかねません。
グループ首位を走っていたオーストラリア代表の選手たちは、欧州からオーストラリアへ飛行機で帰るとき、欧州から日本へ飛ぶ場合の2倍の距離がかかるわけです。それでもあるオーストラリア人選手は「世界中でプレーしているのだからそれが当たり前だ」とコメントしていました。
クルーズもレバークーゼンで出場機会があまりないはずですが、ポステコグロウ監督が代表戦ではちゃんと機能するような使い方をしているのではないでしょうか。
たぶんハリルホジッチさんは、ものごとを感情的に認識(インプット)し、感情的に行動(アウトプット)するタイプの人なんだと思います。
「ミランやドルトムント・レスターでやっているからいつだって
日本最高の選手なんだ」という思い込み(感情)で、誰をどのポジションで起用するか決めているから、選手起用で間違いを繰り返し、日本代表を不振に陥らせているのではないでしょうか。
2次予選においてベタ引きで来たカンボジア代表にスペースを消されて自分がやりたいカウンターサッカーが通用せず、相手のオウンゴールもあってようやく勝った試合後、「カンボジアはもっと前へ出て攻めてくるべきだ。アジアではカウンターサッカーをやっている国が多いが、だからアジアは世界から遅れているんだ」みたいなコメントをしていましたが、日本に「タテに速いカウンターサッカー」をやらせようとしている監督さんが、こういう感情まかせのメチャクチャなことを言っていいのでしょうか?
こういうタイプの人は絵描きや音楽家など芸術家には向いていますが、企業のリーダーや政治家のような実務家にはもっとも不向きなタイプです。
実務家に向いているのは、ものごとを論理的に正確に認識し、正しいロジックを脳内で積み上げていってそれに基づいて行動し、成功を納めることができるタイプの人です。
もちろんサッカーチームの監督も、実務家タイプでなければなりません。
大変残念ですが、もし彼よりマシな監督が招聘できるなら、今のタイミングでハリルホジッチ氏を解任すべきだと思います。
この先どういうヘマをやらかして勝ち点を失うか、わかったものではありません。
選手それぞれのプレーの特徴を見極め、適材適所で起用していく、試合の流れを見ながら勝負どころで適切な交代カードを切っていくという「勝負師」としての面では、少なくとも手倉森さんの方がハリル氏より上だと思いますが、もし後任監督のリストアップができていないなら手倉森さんを暫定監督にして、来年までに適当な人を内外から探すようにしたらどうでしょうか。
ちょうど来月、オマーンとのテストマッチがありますが、その試合で新監督に予行演習をさせて、日本がW杯に出場するために非常に重要な試合となった、サウジとのホームゲームに臨むべきだと思います。
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当ブログ関連記事・タイに勝利も、課題山積(その3)
当ブログ関連記事・日本代表、イラクに冷や汗の勝利
対戦相手のオーストラリアは、イングランド・ドイツ・中国などでプレーする選手で構成されており現時点においては日本よりも実力は上、日本のホームで引き分け、アウェーでオーストラリアの勝利ぐらいの実力差と見ていましたが、チーム組織の構築や若手への切り替えが遅れているハリルジャパンの現状を見れば、引き分けという結果は悪くなかったと思います。
ただ、ハリルホジッチ監督の采配がまたしても疑問だらけで、勝てた試合をみすみす引き分けてしまったのではないでしょうか。
日本のプレー内容については改善すべき点はありますが、ハリルジャパンが発足していらい一番良かったです。
☆ ☆ ☆
まず最初に言いたいのは、
だーかーら、本田選手の右ウイング起用がチームが不振に陥っている元凶だと、
言ったでしょーが!!
ということ。
(当ブログ過去記事・イラク戦・オーストラリア戦にのぞむ日本代表メンバー発表!)
これまで右ウイングの本田選手のところにボールがいくと、そこで時間がかかってしまって攻撃が停滞し、彼は守りにも戻らないのでコンパクトな守備ブロックがつくれず、UAEやイラク相手に失点を重ねてしまう原因になっていたのです。
イラク戦とプレー内容がガラッと変わったこの試合では、コンパクトな長方形の守備ブロックの右上角を小林選手がしっかりと埋め、日本の選手全員で規則正しくプレスをかけていくことで、グループ首位を走るオーストラリアの攻撃をおおむね封じ込めることができました。
そして前半5分のゴールシーン。みなさんに繰り返し録画映像を見て欲しいのですが、選手のシンキングスピードといい、パスのテンポといい、
これが、グラウンダーのショートパスを使った世界標準のパスサッカーですよ!!
原口選手や長谷部選手も「あれ? そういえば俺たち普段ブンデスでこういうサッカーやってるよね?」って思ったはず。
(4分40秒からゴールまで)
(クリックで拡大)
上図のように、センターFWが意図的にゴールから遠ざかることで自分をマークするバックを引きつけ、それによってDFラインのウラのスペースを広く保っておき、ゾーンで守るコンパクトな守備ブロックからプレスをかけてボールを奪い返したら、自軍ゴールへ向かって走りながら後退する相手を攻め、あえて空けておいたバイタルエリアにいる味方にボールを受けさせてラストパスを出す基点をつくり、最後はDFラインのウラヘ抜ける味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。
まさにこの試合の先制ゴールシーン。
あの一連のゴールシーンにおいて、バイタルエリア(相手4バックの前のスペース)に日本の選手は何人いたでしょうか?
本田選手と原口選手の2人だけでしたよね。
上の図を見て、「4人のバックに対し攻撃が2枚だけでどうして点が取れるの?」と思った人は、欧州でやっているような世界最先端のパスサッカー戦術というものを知りません。
相手ゴール前に4人も5人もの日本の選手が足を止めてベッタリと張りつき、それによって敵のマーカーをゴール前に集結させることでDFラインの前もウラのスペースも自分たちで消してしまい、敵味方の選手で大混雑しているペナルティエリアの周囲を左から中央へ、中央から右へと遠巻きにパスを回して、最後はクロスをゴール前へ放り込むのが、「パスサッカー」あるいは「ポゼッションサッカー」だと誤解しているのが日本のサッカー界なのですが、それは違います。
コンパクトな守備ブロックをつくって規則正しくプレスをかけていくことは共通ですが、DFラインの高さを相手の強さに応じて「引き気味」「ノーマル」「上げ気味」と使い分けて設定すれば、「堅守速攻のカウンターサッカー」「ノーマル」「攻撃的なパスサッカー」と、シームレスに攻撃戦術を使い分けることができます。
当研究所の定義では、イラク戦の先制シーンは「コレクティブカウンター」であり、この試合の得点シーンは「パスサッカー」ですが、どちらもグラウンダーのパスを使って相手を崩しゴールを奪っているところが共通しています。
(オーストラリア戦の先制ゴールシーンを「タテに速いカウンターサッカー」だと感じた人は、普段Jリーグの遅いプレースピードに慣れきってしまっている人だと思います)
私が「コレクティブカウンターの延長線上にパスサッカーがある」と言ったのはそういう意味であり、この2つの攻撃を日本代表という1つのチームが相手によって、シチュエーションによって、シームレスに使い分けていけば良いのです。
当研究所が、本田・香川・原口選手ら欧州でプレーしている人たちに期待しているのは、この試合の前半のような、自分たちが普段やっている「世界標準のパスサッカー戦術」を代表チームに導入し、日本サッカーのレベルを上げることです。
建英君をはじめ日本のジュニアユース・ユース年代の子供たちも、オーストラリア戦の先制ゴールシーンを繰り返し見ておき、本田選手や原口選手、長谷部選手のポジショニングやプレーを良く研究して自分たちの戦術理解を高め、もしあの場面で自分だったらどういうプレーをするかイメージしながら、近い将来ワールドクラスのプレーヤーになって欲しいと思います。
まだ改善すべきところはありますが、前半に攻守にわたって良い試合内容で先制ゴールをあげ、最難関のアウェーのオーストラリア戦で勝ち点3が取れるかもしれないという絶好のチャンスだったのですが、それをみすみすフイにしてしまったのが、迷走を続けるハリルホジッチ監督の采配です。
そもそも、イラク戦でプレー内容が良く試合に勝つことができた功労者の1人・清武選手を外し、タイ戦の絶不調状態から脱しつつあるも、まったく復調していない香川選手をトップ下で起用したのがまったくの謎で、実際この試合も香川選手はほとんど機能せず。
もし清武選手がトップ下だったら彼から良いパスが出て、前半日本に試合の流れが来ている間に、もう1点ぐらい追加でき、もっと楽にゲームを進めることができた可能性がありました。
ハリルホジッチ監督はイラク戦で、トップ下から香川選手を外し清武選手を起用するという正しい決断をせっかくできたのに、自分の決断の何が成功し何が失敗してあのような試合結果になったのか、まったく分析することができないらしく、UAE戦・タイ戦と同じ過ちをこのオーストラリア戦でも再び繰り返してしまいました。
これではイラク戦で好プレーを見せてくれた清武選手が、勢いに乗って成長していくことができません。
以前にも指摘したとおりハリル監督は、前の試合で活躍することで自信をつけ成長軌道に乗ってきた選手を次の試合でベンチに座らせ、良い流れをブッた切るのが得意技。
イラク戦の終盤、浅野選手が胸トラップからシュートしようとして防がれたことが話題になっていましたが、せっかくタイ戦でゴールして自信をつけたのに次の試合でベンチスタートだと、浅野選手だって「W杯予選でゴールしたのにまだ自分は監督から信頼されていないんだ」とネガティブに考えるでしょうし、そういう微妙な心理状態が影響して「監督から信頼を得るためにはもっとゴールが必要だ。決定機では絶対に外さないように慎重にプレーしよう」と考えた結果が、あの胸トラップからのシュートだったのかもしれません。
W杯予選初ゴールで自信をつけた浅野選手に「お前を信頼しているぞ」と監督が声をかけて次のイラク戦もスタメン起用していたら、彼もさらに自信をもってプレーすることができ、同じ決定機でも思い切ってノートラップでシュートを打ち、ゴールを決めていたかもしれません。
こういう部分でハリル監督は若手選手を育てるのがヘタ。
酒井高選手も守備に不安を抱えているのでそれが解決されないかぎり起用しない方がよいと当研究所は指摘しましたが、オーストラリアにPKを与えた場面では、サイドで数的不利をつくられている状況で、あきらかにプレスが間に合わないタイミングでロギッチへの縦パスに高徳選手が食いついてスミスに右サイドを突破され、中央へクロスを入れられてPKを誘発する原因に。
ウッチーならあのタイミングのパスは食いついていないでしょう。
この試合前に、SBに丸山選手のようなセンターバックタイプを起用することも当研究所は提案していましたが、高徳選手の攻め上がりを捨ててでも丸山選手をキックオフから起用していれば、PKを与えることなく1-0で試合を終わらせることができていたかもしれませんし、終盤に
PKから同点に追いつかれ、後半15分すぎから日本の守備ブロックが下がりすぎて相手にボールをポゼッションされ、ボールを取り返しても前方へロングを蹴るので精一杯となり、防戦一方の厳しい展開になってしまいましたが、どんなに遅くても25分までには交代選手を投入して、悪い流れを断ち切るべきでした。
百歩譲って香川選手のトップ下で行くにしても、後半25分に例えば清武選手を投入してボールの収まりどころをつくり、ボールを奪ったらまず清武選手にパスして、彼が中盤でタメをつくっている間に周囲の選手が攻め上がって反撃することで、試合の流れをこちらへ引き戻すようにするべきだったと思います。
香川選手と清武選手の交代ならば、セットプレー時に守備力が下がってしまうという不安が出ることもないはずです。
先月のタイ戦もそうなんですが、試合の流れを見ながら交代選手を上手く使うということもハリル監督はできないんですよね。
守備力のある選手をサイドバックに起用せず、イラク戦での失点にからむなど守備力に不安のある高徳選手を起用し続けたことからPKを誘発し、不調でほとんど機能していない香川選手を90分間使い続け、トップ下から好調の清武選手を外したことで、日本の手から勝ち点2がスルリと逃げていったんじゃないでしょうか。
この試合ハリル監督の数少ない正しい決断だったのは、本田選手を右ウイングから外しセンターFWで起用したことです。
しかし当研究所は昨年6月のW杯アジア2次予選の初戦、シンガポール戦ですでに本田選手の右ウイング起用に疑問を感じ、昨年10月のシリア戦で本田選手のセンターFWへのコンバートを提案しています。
(当ブログ・2015年6月シンガポール戦記事)
(当ブログ・2015年9月カンボジア戦記事)
(当ブログ・2015年9月アフガニスタン戦記事)
(当ブログ・2015年10月シリア戦記事)
ハリル監督は、本田選手の右ウイング起用が適切でないということに気づいてコンバートを決断するまで、当研究所から1年遅れているわけです。
もし私が監督だったら、1年前のカンボジア戦やアフガニスタン戦から本田選手をセンターFWや攻撃的なボランチにコンバートして試し、右ウイングには原口・宇佐美ら若くてスピードや技術があり個の能力でサイドを突破できる選手を試して競わせながら経験を積ませ、1年後のこのオーストラリア戦に通用するレベルまで成長を促すような選手起用をします。
ところがハリルホジッチ監督は、かたくなに本田選手をまったく機能していない右ウイングで起用し続け、不調の香川選手をいつまでたってもトップ下から外さず、カンボジアやタイに苦しんでようやく勝ちUAEには負けるという危険信号がさんざん出ているのにグズグズと決断が遅れ、ミランやドルトムントの首脳陣も本田・香川の代表での低調なプレーぶりを見たのでしょう、彼らはクラブでの出場機会を失ってしまいました。
ハリルホジッチ監督は「欧州でプレーしている日本人選手の多くが出場機会を失うのを1年前に知りたかった」と言っていましたが、その原因の多くは、選手のプレーの特徴・長所短所・選手の調子の良し悪し・選手間の優劣というものを見極めることができず、選手を不適切なポジションで使い続け、実力以上にヘタクソに見せてしまうハリル監督自身にあると思います。
彼が代表監督をやっていることで、日本のサッカー界全体が「負のスパイラル」に陥っています。
これで本田選手を再び右ウイングに戻したりしたら本気で怒りますけど、そういう不可解な采配をやってしまいかねないのがハリル監督なんですよね。
やれ欧州組は移動があってコンディションが悪いとか、出場機会を失ってどうのとかグチグチ言ってますが、日本代表選手の士気にも悪い影響を与えかねません。
グループ首位を走っていたオーストラリア代表の選手たちは、欧州からオーストラリアへ飛行機で帰るとき、欧州から日本へ飛ぶ場合の2倍の距離がかかるわけです。それでもあるオーストラリア人選手は「世界中でプレーしているのだからそれが当たり前だ」とコメントしていました。
クルーズもレバークーゼンで出場機会があまりないはずですが、ポステコグロウ監督が代表戦ではちゃんと機能するような使い方をしているのではないでしょうか。
たぶんハリルホジッチさんは、ものごとを感情的に認識(インプット)し、感情的に行動(アウトプット)するタイプの人なんだと思います。
「ミランやドルトムント・レスターでやっているからいつだって
日本最高の選手なんだ」という思い込み(感情)で、誰をどのポジションで起用するか決めているから、選手起用で間違いを繰り返し、日本代表を不振に陥らせているのではないでしょうか。
2次予選においてベタ引きで来たカンボジア代表にスペースを消されて自分がやりたいカウンターサッカーが通用せず、相手のオウンゴールもあってようやく勝った試合後、「カンボジアはもっと前へ出て攻めてくるべきだ。アジアではカウンターサッカーをやっている国が多いが、だからアジアは世界から遅れているんだ」みたいなコメントをしていましたが、日本に「タテに速いカウンターサッカー」をやらせようとしている監督さんが、こういう感情まかせのメチャクチャなことを言っていいのでしょうか?
こういうタイプの人は絵描きや音楽家など芸術家には向いていますが、企業のリーダーや政治家のような実務家にはもっとも不向きなタイプです。
実務家に向いているのは、ものごとを論理的に正確に認識し、正しいロジックを脳内で積み上げていってそれに基づいて行動し、成功を納めることができるタイプの人です。
もちろんサッカーチームの監督も、実務家タイプでなければなりません。
大変残念ですが、もし彼よりマシな監督が招聘できるなら、今のタイミングでハリルホジッチ氏を解任すべきだと思います。
この先どういうヘマをやらかして勝ち点を失うか、わかったものではありません。
選手それぞれのプレーの特徴を見極め、適材適所で起用していく、試合の流れを見ながら勝負どころで適切な交代カードを切っていくという「勝負師」としての面では、少なくとも手倉森さんの方がハリル氏より上だと思いますが、もし後任監督のリストアップができていないなら手倉森さんを暫定監督にして、来年までに適当な人を内外から探すようにしたらどうでしょうか。
ちょうど来月、オマーンとのテストマッチがありますが、その試合で新監督に予行演習をさせて、日本がW杯に出場するために非常に重要な試合となった、サウジとのホームゲームに臨むべきだと思います。
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当ブログ関連記事・日本代表、イラクに冷や汗の勝利
■日本代表、イラクに冷や汗の勝利(その2)
前回のつづき
選手個々で特筆すべき活躍だったのは、値千金の決勝ゴールをあげた山口選手。CKからのこぼれ球を見事なダイレクトシュートで決めてくれました。
ゴールが欲しくて欲しくてたまらないときに、日本代表は4トップ5トップみたいな形になって相手のマーカーまで引っ張ってきてしまい、「相手ゴール前に2階建てバスを置く」ような状況を自らつくり出してしまうということをこれまで何度も指摘してきましたが、相手のMFがDFラインに吸収されて一直線になっているような状況で効果的なのは、実はペナルティアーク周辺からのミドルシュートです。(下図)
(クリックで拡大)
もしこちらのFWがゴール前でベッタリ張りついてもいないのに、相手チームのMFがDFラインに吸収されてゴール前で一直線になっているような場合は、最低でも1人はこぼれ球狙いでペナルティアーク付近で待ち構えていて、ミドルシュートを狙うべきです。 選手によって得意不得意があるでしょうが、直線的な弾丸シュートよりも足のインにかけたコントロールシュートの方が入る確率が高いかもしれません。 山口選手もこのミドルシュートを自分の重要な武器とするために一生懸命練習して、2~3本打てば1本は決まるようにシュート精度を高めておいてください。 いつか必ず自分とチームを助けてくれるでしょう。もちろん他の選手も同様です。
逆に言えば自軍ゴール前でのセットプレー時に、ペナルティーアーク内に1~2人の味方を必ず置いておき、ここから敵にミドルを打たれないように速やかにボールを拾ってクリアすること。 オーストラリアはいつもここでミドルシュートを狙っています。
原口選手は、中盤で相手からボールを奪ってコレクティブカウンターの起点になり、長い距離を走って自ら貴重な先制ゴールをゲットしました。 前半は相手も元気でコンパクトな守備ブロックにスペースを消されて苦しみましたが、相手の足が止まった後半からはドリブル突破が冴えてチームの攻撃を牽引。 引き続き好調さを維持しています。
清武選手はトップ下としてコレクティブカウンターの中心となり、原口選手の先制ゴールをナイスアシスト。 バイタルエリアでボールを受けてからのミドルシュートやパスでチャンスメークする動きもなかなか良かったと思います。
でももっとやれるはずです。 清武選手のバイタルエリアに入るタイミングが早すぎて、バックからボールを受けて3トップにパスを供給する役目を果たす選手が誰もいなくなってしまい、パスの出しどころが無いことに焦れたCBがアバウトなロングボールを前線に放り込んでしまうことで、チームの攻撃が機能しない時間帯も長かったです。 味方のバックやボランチがボールを持っているタイミングでは、相手のダブルボランチの前や横のスペースでもっと積極的にパスを受け、それを確実に前の選手へつながなければいけません。セビージャでレギュラーを獲得するために乗り越えなければいけない課題です。
西川選手は、チームを救うナイスセーブがありましたが、自分のキックの技術をやや過信しすぎではないでしょうか。 クラブでも敵に囲まれた味方の足元へパスを出してピンチになるシーンが散見されますが、GKの本分は何といってもゴールを守ることですし、ゴールキックやバックパスの処理などはシンプルに安全第一でお願いします。
逆に、またしても右ウイングで先発した本田選手はデュエルに勝ってサイドを突破することができず、いつものようにピッチ中央へ流れてプレーしていましたがシュート・パスでミスが多く、相手に体を寄せられてボールをロストするシーンも目立ち、攻撃のブレーキに。 体力的な衰えからプレーのキレや正確性が失われているように思われ、もはやセンターFWで90分間プレーすることさえも難しいのかもしれません。
初めから守備をやる気もサラサラ無いようで、彼が守備に戻らないのでチーム全体でコンパクトなブロックをつくることができず、それによってなかなかボールを奪い返すことができないので、相手チームが自信を持ってボールをポゼッションし日本の陣地に攻め込むことができるのです。 失点の原因となったイラクのFKは、彼が守備に戻らなかった右サイドで与えたことを見逃すわけにはいきません。
私はまだ本田選手を見放してはいません。近いうちに再生策を提案したいと思ってますが、本田選手が攻守両面でこのチームの弱点となっており、オーストラリア遠征以後はしばらく彼抜きでのチーム作りをしていくべきです。
酒井高選手は、ゴール前でアブドルアミルとの空中戦に競り負けて失点の原因に。 ジャンプ前の体のぶつけ合いから負けないようにしっかり競って欲しいですし、もし万が一ジャンプのタイミングが遅れてしまっても、空中で自分の体をしっかりぶつけて相手の体を押すことで、クロスの軌道から外れさせて相手が強いヘディングをできないようにするといった工夫が欲しいところ。 試合後に「自分の成長のためにはこういうミスから学ぶことも必要」という彼のコメントがありましたが、そういうことは高徳選手を起用した監督が言うならまだしも、反省すべきミスをした選手本人が言うべきことではありません。 前半3分にも高徳選手が同じ選手に競り負けてシュートがポストを叩くシーンがありましたが、セットプレー時にアブドルアミルにつくマーカーを変更するといったベンチワークも必要だったんじゃないでしょうか。
岡崎選手は、前線で精力的に動き回って味方のプレーを助けようとしていましたが、決定的なシュートシーンは無く、センターFWとして不満の残る出来。
試合後に「センターFWの自分が下がると相手CBもマークするためにあがってくる。そこでDFラインのウラが広く空くので、自分がそこヘ走りこんでボランチあたりからパスが出れば、ゴールできる」という趣旨のコメントを彼がしていましたが、当研究所がずっと指摘してきたことをやっと理解してくれたようですね。
しかしスペインやドイツのようなサッカー先進国の選手の多くは、こうした攻撃戦術の基本を20代前半までには身につけてプレーしているわけで、そうした戦術理解の差が積み重なり、欧州四大リーグのクラブでスタメンが取れるか取れないかの大きな違いとなって現われてくるわけです。 それは岡崎選手だけの責任ではなく、彼がユース年代になるまでに出会ってきた日本人指導者の限界だったとも言えますが、遅すぎるということはありません。 こうした攻撃戦術の理解を生かして代表でもレスターでも今後ゴールをあげ続けて欲しいですし、このブログを見ている20代の若い選手がいるなら、この戦術知識を生かしてワールドクラスのプレーヤーに成長して欲しいです。
吉田選手は、相手がロングボールを放り込んできて森重選手と敵FWがヘディングで競っているときに、森重選手よりも前で立ち止まり、それを見ているだけというのはいただけません。 味方の選手が敵に競り負けてこぼれてくるボールに備えるため、森重選手よりも自軍ゴールに近い、ナナメ後方でカバーのポジショニングをとらなければなりません。
また森重選手もそうなんですが、味方のGKがゴール前でハイボールをキャッチするときに、西川選手の周りをイラクの選手2人に囲まれるような状況を許すと、もし西川選手がキャッチングミスした場合、即失点につながりかねません。 ファールに注意しながら味方のGKと相手選手との間に吉田・森重両選手がポジショニングし、ハイボールをキャッチしようとしている西川選手を守ってやらないと。バックの心構えとして重要なのは、常に最悪のことが起こることを想定し、もしそれが実際に起こっても致命的な結果にならないように、いつも準備しておくことです。
パワープレーについては当研究所は推奨しませんが、もしやるのであればヘッドで相手のウラヘボールを落とすことばかりを狙うのではなく、バイタルエリアに落として味方に拾わせ、そこを攻めの基点とするのも一つのアイデアです。
酒井宏選手は、守備のときに手を使うことがクセになっているようです。 リーグアンでは許されるのかもしれませんが、アジアの判定基準ではファールになってしまいます。 手で相手をひっぱったり押したりするのではなく、相手と併走しながら自分の肩を相手の前に入れて、自分の太ももの外側を当てて相手のバランスを崩しボールを奪うようにすると良いでしょう。
柏木選手は守備をがんばっていましたが、チームがコンパクトな守備ブロックをつくれておらず、広いスペースを守らなければならないので、彼の守備力ではよけいに厳しいように思われます。
パスによる攻撃の組み立ても今ひとつで、精度の低いロングパスを多用しては味方に通らず、チームがリズムに乗った攻撃ができない一因に。 バックがボールを持っているタイミングでは、相手のボランチの前でパスを受ける動きをもっと増やし、それを主にグラウンダーのパスで、トップ下や左右サイドハーフに正確につないで欲しいです。
長谷部選手は、中盤でのボールの奪い合いで劣勢でした。ボール奪取力のさらなる向上を。
☆ ☆ ☆
イラクとのゲームは劇的な勝利となりましたが、「試合結果」で「プレー内容」を美化してはいけません。
岡崎選手の試合後のコメントにあったように、当研究所が何度も指摘したUAE戦・タイ戦での課題がようやく修正され、3トップ+トップ下がゴール前で立ち止まってベッタリと張りつくのではなく、あえて引くことで相手DFラインを高く保ち、そのウラのスペースやバイタルエリアを広く空けておくことで、自分たちが攻めるためのスペースを確保することができていました。(下図)
(クリックで拡大)
それによって、「ゴール前で止まった自分」「止まった相手」「止まったボール」という日本人選手にとって苦手なシチュエーションではなく、「後ろに下がりながら守る相手」に対し「前進する自分」「テンポの良いパスやスピードに乗ったドリブルで前へ進むボール」という得意なシチュエーションをつくり出すことができるのです。
その象徴的なシーンが、清武選手が中心となったコレクティブカウンターからの原口選手のゴールでした。これは当研究所が狙っていた攻撃の一つの形です。
もしあのシーンで相手に上手く守られてしまった場合は、途中でパスサッカーに切り替え、トップ下やボランチが中心となってグラウンダーのパスで相手の守備ブロックを崩すことを狙って、攻め直せば良いわけです。
それが当研究所が何度も言っている「戦術の使い分け」です。パスサッカーをやる場合でもゴール前にベッタリ張りつかず、相手のバックラインを高く保つということは同じ。
しかし、パスコースが無いことに焦れたバックやボランチがアバウトなロングボールを前線に放り込んではボールを失い、攻めのリズムがなかなかつくれなかったことは課題ですし、一番深刻なのは、コンパクトな守備ブロックをまったくつくることができず、不安定な守りから失点を重ねていることです。
ブラジルW杯アジア予選においてザックジャパンは圧倒的な強さだったと前回言いましたが、当時だって「センターバック2枚を残して全員総攻撃だー!!」みたいな、最初から5-0・6-0で勝つことを狙ったサッカー、UAE戦のハリルジャパンのようなサッカーをしていたわけではありません。
慎重にコンパクトな守備ブロックを90分間つくって厳しくプレスをかけていくことで中盤でどんどんボールを狩り取り、「ヤバイ。こっちの攻撃が全然通用しないぞ」と相手に思わせてひるんだところを攻めて、1ゴールまた1ゴールと積み重ねていき、終わってみたら3-0で勝っていた、苦戦したけど焦らずに攻めて最後は1-0あるいは2-1で勝っていたというのがザックジャパンのサッカーだったわけです。
そこを本田選手を中心としたハリルジャパンのメンバーはすっかり忘れています。
だから現在、守備ブロックもつくらずに「センターバック2枚を残して全員総攻撃だー!!」みたいなサッカーをやって何度も失点を食らい、ホームでUAEに負け、イラクに冷や汗をかかされてしまうのです。
サッカーとボクシングは審判による「ホームタウンデシジョン」が起こりやすいスポーツと言われていますが、この試合は、ホームである日本に有利な判定に助けられた結果でもあることを絶対に忘れてはいけません。
☆ ☆ ☆
一つの記事にあれもこれもと話題を詰め込みすぎて申し訳ないんですが、オーストラリア戦まで時間がないので。
次のオーストラリア戦をどう戦うかですが、時間が無くてサウジVSオーストラリアの試合を見れていないんですが、守備組織の構築や若手への切り替えなどの面でハリル監督のチームづくりが遅れているのに比べ、オーストラリアはポステコグロウ監督のもと若手を積極的に育成し、ロングボールを前線に放り込む「古き良きイングランドスタイル」からパスサッカーへの転換をはかっており、アウェーでUAEに勝ちサウジには引き分けるなど、現時点では残念ながらオーストラリアの方がチーム力が上のようにも見えます。
よってボールポゼッション率でオーストラリアが日本を大きく上回る試合展開も予想されます。
2位以内に入れば良いわけですから、W杯出場を目指す日本にとっての直接のライバルはサウジ・UAEと考えていますが、両チームはオーストラリアのホームゲームで勝つことは難しいと思われます。
そこでオーストラリアとのアウエー戦で日本が勝ち点1でも確保できるならサウジ・UAEに差をつけられますし、オーストラリアをホームに迎える来年までにチームを立て直しそこで勝ち点3が取れれば、さらにUAEに勝ち点3サウジに2の差をつけられますし、UAEとサウジの直接対決で星のつぶし合いもあるでしょう。
現時点の順位は暫定のものですから、4位だからといって焦る必要はありませんし、全10試合の結果でW杯行きが決まることを忘れてはいけません。
もちろん最初から引き分けだけを狙って試合をするのではなく、堅固な守備ブロックを90分間つくってそこから厳しくプレスをかけ続け、ボールを奪ったらコレクティブカウンターを仕掛けるなどして虎視眈々と勝利を狙いながら、どんなに悪くとも引き分けでゲームを終わらせることも一つの案ではないでしょうか。
この試合は、負けるリスクを冒してCBを前線に上げてパワープレーをやってまで、絶対に勝ち点3を取らなければいけない試合ではないと思います。
もし堅守速攻のカウンターサッカーというプランで行くなら、このようなフォーメーションはどうでしょうか。
浅野
原口 清武 斎藤
(小林)
山口 長谷部
(永木)
SB 森重 吉田 SB
GK
日本ではサイドバックは何が何でも攻めないといけないみたいに考えられているようですが、この試合では攻め上がるのを極力自重し、守備に徹してもらいます。
もし両サイドの攻防戦やゴール前での空中戦での守備力に信頼がおけると監督さんが考えるなら、丸山選手や槙野選手のようなセンターバックタイプをSBに入れてはどうでしょうか。
ゴールがどうしても欲しいシチュエーションになってから、太田選手や高徳選手のような攻撃参加ができるSBを入れても遅くはないと思います。
ダブルボランチは守備力を最優先させて山口・長谷部もしくは永木選手のコンビで。
両サイドバックが攻め上がりを自重する分、ボールを奪い返したら清武・原口・斎藤・浅野の4人にはしっかり動いてもらい、コレクティブカウンターからゴールを狙います。 斎藤選手はクラブでは左サイドが主戦場ですが、ドリブルで右サイドをブチ抜いてからのドリブルシュートやクロスで得点チャンスをつくれるはずです。守備時は原口・斎藤もしくは小林がダブルボランチの位置まで下がり、4-4のコンパクトな守備ブロックをつくります。
ハーフナー選手のようなポストプレーヤータイプを呼んでいないのが本当に痛いのですが、上記のシステムが機能しなければ、4-4-2で行くというのはどうでしょうか。
岡崎
浅野 (本田)
(香川)
原口 山口 長谷部 清武
(永木)
SB 森重 吉田 SB
GK
守備時の注意点は前述のシステムと同様です。
攻撃時は、原口・清武両選手がカウンター攻撃の中心となって攻めを構築し、スピードのある浅野選手や岡崎選手にゴールを狙わせます。
後半25分を過ぎて相手の足が止まり始めたところで、岡崎選手もへばっているようであれば、そこでスーパーサブとして本田選手を投入するなら、機能するかもしれません。浅野選手の足が止まった場合は香川選手を投入します。
ともかく、今のハリルジャパンのように間延びした陣形で、選手それぞれがバラバラに個の能力だけで守っているようでは絶対にダメです。
ハリルジャパンは、1980年代までに見られたようなクラッシックな4-2-1-3になっていることがそもそもコンパクトな守備ブロックをつくれない元凶であり、攻撃時でも両サイドハーフが早い段階から上がりすぎるのを避けた4-2-3-1に戻すべきだと思います。
ポゼッションサッカーの信奉者である当研究所が、日本代表に堅守速攻からのカウンターサッカーを推奨するということは、それだけイラク戦の試合内容が良くなかったということです。
手倉森さん、日本代表の守備組織構築をよろしくお願いします。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2016.10.6 埼玉スタジアム2002
日本 2 - 1 イラク
原口 25' アブドルアミル 60'
山口 90'+
GK 西川 GK ハミド
DF 酒井高 DF サリム
森重 ナティク
吉田 アハマド.I
酒井宏 ドゥルガム
MF 柏木 MF アブドルアミル
(山口 67) アムジャド
長谷部 (マフディ 53)
清武 ヤシン
(バシャル 83)
FW 原口 アリ・アドナン
岡崎
(浅野 75) FW ムハナド
本田 (ジャシム.M 69)
(小林 81) アブドルザフラ
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パスサッカーの基本(その1)
パスサッカーの基本(その2)
より高度なパスサッカー(その1)
より高度なパスサッカー(その2)
より高度なパスサッカー(その3)
選手個々で特筆すべき活躍だったのは、値千金の決勝ゴールをあげた山口選手。CKからのこぼれ球を見事なダイレクトシュートで決めてくれました。
ゴールが欲しくて欲しくてたまらないときに、日本代表は4トップ5トップみたいな形になって相手のマーカーまで引っ張ってきてしまい、「相手ゴール前に2階建てバスを置く」ような状況を自らつくり出してしまうということをこれまで何度も指摘してきましたが、相手のMFがDFラインに吸収されて一直線になっているような状況で効果的なのは、実はペナルティアーク周辺からのミドルシュートです。(下図)
(クリックで拡大)
もしこちらのFWがゴール前でベッタリ張りついてもいないのに、相手チームのMFがDFラインに吸収されてゴール前で一直線になっているような場合は、最低でも1人はこぼれ球狙いでペナルティアーク付近で待ち構えていて、ミドルシュートを狙うべきです。 選手によって得意不得意があるでしょうが、直線的な弾丸シュートよりも足のインにかけたコントロールシュートの方が入る確率が高いかもしれません。 山口選手もこのミドルシュートを自分の重要な武器とするために一生懸命練習して、2~3本打てば1本は決まるようにシュート精度を高めておいてください。 いつか必ず自分とチームを助けてくれるでしょう。もちろん他の選手も同様です。
逆に言えば自軍ゴール前でのセットプレー時に、ペナルティーアーク内に1~2人の味方を必ず置いておき、ここから敵にミドルを打たれないように速やかにボールを拾ってクリアすること。 オーストラリアはいつもここでミドルシュートを狙っています。
原口選手は、中盤で相手からボールを奪ってコレクティブカウンターの起点になり、長い距離を走って自ら貴重な先制ゴールをゲットしました。 前半は相手も元気でコンパクトな守備ブロックにスペースを消されて苦しみましたが、相手の足が止まった後半からはドリブル突破が冴えてチームの攻撃を牽引。 引き続き好調さを維持しています。
清武選手はトップ下としてコレクティブカウンターの中心となり、原口選手の先制ゴールをナイスアシスト。 バイタルエリアでボールを受けてからのミドルシュートやパスでチャンスメークする動きもなかなか良かったと思います。
でももっとやれるはずです。 清武選手のバイタルエリアに入るタイミングが早すぎて、バックからボールを受けて3トップにパスを供給する役目を果たす選手が誰もいなくなってしまい、パスの出しどころが無いことに焦れたCBがアバウトなロングボールを前線に放り込んでしまうことで、チームの攻撃が機能しない時間帯も長かったです。 味方のバックやボランチがボールを持っているタイミングでは、相手のダブルボランチの前や横のスペースでもっと積極的にパスを受け、それを確実に前の選手へつながなければいけません。セビージャでレギュラーを獲得するために乗り越えなければいけない課題です。
西川選手は、チームを救うナイスセーブがありましたが、自分のキックの技術をやや過信しすぎではないでしょうか。 クラブでも敵に囲まれた味方の足元へパスを出してピンチになるシーンが散見されますが、GKの本分は何といってもゴールを守ることですし、ゴールキックやバックパスの処理などはシンプルに安全第一でお願いします。
逆に、またしても右ウイングで先発した本田選手はデュエルに勝ってサイドを突破することができず、いつものようにピッチ中央へ流れてプレーしていましたがシュート・パスでミスが多く、相手に体を寄せられてボールをロストするシーンも目立ち、攻撃のブレーキに。 体力的な衰えからプレーのキレや正確性が失われているように思われ、もはやセンターFWで90分間プレーすることさえも難しいのかもしれません。
初めから守備をやる気もサラサラ無いようで、彼が守備に戻らないのでチーム全体でコンパクトなブロックをつくることができず、それによってなかなかボールを奪い返すことができないので、相手チームが自信を持ってボールをポゼッションし日本の陣地に攻め込むことができるのです。 失点の原因となったイラクのFKは、彼が守備に戻らなかった右サイドで与えたことを見逃すわけにはいきません。
私はまだ本田選手を見放してはいません。近いうちに再生策を提案したいと思ってますが、本田選手が攻守両面でこのチームの弱点となっており、オーストラリア遠征以後はしばらく彼抜きでのチーム作りをしていくべきです。
酒井高選手は、ゴール前でアブドルアミルとの空中戦に競り負けて失点の原因に。 ジャンプ前の体のぶつけ合いから負けないようにしっかり競って欲しいですし、もし万が一ジャンプのタイミングが遅れてしまっても、空中で自分の体をしっかりぶつけて相手の体を押すことで、クロスの軌道から外れさせて相手が強いヘディングをできないようにするといった工夫が欲しいところ。 試合後に「自分の成長のためにはこういうミスから学ぶことも必要」という彼のコメントがありましたが、そういうことは高徳選手を起用した監督が言うならまだしも、反省すべきミスをした選手本人が言うべきことではありません。 前半3分にも高徳選手が同じ選手に競り負けてシュートがポストを叩くシーンがありましたが、セットプレー時にアブドルアミルにつくマーカーを変更するといったベンチワークも必要だったんじゃないでしょうか。
岡崎選手は、前線で精力的に動き回って味方のプレーを助けようとしていましたが、決定的なシュートシーンは無く、センターFWとして不満の残る出来。
試合後に「センターFWの自分が下がると相手CBもマークするためにあがってくる。そこでDFラインのウラが広く空くので、自分がそこヘ走りこんでボランチあたりからパスが出れば、ゴールできる」という趣旨のコメントを彼がしていましたが、当研究所がずっと指摘してきたことをやっと理解してくれたようですね。
しかしスペインやドイツのようなサッカー先進国の選手の多くは、こうした攻撃戦術の基本を20代前半までには身につけてプレーしているわけで、そうした戦術理解の差が積み重なり、欧州四大リーグのクラブでスタメンが取れるか取れないかの大きな違いとなって現われてくるわけです。 それは岡崎選手だけの責任ではなく、彼がユース年代になるまでに出会ってきた日本人指導者の限界だったとも言えますが、遅すぎるということはありません。 こうした攻撃戦術の理解を生かして代表でもレスターでも今後ゴールをあげ続けて欲しいですし、このブログを見ている20代の若い選手がいるなら、この戦術知識を生かしてワールドクラスのプレーヤーに成長して欲しいです。
吉田選手は、相手がロングボールを放り込んできて森重選手と敵FWがヘディングで競っているときに、森重選手よりも前で立ち止まり、それを見ているだけというのはいただけません。 味方の選手が敵に競り負けてこぼれてくるボールに備えるため、森重選手よりも自軍ゴールに近い、ナナメ後方でカバーのポジショニングをとらなければなりません。
また森重選手もそうなんですが、味方のGKがゴール前でハイボールをキャッチするときに、西川選手の周りをイラクの選手2人に囲まれるような状況を許すと、もし西川選手がキャッチングミスした場合、即失点につながりかねません。 ファールに注意しながら味方のGKと相手選手との間に吉田・森重両選手がポジショニングし、ハイボールをキャッチしようとしている西川選手を守ってやらないと。バックの心構えとして重要なのは、常に最悪のことが起こることを想定し、もしそれが実際に起こっても致命的な結果にならないように、いつも準備しておくことです。
パワープレーについては当研究所は推奨しませんが、もしやるのであればヘッドで相手のウラヘボールを落とすことばかりを狙うのではなく、バイタルエリアに落として味方に拾わせ、そこを攻めの基点とするのも一つのアイデアです。
酒井宏選手は、守備のときに手を使うことがクセになっているようです。 リーグアンでは許されるのかもしれませんが、アジアの判定基準ではファールになってしまいます。 手で相手をひっぱったり押したりするのではなく、相手と併走しながら自分の肩を相手の前に入れて、自分の太ももの外側を当てて相手のバランスを崩しボールを奪うようにすると良いでしょう。
柏木選手は守備をがんばっていましたが、チームがコンパクトな守備ブロックをつくれておらず、広いスペースを守らなければならないので、彼の守備力ではよけいに厳しいように思われます。
パスによる攻撃の組み立ても今ひとつで、精度の低いロングパスを多用しては味方に通らず、チームがリズムに乗った攻撃ができない一因に。 バックがボールを持っているタイミングでは、相手のボランチの前でパスを受ける動きをもっと増やし、それを主にグラウンダーのパスで、トップ下や左右サイドハーフに正確につないで欲しいです。
長谷部選手は、中盤でのボールの奪い合いで劣勢でした。ボール奪取力のさらなる向上を。
☆ ☆ ☆
イラクとのゲームは劇的な勝利となりましたが、「試合結果」で「プレー内容」を美化してはいけません。
岡崎選手の試合後のコメントにあったように、当研究所が何度も指摘したUAE戦・タイ戦での課題がようやく修正され、3トップ+トップ下がゴール前で立ち止まってベッタリと張りつくのではなく、あえて引くことで相手DFラインを高く保ち、そのウラのスペースやバイタルエリアを広く空けておくことで、自分たちが攻めるためのスペースを確保することができていました。(下図)
(クリックで拡大)
それによって、「ゴール前で止まった自分」「止まった相手」「止まったボール」という日本人選手にとって苦手なシチュエーションではなく、「後ろに下がりながら守る相手」に対し「前進する自分」「テンポの良いパスやスピードに乗ったドリブルで前へ進むボール」という得意なシチュエーションをつくり出すことができるのです。
その象徴的なシーンが、清武選手が中心となったコレクティブカウンターからの原口選手のゴールでした。これは当研究所が狙っていた攻撃の一つの形です。
もしあのシーンで相手に上手く守られてしまった場合は、途中でパスサッカーに切り替え、トップ下やボランチが中心となってグラウンダーのパスで相手の守備ブロックを崩すことを狙って、攻め直せば良いわけです。
それが当研究所が何度も言っている「戦術の使い分け」です。パスサッカーをやる場合でもゴール前にベッタリ張りつかず、相手のバックラインを高く保つということは同じ。
しかし、パスコースが無いことに焦れたバックやボランチがアバウトなロングボールを前線に放り込んではボールを失い、攻めのリズムがなかなかつくれなかったことは課題ですし、一番深刻なのは、コンパクトな守備ブロックをまったくつくることができず、不安定な守りから失点を重ねていることです。
ブラジルW杯アジア予選においてザックジャパンは圧倒的な強さだったと前回言いましたが、当時だって「センターバック2枚を残して全員総攻撃だー!!」みたいな、最初から5-0・6-0で勝つことを狙ったサッカー、UAE戦のハリルジャパンのようなサッカーをしていたわけではありません。
慎重にコンパクトな守備ブロックを90分間つくって厳しくプレスをかけていくことで中盤でどんどんボールを狩り取り、「ヤバイ。こっちの攻撃が全然通用しないぞ」と相手に思わせてひるんだところを攻めて、1ゴールまた1ゴールと積み重ねていき、終わってみたら3-0で勝っていた、苦戦したけど焦らずに攻めて最後は1-0あるいは2-1で勝っていたというのがザックジャパンのサッカーだったわけです。
そこを本田選手を中心としたハリルジャパンのメンバーはすっかり忘れています。
だから現在、守備ブロックもつくらずに「センターバック2枚を残して全員総攻撃だー!!」みたいなサッカーをやって何度も失点を食らい、ホームでUAEに負け、イラクに冷や汗をかかされてしまうのです。
サッカーとボクシングは審判による「ホームタウンデシジョン」が起こりやすいスポーツと言われていますが、この試合は、ホームである日本に有利な判定に助けられた結果でもあることを絶対に忘れてはいけません。
☆ ☆ ☆
一つの記事にあれもこれもと話題を詰め込みすぎて申し訳ないんですが、オーストラリア戦まで時間がないので。
次のオーストラリア戦をどう戦うかですが、時間が無くてサウジVSオーストラリアの試合を見れていないんですが、守備組織の構築や若手への切り替えなどの面でハリル監督のチームづくりが遅れているのに比べ、オーストラリアはポステコグロウ監督のもと若手を積極的に育成し、ロングボールを前線に放り込む「古き良きイングランドスタイル」からパスサッカーへの転換をはかっており、アウェーでUAEに勝ちサウジには引き分けるなど、現時点では残念ながらオーストラリアの方がチーム力が上のようにも見えます。
よってボールポゼッション率でオーストラリアが日本を大きく上回る試合展開も予想されます。
2位以内に入れば良いわけですから、W杯出場を目指す日本にとっての直接のライバルはサウジ・UAEと考えていますが、両チームはオーストラリアのホームゲームで勝つことは難しいと思われます。
そこでオーストラリアとのアウエー戦で日本が勝ち点1でも確保できるならサウジ・UAEに差をつけられますし、オーストラリアをホームに迎える来年までにチームを立て直しそこで勝ち点3が取れれば、さらにUAEに勝ち点3サウジに2の差をつけられますし、UAEとサウジの直接対決で星のつぶし合いもあるでしょう。
現時点の順位は暫定のものですから、4位だからといって焦る必要はありませんし、全10試合の結果でW杯行きが決まることを忘れてはいけません。
もちろん最初から引き分けだけを狙って試合をするのではなく、堅固な守備ブロックを90分間つくってそこから厳しくプレスをかけ続け、ボールを奪ったらコレクティブカウンターを仕掛けるなどして虎視眈々と勝利を狙いながら、どんなに悪くとも引き分けでゲームを終わらせることも一つの案ではないでしょうか。
この試合は、負けるリスクを冒してCBを前線に上げてパワープレーをやってまで、絶対に勝ち点3を取らなければいけない試合ではないと思います。
もし堅守速攻のカウンターサッカーというプランで行くなら、このようなフォーメーションはどうでしょうか。
浅野
原口 清武 斎藤
(小林)
山口 長谷部
(永木)
SB 森重 吉田 SB
GK
日本ではサイドバックは何が何でも攻めないといけないみたいに考えられているようですが、この試合では攻め上がるのを極力自重し、守備に徹してもらいます。
もし両サイドの攻防戦やゴール前での空中戦での守備力に信頼がおけると監督さんが考えるなら、丸山選手や槙野選手のようなセンターバックタイプをSBに入れてはどうでしょうか。
ゴールがどうしても欲しいシチュエーションになってから、太田選手や高徳選手のような攻撃参加ができるSBを入れても遅くはないと思います。
ダブルボランチは守備力を最優先させて山口・長谷部もしくは永木選手のコンビで。
両サイドバックが攻め上がりを自重する分、ボールを奪い返したら清武・原口・斎藤・浅野の4人にはしっかり動いてもらい、コレクティブカウンターからゴールを狙います。 斎藤選手はクラブでは左サイドが主戦場ですが、ドリブルで右サイドをブチ抜いてからのドリブルシュートやクロスで得点チャンスをつくれるはずです。守備時は原口・斎藤もしくは小林がダブルボランチの位置まで下がり、4-4のコンパクトな守備ブロックをつくります。
ハーフナー選手のようなポストプレーヤータイプを呼んでいないのが本当に痛いのですが、上記のシステムが機能しなければ、4-4-2で行くというのはどうでしょうか。
岡崎
浅野 (本田)
(香川)
原口 山口 長谷部 清武
(永木)
SB 森重 吉田 SB
GK
守備時の注意点は前述のシステムと同様です。
攻撃時は、原口・清武両選手がカウンター攻撃の中心となって攻めを構築し、スピードのある浅野選手や岡崎選手にゴールを狙わせます。
後半25分を過ぎて相手の足が止まり始めたところで、岡崎選手もへばっているようであれば、そこでスーパーサブとして本田選手を投入するなら、機能するかもしれません。浅野選手の足が止まった場合は香川選手を投入します。
ともかく、今のハリルジャパンのように間延びした陣形で、選手それぞれがバラバラに個の能力だけで守っているようでは絶対にダメです。
ハリルジャパンは、1980年代までに見られたようなクラッシックな4-2-1-3になっていることがそもそもコンパクトな守備ブロックをつくれない元凶であり、攻撃時でも両サイドハーフが早い段階から上がりすぎるのを避けた4-2-3-1に戻すべきだと思います。
ポゼッションサッカーの信奉者である当研究所が、日本代表に堅守速攻からのカウンターサッカーを推奨するということは、それだけイラク戦の試合内容が良くなかったということです。
手倉森さん、日本代表の守備組織構築をよろしくお願いします。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2016.10.6 埼玉スタジアム2002
日本 2 - 1 イラク
原口 25' アブドルアミル 60'
山口 90'+
GK 西川 GK ハミド
DF 酒井高 DF サリム
森重 ナティク
吉田 アハマド.I
酒井宏 ドゥルガム
MF 柏木 MF アブドルアミル
(山口 67) アムジャド
長谷部 (マフディ 53)
清武 ヤシン
(バシャル 83)
FW 原口 アリ・アドナン
岡崎
(浅野 75) FW ムハナド
本田 (ジャシム.M 69)
(小林 81) アブドルザフラ
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一対一の勝ち方
フィジカルコンタクトに勝つためのスキル
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パスサッカーの基本(その2)
より高度なパスサッカー(その1)
より高度なパスサッカー(その2)
より高度なパスサッカー(その3)
■日本代表、イラクに冷や汗の勝利
ロシアW杯アジア3次予選、日本対イラク戦が埼玉スタジアムで行われ、日本が2-1で勝利しました。
対戦相手のイラク代表は、国内組を中心にイタリア・スウェーデン・トルコなどでプレーする海外組を加えたチームで、日本がホームでもアウェーでも勝てる相手というのが、試合前の戦力評価でした。
日本の勝利というこの試合の結果は順当なものでしたが、プレー内容は悪かったと思います。
このグループではタイの次に力が劣る相手と見ていましたが、その相手にこういう内容の試合をやっているようでは危機以外の何ものでもありません。
☆ ☆ ☆
まず、この試合が始まる前に当研究所が推奨していたスターティングメンバーをおさらいしておきましょう。
本田
岡崎
原口 清武 浅野
本田
山口 長谷部
柏木
長友 森重 吉田 酒井宏
酒井高
GK
(当ブログ過去記事・イラク戦・オーストラリア戦にのぞむ日本代表メンバー発表!)
上段の名前が試合前に当研究所が推奨していたスタメンです。
名前が青字になっているところは、タイ戦のスタメンから選手を入れ替えてこの選手を入れるべきと当研究所が推奨し、ハリルホジッチ監督がその通りにした選手。
赤字は、当研究所が使い続けるべきではないと指摘したにもかかわらず、ハリル監督がこの試合でも先発させてしまった選手、もしくは好調なのだから変えるべきではないと当研究所が考えていた選手を変えてしまって、ハリル監督がピッチに送り出した選手です。
結局、青字の選手がこの試合の勝因となり、赤字の選手が苦戦の原因となっていました。
この図からも明らかなように、ハリルホジッチ監督の選手起用の誤りが苦戦を繰り返している理由なのですが、そのあたりも含めて日本代表の試合内容を分析していきましょう。
まず攻撃面ですが、UAE戦で出た課題は得点を焦った選手がゴール前にベッタリと張りついて4トップ5トップみたいな形になり、相手のマーカーを引っ張ってきてしまうことで、逆に日本が得点から遠ざかってしまうことでした。
この試合では、「3トップのゴール前張りつき」が修正されていましたし、新たにトップ下のポジションを任された清武選手も3トップに吸収されて横一直線に並んでしまうようなことはなく、中盤でパスの組み立てに参加することができていました。
彼がバイタルでパスを受けてミドルシュートを放った前半11分のプレーは良かったですし、26分には清武選手がコレクティブカウンターの中心となり、貴重な先制ゴールをあげることもできました。
トップ下のポジションを不調の選手から代えるだけで、これだけ攻撃内容も変わり結果も出るわけです。
しかしながらまだまだ良くなる余地はありますし、清武選手ならもっとやれるはずです。
この試合、攻撃的なボランチとして使われた柏木選手もそうなんですが、バックラインでボールを回しているとき、清武選手がバイタルエリアに入るタイミングが早すぎて、バックからボールを受けて3トップにパスを供給する人が誰もいなくなり、パスコースを失ったDFがアバウトなロングボールを前線に放り込んでは、ムダにボールを失うというシーンが少なくありませんでした。
味方の4バックがボールを持っているタイミングでは、4-4-2できた相手のダブルボランチの前や横のスペースで、トップ下やこちらのボランチ2枚がもっと積極的にパスを受けて、それを確実に前の選手へつながなければいけません。
同点に追いつかれたあと、なかなか攻撃が機能しませんでしたが、このあたりが改善されてくれば、もっと多くの得点チャンスをつくることができるでしょう。
次は守備面ですが、あいかわらずコンパクトな守備ブロックがまったく作れていません。
日本の選手たちはそれぞれがバラバラに個の能力だけで守ろうとしており、守備に組織というものがほとんど見られません。
本田選手は最初から守備につく気がサラサラありませんし。
(当研究所はセンターFWなら機能するかもしれないと考えていたのですが、もはやそれすら無理なほど肉体の衰えが激しいようです)
それが原因で守りが安定せず、後半勝負に出てきたイラクにパスを回されて自陣でFKを与え、酒井高選手のまずい守備もあって失点してしまいました。
失点したことでチーム内に動揺が走り、それが攻撃面にも悪影響を与え、プレーから自信や思いきりが欠けた結果、なかなか勝ち越し点が奪えませんでした。
(ピッチ内の選手たちも、そんなことでいちいち落ち込むのではなくて、やるべきことはわかっているのですから、気を強く持ち攻守に全力でプレーしないと)
後半になって、中盤で相手からボールを奪い返すことができなくなったのを見たハリルホジッチ監督は、10分すぎから柏木選手の代わりに山口選手を入れようと準備させますが、その前に同点ゴールを食らってしまいます。
しかし山口選手を先発させて、ゾーンディフェンスによるコンパクトな守備ブロックから厳しくプレスをかけていけば、クリーンシートのまま1-0や2-0で終わらせることができたはずですし、またそういうゲーム運びをすべき試合でした。
コンパクトな守備ブロックをつくって守るということに関してはまだ手倉森ジャパンの方が10倍マシです。
(もしこのブログを読んでいて手倉森さんに直接アクセスできる方がおられるなら、次回オーストラリア戦ではしっかり守備ブロックをつくって守れるように手倉森さんが率先して選手たちを指導して欲しいと伝えておいてください)
当研究所が推奨したように、山口・長谷部のダブルボランチで試合に入ってまず守備を安定させ、試合の後半まで勝ち越し点が奪えないようであれば、そこではじめて長谷部選手を下げて柏木選手を入れて攻撃を強化するといった手を打つべきであり、選手起用の順番もまるで逆のように思えます。
こういう綱渡りのような稚拙な試合をしておいて、「山口選手を後半に投入した監督の采配が当たった」と評価するのは適切ではありません。最初から山口選手を起用し堅固な守備ブロックを構築することで、少なくとも1-0で危なげなく勝つべき試合だったのです。
☆ ☆ ☆
「批判をするならハリルにしてください」と繰り返しているので遠慮なくそうさせてもらいますが、当研究所がタイ戦後にすでに表明したとおり、ハリルホジッチ監督をこのタイミングで解任すべきです。
(当ブログ過去記事・タイに勝利も、課題山積(その3))
もう何度も指摘していますが、まず選手1人ひとりのプレーの特徴や長所・短所、選手の優劣を見ぬく目をもっていないことがプロの監督として致命的です。
選手の現在の実力を見て誰を起用するのか決めるのではなく、「ACミランでやっているから」みたいな選手の肩書きだけで、プレーの中身を見ずにどのポジションに誰を使うか決めているように見えます。
だからチームが機能せず、試合内容も悪くてなかなか良い結果が出ないのです。
選手の起用法も行き当たりばったりで、「調子の良い選手は引き続き起用して伸ばしてやる、調子の悪い選手はいったん外して修正する」といったような、チーム強化の継続性もありません。
前回のタイ戦では、日本の危うい守備を山口選手がバランスを保つことでどうにかこうにか無失点で切り抜けることができました。
攻撃面では浅野選手が得意のスピードで前線をかきまわし、実際にゴールも奪っています。審判によって取り消されたUAE戦のゴールを含めれば、W杯予選で2試合連続ゴール中でした。
ところがこのイラク戦では、2人とも先発を外されてしまいます。
前の試合で選手が良いプレーをして流れに乗ってきたところで、監督によってベンチに座らされることでその流れをブッた切られると、良い意味で選手が調子に乗って成長していくことができません。
この試合もそうでしたが、4-4のコンパクトな守備ブロックをつくって組織的に守るような戦術指導さえできない監督さんは、アジアレベルでも今どき珍しいんじゃないですか。
「日本代表が苦戦しているのは海外組のコンディションが悪いせいだ」と盛んにマスコミが言っていますが、欧州でプレーする選手が多かったのはザックジャパン時代も同じであり、「W杯の予選はいつも厳しいもの」などと過去の記憶を勝手につくりかえている人もいるようですが、海外組主体だったザックジャパンのブラジルW杯最終予選成績は5勝2分1敗、プレーオフに回った3位ヨルダンとの勝ち点差7の圧倒的強さだったのです。
予選直前の準備時間の短さや欧州でプレーする主力選手の移動といった諸条件は初めからわかりきっていたことで、それも含めて長期計画を練り、段階的にチーム作りをしていくのが代表監督の仕事であって、プロの監督としての能力に大きな差がでるところです。
もう一度ザッケローニ氏を日本に呼ぶべきだとは思いませんが、ハリルホジッチ監督との力の差は明らかです。
そういえば、準備期間が短く国内組だけという同じ条件で臨んだ東アジアカップでもザックジャパンは2013年大会で優勝し、ハリルジャパンは2015年大会で最下位。しかも「準備時間が足りなかった」と言い訳ばかり。
W杯初戦を迎えた時点での理想のチーム構成は、25歳以下の若手がチームの30~40%、27歳以下の中堅が50~60%、豊かな経験でチーム全体を引き締める30歳前後のベテランが10%ぐらい、チームの平均年齢が26~27歳になるのが理想じゃないかと思うのですが、イラク戦の日本のスタメンがそのまま2年後のロシアW杯開幕戦のピッチに立っていたとして、平均年齢が何歳になりますか?
ざっと計算して30歳前後、先発メンバー11人中6人が30歳以上になりますよね。このままではたとえロシアW杯へ行けたとしてもチームが高齢化で走れなくなり、好成績を残すことは難しくなります。
(ブラジルW杯では最高でもアルゼンチン代表の平均年齢28歳)
にもかかわらず、ハリルホジッチ監督が呼ぶ新顔の選手って今の時点で27~28歳ぐらいが多く、いかに彼がいきあたりばったりで、チーム強化の長期的なビジョンを持っていないかがわかります。
「代表は育成の場ではない。その時その時で最高の選手を呼ぶべき」という人もいますが、現代サッカーはチームが攻撃も守備も高度に組織化されているのが当たり前であって、そのようないきあたりばったりの急ごしらえのチームで勝つことは困難です。
クラブでいくら良いプレーをしている選手も、代表で真剣勝負の実戦を何度もプレーさせて経験を積ませないと、個人としてもチームとしても機能させることはできません。
クラブと違って代表チームは実質的な活動日数が短く、真剣勝負の場はW杯の予選試合など極めて限られます。
ザックジャパンでは、磐田の前田選手がセンターFWを務めてW杯アジア予選を突破しましたが、彼に年齢的な衰えが見えはじめると、ブラジルW杯の直前になって急きょ柿谷・大迫らがテストマッチで試されましたが実戦経験の不足は否めず、結局ブラジルではセンターFWが、最後まで誰が出るか決まらない機能しないポジションとなってしまいました。
ですから、W杯の初戦にチームがどういう年齢構成になっているのが理想的なのか長期的な計画をもってチーム強化を進め、25歳以下の若手選手(予選の段階では22~23歳)もW杯予選のような真剣勝負を勝ち抜くという経験を積ませながら、本大会でも十分戦えるだけの実力をつけさせることが極めて重要なのです。
ハリルホジッチ氏の采配ぶりを見ていても、プロ監督としての高い潜在能力といったものがまったくうかがえず、このまま日本代表の指揮を任せても、ロシアで好成績が望めるどころかW杯出場さえ危ういと思います。
彼よりマシと思われる監督がすでにリストアップされているなら、このタイミングで解任すべきです。
適当な人がいないのであれば、とりあえず手倉森さんを暫定監督にして次のオーストラリア戦からチームを任せてみてはどうでしょうか。
それにしても霜田さん、とんでもないハズレ監督を引っ張ってきてしまいましたね。
次回へつづく
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ハリルホジッチ監督がいかにチームの年齢構成を考えてこなかったかを指摘した関連記事
ようやくエンジンがかかるも時すでに遅し(その2)
W杯アジア予選にのぞむ日本代表メンバー発表
対戦相手のイラク代表は、国内組を中心にイタリア・スウェーデン・トルコなどでプレーする海外組を加えたチームで、日本がホームでもアウェーでも勝てる相手というのが、試合前の戦力評価でした。
日本の勝利というこの試合の結果は順当なものでしたが、プレー内容は悪かったと思います。
このグループではタイの次に力が劣る相手と見ていましたが、その相手にこういう内容の試合をやっているようでは危機以外の何ものでもありません。
☆ ☆ ☆
まず、この試合が始まる前に当研究所が推奨していたスターティングメンバーをおさらいしておきましょう。
本田
岡崎
原口 清武 浅野
本田
山口 長谷部
柏木
長友 森重 吉田 酒井宏
酒井高
GK
(当ブログ過去記事・イラク戦・オーストラリア戦にのぞむ日本代表メンバー発表!)
上段の名前が試合前に当研究所が推奨していたスタメンです。
名前が青字になっているところは、タイ戦のスタメンから選手を入れ替えてこの選手を入れるべきと当研究所が推奨し、ハリルホジッチ監督がその通りにした選手。
赤字は、当研究所が使い続けるべきではないと指摘したにもかかわらず、ハリル監督がこの試合でも先発させてしまった選手、もしくは好調なのだから変えるべきではないと当研究所が考えていた選手を変えてしまって、ハリル監督がピッチに送り出した選手です。
結局、青字の選手がこの試合の勝因となり、赤字の選手が苦戦の原因となっていました。
この図からも明らかなように、ハリルホジッチ監督の選手起用の誤りが苦戦を繰り返している理由なのですが、そのあたりも含めて日本代表の試合内容を分析していきましょう。
まず攻撃面ですが、UAE戦で出た課題は得点を焦った選手がゴール前にベッタリと張りついて4トップ5トップみたいな形になり、相手のマーカーを引っ張ってきてしまうことで、逆に日本が得点から遠ざかってしまうことでした。
この試合では、「3トップのゴール前張りつき」が修正されていましたし、新たにトップ下のポジションを任された清武選手も3トップに吸収されて横一直線に並んでしまうようなことはなく、中盤でパスの組み立てに参加することができていました。
彼がバイタルでパスを受けてミドルシュートを放った前半11分のプレーは良かったですし、26分には清武選手がコレクティブカウンターの中心となり、貴重な先制ゴールをあげることもできました。
トップ下のポジションを不調の選手から代えるだけで、これだけ攻撃内容も変わり結果も出るわけです。
しかしながらまだまだ良くなる余地はありますし、清武選手ならもっとやれるはずです。
この試合、攻撃的なボランチとして使われた柏木選手もそうなんですが、バックラインでボールを回しているとき、清武選手がバイタルエリアに入るタイミングが早すぎて、バックからボールを受けて3トップにパスを供給する人が誰もいなくなり、パスコースを失ったDFがアバウトなロングボールを前線に放り込んでは、ムダにボールを失うというシーンが少なくありませんでした。
味方の4バックがボールを持っているタイミングでは、4-4-2できた相手のダブルボランチの前や横のスペースで、トップ下やこちらのボランチ2枚がもっと積極的にパスを受けて、それを確実に前の選手へつながなければいけません。
同点に追いつかれたあと、なかなか攻撃が機能しませんでしたが、このあたりが改善されてくれば、もっと多くの得点チャンスをつくることができるでしょう。
次は守備面ですが、あいかわらずコンパクトな守備ブロックがまったく作れていません。
日本の選手たちはそれぞれがバラバラに個の能力だけで守ろうとしており、守備に組織というものがほとんど見られません。
本田選手は最初から守備につく気がサラサラありませんし。
(当研究所はセンターFWなら機能するかもしれないと考えていたのですが、もはやそれすら無理なほど肉体の衰えが激しいようです)
それが原因で守りが安定せず、後半勝負に出てきたイラクにパスを回されて自陣でFKを与え、酒井高選手のまずい守備もあって失点してしまいました。
失点したことでチーム内に動揺が走り、それが攻撃面にも悪影響を与え、プレーから自信や思いきりが欠けた結果、なかなか勝ち越し点が奪えませんでした。
(ピッチ内の選手たちも、そんなことでいちいち落ち込むのではなくて、やるべきことはわかっているのですから、気を強く持ち攻守に全力でプレーしないと)
後半になって、中盤で相手からボールを奪い返すことができなくなったのを見たハリルホジッチ監督は、10分すぎから柏木選手の代わりに山口選手を入れようと準備させますが、その前に同点ゴールを食らってしまいます。
しかし山口選手を先発させて、ゾーンディフェンスによるコンパクトな守備ブロックから厳しくプレスをかけていけば、クリーンシートのまま1-0や2-0で終わらせることができたはずですし、またそういうゲーム運びをすべき試合でした。
コンパクトな守備ブロックをつくって守るということに関してはまだ手倉森ジャパンの方が10倍マシです。
(もしこのブログを読んでいて手倉森さんに直接アクセスできる方がおられるなら、次回オーストラリア戦ではしっかり守備ブロックをつくって守れるように手倉森さんが率先して選手たちを指導して欲しいと伝えておいてください)
当研究所が推奨したように、山口・長谷部のダブルボランチで試合に入ってまず守備を安定させ、試合の後半まで勝ち越し点が奪えないようであれば、そこではじめて長谷部選手を下げて柏木選手を入れて攻撃を強化するといった手を打つべきであり、選手起用の順番もまるで逆のように思えます。
こういう綱渡りのような稚拙な試合をしておいて、「山口選手を後半に投入した監督の采配が当たった」と評価するのは適切ではありません。最初から山口選手を起用し堅固な守備ブロックを構築することで、少なくとも1-0で危なげなく勝つべき試合だったのです。
☆ ☆ ☆
「批判をするならハリルにしてください」と繰り返しているので遠慮なくそうさせてもらいますが、当研究所がタイ戦後にすでに表明したとおり、ハリルホジッチ監督をこのタイミングで解任すべきです。
(当ブログ過去記事・タイに勝利も、課題山積(その3))
もう何度も指摘していますが、まず選手1人ひとりのプレーの特徴や長所・短所、選手の優劣を見ぬく目をもっていないことがプロの監督として致命的です。
選手の現在の実力を見て誰を起用するのか決めるのではなく、「ACミランでやっているから」みたいな選手の肩書きだけで、プレーの中身を見ずにどのポジションに誰を使うか決めているように見えます。
だからチームが機能せず、試合内容も悪くてなかなか良い結果が出ないのです。
選手の起用法も行き当たりばったりで、「調子の良い選手は引き続き起用して伸ばしてやる、調子の悪い選手はいったん外して修正する」といったような、チーム強化の継続性もありません。
前回のタイ戦では、日本の危うい守備を山口選手がバランスを保つことでどうにかこうにか無失点で切り抜けることができました。
攻撃面では浅野選手が得意のスピードで前線をかきまわし、実際にゴールも奪っています。審判によって取り消されたUAE戦のゴールを含めれば、W杯予選で2試合連続ゴール中でした。
ところがこのイラク戦では、2人とも先発を外されてしまいます。
前の試合で選手が良いプレーをして流れに乗ってきたところで、監督によってベンチに座らされることでその流れをブッた切られると、良い意味で選手が調子に乗って成長していくことができません。
この試合もそうでしたが、4-4のコンパクトな守備ブロックをつくって組織的に守るような戦術指導さえできない監督さんは、アジアレベルでも今どき珍しいんじゃないですか。
「日本代表が苦戦しているのは海外組のコンディションが悪いせいだ」と盛んにマスコミが言っていますが、欧州でプレーする選手が多かったのはザックジャパン時代も同じであり、「W杯の予選はいつも厳しいもの」などと過去の記憶を勝手につくりかえている人もいるようですが、海外組主体だったザックジャパンのブラジルW杯最終予選成績は5勝2分1敗、プレーオフに回った3位ヨルダンとの勝ち点差7の圧倒的強さだったのです。
予選直前の準備時間の短さや欧州でプレーする主力選手の移動といった諸条件は初めからわかりきっていたことで、それも含めて長期計画を練り、段階的にチーム作りをしていくのが代表監督の仕事であって、プロの監督としての能力に大きな差がでるところです。
もう一度ザッケローニ氏を日本に呼ぶべきだとは思いませんが、ハリルホジッチ監督との力の差は明らかです。
そういえば、準備期間が短く国内組だけという同じ条件で臨んだ東アジアカップでもザックジャパンは2013年大会で優勝し、ハリルジャパンは2015年大会で最下位。しかも「準備時間が足りなかった」と言い訳ばかり。
W杯初戦を迎えた時点での理想のチーム構成は、25歳以下の若手がチームの30~40%、27歳以下の中堅が50~60%、豊かな経験でチーム全体を引き締める30歳前後のベテランが10%ぐらい、チームの平均年齢が26~27歳になるのが理想じゃないかと思うのですが、イラク戦の日本のスタメンがそのまま2年後のロシアW杯開幕戦のピッチに立っていたとして、平均年齢が何歳になりますか?
ざっと計算して30歳前後、先発メンバー11人中6人が30歳以上になりますよね。このままではたとえロシアW杯へ行けたとしてもチームが高齢化で走れなくなり、好成績を残すことは難しくなります。
(ブラジルW杯では最高でもアルゼンチン代表の平均年齢28歳)
にもかかわらず、ハリルホジッチ監督が呼ぶ新顔の選手って今の時点で27~28歳ぐらいが多く、いかに彼がいきあたりばったりで、チーム強化の長期的なビジョンを持っていないかがわかります。
「代表は育成の場ではない。その時その時で最高の選手を呼ぶべき」という人もいますが、現代サッカーはチームが攻撃も守備も高度に組織化されているのが当たり前であって、そのようないきあたりばったりの急ごしらえのチームで勝つことは困難です。
クラブでいくら良いプレーをしている選手も、代表で真剣勝負の実戦を何度もプレーさせて経験を積ませないと、個人としてもチームとしても機能させることはできません。
クラブと違って代表チームは実質的な活動日数が短く、真剣勝負の場はW杯の予選試合など極めて限られます。
ザックジャパンでは、磐田の前田選手がセンターFWを務めてW杯アジア予選を突破しましたが、彼に年齢的な衰えが見えはじめると、ブラジルW杯の直前になって急きょ柿谷・大迫らがテストマッチで試されましたが実戦経験の不足は否めず、結局ブラジルではセンターFWが、最後まで誰が出るか決まらない機能しないポジションとなってしまいました。
ですから、W杯の初戦にチームがどういう年齢構成になっているのが理想的なのか長期的な計画をもってチーム強化を進め、25歳以下の若手選手(予選の段階では22~23歳)もW杯予選のような真剣勝負を勝ち抜くという経験を積ませながら、本大会でも十分戦えるだけの実力をつけさせることが極めて重要なのです。
ハリルホジッチ氏の采配ぶりを見ていても、プロ監督としての高い潜在能力といったものがまったくうかがえず、このまま日本代表の指揮を任せても、ロシアで好成績が望めるどころかW杯出場さえ危ういと思います。
彼よりマシと思われる監督がすでにリストアップされているなら、このタイミングで解任すべきです。
適当な人がいないのであれば、とりあえず手倉森さんを暫定監督にして次のオーストラリア戦からチームを任せてみてはどうでしょうか。
それにしても霜田さん、とんでもないハズレ監督を引っ張ってきてしまいましたね。
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ようやくエンジンがかかるも時すでに遅し(その2)
W杯アジア予選にのぞむ日本代表メンバー発表
■スタジアムの雰囲気
ドイツやイングランド・スペインといったサッカー先進国で行われる試合を見ていて、いつもうらやましく感じるのがスタジアムの雰囲気です。
サポーターが一気に盛り上がる瞬間であったり、逆に口笛が大きく鳴り響く場面を見るたびに、「サッカーを良く知っている人たちが多く集まっているな」ということをいつもいつも実感させられますし、そういう人たちで満員になったスタジアムからは「ホームチームを全力でサポートしよう」という想いが中立の第三者である私にもヒシヒシと伝わってきて、そうした良い雰囲気に包まれたスタジアムを持つことができる彼らをうらやましく思います。
スタジアムに詰めかけたサポーターの肉声による大音量のチャントや口笛によってつくりだされる「殺気を含んだような気迫」に押されて、レフェリーもホームチームに対してあからさまに不利な笛を吹き続けることは難しくなりますし、対戦相手のチームにも逆風のプレッシャーがかかります。
ときには「お行儀の悪い行為」も散見されますが、ドイツにしろイングランドにしろスペインにしろサッカーの応援が文化となって、それぞれの国に根付いているわけです。
それに比べると、Jリーグではかなり良い雰囲気のところもあるものの、日本代表戦が行われるスタジアムの雰囲気は、どこかおとなしいと申しますか、レフェリーや相手チームを圧倒するのような「殺気」に欠けているように思います。(特にメイン・バックスタンド側)
ロシアW杯アジア予選、埼玉スタジアム2002で前回行われた、日本代表のホームゲームでは、対戦相手であるUAEと同民族のカタール人主審が、ホームチームである日本に一方的に不利な“誤審”ばかりを繰り返し、日本のゴール前でシミュレーションぎみに倒れたUAEの選手にFKが与えられ1点、浅野選手の明らかなゴールが認められず、日本はトータル2点をあのレフェリーに奪われて試合に負けたわけです。
浅野選手のシュートがゴールに入った瞬間をとらえたリプレーがスタジアムの巨大ビジョンで映しだされたときは「ワーッ」という声こそあがりましたが、シミュレーションで倒れてFKを得たUAEの7番に対しても、誤審を繰り返したカタール人審判団に対しても、スタジアムに詰めかけた5万人の日本人サポーターが彼らの行動についてどう感じたのか、その「自己主張」がほとんど無かったことは「W杯出場を目指している日本代表へのサポート」という意味で、とても残念に思いました。
代表戦のメインスタンドやバックスタンドにおいては、「家族みんなで夜のピクニック」みたいな雰囲気を感じることもしばしばですが、彼らは自分のお金を払って代表戦を見に来ているわけで、こういった応援をしろと強制することはできません。
そういうわけで、せめて世界のサッカーを良く知っている、両サイドのゴール裏スタンドに陣取るサポーターだけでも、日本代表をサポートするために、ピッチの上で起こったとことに対して積極的に自己主張や意思表示をしてくれると非常にありがたいです。
それによってメイン・バックスタンドのお客さんにも「世界基準」の応援の仕方が広がっていけば、なお素晴らしいですね。
例えば、本来中立であるはずのレフェリーがあのUAE戦のように日本に不利な“誤審”をするたびに、そのレフェリーに対して耳をつんざくような大音量の口笛を浴びせて欲しいのです。
こうすることによって、審判団があらかじめ決められた試合結果になるように不正なジャッジを繰り返すことを牽制することができます。
あるいは相手チームの10番の選手がシミュレーションで倒れて、レフェリーからFKやPKをもらって得点したとします。
欧州や南米のサッカー先進国では、アウェー・チームの選手がそうした卑怯なプレーをした場合、10番がボールを持つたびにホームチームを応援する5万人以上の大観衆から耳をつんざくような口笛とブーイングが浴びせられ、いたたまれなくなった監督が10番をベンチに下げるまでそれが執拗に繰り返されるといったような光景を目にしたことがあります。
自分のところへボールが来ると、5万人の観客から一斉に口笛、ボールを放せば止まるが、また自分がボールを持つと5万人から再び口笛。
5万人の反感と敵意が自分たった1人に向けられるわけですから、命の危険さえ感じるわけで、私の20年以上におよぶサッカー観戦歴から言って、これをやられてもなおPKやFKをゲットしてやろうと考えてもう1度シミュレーションで倒れる度胸のある選手は見たことがありません。
こういうことはたった1人でやっても意味がないわけで、代表戦を観に来る多くのサポーターの協力が必要になります。
両サイドのゴール裏スタンドで代表戦の応援を仕切っているリーダーの方がいらっしゃるなら、もしこういうことが起こったらバックスタンド全体のサポーターで口笛を吹き、「俺たちのホームでふざけたマネは絶対に許さないぞ」という意思表示をしようと試合前に打ち合わせをしておいて、バックスタンド全体で審判団や相手チームにプレッシャーをかけることはできないものでしょうか。
サッカーのサポーターにとっては口笛(というか指笛)は、応援に必須のツールだと思います。
私の場合、両手の人差し指を口の両脇から差し込んで舌の先に軽く乗せ、指の角度やひねり具合を調節しながら、2本の指の間から「ピーッ」と大きな音を出します。
初心者の方は、片手の親指と人差し指で“C”の形をつくり、それを舌の上に軽く乗せて、指の間から音を出すとやりやすいかもしれません。
ちょっと練習しておけば誰でも吹けるようになるはずですので、6日のイラク戦までにマスターしておくと、サッカー観戦がもっと楽しくなるのではないでしょうか。
口笛によるブーイングは、レフェリーのジャッジやプレーヤーのある行為に対して「私はそれを絶対に許せません」と自己主張するために行われる、全世界のサポーターの「共通語」です。
暴力行為を避け、常識と節度を守った応援を心掛けるということが大前提ですが、代表戦を見に行くことができるチャンスに恵まれた方は、ロシアW杯出場を目指す日本代表を口笛を上手く使ってサポートしてあげて欲しいです。
是非ともお願いいたします。
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当ブログ過去記事・どうしたらアジアから八百長試合をなくせるか
サポーターが一気に盛り上がる瞬間であったり、逆に口笛が大きく鳴り響く場面を見るたびに、「サッカーを良く知っている人たちが多く集まっているな」ということをいつもいつも実感させられますし、そういう人たちで満員になったスタジアムからは「ホームチームを全力でサポートしよう」という想いが中立の第三者である私にもヒシヒシと伝わってきて、そうした良い雰囲気に包まれたスタジアムを持つことができる彼らをうらやましく思います。
スタジアムに詰めかけたサポーターの肉声による大音量のチャントや口笛によってつくりだされる「殺気を含んだような気迫」に押されて、レフェリーもホームチームに対してあからさまに不利な笛を吹き続けることは難しくなりますし、対戦相手のチームにも逆風のプレッシャーがかかります。
ときには「お行儀の悪い行為」も散見されますが、ドイツにしろイングランドにしろスペインにしろサッカーの応援が文化となって、それぞれの国に根付いているわけです。
それに比べると、Jリーグではかなり良い雰囲気のところもあるものの、日本代表戦が行われるスタジアムの雰囲気は、どこかおとなしいと申しますか、レフェリーや相手チームを圧倒するのような「殺気」に欠けているように思います。(特にメイン・バックスタンド側)
ロシアW杯アジア予選、埼玉スタジアム2002で前回行われた、日本代表のホームゲームでは、対戦相手であるUAEと同民族のカタール人主審が、ホームチームである日本に一方的に不利な“誤審”ばかりを繰り返し、日本のゴール前でシミュレーションぎみに倒れたUAEの選手にFKが与えられ1点、浅野選手の明らかなゴールが認められず、日本はトータル2点をあのレフェリーに奪われて試合に負けたわけです。
浅野選手のシュートがゴールに入った瞬間をとらえたリプレーがスタジアムの巨大ビジョンで映しだされたときは「ワーッ」という声こそあがりましたが、シミュレーションで倒れてFKを得たUAEの7番に対しても、誤審を繰り返したカタール人審判団に対しても、スタジアムに詰めかけた5万人の日本人サポーターが彼らの行動についてどう感じたのか、その「自己主張」がほとんど無かったことは「W杯出場を目指している日本代表へのサポート」という意味で、とても残念に思いました。
代表戦のメインスタンドやバックスタンドにおいては、「家族みんなで夜のピクニック」みたいな雰囲気を感じることもしばしばですが、彼らは自分のお金を払って代表戦を見に来ているわけで、こういった応援をしろと強制することはできません。
そういうわけで、せめて世界のサッカーを良く知っている、両サイドのゴール裏スタンドに陣取るサポーターだけでも、日本代表をサポートするために、ピッチの上で起こったとことに対して積極的に自己主張や意思表示をしてくれると非常にありがたいです。
それによってメイン・バックスタンドのお客さんにも「世界基準」の応援の仕方が広がっていけば、なお素晴らしいですね。
例えば、本来中立であるはずのレフェリーがあのUAE戦のように日本に不利な“誤審”をするたびに、そのレフェリーに対して耳をつんざくような大音量の口笛を浴びせて欲しいのです。
こうすることによって、審判団があらかじめ決められた試合結果になるように不正なジャッジを繰り返すことを牽制することができます。
あるいは相手チームの10番の選手がシミュレーションで倒れて、レフェリーからFKやPKをもらって得点したとします。
欧州や南米のサッカー先進国では、アウェー・チームの選手がそうした卑怯なプレーをした場合、10番がボールを持つたびにホームチームを応援する5万人以上の大観衆から耳をつんざくような口笛とブーイングが浴びせられ、いたたまれなくなった監督が10番をベンチに下げるまでそれが執拗に繰り返されるといったような光景を目にしたことがあります。
自分のところへボールが来ると、5万人の観客から一斉に口笛、ボールを放せば止まるが、また自分がボールを持つと5万人から再び口笛。
5万人の反感と敵意が自分たった1人に向けられるわけですから、命の危険さえ感じるわけで、私の20年以上におよぶサッカー観戦歴から言って、これをやられてもなおPKやFKをゲットしてやろうと考えてもう1度シミュレーションで倒れる度胸のある選手は見たことがありません。
こういうことはたった1人でやっても意味がないわけで、代表戦を観に来る多くのサポーターの協力が必要になります。
両サイドのゴール裏スタンドで代表戦の応援を仕切っているリーダーの方がいらっしゃるなら、もしこういうことが起こったらバックスタンド全体のサポーターで口笛を吹き、「俺たちのホームでふざけたマネは絶対に許さないぞ」という意思表示をしようと試合前に打ち合わせをしておいて、バックスタンド全体で審判団や相手チームにプレッシャーをかけることはできないものでしょうか。
サッカーのサポーターにとっては口笛(というか指笛)は、応援に必須のツールだと思います。
私の場合、両手の人差し指を口の両脇から差し込んで舌の先に軽く乗せ、指の角度やひねり具合を調節しながら、2本の指の間から「ピーッ」と大きな音を出します。
初心者の方は、片手の親指と人差し指で“C”の形をつくり、それを舌の上に軽く乗せて、指の間から音を出すとやりやすいかもしれません。
ちょっと練習しておけば誰でも吹けるようになるはずですので、6日のイラク戦までにマスターしておくと、サッカー観戦がもっと楽しくなるのではないでしょうか。
口笛によるブーイングは、レフェリーのジャッジやプレーヤーのある行為に対して「私はそれを絶対に許せません」と自己主張するために行われる、全世界のサポーターの「共通語」です。
暴力行為を避け、常識と節度を守った応援を心掛けるということが大前提ですが、代表戦を見に行くことができるチャンスに恵まれた方は、ロシアW杯出場を目指す日本代表を口笛を上手く使ってサポートしてあげて欲しいです。
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