■2016年06月

■キリンカップが突きつけた課題(その2)

前回のつづき

 キリンカップ2016の直前、この大会にのぞむ日本代表の課題をいくつかあげておいたのですが、その一つに「本田選手にとって最適のポジションはどこか探す」というものがありました。

本田選手は並はずれてタフな精神力やリーダーシップ、競争の厳しい欧州各国リーグでプレーしてきた豊富な経験を持ち、日本代表にはまだまだ欠かせない選手です。

しかしながら、ACミランで昨シーズン10ゴール10アシストぐらいマークしていれば、こんなことは書かないのですが、代表でもクラブでも右ウイング(サイドハーフ)というポジションで彼が機能しているようには見えません。

単独でサイドを突破してゴールに絡むようなシーンはほとんどなく、アジア3次予選のラストゲームとなったシリア戦では試合の後半に運動量がガクンと落ち、守備ブロックを形成するために自陣へ戻るのが困難になって、シリアに猛反撃を許す一因となっていました。

代表戦では多くのゴールをあげている本田選手ですが、そのほとんどはゴール前中央においてであり、ウイングというポジションにこだわらなければならない理由が乏しいです。

それならば守備の負担が軽いセンターFWにコンバートしたらどうかと思います。

失敗が許されるキリンカップで、本田選手にふさわしいポジションはどこなのかを試して欲しかったのですが、彼が足を痛めて2試合とも欠場してしまったのは痛かったですね。

よってキリンカップの2試合は、このようなスタメンとなりました。



                 岡崎


           
      清武        香川       小林悠
     (宇佐美)     (清武)      (浅野)



           柏木       長谷部



     長友    森重       吉田    酒井宏
                            (酒井高)

                 川島
                (西川)
  

(カッコ内は2戦目の先発)

 攻撃面では、ブルガリア戦で試された香川・清武両選手の併用で7ゴールをゲットするなど、非常にポジティブな内容でした。

ボスニア戦では、先発起用された宇佐美選手による左サイドでのドリブル突破が猛威を振るい、それも大きな収穫でした。

同時にその試合では、W杯までに解決しておかなければならない課題をいくつか突きつけられたように思います。

その一つ目は、ブルガリアのような格下相手では問題なくても、ボスニアのようにこちらと同等かそれ以上の攻撃力を持つ相手と対戦するときは、このメンバーでは「攻撃的すぎる」ということです。

言いかえれば、そのような相手が本気で攻めに出てきたときに、守備で持ちこたえられない不安が浮き彫りとなりました。

実際ボスニアに追いつかれたあと、ハリルホジッチ監督は柏木選手に代えて遠藤選手を投入しましたが、相手の攻撃力に対し柏木・長谷部のダブルボランチでは守備力が足りないという判断だったのでしょう。

しかし今度は遠藤・長谷部のダブルボランチでは、攻撃を組み立てるためのパス能力が不足しており、相手のブロックの外から単純なロングボールを放り込んではボールを失うということを繰り返していただけでした。

そうこうしているうちにボスニアの監督が切り札を切ってきて虚を突かれたように失点。守備ブロックをつくる相手にそのまま逃げ切られてしまいました。

W杯本大会では、「ボスニアの2軍」よりも攻撃力のある相手と対戦する可能性が高いですから、上記のシステムでは不安が残ります。

柏木選手にはさらなる守備力の向上を、遠藤・長谷部両選手には守備力はもちろん攻撃時のパス展開力をもっともっと高めて欲しいのですが、現有戦力のうち、より優れた選手をピックアップして試合をするということを単純に繰り返していくのではなくて、ロシアW杯で良い成績を残すために日本代表は何を求められているのか、そこから逆算して選手やシステムをチョイスしてチームづくりをしていく必要があります。

香川・清武両選手の併用が攻撃面で非常に機能したことと、キレキレだった宇佐美選手のドリブルによるサイド攻撃を生かしたいこと、運動量が落ちてきた本田選手の守備的負担を減らす必要があることの3点を踏まえて、当研究所はいくつかのシステムを提案したいと思いますが、まずは日本と互角か格下の相手と対戦する場合です。



                 本田
                (岡崎)

            
    宇佐美        香川       岡崎
                        (浅野・原口)
                     
 
           清武      長谷部


  
    DF      DF       DF      DF


                GK



パス展開力に優れる清武選手を攻撃的なボランチに持ってきて、ピッチを広く見渡せる中央に近いところから攻撃に参加してもらい、香川選手とパスのコンビネーションで攻撃を組み立てていきます。

そして宇佐美選手が左サイドからドリブルで相手を崩し、ゴール前で本田選手か右サイドの岡崎選手、あるいは後方から走りこんだ香川・清武選手がゴールを決めるというのが攻撃の一つの形。

本田選手はフィジカルコンタクトの強さを生かし、二列目の3人からパスを受けて誰かにリターンパスをすることで、バイタルエリアで攻撃の基点をつくる役目も担ってもらいます。こうすれば本田選手は守備のためにサイドを激しく上下動して体力を消耗しなくても済みます。

プレミア優勝クラブのレギュラーFWではあるもののゴール数が今ひとつ物足りない岡崎選手は、守備の運動量を買って右サイドでの起用です。センターFWの位置で本田選手と、浅野・原口両選手の得点力やチャンスメーク力・守備力が伸びてくれば、右サイドハーフで彼らとも競争してもらいます。


 ただこのシステムだと日本より攻撃力の高い格上の相手だと守備力に不安があるかもしれません。特にボランチのところで。

どんな相手でも清武・長谷部の両ボランチで守りきれれば良いのですが、そうでない場合は対策が必要でしょう。



                 香川
             

     宇佐美       清武       岡崎
                        (浅野・原口)


           本田     長谷部
                  

    DF      DF       DF      DF
  

                 GK


 フィジカルコンタクトに強い本田選手をボランチに入れて、長谷部選手と協力してバイタルエリアを固めます。彼は元トップ下ですから、ボールを奪い返した後のパス展開力にも優れているはずです。

本田選手がこのポジションで開眼してくれれば、彼の努力次第で35歳ぐらいまでは日本代表の中心選手として十分やっていけると考えています。

本田・長谷部のダブルボランチで相手ボールをひっかけ、こちらを押し込んでいる相手の守備が手薄になったところを狙って清武・宇佐美・香川らでコレクティブカウンターを仕掛け、ゴールを奪います。

マンチェスターUでは監督さんに上手く使ってもらえなかったので自信を失っていたところがありましたが、香川選手はどちらかといえばチャンスメークよりもゴールを奪う方が得意な選手だと思いますし、彼がドルトムントへ移籍してから大ブレイクしたときも、トップ下の位置からセカンドストライカー的に動いてゴールを量産したからでした。

逆に清武選手は、ゴールを奪うよりもチャンスメークする方が得意な「パサータイプ」のトップ下だと思います。

ドルトムントに帰ってきて、香川選手もシュートへの自信を取り戻しつつあるように見えますので、適材適所を考えてトップ下に清武選手、ワントップに香川選手を据えてみました。

この「ゼロトップ」気味のシステムが格上に対するカウンターサッカーのみならず、格下相手へのパスサッカー時にも機能するならば、これでいいのではないかと思います。

これでも宇佐美選手のところで守備力が不足してしまう可能性があります。

アウクスブルクへの移籍が決まった彼も、攻撃だけでなく守備能力もしっかり高めて欲しいですし、ドイツはマンマーク・ディフェンスの時代が長かったので、守備時にマッチアップしている相手とのデュエルで簡単に負けてしまうような選手は、ブンデスで生き残っていくのは難しいです。

それから磐田の小林祐希選手は、代表でもトップ下をやりたいんじゃないかと思いますが、身長182cmと体の大きさが魅力的ですし、まずはフィジカルコンタクト能力と守備力を高めて、ボランチのポジションを狙ってみてはどうかと思います。

 もしこのシステムが機能しなかった場合は、当研究所としてはあまり推奨しない「最後の奥の手」であり使用には注意を要する「副作用の強い劇薬」なんですが、ハーフナー選手をワントップに、その下に香川選手をセカンドストライカー的に置いた
4-4-1-1はどうでしょうか。



                 ハーフナー

             香川


    宇佐美    本田     長谷部    岡崎
   (酒井宏)                 (浅野・原口)


     DF      DF       DF      DF
  

                 GK


ボールを奪い返したらハーフナー選手にクサビのボールを当てて、彼がバイタルエリアに落としたボールを香川選手が拾ってシュートもしくは宇佐美・岡崎ら味方へのラストパスからゴール、あるいはゴール前でのセットプレー(FK・CK)からハーフナー選手のヘディングで1点取ったら、カウンターから追加点を狙いつつも自陣にブロックをつくってひたすら守るという“アンチ・フットボール”スタイルです。

リードした時点で残り時間を見計らい、守備固めとして宇佐美選手のところに酒井宏選手を入れて、念には念を入れます。

でも、相手にボアテンクやキエッリーニ、アルデルウェイレルドなど世界トップクラスのセンターバックがいたら、イブラヒモビッチでさえ抑え込まれかねないので、いくらハーフナー選手が高いといっても、そういう相手にはこのシステムが機能しない可能性があります。

そもそもこういうスタイルは世界では決して珍しくなく、経験豊かなワールドクラスのバックであれば、対処法は十分知っているでしょうし、過去の例から見ても、このスタイル一本ではW杯で上位に行くことは難しいんじゃないでしょうか。

また仮に上手くいったからといって、この「麻薬」に頼りっぱなしになってしまうと、香川・清武・宇佐美選手らとダブルボランチが連携して相手の守備ブロックの中で厳しいプレスをかわしながらパスをつなぎゴールを奪うという、強者になるためのパスサッカー戦術がいつまでたっても上手くなりません。

それでは日本代表が「弱者のカウンターサッカー」から永久に抜け出すことができなくなりますので、使い方には十分注意しなければなりませんし、あくまでも「手も足もでないような格上の相手」に使う「苦しまぎれの最後の手段」として欲しいです。

これをいきなりW杯でのぶっつけ本番でやろうとしても機能しないので、クサビのパスを受けたハーフナー選手がどこへボールを落とすのか、それを拾う香川選手らがどこでそれを拾ったら良いのかタイミングを合わせるために、ロシアW杯の1年ぐらい前から実戦で使えるように何度か練習しておいた方が良いでしょう。

 またこのシステムを使うかどうかは別として、ハーフナー選手を代表に呼んでおくのも悪くないと思います。

日本のバック陣(CB・SB)やボランチが、自分より身長が高くフィジカルコンタクトに強い相手に守備のデュエルで勝つための練習相手になってもらうためです。

例えばハーフナー選手にロングボールを放り込んで、DFやボランチがヘッドで競り勝ったり、ポストプレーを妨害する練習をするわけです。(対処法については過去記事参照

 これと関係してくる話ですが、キリンカップが突きつけた二番目の課題は、W杯本大会で好成績をあげるためにセンターバック陣の能力が十分ではないということです。

ボスニア戦で相手FWジュリッチにやられたあと、今ごろになって「日本代表に身長185㎝以上の選手がヨシダしかいない」と言って監督さんが大騒ぎしていますが、だーかーら「センターバックは専門職であり身長は最低でも185㎝以上欲しいところ」と当研究所は言ってきたのです。

だーかーら「浅野選手が呼べるんだったら鹿島の植田選手もキリンカップに呼べ」と言ったのです。

攻撃では世界に通用する日本人選手が出現し始めていますが、世界に通用するセンターバックはまだ現れていません。

欧州四大リーグで1シーズンに30試合以上出場し、クラブを自分の守備力で最低でも一部に残留させることができる日本人センターバックが、ケガや出場停止のことも考えれば、代表に少なくとも3人は必要です。

2018年に向け、植田選手を始めとした若手センターバックの育成を急がねばなりません。

 というわけで、ロシアW杯の本大会に向けて日本代表が解決しなければならない、「本田選手が最も機能するポジションを見つける」「現在のダブルボランチでは守備力が不足」「ワールドクラスのセンターバックがいない」という三つの課題について、解決策を考えてみました。

最後に付け加えるなら、ボスニア戦を見て日本人選手は全体的にフィジカルコンタクトの能力がまだまだ不足しているように思いました。

フィジカルコンタクト・スキルをアップする方法も既に提案しておりますので、このオフにでもしっかり練習して、相手に体を寄せられてもボールをキープする能力、相手からボールを奪い取る能力をしっかり鍛えて欲しいです。




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■キリンカップが突きつけた課題

 いや~モドリッチのスーパーゴールには度胆を抜かれましたね。
そうかと思えばコパアメリカでは、ネイマールやドグラス・コスタがいなかったとはいえ、ブラジルが「南米の普通にサッカーが強い国」になってしまっていたり。十年ぐらい前までは南米はもちろん、世界でも頭一つ抜けたサッカー超大国だったんですが...。

さて今日から2回に分け、キリンカップ2016によって日本代表に突きつけられた課題を、アジア最終予選はもちろんロシアW杯本大会を見据えつつ、どう解決していくべきか考えてみたいと思います。

 まず本題に入る前に、「世代交代」や「ベテラン選手の扱い方」について当研究所なりの考え方を示しておきます。

私は合理主義者なので、選手を評価する場合に見るのは年齢ではなくあくまでもプレーの中身であって、そのポジションに求められる役割を果たせていれば、その選手が3歳でも90歳でも全然かまいません。

しかし残念ながら、サッカー選手の身体能力は20代に向かってピークとなり、それを過ぎるとゆっくりと衰えていくというのが人間の宿命であり、それから誰も逃れることはできません。少なくとも今のところは。

それでも肉体を丁寧にケアしながら衰えを最小限に食い止め、技術や駆け引きの妙で経験のより少ない対戦相手を出し抜き、30歳を超えてもなお現役の第一線でバリバリやっている選手はたくさんいますし、それならそれでまったく問題ありません。

技術や狡猾さでスピードや運動量の衰えをカバーしきれなくなってきたときは、そのポジションをより若い選手に譲るときが来ますが、それでベテラン選手が「お払い箱」になってしまうわけではありません。

ベテラン選手は、若手選手が持ち合わせていない経験がありますし、若い選手が今まで直面したことのないようなピンチに陥ったときに、的確なアドバイスを与えることによってチーム全体を救うという、指導者の立場により近い重要な役目があります。

若いときは「このチームでレギュラーポジションを獲得したい」といったように、選手個人の立場からチームを見ることが多いでしょうが、ベテラン選手には指導者に近い立場から「チーム全体にとっての利益とは何か」を考えることが求められるということです。

引退後に指導者(監督)の道へ進むことを考えている場合、ベテラン選手もそういう役割を果たすことによって得られる利益は大きいです。

ベンチの監督もベテラン選手にそうした役割を期待して、スピードや運動量をあまり必要としないポジションへコンバートし、チーム全体をかじ取りを任せる「ピッチ上の監督」として起用することもあります。

練習や実戦を共にしながら、ベテラン選手から「成功と失敗、その両方の経験から得られた知恵」が若手選手へと継承されていき、そのサイクルを繰り返しながらチーム全体が絶えずゆっくりと、しかし着実に世代交代と強化が進んでいくというのが理想の形であると考えています。

「世代交代の失敗」の恐ろしいところは、W杯やユーロのような世界的な大会、あるいはその予選で負けてみて初めてそれに気づくケースが多いということです。これはイタリアやオランダ、フランスなど世界を代表するサッカー大国でさえ例外ではありませんでした。

いくらその世代が輝かしい成功を収めたからといって、いつまでも現役として引っ張り続け、若手への世代交代を怖がっていると、目にはハッキリと見えないけれども確実に進んでいくベテラン選手の衰えに気付かないまま、W杯の準優勝国が五輪のアジア予選で敗退という、なでしこジャパンのような大変ショッキングな結果を導いてしまったり、

逆に中東のある金満オイルマネー国のように、ある世代の強化が上手くいかないからといってその世代をスッパリ切り捨て、次に控えていた若い世代をA代表にそっくり持ってきたものの、結果が出るまで辛抱できず再び切り捨てなんてことをやっていると、いつまでたっても経験がチームに蓄積されず、低迷が続いてしまったりしてしまいます。

それくらい世代交代は、簡単なことではないということです。

 現在、日本代表の中心となっている北京五輪世代は、日本サッカー史上最も成功した世代と言えます。

当初の意図とは異なり、オーバーエージを使わずに2008年五輪に参加したこの世代は、ナイジェリアやオランダ相手に惨敗を喫し、3戦全敗で大会を去ります。

しかしこの悔しさをバネにして各選手がめざましい成長を遂げ、本田・長友両選手はイタリアの名門クラブでプレーし、岡崎選手はチームの主力としてプレミアリーグ優勝を経験、香川選手はドルトムントでゴールを量産してリーグ2連覇に貢献し、バイエルンを破ってポカールも獲得するなど輝かしい成功を収めました。

この世代の成功・失敗の経験から得られた知恵をより若い世代に継承させつつ、ロシアW杯に向けてゆっくりと着実に日本代表の世代交代を進めていくことが、日本サッカー界全体の強化にとって極めて重要だと考えています。

これをW杯の予選で勝利という結果を出し続けながら成功させなければならないという意味において、日本代表は大切な時期に差し掛かっていると思います。

こうしたことを頭に入れながら、次回はキリンカップが日本代表に突きつけた課題について考えていきます。

つづく



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■日本代表、ボスニアに逆転負け(その3)

前回のつづき

 特筆すべき活躍をしたプレーヤーはまず宇佐美選手。ドリブルがキレッキレで、左サイドを何度も切り裂いてミドルシュートを放ったかと思えば先制ゴールにつながるチャンスメークと、攻撃面で最大の貢献。自分の実力がどれくらい通用するか試すために、すぐにでも欧州リーグのどこかに再挑戦すべき。
ただしチームがボールを失ったときは、スキのない守備ブロックを形成するためにすみやかに自陣へ戻り、相手にプレスをかけてボールを奪い返すことを試みること。守備力に穴があると監督さんも起用しづらいです。

清武選手はいい位置に走りこんで先制ゴールをゲット。ザックジャパン時代よりもゴールへの意識が高まり、成長したところを見せてくれました。あとはさらにシュートの精度をあげていくこと。シュートチャンスでは「外したらどうしよう」みたいな邪念を一切捨て、良い意味で「自分の世界」に入って冷静になり、ゴール枠内の狙ったところへ強めのパスを正確に出すイメージでシュートを打つと良いのではないでしょうか。
しかし、トップ下としてパスを受ける動きに関してはまだ物足りなさを感じます。相手の守備ブロックの中で厳しいプレスをかけられても、敵選手のギャップでフリーで味方のボランチなどからパスを受け、前を向いてゴールにつながる決定的な仕事(シュートやラストパス)をする回数をもっともっと増やしてほしいです。香川選手もドルトムントでトゥヘル監督から求められているプレーだと思いますし、彼も最初はもがき苦しんで今それを乗り越えつつありますが、世界で通用する攻撃的MFになるためにも、清武選手もその試練を乗り越えて欲しいですね。
セビージャへの移籍が決まったそうですがレベルの高いクラブなので、体を休めて十分ケアした後はプレシーズン・キャンプからしっかり練習に参加して、新シーズンから定位置を獲得できるように。

 逆に吉田選手は2失点にからんでしまいました。
最初の失点は、前にいる味方のプレスの掛け方が甘く、ボスニアのボール保持者が好きなタイミングで前方へパスできる状況をつくってしまったことがそもそも問題ですが、であるからこそ自分がマークすべきホジッチのウラヘ抜ける動きをもっとも警戒しなければならず、簡単にウラを取られてしまったのが敗因。森重選手にもありがちなミスなんですが、ポジショニングもまずく、マークすべきホジッチを自分の前に置いて相手のボールホルダーと一緒に自分の視界の中にいれておけば、あれほど簡単にウラを取られることはないはずです。
逆転ゴールを奪われた場面では、またしても相手のボールホルダーにまったくプレスが掛かっていませんでしたから、ウラヘ抜け出そうとしたジュリッチに吉田選手がついて行ったのは悪くない判断だったと思います。しかし、パスを受けたジュリッチに併走して相手を見ているだけなので、ジュリッチにとってベストのタイミングでシュートを打たれてしまいました。この瞬間ならほぼ確実に相手からボールを奪えるというタイミングで自分から足を出し、ボールをラインの外へ出してCKへ逃れるような「攻めの守備」の姿勢が欲しいです。

彼はクラブで試合に出れていないので、実戦感覚も守備に対する自信も失っているように見えます。実戦を経験できないので守備のスキルがあがらない、だからたまに出場するとプレミアの能力の髙い選手にやられて失点に関与してしまう、さらに出番が減ってセンターバックとしてのスキルが下がる一方、という悪循環に陥っているのではないでしょうか。

来季もセインツで先発できないことがわかっていて、吉田選手を欲しいと言ってくれるクラブが他にあるなら、「必ず強くなって戻ってくるからレギュラーで出られるクラブへレンタル移籍させてください」と、セインツのクラブ幹部にお願いした方が良いと思います。プレミアやセリエA・リーガエスパニョーラは日本人があまり得意ではない独特のクセがありますので、欧州では一番オーソドックスなサッカースタイルのブンデス1部の中堅から下位クラブあたりはどうでしょうか。それでもハードルが高く感じられるのであれば、オランダ・ベルギー・スイス・オーストリア・スコットランドなど欧州四大リーグの周辺リーグか、ドイツやイングランドの2部リーグあたりはどうですかね。リーグ・アンは黒人選手が多くてフィジカルコンタクトがとても厳しいというクセがありますから、そこで成功できれば大したものですが、それなりにリスクもあります。

本田選手が良いことを言っていますが、この際クラブの格なんか気にせず、自分にとってちょっとやさしいぐらいのレベルのリーグに移籍して、実戦感覚と自信を取り戻すことを最優先に考えるべきだと思います。イングランド3部ミルウォールからスタートしてプレミアのブラックバーンなどでプレーしたルーカス・ニールが代表例ですが、オーストラリアの選手は「いきなり欧州1部クラブは無理」と思ったら2部、それも無理だと思ったら3部のクラブからスタートして時間をかけて環境に適応し、自信とスキルをアップさせて最終的にトップリーグのクラブでレギュラーポジションを獲得するのに成功した例が少なくないんですが、逆に日本人選手はいきなり欧州四大リーグの1部クラブに移籍して、1年でダメだったらすぐJリーグに帰ってきてしまい本当にもったいないです。本田選手だってVVVがオランダ2部に落ちてからゴールを量産してチームを優勝させて大ブレイク、CSKAモスクワからACミランへとステップアップしていったのですから。

吉田選手は、せっかくアイリッシュなまりのきつい英語も理解できるほど語学力を身につけたのですから、2018年ロシアW杯までの2シーズン計画で、16-17シーズンはドイツやオランダなどのクラブでレギュラーを獲得して30試合以上しっかり戦い抜くことで守備力をみがき、そこで実力と自信がついたら17-18シーズンにステップアップしてセインツに復帰するか、他のプレミアクラブへ行ったらどうでしょうか。もちろんリーグのレベルを落としたからといって成功が約束されるほど甘くはありません。必要なら専属コーチを雇ってでも、移籍先のクラブでセンターバックのポジションを基礎から学び直し、必死に練習する必要があります。

日本を背負って立つ次世代のCBを育成するにはしばらく時間が必要でしょうから、当研究所はまだまだ吉田選手が代表チームに必要だと考えています。名古屋に帰ってくるのは30歳を超えてからでも全然遅くないですし、守備力に自信がないからゴール数で貢献しようというCBを使ってくれる監督さんはまずいないと思ったほうがいいです。

森重選手は前半しょっぱなにジュリッチに競り負け、失点してもおかしくないヘディングシュートを許しましたが、その後は苦しみながらもジュリッチに粘り強く食らいついていきました。ところが後半ドリブルでカットインしてきたステパノビッチに抜かれるのを恐れたか、その場でフリーズしてしまい、逆転ゴールにつながるパスを許す結果に。あの場面ではシュートやパスコースを消すためにドリブルするステパノビッチの方へ前進してプレッシャーを掛けて欲しいです。

西川選手は、2回ほど相手の決定的なシュートを防ぎましたが、逆転ゴールを浴びた場面では、シュートが吉田選手の股を抜けてきたので見えにくかったとは思いますが、あれを何とかセーブして欲しいところ。

長友選手は、交代出場したばかりのステパノビッチのフェイントに振らされ、彼への対応がやや軽かったでしょうか。

岡崎選手は、シュートはもちろんチャンスメークでもほとんど顔を出さず、センターFWとしては不満の残る出来。

柏木選手は攻撃のパスはまずまず良かったと思いますが、ボール奪取力や守備ブロックを形成するためのポジショニングなど、守備力に物足りなさを感じます。

長谷部選手も中盤の汗かき役としてがんばっていましたが、攻撃を組み立てるためのパス能力がもっと必要です。敵選手のギャップにいるトップ下などの足元へ、強くて正確なグラウンダーのパスをビシッと通せるように練習を。練習すればまだまだキックは上手くなると思います。相手からボールを奪う能力もさらに向上を。

遠藤選手は守備にしつこさが出てきたのは一歩前進。次の課題は長谷部キャプテンと同様、攻撃のためのパス能力をあげることです。まずは敵選手のギャップにいるトップ下やFWの足元へ、受け手の効き足や敵選手の位置を考慮に入れながら、強くて正確なグラウンダーのパスをビシッと通せるように。 

浅野選手は、サイドバックとの連携に課題があるものの、右サイドを得意のスピードで崩す場面が何回かあったのは収穫。
ただし、本人も泣いて悔しがっているので十分わかっていると思いますが、チームが同点に追いつくラストチャンスでシュートではなくパスを選択してしまったのは本当に残念。シュートを打って外してくれた方が何億倍良かったことか。日本代表のFWを任された以上、自分のシュートで相手からゴールを奪うという仕事から逃げてはいけませんし、ペナルティエリア内で自分の前にゴールとGKしかいない状況で、他人へのパスという選択肢はありえません。この試合の負けは、浅野選手がこうしたことを学ぶための投資と考えることにしましょう。その投資が無駄にならないように世界に通用するFWに成長して欲しいです。

        ☆        ☆        ☆

 キリンカップ2016決勝戦は、1-2で敗北という結果はとても残念でしたし、試合内容も解決すべき課題が次々と出てきたように思います。

「キリンカップの2試合で、W杯アジア最終予選を勝ち抜くためのチーム戦術を固めておき、9月に選手が再招集されて短時間の練習でも本番の試合では高いレベルのゲームができるようにしておく」ということを大会前に課題としてあげておきましたが、この試合、ピッチ内の状況に応じた戦術の適切な使い分けができたとは言い難いです。

パスサッカーで先制ゴールをあげたところまでは問題ありません。

そこで相手が同点に追いつくために猛攻を仕掛けてきてこちらが押し込まれてしまったら、守備で辛抱しつつも相手が高くあげたDFラインのウラを狙ってコレクティブ・カウンターを仕掛けてゴールを奪い、精神的ダメージを受けた相手の足が止まったら、パスサッカーに切り替えてチャンスがあればもう1点、そのまま試合をクローズしてしまうというのが理想の展開。

しかし日本が先制した直後に集中を切らして失点することで相手を勢いづけてしまい、ボスニアに押し込まれた時間帯にこちらがボールを奪い返しても、カウンターを仕掛けるためにスピードに乗ったタテのドリブルをするのではなく、ボール保持者がホッとしたようにタメをつくりながら、横方向へドリブルしているシーンばかりが目につきました。

後半、逆転ゴールを奪ったボスニアが守備ブロックを自陣深くに引いて逃げ切り態勢に入ったものの、疲れた相手の足が止まってきてプレスが弱まり、ここからパスサッカーで引いた相手の守備ブロックを崩してゴールを奪い返す絶好のチャンスが訪れたのですが、狭くなっている相手バックラインのウラヘロングボールを盛んに放り込んでは、オフサイドになったり相手ゴールキックになったりして時間を無駄使いしているうちにタイムアップ。

日本代表の「試合巧者への道」は、まだ遠いようです。

この試合に出場したメンバーの現時点での実力では、W杯のグループリーグさえ勝ち抜くことが困難であることがわかったと思います。各選手がこの結果を重く受け止め、クラブでの練習や実戦に今まで以上に真剣に取り組んでくれることを望みます。

特に欧州組は毎週行われるクラブの試合において、W杯で対戦する相手は最低限このレベルで、自分個人としてその相手にどれくらい通用しているかということを常に意識しながらプレーして欲しいです。

 キリンカップのまとめ的な記事を次回書きたいと思います。
ユーロ2016も始まりますし、1週間後を目標にアップする予定です。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

        2016.6.7 市立吹田サッカースタジアム

         日本 1 - 2 ボスニア


        清武 28'    ジュリッチ 29'
                  ジュリッチ 66'



       GK 西川      GK シェヒッチ

       DF 長友      DF スシッチ
         (槙野 70)      シュニッチ
          森重         コカリッチ
          吉田         ベキッチ
          酒井高
                   MF ブランチッチ    
       MF 柏木        (アレジナ 88)
         (遠藤 46)      ハイロビッチ
          長谷部       (コソリッチ 90+)
         (小林悠 88)    メドゥニャニン   
          宇佐美       ホジッチ
         (小林祐 74)    ドゥリェビッチ
          清武        (ステパノビッチ 66)
          浅野      
                   FW ジュリッチ
       FW 岡崎        (コジュリ 76)
         (金崎 79)



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■日本代表、ボスニアに逆転負け(その2)

前回のつづき

 この試合、ボスニアのセンターFWジュリッチのポストプレーに苦しめられましたので、日本人選手があまり得意ではない、
身長が高くフィジカルコンタクトに強い相手FWのポストプレーにどう対処すべきかについての特別講座を開きます。

私はかつてユベンティーノだったのでイタリア代表のセンターバック、ファビオ・カンナバーロのプレーは良く見ていたのですが、身長176㎝というセンターバックとしては恵まれない体格だったにもかかわらず、2006年W杯で優勝しバロンドールにも輝いた世界一のDFでした。

もう引退した選手ですが、身長が低い・高いに関わらずコンタクトプレーがあまり得意でない日本人DFにとって学ぶべきところが多いと思います。

Jリーグ組・海外組の別なく日本人DFは、相手のポストプレーヤーがボールを収めるのを見てから、何とかしようと動き出すことが圧倒的に多いのですが、カンナバーロの場合、自分よりデカいFWに先にボールを収められてしまうと苦戦を強いられることがわかっているので、まず相手のプレーを予測し、先手先手で動いてピンチを未然に防いでいくプレーをみがくことで、自分の体格的な不利を克服して世界一のセンターバックになれたのではないかと考えています。

それではカンナバーロの現役時代のプレーを参考にしながら、ポストプレーの対処法について述べていきます。

 まず相手FWがゴール方向に背を向けてポストプレーをしようとしており、その後ろにDFである自分がついているとします。

この時、あまり早い段階で相手FWに密着してしまうと相手は自分の方へ体を預けてきますから、適当な間を取った方が良いと思います。相手が両腕を後方にのばして、自分の背後にDFがいるかどうか探ってくる場合もありますから、その手に触れないようにするか、あえて相手の右手に触れてみて、実は相手の左背後にいるみたいに、相手を幻惑しても良いかもしれません。

そして相手FWの足元へグラウンダーのパスが来た場合、パスコースを読んで相手FWに気づかれないように注意しながらタイミング良く前方へ飛び出し、できるだけパスカットを狙います。

相手がパスを受けるまで黙って見ているから後手を踏まされて状況が悪化していくわけで、そもそも相手FWにパスが通らなければ、その後ピンチが拡大していくことはありません。

 次に浮き球のパスが来て、ポストプレーをしようとしている相手FWが、胸から太もも、足にかけてのどこかでトラップしてボールを収めることを狙っているような場合は、FWがボールをトラップする直前に相手の背後から自分の片足を前方へ出し、足の裏やつま先などで飛んできたボールを安全な方向にクリアします。

これもまず相手にトラップさせないということが重要です。

 最後に、浮き球のパスをFWがヘッドで味方へ落とそうとするプレーについての対処法ですが、自分の方が身長が高くいつもヘディングで競り勝てるというなら問題はありません。

しかし相手が自分より身長が高く、ヘディングで勝つことが難しいケースに限った対処法ですが、相手FWがジャンプするのとほぼ同じタイミングで自分も相手の後方でジャンプしつつ、相手の片方の肩に自分の片手の前腕部を乗せて、自分の両足のジャンプ力にプラスして自分の片腕の力で自分の体を引っ張り上げるイメージで相手より高く飛び、相手の背後からボールを安全な方向にむかってヘディングでクリアします。

キエッリーニなんかも相手FWと競り合う時にこれをやっているのを見たことがありますが、ヘディングする瞬間はレフェリーも一層注目するので、彼の場合は自分の片手の前腕を使って相手より高くジャンプした瞬間、相手の肩に乗せていた自分の手をサッと引っ込めて、ヘディングしていました。

まあ、ぶっちゃけて言えば「マリーシア」の一種です。

ここで注意しなければいけないのは、自分より体の小さい選手に対してこれをやると、「相手にのしかかった」としてファールを取られる可能性があるということです。さらに、片手でも両手でも自分の手のひらで相手の肩を押さえてジャンプすると、かなりの確率でファールを取られてしまうでしょう。

GKがハイボールをキャッチするとき、片ヒザを前に出して相手選手から自分の体を守るのと同様、相手の肩に自分の前腕を乗せてヘディングすることで、相手の後頭部と自分の顔面がバッティングすることを防ぐという意味もあります。

別のやり方として、相手FWがジャンプして自分がそれに遅れてしまい、これから飛んでもどうしてもヘディングで競り勝てないという場合は、遅れても良いから自分もジャンプしつつ、手を絶対使わずに自分の胸で空中を飛んでいる相手FWを押し、相手FWをボールの落下地点から移動させます。

ボールが飛んでくる軌道から外してしまえば相手FWはヘディングできませんし、もし何とか当てられたとしても正確に強いボールを飛ばすことが困難になります。

自分よりデカい相手にヘディングで競り勝つためのこの二つのスキルは、自分たちのゴールを相手のクロスやCK・FKからのヘディングシュートから守る場合にも使えます。

 以上、自分より体が大きいFWのポストプレーに対処する方法を述べてきましたが、こういうフィジカルコンタクト・スキルは、ドイツやイングランドなど“ゲルマン系”の国ではあまり見かけず、ゲルマン系に比べて体がもともとあまり大きくなかったイタリアや南米などラテン系DFが良く使うようなイメージがあります。

長友選手や本田選手がセリエAでやっている同僚のDFに聞いてみれば、似たような話が聞けるんじゃないでしょうか。もしそうなら世界で勝てる日本代表をつくりあげるために、そのノウハウを代表チームに導入して繰り返し練習してみてはどうかと思います。

 相手のポストプレーへの対処以外のシチュエーションで必要とされるコンタクトスキルについては、以下の記事を参考にしてください。

当ブログ関連記事

日本だと、フィジカルコンタクトが弱いと「ともかく筋トレをやれ」という話にすぐなるんですが、サッカー選手に必要のない「筋肉のヨロイ」まで身につけてしまうと、スピードやアジリティが落ちてしまうという弊害が出てきます。

1試合90分間、実戦で体や手を適切に使って相手選手とコンタクトしていくことで、コンタクトプレーに勝つために必要な筋肉が自然と体についてくるはずですし、筋トレは体のどの筋肉を強化するべきか、ちゃんと考えてやるべきです。

あとはコンタクトプレーへの恐怖心を取り除くこと。そのためには格闘技の練習を取り入れると良いかもしれません。植田選手がフィジカルコンタクトに滅法強いのは、子供のときから格闘技をやっていたからではないでしょうか。

思いのほか記事が長くなってしまったので、選手個々の評価は次回にまわします。



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■日本代表、ボスニアに逆転負け

 キリンカップ2016決勝は、日本代表とボスニア・ヘルツェゴビナ代表との対戦となり、日本は逆転負けを喫してしまいました。

日本は本田選手に加え香川選手まで欠場してしまった一方、ボスニアもジェコやピャニッチら中心選手を欠いたメンバーで来日し、両チームとも「飛車・角落ち」での対戦という少しがっかりな状況だったのですが、本田・香川両選手抜きでドイツ・ベルギー・スペイン・イタリアなどでプレーする選手で構成された相手にどこまでやれるのか試されるゲームとなりました。

あの吹田スタジアムのピッチに送り出された11人が現時点における「ベストの日本代表」であり、自分たちに有利なホームゲームなのですから絶対に勝たなければいけない試合でしたが、1-2という結果はとても残念でした。

当然、日本のゲーム内容も解決すべき課題が次々と露呈する試合となりました。

        ☆        ☆        ☆

 シュート数が日本12対13ボスニアと、両チームが拮抗した白熱の試合となりましたが、ボスニアは勝ち負けが決まる一番大切なところ、つまり点を取るところと失点を防ぐところで非常に要領が良く、逆に日本はチーム全体としてゲームの進め方がつたないもので、その差が1-2という結果にモロに出てしまいました。

どの時間帯でも失点は良くないものですが、キックオフからの10分間とタイムアップの笛が鳴る直前の10分間、そして自分たちが得点した後の10分間は選手の集中が切れやすく、特に失点しないよう注意を要する時間帯であるとサッカー界では良く言われます。

序盤のボスニアの攻撃をしのいだ後、左サイドの宇佐美選手を中心に何度も相手を攻めたて、前半28分に先制したところまでは良かったのですが、ゴールしたことで喜びすぎて集中が切れてしまったのか、ボスニアの攻撃でゲームが再開されてもコンパクトな守備ブロックができておらず、一発のミドルパスから失点。

その後も宇佐美選手のドリブルがキレッキレで、左サイドを崩してボスニアゴールに何度も迫りますが決めきれず。

後半も日本がボスニアを押し込む展開が続きましたが、相手が劣勢を打開するために後半21分ステパノビッチを投入すると、その瞬間またもや日本の選手が集中を切らしていて守備態勢ができておらず、誰が彼を見るのかあいまいになった一瞬のスキをつかれて逆転ゴールを浴び、それが決勝点となってしまいました。

ブラジルでやったコンフェデ2013でも、こちらがリードしている状況で、まるで給水時間が終わるまで相手が攻撃を待ってくれると思い込んだかのように水を飲んでいる間に、イタリアのピルロに素早くCKを始められてそれで失点したことが、3-4の大逆転負けとなるきっかけとなりました。

いつまでもこういう稚拙なゲーム運びをしていてはいけません。

 守備に関して言えば、この試合もブロックのつくり方が非常に甘かったです。

MF4人の動きがバラバラで4バックの前に広いスペースが空いてしまっていましたし、DF4人とMF4人で2つのラインがつくれている時もその間隔が開きすぎていました。ボールホルダーにかけるプレスも甘いので、相手のパスの出し手と受け手の双方にとってベストのタイミングで正確な長いパスを出すのを容易にしてしまいました。

ブルガリア戦の記事でも書いた通り、ハリルホジッチ監督が目指しているハイプレス・ディフェンスはちょっと無謀だと思います。

この試合のようにハイプレスを掛けるこちらのFWやMFの頭上をロングボールで越されてしまうと、バックが相手FWにいつも競り勝てればいいのですが、そうでない場合4バックの前にスペースが広く空いている分だけ相手FWが落としたボールを敵選手に拾われ、攻めの基点を自陣深くにつくられる確率が高くなってしまいます。

やはり4-4のコンパクトな守備ブロックをつくり、相手のボール保持者を追う前線の2人以外は、なるべくそのブロックを崩さないようにすることで自分たちが守るべきスペースを限定し、それによってロングボールのこぼれ球を味方の選手が拾いやすくしつつ、正確なパスを出されないように相手のボール保持者に対し規則的にプレスをかけるようにすべきです。

ゾーンディフェンス
(クリックで拡大 以下同様)

              ↓

ゾーンディフェンス2

              ↓

ゾーンディフェンス3

自分たちが相手陣内で攻めていてボールを失った場合は、5秒間は相手のボールホルダーに前線の2~3人で厳しくプレスをかけて相手の前方へのパスやドリブルを防ぎ、残りの7~8人はコンパクトな守備ブロックを形成することを優先させ、5秒以内にボールが奪えたらショートカウンターをかけ、奪えなかったらある程度自陣に引いて前述のように4-4の守備ブロックをつくり、プレスを掛け直した方が良いと思います。

特に自分たちがゴールした直後や、相手に選手交代があったときなど、集中が切れやすい時間帯は注意すること。

 攻撃に関しては、ボスニアがコンパクトな守備ブロックをつくりながらバックラインを高くあげている状況に対し、左サイドの宇佐美選手をキープレイヤーにパスサッカーで攻めましたが、前半の攻めはブルガリア戦に引き続き悪くなかったと思います。

しかしハリルホジッチ監督が、ボスニアの攻撃力に対し柏木選手では守備に不安があると見たか、後半の頭から遠藤選手を投入すると、とたんに相手の守備ブロックの中でパスがつなげなくなってしまいました。

そしてパスサッカーが機能しなくなったので、やはり監督さんの指示だと思いますが、相手の守備ブロックの背後へロングボールを放り込んで、ウラヘ抜け出した味方のFWへパスを通そうとしますが、これぐらいのレベルの相手ともなると、そんな単純な攻撃が何度も通用するほど現実は甘くありません。

ロングボールがラインを割ったりオフサイドになったりして相手ボールになるということを繰り返しているうちにゲームの流れをだんだんと失っていき、そうこうしているうちにボスニアの監督さんがステパノビッチという切り札をきって、その奇襲攻撃にやられてしまいました。

リードを奪ったボスニアは守備ブロックを下げて逃げ切り態勢に入り、惜しい場面もありましたけど日本は最後まで追いつくことはできませんでした。

後半は日本がゲームをコントロールしていたというより、「持たされていた」のだと思います。

ボスニアのほぼ2軍という、あのレベルの守備ブロックさえ崩せないというのでは、W杯で好成績を残すことは難しくなります。

カウンターサッカー一本やりのチームには本当にありがちなんですが、守備ブロックの中でパスをつないで相手を崩しゴールを奪う戦術を持たないので、リードを奪われた相手にDFラインを深く引かれ、カウンターを仕掛けるためのウラのスペースを消されたらそこでジ・エンドとなりかねません。

前回も言いましたが、ダブルボランチとトップ下でつくるトライアングル間のコンビネーションが希薄(特に後半)で、この3人がもっとがんばってパスをつなぎ、相手の守備ブロックの中である程度攻撃を組み立てていかないとパスサッカーが機能しません。

さらにパスサッカーをやるとき、ワンタッチプレーにこだわりすぎていると思います。

全部のパスをワンタッチでつなごうとするあまり、パスの出し手も受け手も動きながらパス交換をしようとするケースが目立ちますが、ミスになってパスが通らないケースも多くなっていますね。それでハリルホジッチ監督が我慢しきれなくなって「ロングボールをウラヘ蹴れ」と指示するのでしょう。

しかしFCバルセロナの場合、DFラインのウラヘ出すスルーパスなど「スペースへ出すパス」以外の、いわゆる味方の足元へのパスは、複数の敵選手の間にできるギャップで適切なポジションを取って立ち止まっている味方の足元へ正確にパスするのが基本です。

(適切なポジションについてはこちら

パスを受けた選手はプレスをかけるために近寄ってくる敵選手が自分の体に触れる前に、ギャップで立ち止まっているかDFラインのウラのスペースへ走りこんでいる味方へのパス、ドリブルあるいはシュートといった自分がやるべき仕事を終えてしまいます。

バルサのパスサッカーは、簡単に言えばそのプロセスの繰り返しです。

なぜならバルサのレギュラークラスでも、複数の敵選手に囲まれた狭いスペースの中を高速で移動している味方にタイミングを合わせて正確にパスを通すのは難しく、ミスになってしまう確率が高くなるからです。

バルサのレギュラークラスでさえ基本的には「立ち止まった味方の足元」へパスをしているのですから、日本の選手たちがそれより難易度が高いプレーをしようとするのはやはり現時点では無謀だと思います。

「立ち止まった味方の足元」へパスするためには、敵選手に囲まれたギャップでパスを受ける選手がつねに正しいポジショニングとボディシェイプを取るということが極めて重要です。

あとは、相手にリードされてから顕著に見られた現象ですが、ゴールが欲しいと焦るあまり、相手のバイタルエリアに日本の選手が3人も4人も集まりすぎです。

これでは、中盤で攻撃を組み立てる選手が手薄になって、そもそもシュートチャンスがつくれなくなってしまいますし、攻撃のために使いたいバイタルエリアのスペースを自分たちでつぶしてしまい、余計ゴールから遠ざかってしまいます。

このあたりは「より高度なパスサッカー」の3回めで指摘済みですね。

選手個々の評価は次回にします。



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■日本代表、ブルガリアを圧倒!(その2)

前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、まず先制ゴールをあげた岡崎選手。柏木選手のクロスに合わせてオフサイドぎりぎりでウラヘ抜け出し、正確にヘディングシュートを決めました。早い時間帯でのゴールはチームを非常に楽にしてくれました。その後も攻守に精力的に動き回りましたが、やや消えてしまったでしょうか。

香川選手もゴール前でうまくフリーになって長友選手からのクロスをヘッドで決めて1点目、さらに清武選手がスルーしたボールをゴール前で俊敏にターンしながらシュートを落ち着いて決め、1試合2ゴールの活躍は素晴らしかったです。代表戦ここ
2試合で4ゴールの荒稼ぎと、ドルトムント移籍直後にドイツで大ブレイクしたゴールゲッターとしての本領が復活してきた感があります。
中盤でのパスの組み立てで、前方にフリーな味方がいるのにパスを迷い、そうこうしているうちにフリーだった味方にマークがついて、結局ヨコパス・バックパスを出さざるを得なくなってしまう場面が少なくないところは改善点です。

清武選手は中盤における攻撃の組み立ての中心として出色の働き。前半、小林悠選手のパスをスルーして香川選手のゴールを、後半は金崎選手のスルーパスにウラヘ抜け出して吉田選手のゴールをアシストするなど、得点機にも良くからんでいました。ザックジャパン時代からプレー内容に着実な成長が見られます。サイドハーフとしてのプレーぶりも悪くはないのですが、彼の高いパス能力を最大限に生かすために、なるべくピッチ中央で攻撃のタクトを振らせてあげたいですね。香川選手のトップ下が外せないのだとしたら、長谷部選手と組ませてボランチの位置から攻撃を組み立ててもらったらどうでしょうか?

宇佐美選手は、高い技術で左サイドを何度も突破してチャンスをつくり、酒井宏選手のクロスをワントラップしたボールの落ち際を冷静にシュートして久しぶりのゴールゲット。守備でも良く戻って相手の攻撃を阻止していました。

浅野選手もスピードと足元の技術で右サイドを切り裂き、自分がゲットしたPKを自ら決め代表初ゴール。彼は若いながらもシュートを打つ時の落ち着きが良いですね。宇佐美選手もそうなんですが、ウイング(サイドハーフ)が個の能力でサイドを突破できると攻撃が非常に楽になりますし、ウイングにスピードのある選手を入れると、チーム全体の攻撃も格段に速くなります。
ただ守備ブロックをつくっているときのポジショニングが怪しいときがあるので、これからサイドハーフとしての戦術理解を。
 
柏木選手は、岡崎選手の先制ゴールをアシストしたクロスが良かったですし、中盤での攻撃の組み立てでも活躍しましたが、バックがボールの出しどころを探しているときに、グラウンダーのパスが受けられるようなポジショニングを取るためにもっと動いて欲しいのと、自分がボールを持っているときに大きい選手に体を寄せられると、あっさりボールを奪われれしまうシーンが何度かあり、フィジカルコンタクトのスキルを高めてボールキープ力をあげたり、ボールを持ちすぎないようにプレー判断のスピードをもっと速めるような努力が必要です。

長友選手は、自らのクロスから香川選手のゴールをナイスアシスト。これまで彼はサイドをタテに突破することにこだわりすぎていて、相手を抜くために体勢を崩しながら不正確なクロスをあげていたことが中で合わない原因となっていましたが、この試合のクロスは相手のサイドバックの前で、十分な体勢から守備側がタイミングを合わせにくいノートラップ・クロスを正確にあげられたことが勝因となりました。こういうクロスがどんどん増えてくれば、アモーレをもっと喜ばせることができるでしょう。自らの軽率なバックパスからあわや失点かという場面を招いたのは反省点です。

酒井宏選手も右サイドでの攻撃参加が良く、自らのクロスで宇佐美選手のゴールをアシスト。守備も改善点はありますがまずまずの出来。

吉田選手は、積極的にゴール前へ詰めて2ゴールをあげる大活躍。しかし守備面で1ゴール分ぐらいは帳消しになってしまいました。最初の失点は吉田選手がピッチ中央方向へクリアしたボールを拾われてのカウンターから。やはり守備のセオリーとして、クリアは敵選手がたくさんいる確率が高く自分たちのゴールにも近いピッチ中央へするのではなく、最悪ラインの外へボールを出してもいいからタッチライン方向へやるべきです。2失点目は金崎選手?と原口選手との間で起こったパスミスが最大の原因ですが、森重選手がボールを奪いに行ったとき、吉田選手が相手のボールホルダーだけを見るのではなく、逆サイドを走る敵選手もケアできるようなボディシェイプとポジショニングを取っていたらベターだったと思います。もしくはああいう危険な場面でマークを受け渡すのではなく、最後まで吉田選手がボール保持者にプレッシャーを掛け続けて、吉田選手の背後を森重選手にカバーしてもらう方法もありましたが、あの瞬間どちらがチェック役でどちらがカバー役なのかあいまいになったことが失点を防げなかった二番目の原因です。

久々に先発した川島選手は、試合終盤に相手のPKをストップしたほか、前半22分の相手の決定機を素晴らしい反応でセーブし、2点ぐらいチームを救ってくれたでしょうか。自分の左脇下を抜かれたチームの2失点目は、倒れこむより左足でセーブできたら良かったかもしれません。

 逆に、森重選手は吉田選手へのアシストは良かったんですが、前半22分にゴール前でFWランゲロフをフリーにして決定的なヘディングシュートを許してしまいました。もし川島選手が防ぎきれず早い時間帯に1-1と追いつかれていたら、「ブルガリアに圧勝」というこの試合のストーリーが全く別のものになっていた可能性があります。Jリーグでは問題にならない相手との距離感なのかもしれませんが、インターナショナルレベルでは通用しません。

小林悠選手は、香川選手へのアシストがあったものの、個でも周囲とのコンビネーションでもサイドを崩すシーンがほとんどなく、右サイドハーフとしてはあまり機能していませんでした。もう少し適応するための時間をあげる必要がありそうです。

遠藤選手は失点シーンも含めて守備が淡泊でした。1度かわされても相手のボールホルダーを後ろから追いかけて2度3度と食らいつき、ボールを奪い返すくらいの強い気持ちがないと、リオ五輪では活躍できません。

原口選手は少々厳しい判定でしたがPKを献上。ゴールから遠ざかる方へ相手の体が向いていましたから、あそこまでやる必要は無かったのではないでしょうか。相手のボール保持者と自分が守るべきゴールの間にまずポジショニングして相手からボールを奪う、シュートやパスを防ぐために足を出すといったプレーをやった方が良かったのかもしれません。

        ☆        ☆        ☆

 キリンカップ初戦となったブルガリアとのゲームは7-2で圧勝という結果は素晴らしかったですし、試合内容もなかなか良かったと思います。

一部解説者から「相手が弱すぎただけで、こんな試合いくら勝っても無駄」みたいな自虐的な意見も出ているようですが、それは違うと思います。

もちろんこの結果を額面通りに受け取ることはできませんが、対戦相手が強かろうが弱かろうが普段のテストマッチから攻守にわたって組織プレーができていないチームはW杯本番の公式戦でもできるはずがないわけで、実際この試合にかぎってゲーム内容を分析すれば、日本代表は攻守にわたって選手同士の連動性は確かにありましたし、前の試合と比べても進歩が見られました。

一番重要なのは、この試合のような攻撃・守備をもっと強い相手に、それもW杯本大会のような緊張でガチガチになりそうな公式戦でも平常心で、より高いレベルで出来るようになることであって、そうしたことの出発点となるこの試合がまったくの無駄で収穫ゼロだったとは思いません。アウエー戦でのテストマッチをもっと増やしてほしいというJFAへの要望はありますが。

特に香川・清武両選手のコンビネーションが素晴らしく、守備のバランスも考慮に入れる必要はあるものの、彼らを同じピッチ上に共存させることで日本代表の攻撃がより魅力あるものになったこと、ウイングが個の技術やスピードでサイドを突破できると、チーム全体の攻撃にも速さが出るということの2点が確認できたことも収穫だったと思います。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

            2016.6.3 豊田スタジアム

           日本 7 - 2 ブルガリア

        岡崎  4'        M.アレクサンドロフ 59'
        香川  14'       チョチェフ 82'
        香川  35'
        吉田  38'
        吉田  53'
        宇佐美 57'
       浅野(PK)87'


      GK 川島        GK ミトレフ

      DF 長友        DF S.ポポフ
         森重          (バシレフ 62)
         吉田           テルジエフ
        (昌子 84)        A.アレクサンドロフ
         酒井宏         (I.イバノフ 46)
                       Z.ミラノフ
      MF 柏木
         長谷部      MF ディアコフ
        (遠藤 76)        チョチェフ
         清武           M.アレクサンドロフ
        (原口 70)       (G.イバノフ 76) 
         香川           I.ポポフ
        (宇佐美 44)     (べレフ 58)
         小林悠         マルセリーニョ
        (浅野 59)       (G.ミラノフ)

      FW 岡崎        FW ランゲロフ
        (金崎 46)       (フリストフ 72)





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■日本代表、ブルガリアを圧倒!

 昨日開幕したキリンカップ2016の初戦、日本代表はブルガリアを7-2で圧倒しました。

対戦相手のブルガリアは、自国リーグでプレーする選手を中心にイタリアやトルコで活躍する海外組を加えたチームで、もし
W杯の最後の切符をかけて日本と大陸間プレーオフを戦ったとしたら、日本のホームで日本の勝利、アウエーで引き分け程度の実力差と見ていました。

この試合はあくまでもテストマッチであり結果を額面どおりに受け取ることはできませんが、5点差をつけての大勝は素晴らしかったですし、試合内容の方もなかなか良かったんじゃないでしょうか。

ソフィアのバシル・レフスキ・スタディオンでもこんな試合ができたら日本も本当にスゴイんですけど...。

それではいつものように日本代表の試合内容を分析していきましょう。

        ☆        ☆        ☆

 ピッチ上の各選手がうまく連動することができた攻撃は良かったと思います。

これまでピッチ上のシチュエーションに関係なく前へロングボールを盛んに放り込んで、無理矢理「タテに速いカウンターサッカー」をやろうとしていたハリルジャパンでしたが、W杯アジア二次予選終盤のアフガン戦・シリア戦あたりから少しづつ攻撃に組織というものが生まれ始め、この試合ではパスサッカー戦術を選択して攻めているときの内容に大きな進歩が見られました。

少ないタッチ数でパスが前へどんどんつながっていき、パスサッカー戦術でも十分「タテに速い攻撃」が出来ていましたし、実際相手の守備を何度も崩して大量得点をあげることができました。

この攻撃を絶対に忘れないで欲しいのですが、もっと良くなる余地はあります。

ワンタッチパスを多用するのはいいんですが、「ワンタッチでパスしよう」という思いが強すぎて、もらったパスをそのままパスの出し手へ返すような無駄なバックパスも多く、そのぶん攻撃に時間がかかり「タテの速さ」が失われてしまいます。

パスはつねに半身で受けて、できるかぎりボールと一緒に相手のゴール方向へターンすることを心掛け、そのとき前方でフリーの味方がいて自分がパスを選択するなら、ためらうことなくその選手がフリーでいるうちにパスすべきです。

その選手がパスを受けてシュート・ドリブル・さらに前方へのパスと、ボールを前へ運ぶプレーを選択できればそれで良し、もしその選手が先へボールを運べなければ自分にバックパスが返ってきますから、そのときは自分が別の攻撃ルートを選択すれば良いだけの話です。

サッカーでは「今ならシュートしてゴールできる」「今ならフリーの味方にパスが通る」という最初のインスピレーションを大事にしてプレーすると成功する確率が高いと思います。 「いや、他にもっと良い選択肢があるかもしれない」と迷ったときは、たいてい良い結果にはなりません。

この試合、ダブルボランチの長谷部・柏木両選手とトップ下の香川選手との関係性が希薄なのが気になりました。この3人がピッチ中央でつくるトライアングル間でのパスをもっと増やし関係を強めることができれば、日本の攻撃がさらにスムーズになると思います。

そのためにはバックがボールを持ってパスコースを探しているとき、長谷部・柏木の両選手がボールを受けるためにもっと顔を出さないといけませんし、この2人がバックからパスを受けたら、香川選手はフリーで彼らからパスを受けられるようなポジショニングを取るようにすべきです。

もし相手の守備ブロックがピッチ中央へ絞って香川選手を厳しくマークしているときは、左右の両サイドハーフが空いている可能性が高いですから、そちらへパスを散らしてサイドから攻めれば良いでしょう。

これはチーム全体に言えることですが、相手にサイドで数的同数をつくられて攻撃がつまってしまったからバックパスしたのに、パスを受けた選手がバックパスの出し手へボールを戻して、再び攻撃がつまるというシーンが何度か見られました。

そこはバックパスした味方に戻すんじゃなくて、相手選手が密集していない別の方向へサイドチェンジして、攻撃を再構築した方が楽に攻められます。

 守備もまずまず良かったと思います。コンパクトな守備ブロックから繰り出される組織的なプレッシングで、相手の攻撃を機能させることはほとんどありませんでした。

2失点も自分たちで注意すれば防げるミスからでした。

ただ、ハリルホジッチ監督が選手たちに求めている「必ず6秒以内に相手からボールを奪い返せ」という約束事は、再考の余地があるのではないでしょうか。

日本代表は攻撃時に4-2-3-1、守備時に左右サイドハーフがボランチのラインまで戻って4-4-2のブロックをつくって守りますが、こちらがボールを失った直後に、すぐボールを奪い返すためにプレスをかけるのはまあ良いとしても、それで奪い返すことができずに、相手が人数をそろえて攻撃の態勢を整えてもなお、こちらのMF4人がラインを崩してひたすらボールホルダーを追いかけ回しに行ってしまうと、日本の4バックの前に広いスペースができてしまい、バイタルエリアに侵入してきたブルガリアの選手へ簡単にパスを通されて何度かピンチを招いていました。

FCバルセロナにもグアルディオラ監督が導入した「5秒ルール」というものがあって、バルサがボールを失ってから5秒間は激しくプレスをかけて、相手陣内でボールを奪い返すことができたらショートカウンターを狙い、それができなければ自陣に引いて改めてプレスを掛け直すというものですが、バルサでさえ5秒でボールを奪い返せなければ一度リトリートして守備ブロックをつくり、そこからプレスを掛け直してボールを奪い返すようにしているのに、ハリルジャパンの今の守備のやり方はちょっと無謀だと思います。

こちらがリードしている状況で、日本がつくっている守備ブロックにスキがなく、パスの出しどころがないので相手がバックラインでパスを回しているときも、体力の無駄な消費を避けるため無理してこちらのMFが守備ブロックを崩してまで相手を追いかけまわす必要はありません。

そのまま相手が前へ攻めてこずにタイムアップとなれば、こちらの勝ちになるのですから。

この試合は途中出場した選手の練習のためにあえてそうしていたのかもしれませんが、アジア最終予選が行われる気温30℃を超えるような中東のスタジアムでは、試合の後半まで選手たちの体力がもつか不安です。

 攻守で、このあたりの課題が改善されてくれば、日本代表はもっと強かなチームになれると思います。選手個々の評価は次回としましょう。



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