■2016年04月

■オーバーエージは必要ない

 手倉森監督が、リオ五輪に出場するU-23代表チームにオーバーエージとして本田選手や香川選手らを招集する意向だと報じられていますが、日本サッカー界全体の利益を考えれば、彼らを招集することによって得られるプラス面よりもマイナス面の方がはるかに大きいと思います。

欧州でプレーしている本田・香川・長友・岡崎ら代表の主力選手たちは、これまでクラブでハードな戦いを1年間続けてきたわけで、彼らにとってシーズンオフで一番重要な“仕事”は、心身に蓄積した疲労をしっかり取り除き、次の1年間を戦い抜くため肉体を十分にケアすることです。

ここを怠ってしまえば、ロンドン五輪に出場したために体を休めるオフがなくなり、グロインペイン症を起こしたサウサンプトンの吉田選手のように、大事なロシアW杯アジア最終予選はもちろん、欧州各国の新シーズンをケガで棒に振って、一番大事な試合に出られないという最悪の事態が起こるリスクが高まります。

またリオ五輪サッカー競技が行われる8月初旬から下旬にかけては、イタリアやドイツなど欧州各国リーグの新シーズンが開幕直前か、すでに開幕したあとであり、シーズン直前のキャンプやテストマッチは、各クラブの監督さんが選手たちに1シーズンを戦い抜くための戦術を理解させる大変重要な時期であり、それはクラブでレギュラーポジションを獲得したいすべての選手にとっても同様です。

もしこの大事な大事な時期に日本の選手たちが五輪に出場するためにクラブのプレシーズンキャンプに参加しないとなれば、クラブの監督さんや首脳陣から「五輪へ行きたいなら行ってもいいけど、クラブの戦力としてはもう当てにしないからね」と、判断されてしまいかねません。

本田選手も香川選手も長友選手も、クラブで確実に先発ポジションが保証されているとはいえない状況ですし、もし新シーズン序盤から日本代表の主力選手たちがクラブから戦力外扱いとなったら、日本サッカー界全体へのダメージは計り知れません。

仮にオーバーエージを使って五輪で金メダルが取れたとしても、それでロシアW杯の出場権が得られるわけではありませんし、むしろ代表主力選手のケガやクラブでの出場機会消滅で、日本代表がW杯アジア最終予選に苦しむリスクが高まるだけで、プラス面よりもマイナス面の方がはるかに大きいです。

男子サッカーの国別対抗戦で、もっとも価値のある最高峰の大会だと世界から認められているのはワールドカップであって、それを忘れてはいけません。

代表の主力選手たちが、「ロシアW杯の予選や本大会に出場するチャンスを失っても良いからリオ五輪に出たい」というなら話は別ですが、ブラジルW杯の借りはロシアW杯でしか返せないのです。

いま日本代表は、ベテランの主力選手たちが欧州で成功した自らの経験を若い選手たちに引き継がせながら世代交代を進めつつ、それと同時にW杯の予選で勝利という結果を出し続けなければならないという大変難しい時期に差し掛かっており、疲労蓄積によるケガやクラブでの出場機会消滅というリスクを冒してまで代表の主力選手たちが五輪に出場できるような余裕があるとはとうてい思えません。

仮に、主力選手を五輪に出場させたことでロシアW杯アジア最終予選を戦う日本のA代表の成績に悪影響が出れば、西野さんをトップする技術委員会やハリルホジッチ代表監督の責任問題となるのは避けられないでしょう。

何より当研究所は、アジア予選で優勝したU-23代表メンバーを中心とする現有戦力だけでも戦術のやり方によっては十分戦えると彼らを信頼していますし、五輪で勝てればそれで良し、たとえ負けたとしても自分たちと世界の同年代の相手との距離がどれだけあるのかしっかり学びとることでさらなる努力へのモチベーションとし、彼らがいずれ欧州四大リーグでバリバリ活躍して日本代表をひっぱる中心選手に成長してくれれば、リオ五輪で十分な成果があったと考えます。

もう一度繰り返します。

リオ五輪に出場するU-23代表に、A代表の主力選手を招集する必要はありません。


(当ブログ関連記事・おめでとう手倉森ジャパン(その2))



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■アジア最終予選の組み合わせ決定!

 2018年ロシアW杯アジア最終予選の組み合わせ抽選会が12日に行われ、日本代表はグループBに入りました。予選日程は次のとおりです。


グループB

日本
オーストラリア
サウジアラビア
UAE
イラク
タイ


日程

2016年9月1日(H)  日本 vs UAE
     9月6日(A)  タイ vs 日本
    10月6日(H)  日本 vs イラク
    10月11日(A)  オーストラリア vs 日本
    11月15日(H)  日本 vs サウジアラビア

2017年3月23日(A)  UAE vs 日本
     3月28日(H)  日本 vs タイ
     6月13日(A)  イラク vs 日本
     8月31日(H)  日本 vs オーストラリア
     9月5日(A)   サウジアラビア vs 日本


 ここまで来たら楽な試合なんてありませんし、油断のならない相手ばかりですが、ブラジルW杯のリベンジを果たし、ロシアで良い成績を上げようと思ったら、アジア予選レベルでビビッていてもしょうがありません。

悪い結果を恐れて攻守にわたって積極性に欠けるゲームをやってしまったり、逆に相手をナメて手抜きをしたりせずに、目の前の試合だけを見て、持てる力をフルに発揮して自分たちがやるべきことを最後までしっかりやり切ることだけに集中して欲しいです。

そうすればおのずと良い結果は出ます。

それをふまえた上で日本の予選日程を見てみますと、アウエー戦はもちろん8月下旬や9月上旬にホームゲームが組まれていますので、気温が高い会場での試合が多くなることが予想されます。

日本代表は気候が冷涼な欧州でプレーする選手の割合が高いですし、主力選手の年齢が高くなっていることも気になります。

監督さんも「オーガナイズで問題があった」と試合後に言っていましたからすでに気づいているとは思いますが、気温30℃を超えるような会場で、二次予選最後の試合となったシリアとのホームゲームのように前線からハイプレスをかけ続ければ、選手がスタミナ切れを起こし、特にベテランの攻撃の選手が自陣に戻れなくなって陣形が間延びしてできたスペースを相手に突かれ、危険なカウンターを食らってしまう可能性が高くなります。

よって90分間ハイプレスを続けるのは現実的な戦術とは言えません。

DFラインをペナの中まで下げろとは言いませんから、ボールをロストしたらプレスをかける1~2人の選手以外はすみやかに自陣へ戻り、ある程度の高さにDFラインを設定してコンパクトな守備ブロックをつくって、そこから組織的にプレスをかけるようにすべきだと思います。

これも予選のたびに指摘していますが、日本国内のTV中継で高い視聴率を取りたいからといって、気温が35℃近くなるにもかかわらず中東でのアウエー戦のキックオフ時間を日没前に設定してくれるようJFAが相手国に要請するのもやめて欲しいです。
 
サポーターはもちろん広告代理店やスポンサー企業も含めたすべてのステークホルダーにとって、日本代表が予選を突破してロシアW杯に行くことに勝る利益はないのであって、そのためにはできるだけ日本の選手がプレーしやすいキックオフ時間にすることを最優先に考えるべきです。

なでしこのリオ五輪中継というキラーコンテンツを失った今、ロシアW杯での日本代表戦TVコマーシャルという最高にオイシイ商品を売るチャンスまで消滅すればどれほどの損失か、広告代理店も冷静になってソロバンをはじくべきですし、JFAもそう説得しなければなりません。

 ところで「W杯の3試合は4年をかけて準備するものだとハリルホジッチ監督が言っていた」と、複数の日本代表選手が最近TVなどでコメントしていましたが、そういう考え方はしない方がよいと思います。

なぜなら、そういう考えを抱いたまま代表選手たちがロシアW杯初戦のピッチに立てば、「4年間のこれまでの努力が報われるか無駄になるか、この1試合の勝敗にすべてがかかっている」と考えるようになるのが自然であって、もしそうなれば「だからこの試合は絶対に失敗したくない」という想いが強くなりすぎ、ザックジャパンのブラジルW杯初戦のように攻撃も守備も失敗することを極度に恐れ、次にどうすべきかプレーの選択を迷いに迷って、自分たちの能力を半分も出せないでいるうちに相手にやりたい放題やられて、気づいたら負けて試合が終わっていたなんてことになりかねないからです。

それよりも、自分たちが普段クラブでプレーしている試合の延長線上にW杯の試合があるというふうに考えて、W杯も普段どおりの実力を発揮することに集中するべきではないでしょうか。

前回W杯で優勝したドイツ代表は、アルゼンチンとの決勝戦でさえ時おり笑顔を見せつつ適度にリラックスしてプレーし、最高にプレッシャーがかかるはずの試合でも自分たちのポテンシャルをすべて出し切ることに成功しているように見えたのですが、それはやはり普段クラブでプレーしている経験が大きくモノを言うのだと思います。

W杯出場を目標にしている世界各国のチームは、やっているサッカーのレベルで言えば、だいだい欧州四大リーグの中堅から下位チームぐらいで、W杯の優勝候補と言われるチームは、バイエルンやFCバルセロナ・レアルマドリード・ユベントスのようなビッグクラブのレベルと考えれば良いのではないでしょうか。

ブラジルW杯で優勝した当時のドイツ代表もバイエルン所属の選手が多く、チームの骨格を形成していたわけですが、彼らにとってW杯のグループリーグ3試合をブンデスリーガに例えるなら、バイエルンがホッフェンハイム・ケルン・レバークーゼンとの3連戦をやるようなもので、そのうち2勝すればほぼ確実にグループリーグを突破できます。

そう考えれば、ドイツ代表の選手たちが普段クラブでやっているプレーをそのまま出し切れば、グループリーグは難なく突破できますし、実際ドイツ代表はそうやってW杯で安定した成績を残し続けてきたわけです。

それが普段ビッグクラブでプレーしている経験がモノを言うということの意味です。

逆にバイエルンの選手たちが、「今度のホッフェンハイムとの試合に勝つかどうかで、これまで4年間努力してきたことが報われるか無駄になるか決まる」と思い詰め、緊張でガチガチになり自分たちの能力を発揮できずに負けてしまうなんてことはまずないでしょう。

 日本代表もドイツを始め、これだけヨーロッパでプレーしている選手が多くなったのですから、自分が所属しているクラブが次の週末からブレーメン・メンヒェングラードバハ・バイエルンとの3連戦に臨み、そこで勝ち点6取れればOKぐらいに考えて、W杯のグループリーグ3試合を毎週クラブでやっているように普段通りにプレーした方が、自分たちの能力を100%発揮できて良い試合結果が得られるのではないでしょうか。

それはそれで決して簡単なことではありませんが、W杯での対戦相手はたいてい欧州主要リーグのどこかで普段プレーしているわけですし、そう考えることで対戦相手のレベルをイメージしやすく、不必要に相手を恐れたり、W杯のゲームを難しく考えすぎてガチガチの過緊張におちいったりせずに済みます。

W杯でハードな組に入ってしまうと、バイエルン・ドルトムント・シュツットガルトとの3連戦で勝ち点5以上取らないといけなくなったりしますが、こっちもドルトムントやヘルタベルリン、プレミアやセリエAでプレーしている選手がいますし、その時はその時です。

 各年代別の代表チームにおいてもJリーグ各クラブにおいてもそういう傾向が非常に強いんですが、日本のチームはW杯や五輪とその予選、ACLのような国際大会の初戦の出来があまりよいとは言えず、初戦で勝てればどんどん勝ち進んでいける反面、落としたらグループリーグ敗退まで真っ逆さまといった具合に、短期間でチームの実力はそんなに変わらないはずなのに、選手のメンタル面での不安定さがプレーや試合結果の不安定さにつながっている気がします。

その最大の原因は、日本人選手が各大会の初戦を、まるで絶対に負けが許されないW杯の決勝戦に臨むかのように思い詰めてプレーしてしまうことにあると当研究所は考えています。

だからこそブラジルW杯初戦のコートジボアール戦でも、ドイツW杯の初戦となったオーストラリアとのゲームでも、日本代表の選手たちは過緊張のせいで動きが重くモタモタしており、再びリードを奪うための時間だってあったのに同点に追いつかれたというだけで心がポキッと折れて選手たちのメンタルが崩壊してしまったかのように、みんながガックリと下を向いて足を止め、逆転ゴールを奪われるまであっという間という、あのような試合展開になってしまったのではないでしょうか。

そうしたつらい過去から目をそむけるのではなく、我々はそこから何を学ぶべきか考えることが極めて重要です。

もしW杯で良い成績を残したいのであれば、「W杯の初戦のために4年間かけて準備するんだ」とか「初戦に勝つことが最重要でそれがすべて」などと考えない方がよいと思います。

むしろ、自分が所属しているクラブで週末のリーグ戦をプレーするように、普段通りの実力を発揮することだけに集中してW杯を戦い、どういうチームと同じグループに入るかにもよりますけど、「初戦で勝てなければすべてが終わり」と思い詰めてしまうのではなく、「リーグ戦は3試合トータルの勝ち点で順位が決まるから、もちろん勝利を目指して全力でプレーするけど初戦は最悪でも負けなければいい」ぐらいに考えた方が、かえって良い成績が得られるのではないでしょうか。

元日本代表の大先輩たちから「日の丸を背負って代表でプレーすることは特別だ」と、さんざん言われてきたと思いますが、私個人としては、代表の現役選手たちが普段クラブでプレーするように、代表でも“普通に”全力でプレーしてくれればそれで良いと考えています。

クラブの試合と代表の試合でもちろん違う面もあるのですが、同じサッカーのゲームということに変わりはありません。

代表戦をことさら特別と考えず適度に緊張して適度にリラックスしながら普通にプレーした方が、シュート決定率も含めて良い結果が得られると思いますし、何より一番重要なのは、日本代表が良い試合内容で良い結果を出してくれることなのですから。



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■手倉森ジャパンが化けた?

 先月25日に行われた日本とメキシコの男子五輪代表のテストマッチなんですが、その録画を見てびっくりしました。

それは2-1で試合に勝ったということよりも、U-23日本代表がわずかな期間に、リオ五輪アジア最終予選を戦っていた時とはまるで別のチームに化けていたからです。

どこが一番変わったのかと言えば、選手個々の一対一の能力、特にフィジカルコンタクトの能力が見違えるぐらい良くなっていたところです。

今年1月に行われたアジア最終予選では、日本の選手はフィジカルコンタクトのスキルがゼロに等しく、準々決勝のイラン戦や準決勝のイラク戦では、相手選手に体を寄せられるとあっさりボールを奪われてしまうシーンがかなり目立ち、選手個々のレベルでもチーム全体としてもボールキープ力が高いとは決して言えませんでした。

そのあたりのことは以前の記事で指摘しましたし、もう10年以上日本人選手のフィジカルコンタクト能力強化を訴えてきたにもかかわらず、一向に改善される気配がないのにしびれを切らした当研究所は、“デュエル”に勝つために選手が身に着けるべきコンタクトスキルをいくつか提案しておきました。

ところがメキシコとのテストマッチでは、日本の選手が一対一でかなりの善戦を見せ、ほぼ互角の闘いをしていました。

私もサッカーを見始めてからかなりたちますが、中南米の強豪国の選手に対し、日本人選手がファールをせずにフィジカルコンタクトで相手のバランスを失わせボールロストを誘うところを、初めて見た気がします。

特に前述の記事で取り上げた「太ももガツン」なんですが、アジア予選ではほとんど見られなかったこのスキルを使った日本の選手が、メキシコの選手をレフェリーから反則を取られずに吹っ飛ばすシーンが何度か見られ、これまでバランスを崩してピッチに倒れこみボールを奪われるのはいつも日本人選手の方でしたから、ちょっと感動してしまいました。

(当研究所の訴えが、JFAに届いたんでしょうか?)

 ただ勘違いしてはならないのは、これはあくまでもテストマッチだということ。

たとえテストマッチでも大マジメにプレーする日本人とは違い、中南米の人は「手を抜けるところは抜いて、要領よくやったもの勝ち」という考え方をしますから、「勝ったところでリオ五輪の勝ち点にプラスされるわけでもないゲームでケガでもしたら損だ」と考えたメキシコの選手が本気で当たってこなかったので、日本人選手が一対一で彼らと互角の勝負ができていたのかもしれません。

それでも以前の日本人選手であれば、テストマッチモードの中南米の選手にさえフィジカルコンタクトを含めた一対一で完敗していたわけで、アジア最終予選まで体や手の使い方をまったく知らなかった手倉森ジャパンの選手たちが、コンタクトスキルを身に着けてメキシコの選手と互角のデュエルを展開できたことは、大いなる進歩だと思います。

 またチーム戦術の面でも、アジア予選までの手倉森ジャパンは組織力がきわめて低く、チームでボールをキープすることができないので、相手にプレスをかけられると前へ大きくボールを蹴って、ひたすらカウンターをやり続けなければ生きていけないマグロのようなチームでした。

(マグロはエラの構造上、寝ているときでさえ前へ前へと泳ぎ続けないと酸欠になってしまって生きていけないのは豆ね)

ところがメキシコ戦での手倉森ジャパンは、ポゼッションサッカーもできるぐらい組織力がアップしてきており、特に日本の2点目、南野選手のゴールにつながったシーンは、パスをつなぐテンポといい、選手一人ひとりの的確で素早い決断といい、ポゼッション戦術としては理想的な攻撃の形でした。

詳細なデータを見たわけではありませんが、U-23の選手はゴール決定力が高いように見えるところも良いですよね。

カウンター攻撃をするときでも手倉森ジャパンはグラウンダーのパスを主体にして攻めるため、シュートを打つ選手が無理のない体勢でラストパスを受けられ、それが浅野選手らの高いゴール決定力につながっているように思います。

浮き球のパスをダイレクトでシュートすれば、どうしても当たり損ねる確率が高くなりますし、浮き球をワントラップして確実にボールをコントロールしてからシュートを打とうとすれば、相手選手にシュートコースを消すための時間を与えることになり、「相手が寄せてくる前にシュートを打たなければ」という焦りから、シュートミスを誘発しやすくなります。

だから当研究所は、「ポゼッションにしろカウンターにしろグラウンダーのパスを中心に攻めろ」と口を酸っぱくして言い続けているわけです。

U-23日本代表の対戦相手は若くて経験が少ないですから単純に比較はできませんが、ひょっとしたらA代表よりもシュートやコレクティブカウンターが上手いかもしれません。

ハリルジャパンの選手はラストパスに浮き球を使うケースが多いんですが、シュートを外しまくってしまう原因の一つはそれでしょう。

シュート決定率をどうすれば高めることができるか今から真剣に考えないと、ロシアW杯初戦のピッチに立っている11人が現在とはガラッと変わっている可能性もありえます。

 なんだかU-23代表をベタ褒めする記事になってしまいましたが、足元の技術で劣勢なのはもちろん、フィジカルコンタクトでも勝てなかった日本人選手が、中南米の強豪国の一角、メキシコの選手と一対一で互角の勝負を展開していたことは、ちょっとした驚きでした。

日本のサッカー界においては、プレーヤーの足元の技術を優れたものにすることに高い価値とプライオリティが置かれている反面、いや、だからこそ日本人選手は自分たちより技術の高い選手・チームを目の当たりにした瞬間、ゲームがまだ始まってもいないのに「負けた。こんな相手に勝てるわけがない」と、意識的にあるいは無自覚に自信を喪失してしまい、相手に飲まれて試合結果もその通りになってしまうことが良くあるように思います。

しかしこれからは、相手の足元の技術がたとえ自分たちより高かったのだとしても、フィジカルコンタクトに勝つためのスキルを適切に使えば、一対一で互角の勝負にもっていける可能性があるということを良く憶えておいて欲しいです。

過去のW杯では、技術では劣勢でもフィジカルコンタクトの強い欧州のチームが、何度も中南米のチームを破っているわけですから。

ただ今回のメキシコ戦にかぎって言えば、これはあくまでもテストマッチ。

これで勘違いしてしまうと、大会前のテストマッチでベルギーやオランダに互角以上の戦いをして、「ブラジルW杯は楽なグループに入った。ベスト8も狙える」と舞い上がってひどいことになった、2年前の日本サッカー界と同じ轍を踏むことになってしまいますので、手倉森ジャパンの皆さんは地に足をつけて、油断も悲観もすることなく地道に強化に取り組んで欲しいです。

 最後にオーバーエージについて。
 
当研究所は以前書いたとおり必要ないという立場ですが、JFAはオーバーエージ枠を使うことにしたようですね。

もし使うのであれば、どうしてもそのポジションにふさわしいU-23の選手がいない場合に限り、国際経験を積むチャンスに恵まれなかった23+1~2歳までのなるべく若い選手を呼んだ方が良いと思います。



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■シリア相手にゴールもいっぱい、課題もいっぱい(その2)

 前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、まず香川選手。2013コンフェデのイタリア戦でブッフォンからゲットしたゴールをほうふつとさせるような、胸トラップしつつ反転してからのシュートは見事でした。金崎選手と相手DFが競ったこぼれ球の落下地点を予測しそこから2点目、さらに本田選手の得点もお膳立てして2ゴール1アシストの大暴れ。

トップ下としてのチャンスメークでも、ポゼッションサッカーの局面ではバイタル中央からDFラインのウラへスルーパスを出したり、宇佐美・酒井高選手らと協力してサイドを攻略、相手が前へ出てきたと見るや、何度もコレクティブ・カウンターの中心となりピッチを縦横無尽に駆け回りました。日本の選手はふわっとした山なりのクロスをあげる人が多いんですが、相手のオウンゴールを誘発した速くて鋭く落ちるクロスも良かったですね。
前半、左サイドで宇佐美選手が良い動き出しをしていたのに香川選手がどうするか迷ってボールを持ちすぎ、結局横パスで絶好のチャンスを逸したことがありましたが、それが唯一の修正点でしょうか。

あまりフィジカルコンタクトが得意でない彼のような選手は、常に良いポジショニングを取ってパスを受け、相手が自分の体に触れるまえにシュートなりパスなりといったやりたい仕事を終えてしまうのが理想ですが、いつも理想通りいかないのもサッカーです。
クラブでも課題として取り組んでいると思いますが、相手から厳しいプレスを受けてもボールロストをしないコンタクトスキルを身に着ければ、もっと怖い選手になれます。
半身でボールを受けているとき相手のゴール方向からプレスをかけられたら、相手に近い方の手を相手の胸にあてて「つっかえ棒」のようにしてボールを守ったり、相手が自分の横から奪いに来たら、相手の肩を自分の前に入れられないよう両腕を飛行機のように広げて防ぎながら、自分の太ももの付け根の外側を相手の太ももにガツンと当てて、相手がバランスを崩した瞬間ドリブルで引き離したり、当研究所は推奨しませんが相手ゴールに背を向けてパスを受ける時は、両手をナナメ後方に広げて自分の背後から相手がプレスをかけてきたのがわかったら、パスを受けるときに自分の尻を突き出すようにして相手の両太ももに尻をガツンと当ててボールキープすると、フィジカルコンタクトに負けてボールロストするようなことを防ぎやすくなります。

本田選手は、相手にしぶとく食らいついて香川選手の1点目をナイスアシスト。香川選手からクロスのお返しをヘッドで決めて1ゴール1アシストの活躍。
シュートを外したことを批判された日本人選手がパスに逃げてしまうと困るのでこれまであえて避けてきたんですが、批判ではなくどうすれば日本人選手のゴール決定力が上がるのかを真剣に考えていくため、そろそろ指摘していかなければならない時期に差し掛かっているように思います。ミランの10番なら是が非でも決めて欲しい、フリーで打たせてもらえたヘディングシュートがあと2本はありました。何が原因で外したのかしっかり研究を。

右ウイング(サイドハーフ)としての働きは、酒井高選手を上手く使うことでサイドを崩す場面が何回かありましたが、やはり本田選手単独でサイドを突破できていないので攻撃パターンが限られ、このポジションはやはり彼にとって適材適所ではないと思います。 前半からハイプレスをかけてピッチを激しく上下動したせいか、クラブでの疲労が蓄積しているせいなのか、試合の後半へばって守備にまったく戻れなくなってしまい、チーム陣形が間延びした4-2-4みたいになってシリアの危険なカウンターを食らう原因に。
ベテランで運動量が落ちたとは言え、まだまだ本田選手の強いメンタルやリーダーシップが日本代表に必要ですし、以前にも提案しましたが、4-1-2-3の二列目として香川選手と並べるか、4-2-3-1の攻撃的なボランチなど、ウイングのような激しい運動量が必要とされないポジションへのコンバートを至急検討を。
本田選手がフィジカルの強さを生かして長谷部(山口)選手らと共にボールを奪い返し、香川・宇佐美・原口選手らで高速カウンターを狙い、ポゼッションするときは本田選手が一列前へ出て、香川選手と共にパスで攻撃を組み立てて相手を崩すイメージです。どうしても右ウイングとして使いたいのであれば、本田選手がへばって守備に戻れなくなった時点で別の選手と交代させるべき。
遅くとも6月のキリンカップでこういうことを試しておかないと、最終予選になって大慌てしかねません。

原口選手は、後半シリアが攻勢に出始めたタイミングでボランチとして出場し、チームの攻撃を再活性化。長友選手からのクロスをヘッドで確実に決めたゴールも良かったです。

宇佐美選手は香川・長友選手らと良くからんで、左サイドで良い崩しが何度も見られました。あとは記録に残るゴールやアシストをするだけですね。

西川選手は、後半ビッグセーブを連発しクリーンシートに貢献。しかし前半10分過ぎ、相手と競り合いながらキャッチしたハイボールをハンブルしそうになったのは修正点です。 

長友選手は、ようやく正確なクロスから原口選手のゴールをアシストできました。インテリスタから「ナガトモのクロスは機械のように正確だから、スタジアムで金を払って観る価値がある」と言われるように、練習を続けて欲しいです。

酒井高選手は、シュートの正確性など改善すべき点がまだまだあるものの、右サイドの崩しに良くからんで成長の跡がみられました。

清武選手は前の試合はトップ下としてポゼッションサッカーの局面で良いパス出しをしていましたが、この試合はコレクティブカウンターからすばやく的確なパスを通して好機を演出。

 逆に森重選手は、後半17分のパスミスからシリアにポスト直撃のシュートを打たれてしまい、前半ヘディングクリアで相手のカウンターを防いだ好プレーが台無しに。チームが2-0とリードしたあと攻撃の選手が守備にまったく戻ってこなくなり、吉田選手と共にシリアの猛攻の前にサンドバック状態になってしまったのは同情の余地があります。

長谷部選手は、危険を察知して相手の攻めの基点をつぶし、攻撃参加も積極的でしたが、自陣深くでボールを奪われ、あわや失点かというピンチを招いてしまいました。次のプレーの判断をもっとすばやく的確に。

岡崎選手は、ウラヘの飛び出しが不発に終わったあと、オンサイドへ戻るのが緩慢で、長友選手の強烈なシュートをGKが前へはじき自分の目の前にボールがこぼれてくる絶好機に1ゴール損してしまいました。「点取り屋」が商売なのにこれではいけません。

これは山口選手が悪かったというわけではなく、アフターぎみに危険なヘッドをした相手選手がいけなかったんですが、彼もヘディングする時の腕の使い方がちゃんとできていたら、顔面骨折のような大ケガを防げたかもしれません。
まず半身になり体の前のほうの腕を振り上げながらジャンプします。そのとき振り上げた腕のヒジを90°ぐらい折り曲げて「アイーン」のようなポーズをつくり、自分の前腕との間にできたスペースでボールにヘディングするようにします。ペナの中でボールが前腕に当たってしまうとPKを取られるのでそこは要注意。こうすれば相手の頭を自分の前腕で押さえてヘッドできるので、少なくとも前から来た相手の頭と自分の顔面がバッティングすることは防げるはずです。ヘディング時のこうした腕の使い方は海外リーグでは見かけるんですが、日本国内では教えられていないんでしょうか。

        ☆        ☆        ☆
 
 ハリルホジッチ監督が就任したとき、アジア二次予選が一通り終わったころには指導者としての力量がだいたいわかると言いましたが、彼は、緻密かつ合理的な戦術理論をもとにチームを理詰めで指導していくグアルディオラ監督のようなタイプではなく、良くも悪くも芸術家肌で情緒的、元サッカー選手としての本能や直感にもとづいた指導をするタイプのようにお見受けしました。

選手を親身になって情熱的にサポートしてくれているところは好感がもてるのですが、戦術面でいくつかの矛盾を露呈し、そこにやや不安を感じたというのが、予選8試合を通して観た率直な感想です。

もともと堅守速攻型のサッカーがお好みのようですが、そういう戦術を選択すれば相手にボールをポゼッションされて攻められる時間が長くなることが予想され、先に失点してしまえばゲームプランが一気に狂ってしまうのに、攻撃の選手の発掘ばかりに熱心で、守備の要であるセンターバックの強化がおろそかになっているように見えるところにも疑問を感じます。

W杯アジア予選が最終ステージに入って、そのあたりが修正されるのかどうか、注目していきたいと思います。

        ☆        ☆        ☆

 それではまとめますが、シリア相手に5-0の大勝という結果はとても良かったのです。

試合内容の面でも、ピッチ内の状況に応じてポゼッションとカウンターサッカーを適切に使い分けるということが、だんだんできるようになってきたところは進歩がうかがえます。

しかし攻守にわたってフォーメーションのバランスがとれておらず、後半20分すぎからスタミナ切れを起こしたのか攻撃の選手が守備にまったく戻れなくなり、中盤がスカスカになって相手のカウンターからいつ失点してもおかしくない状態になってしまいました。

最終予選を有利に進めるためにも絶対に一位通過が欲しい状況でリスクマネジメントが全然できていない、まずいゲーム運びだったと言わざるを得ません。

ザックジャパン時代よりもサッカーのレベルをアップさせるためには、こうした問題を解決していかなければなりせんし、W杯の本大会でもっと強い相手と当ったときに、日本代表の選手たちが望む結果が得られなくなる可能性が高いです。

最後に、オランダサッカー協会から「そういうことはやめて欲しい」と要請があったのであれば別ですが、ヨハン・クライフ財団が金沢市に少年サッカー用コートを寄贈してくれたという浅からぬ縁もあったわけですから、クライフ氏を追悼するため、この試合のキックオフ直前に日本・シリア両チームの選手22人がセンターサークルを丸く取り囲むように並び、1分間の黙祷をささげるセレモニーがあったら良かったのになと思いました。

 ところで日本とメキシコの五輪代表同士のテストマッチを見たら、手倉森ジャパンがアジア予選とはまるで別物のチームになっていてびっくり。どのあたりが「化けた」のかは、次週エントリーで書きます。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

         2016.3.29 埼玉スタジアム2002

          日本 5 - 0 シリア


  O.G.(アルマスリ)17'
         香川 66'
         本田 86'
         香川 90'+
         原口 90'+


       GK 西川       GK アルミハ
 
       DF 長友       DF カラッシ
          森重         (アルアハマド 46)
          吉田          O.アルミダニ
          酒井高        アルマスリ
                       サバグ
       MF 長谷部
          山口       MF Z.アルミダニ 
         (原口 58)       アルマワス
          本田          ウマリ
          香川         (アルフサイン 60)
          宇佐美         アルムバイド
         (清武 85)      (アシュカル 78)
                       アルアジャン 
       FW 岡崎
         (金崎 78)    FW ハルビン




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