■2016年02月

■良いカウンターアタックとは

 前回まで、どうしてパス(ポゼッション)サッカーを日本代表のメイン戦術に据えるべきなのかということについて、お話をしてきました。

ただ、対戦相手との力関係でボールをこちらでポゼッションしたくてもできない場合であったり、あるいはピッチ内の状況から速攻を仕掛けた方が適切であると判断した場合にはカウンターサッカーをやって、戦術を臨機応変に使い分けるべきだということは、これまで何度も言ってきたことです。

それではこのシリーズの最終回として、「質の高いカウンターサッカーとはどういうものか?」ということについて、述べていきたいと思います。

 まずカウンターサッカーのような、いわゆる「タテに速い攻撃」をやるにはふさわしくないシチュエーションから見ていきましょう。図1を見てください。

図1
ふさわしくない状況
(クリックで拡大 以下同様)

守備側が自陣に引いてコンパクトなブロックをつくり、バックのウラのスペースを極端に狭くし、守りの準備をすでに整えて攻撃側を待ち構えている状況が見て取れるかと思いますが、こういうシチュエーションで「タテに速い攻撃」をやるのは適切とは言えません。

こういう場合は、相手の守備ブロックの中でグラウンダーのパスをつないで攻撃を組み立てる「パスサッカー戦術」を選択した方がより効果的であり、カウンター攻撃を仕掛けるのは基本的に、相手チームがある程度こちらを押し込んでいて、相手のウラのスペースが広く空いているときにやるものです。

ところが、昨年10月にハリルジャパンがイランに遠征して行ったテストマッチにおいて、こういうシチュエーションであっても日本の選手たちは、ウラヘ向かって走りこもうとする味方へ浮き球のロングボールをひたすら放り込んでいました。

しかし、前進してきた相手GKに先にボールをキャッチされてしまうかー(1)、ロングボールに味方が追いつけず、ボールがそのままラインを割って相手ゴールキックになってしまうかー(2)、のどちらかでした。

監督さんから「タテに速い攻撃をやれ」と言われた選手たちが指示を鵜呑みにして、ピッチ内の状況におかまいなしでサッカーをやってしまった結果なのでしょうが、戦術理解度の面で大きな問題があったと言わざるを得ません。

それがイランとのテストマッチで攻撃がまったく機能しなかった原因であり、シンガポールやカンボジアのような相手に自陣に引かれた時にハリルジャパンが攻めあぐね、ゴールを奪うのに苦心する原因でもあります。

相手がこちらを押し込んでいてウラのスペースが広く空いているのか、逆に自陣に引いてウラのスペースが狭くなっているのか、相手チームの陣形がコンパクトなのか、それとも間延びしていて中盤にスペースがたくさんあるのか、ピッチ内の状況を良く観察して、それぞれの状況にふさわしい攻撃戦術をチーム全体で共通理解をもった上で選択できるようにならなければなりません。

 また「タテに速い攻撃」がふさわしい状況であっても、ハリルジャパンのカウンター攻撃はクォリティが低いため、なかなかゴールにつながっていません。

図2
質の悪いカウンター

上図は、前述のイランとのテストマッチでしばしば見られたハリルジャパンの攻撃パターンですが、ボールを奪い返したら、サイドへ流れるセンターフォワード(CF)にロングボールを放り込んで、サイドに攻めの基点をつくろうというものです。

Jリーグなんかでも、ワーッとスタンドが盛り上がるシーンなのですが、これは期待されたほど得点にはつながりません。

サイドで基点をつくっても、そこから直接シュートを打つことはまずできませんし、たとえ相手のサイドバックに競り勝った味方のCFがゴール前へドリブルしても、先に戻っている相手のセンターバックがまだ2枚もひかえており、その2人を抜いてシュートするのは容易なことではありません。

浮き球のロングボールを放り込んでしまうと、自分たちでわざわざ相手のウラのスペースを狭くしてしまうことにもなりますし、どうしても味方の押し上げが遅れ、CFが前線で孤立してしまいがちです。

このようにクォリティの低いカウンター攻撃を何度選手たちにやらせてみても、そこからこの戦術を高度に発展させるなんてことはできませんし、日本の選手たちの戦術理解やカウンタースキルがアップするとは到底思えません。

どうも日本サッカー協会(JFA)の技術委員会は「マイボールになったら、ともかくタテにロングボールを蹴らせておけば、選手たちもそのうち慣れて、カウンター攻撃が上手くなるだろう」と考えているフシがあるように思えるのですが、質の高いカウンターサッカーというものを本当に理解しているのか、はなはだ疑問です。

そもそもマイボールにしてから、選手たちがどのようにカウンターを仕掛けるかということを考え始めるのでは遅すぎます。

これは非常に重要なポイントですが、質の高いカウンター攻撃をやるためには、ボールを相手から奪い返す前からカウンター攻撃の準備を整えておかなければなりません。

相手からボールを奪い返した直後の選手は、攻撃の基点となるパスを出すのに一番不向きであるケースがほとんどだということは、日本サッカー界では戦術的な研究が不十分で、あまり理解されていないことのようです。

なぜなら、ボールを奪い返した直後の選手は、それまで相手からボールを奪うことに集中していたので、敵味方の選手配置や相手バックラインの高低など、ボールを奪った直後のピッチ内の状況を良くつかめていないことがほとんどだからです。

ですから、ボールを相手から奪った直後の選手がルックアップして、自分の周囲数mからピッチの一番遠いところまで状況を確認してからパスを出そうとすると、そうやって時間をかけている間に相手選手が自陣に戻ってしまい、カウンター攻撃のチャンスをみすみす失ってしまうことになりかねません。

さもなくば、監督からの「タテに速い攻撃をしろ」という指示を愚直に守ろうとして、ボールを奪った直後の選手が早さを最優先に、前方の状況をろくに確認せずデタラメにロングボールを放り込めばパスが3本と続かず、攻撃がまったく機能しないまま東アジア選手権で最下位に終わったハリルジャパンのようになってしまうのが関の山です。

そうではなく、組織的なプレス守備で相手のボールホルダーを囲い込みながら、それと同時に攻撃へすばやく正確に移行できるような準備を常に整えておくことが、質の高いカウンター攻撃をやるために死活的に重要なことなのです。

図3を見てください。

図3
コレクティブカウンター1

日本代表は攻撃時に4-2-3-1、守備時に両サイドハーフがダブルボランチのラインまで下がって守備ブロックをつくる4-4-1-1を使っているはずなので、それを前提にして説明します。

図3では、相手のボールホルダーを組織的なプレス守備でサイドへ追い込みながらボールを奪い返すことを狙い、右サイドバック(RB)と右サイドハーフ(RH)で相手を囲い込もうとしています。

このときチームの約束事として、たとえばトップ下(OH)が常にピッチ内の状況を確認しながら、味方がボールを奪い返した後フリーでボールを受けられ、カウンター攻撃へすばやく正確に移行できるようなポジショニングを常に取るようにしておきます。

(ここで相手のマーカーとくっついて、一緒にチンタラ歩いているようではプロ失格)

相手にプレスをかける選手はボールを奪い返すことに成功したら、まずトップ下を見ることを事前にチームの約束事としておきます。

図4
コレクティブカウンター2


RBが相手からボールを奪い返すことに成功しましたが、この選手はボールを奪うことに集中していたため、ピッチ内の状況がよくつかめていないはずです。

そこで、RBがルックアップしてドリブルしながら2秒も3秒もかけて周囲の状況を確認するのではなく、チームの約束事の通りまずOHを見て、その選手がフリーであれば迷うことなくパスをします。

もしOHが敵に密着マークを受けていてパスを出せないときは、自分に近い方のサイドハーフやボランチなど第二・第三のパス選択肢をチームで事前に決めておき、その選手にパスを出すようにします。

図5
コレクティブカウンター3


OHは、事前にピッチ内の状況をよく確認していたはずですから、それにふさわしいシチュエーションだと判断した場合には、ちゅうちょなくカウンター攻撃に移行します。

その場合、図2で示したようなロングボールを単純に前線に放り込む質の低いカウンター攻撃をするのではなく、コレクティブカウンターアタックを選択すべきです。

映像で見たい場合はこちら

図5では3対2でこちらが有利な状況をつくっていますが、複数の味方選手が連動し、主にグラウンダーのパスで相手を崩すコレクティブカウンターを使う利点の第一は、相手のバックラインがまだ高い状態のうちに、グラウンダーのスルーパスを広く空いたウラのスペースへ通して、味方選手と相手GKとの一対一の状況をつくることを狙った戦術であるため、それに成功すれば直接シュートまで持って行けて、ゴールの確率が非常に高くなることです。

パスサッカーの基本編で「ゴールできる確率が一番高い攻撃の形は、オフサイドにならずに味方の選手とボールを相手DFラインのウラへ送り込み、GKと一対一になることです」と言ったことを思い出して欲しいのですが、コレクティブカウンターは、中盤でショートパスによる攻撃の組み立てをせずに、ボールを奪い返した後いきなりパスサッカー戦術における「攻撃の最終ステージ」に突入したものと見なすことができ、コレクティブカウンターにはパスサッカーにおける攻撃戦術のエッセンスが凝縮されていると言えます。

その意味において、コレクティブカウンター戦術の延長線上にパスサッカー戦術があり、両者には、複数の選手が連動してグラウンダーのパスをつなぎ、スルーパスを出して最終的にGKとの一対一をつくることを狙うという戦術上の共通性があるので、相手からボールを奪い返した後、まずコレクティブカウンターを狙ってみて、それが相手にうまく防がれてしまった場合は一旦ボールをバックに戻し、こんどはパスサッカーに戦術を切り替え、中盤でグラウンダーのショートパスをつないで攻撃を再構築して、改めて攻撃の最終ステージに突入することを狙うという、状況に応じて戦術を柔軟に使い分けたサッカーをすることが可能になります。

これがコレクティブカウンターをやる利点の二番目であり、遅攻のポゼッションサッカーというイメージが強いFCバルセロナですが、バルサはこういう戦術の使い分けがとんでもなく上手いです。

逆に現在のハリルジャパンのように、浮き球のロングボールを多用するカウンターサッカーばかりやっていると、いざパスサッカーに戦術を切り替えたくても選手の連動性が落ちていて使い物にならず、カウンターというたった一つの戦術を硬直的にひたすらやることしかできなくなるという問題が起きやすいということを、このシリーズでさんざん指摘してきましたが、そうしたことが起こりにくいのがコレクティブカウンターなのです。

さらにコレクティブカウンターはグラウンダーのパスを主体に攻めるため、フィジカルコンタクトや空中戦にあまり強いとはいえない反面、スピードや技術・アジリティのある日本人選手の特長を生かしやすいことが、利点の三番目としてあげられます。

そして対戦相手のレベルが上がれば上がるほど、ロングボールを相手のウラヘ放り込む単純な攻撃が通用しにくくなりますが、コレクティブカウンターを使った質の高い攻撃であれば、よりレベルの高い相手であってもゴールにつながる効果的な攻めがやりやすくなります。

例えばリオ五輪アジア最終予選では、手倉森ジャパンが大会前のテストマッチで機能したからということで、ロングボールを相手のウラヘ単純に放り込む攻撃を多用していましたが、グループリーグで当たったタイやサウジのようなDFのレベルが低い相手には通用したものの、準々決勝のイラン、準決勝で当たったイラクとレベルがあがるにつれて、そのような攻撃がまったく通用しなくなりました。

逆に複数の選手が連動してグラウンダーのパスを使って攻めた、イラク戦での先制ゴールや韓国との決勝戦の一点目は、ボールを奪うところからゴールをゲットするところまで、コレクティブで良いカウンター攻撃だったと思います。

 ここでコレクティブカウンターをやる上で、Jリーグなどで良く見かける日本人選手にありがちな失敗例をあげておきましょう。

誤カウンター

もう3対2のこちらが有利な状況をつくれているのに、まだ味方が押し上げるためのタメをつくるかのように、ドリブルのスピードをゆるめてグズグズしていると、相手のウラのスペースがどんどん狭まっていき、スルーパスを通すのが難しくなってしまいます。-(1)

またパスの受け手の方も、「自分のスパイクにタッチラインの白い塗料がつくようにピッチの横幅を広く使って攻撃しろ」という指示を鵜呑みにしてしまうのか、ピッチの大外を味方のボール保持者と平行に走ってしまったり、-(2) ボール保持者からどんどん遠ざかって行ってしまう選手さえ見かけますが、ー(3) 味方からパスを受けた後のことをまったく考えていない非常にまずいポジショニングです。

ピッチの大外でパスを受けても、シュートをするためには相手ゴールがあるピッチ中央に戻ってこなければなりませんし、
ー(4) 自分のゴールへ最短距離で戻った相手DFにシュートコースを消されてしまいます。-(5)

それではせっかくのゴールチャンスをミスミス逃すことになりかねません。

正カウンター

効果的なコレクティブカウンターをやるためには、最低限ボールを正確にコントロールできる最も速いスピードでドリブルしつつ、周囲の選手はボール保持者との適切な距離を保ってサポートすることが欠かせません。

サポート役の選手は上図のように、後退する相手DFラインの横幅より数m広い距離までボール保持者に近づき、相手のウラでスルーパスを受けて、そのままシュート・ゴールすることを狙います。

正カウンター2

より高度なコレクティブカウンターとして、ドリブルする味方の前をサポート役の選手がクロスするように横切ることで相手DFのマークを混乱させた上でスルーパスを出したり、ー(1) サポート役の動きに相手DFがつられてコースが空いたところをボール保持者がそのままシュートしたり、ー(2) するやり方もありますが、どちらにせよあまりグズグズはしていられません。

相手DFのウラのスペースが狭くならないうちに、スルーパスを出すのか、自分でシュートを打つのか思いきりよく決断しなければなりません。

 以上、良いカウンターアタックとはどういうものかということについて述べてきましたが、ブラジルW杯でザックジャパンが敗退して以降、「ポゼッションサッカーのせいでザックジャパンは負けた」とか「サッカーの内容なんてどうだっていい。勝てばいいんだよ勝てば」などという誤った主張であったり、目先の利益につられた短絡的な議論が巻き起こり、それにひきずられたのか、JFAの技術委員会による日本代表の強化方針にブレが見られるようになり、それがシンガポールやカンボジアといった決してレベルが高いとは言えない相手に苦戦を重ねるといった、ハリルジャパンの迷走につながっているように思えます。

より長期的な利益を考慮すれば、日本サッカーのメイン戦術にパスサッカーを据え、選手やチームをじっくり育て上げていくべきであると当研究所は考えていますが、格上の相手と対戦してパスサッカーをやりたくてもやらせてもらえなかったり、ピッチ上の状況によってカウンターサッカーをやる方が適切な場合は現実策として、臨機応変に戦術を使い分けるべきであるとも主張してきました。

しかし、「やり続けなければ決して上手くなれず、途中で止めてしまうとレベルが下がる一方」というパスサッカー戦術の本質をふまえれば、チームの基本戦術にパスサッカーをまず据えて、戦術のバリエーションを増やすためにカウンターサッカーを追加採用することはできても、普段カウンターサッカーをやっていてそれが通用しなかったからといって、いきなりパスサッカーをやろうとしても、それが非常に困難で非現実的だということについては、これまで何度も指摘しました。

ベタ引きの相手に苦戦しているハリルジャパンは、それをやろうとしてしまっているように見えますし、これからロシアW杯までの二年数か月、カウンターサッカーをずっとやっていって、いざ本大会でそれが通用しなかったら、時間切れで別の戦術を用意することもできません。

そもそもカウンターサッカーは、何年もかけてトレーニングを積まなければできないような難しい戦術ではありませんし、パスサッカーとカウンターサッカー、どちらが難易度が高くより多くの練習時間を必要とするかの判断と、その判断に基づいてロシアW杯開幕から時間を逆算して、二つの戦術のうち、どちらの戦術の練習を先にはじめるべきか、その順番を間違えてしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。

さらに、カウンター攻撃をやる場合であっても、ハリルジャパンが多用している浮き球のロングボールをタテに放り込む攻撃をするのではなく、この記事で述べたようにコレクティブカウンターを使えば、パスサッカーに戦術を切り替えたくなった場合でもスムーズに戻しやすいといった様々なメリットがあります。

コレクティブカウンターを実戦で使えるレベルまで持っていくのにどんなに時間がかかっても、1年もトレーニングすればモノになるでしょうし、日本代表も普段はパスサッカーを基本戦術としてトレーニングしたり実戦で使ったりして、プラスアルファとして、コレクティブカウンターを少しづつ練習したり、実戦で使っていけば良いと思います。

最悪、2018年ロシアW杯が始まる1年前ぐらい前から、コレクティブカウンターを練習し始めても、遅くはないと思いますが、普段カウンターサッカーをやって行って、それがW杯初戦で通用しなかったからといって、二戦目にいきなりパスサッカーに戻し、世界の強豪相手に機能させようとしてもまず無理だということは、何度でも念押ししておきます。

<了>


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■おめでとう手倉森ジャパン(その2)

前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、当研究所が選ぶ大会MVPの植田選手。

空中戦の強さ、フィジカルコンタクトの強さはやはり目を引きますし、闘争心やメンタルの強さも含めて、日本人には希少なタイプのセンターバックだと思います。

できるだけ早くA代表に呼んで、2018年ロシアW杯に間に合うよう、センターバックとしての集中教育を施し、高いレベルでの実戦経験を積ませたいところ。まずはテストマッチやW杯予選のプレッシャーがかからない場面から使ってやりたいところです。

もちろんバックとして改善すべき点がないわけではありません。

空中戦はかなりの強さを誇る彼ですが、地上戦での一対一で「やばっ」と思ったら瞬間的に飛び込んでしまい、相手に入れ替わられてしまうというシーンをちらほら見かけます。

すぐに飛び込まず我慢すべきところは我慢し、相手の両足やボールの位置・体の重心がどこにかかっているかを良く観察して、相手がこういう状態になったときに足を出せば高い確率でボールを奪えるという、自分なりの「勝負どころ」のタイミングを早く見つけることが重要です。

少しリスクはありますが、相手のボールを奪うフリをしてまずこちらから足を出してみて、動いた相手が自分がボールを取りやすい状態になった時に、足を出して奪うというやり方もあります。

そうした一対一での駆け引きや相手のプレーを正確に予測する能力は、高いレベルでの真剣勝負の場で経験を積み、失敗しながら鍛えられることでしか身についていきません。

逆に「相手との駆け引きや読みの部分で経験不足だから」といって、実戦の場で若い選手を使ってやらなければ、いつまでたっても経験不足のままですし、出場のチャンスを与えられないまま20代前半の貴重な成長期を過ごしてしまうのはもったいなさすぎます。

初めから完成されたプレーヤーなんていませんし、「若手を試合で使って失敗するリスクを取るのが嫌だから」といって、あるクラブが初めから完成されている選手を求めるなら、どこか別のクラブが育成した経験豊富なベテランか外国人選手を買ってくるということになりますが、それではクラブ生え抜きで能力の髙い日本人選手がいつまでたっても育たず、そういう方針のクラブばかりになってしまえば、Jリーグの興業面も含めた日本サッカー界全体の危機です。

ミスが失点に直結するセンターバックのポジションは特に、リスクを取ってでも若手を起用することをJリーグ各クラブが嫌う傾向にあるように思えますし、日本人センターバックの人材不足は、それが原因なんじゃないでしょうか。

「今、どれだけ欠点があるか」という減点法で選手を評価してしまうと、どうしてもそうなってしまいますが、それぞれの選手が持っている「ストロングポイント」や「将来の伸びしろ」を考慮した加点法で選手を評価すべきです。

代表でもクラブでも、もし私が監督なら穴があるのは重々承知のうえで、植田選手の潜在能力に投資してみます。「体の大きさ」や「フィジカルコンタクトや闘争心の強さ」という、彼のストロングポイントに賭けてみたいですね。

投資ですから期待はずれに終わる可能性もありますが、あとは植田選手が自分の努力でチャンスをつかむかどうかです。

岩波・奈良両選手にも期待しているのですが、体や手の使い方をおぼえてもっとフィジカルコンタクトに強くならないといけませんし、一対一の駆け引きやポジショニング能力についても植田選手と同様、もっと改善が必要です。

 つづいて中島選手。

イラン戦での、ドリブルでカットインしてからのミドルシュート2本は、とても素晴らしかったと思います。ああいうゴールを決められる選手は、個人的に大好きです。

その次の試合、準決勝イラク戦のように相手に研究されて、中島選手がドリブルでカットインしたときに、相手DFが彼の右足側を徹底的に切ってきた場合にどうするかが今後の課題でしょう。

カットインからのミドルシュートと見せかけて、相手のウラヘスルーパスを出すとか、カットインから中へ行くと見せかけてタテを突破し、左足で正確なクロスを出して味方に決めさせるとか、相手DFに的を絞らせないような攻め手をいくつも持つようにすれば、カットインからのミドルシュートという一番得意とするプレーが生きてきます。

ただし、フィジカルコンタクトのスキルがゼロに等しく、自分の横やナナメ後方から相手に体を寄せられると、いとも簡単にボールを失ってしまうところは要改善点です。

前回記事で述べたように、体や手を使ったコンタクトスキルを身に着けてボールキープ能力を高めなければ、世界で活躍するのは難しいと思います。

そうした課題をすべて克服して、高いレベルのDFを相手にしてイラン戦のようなゴールを連発できれば、ロッベン・リベリークラスのウイングになれるかもしれません。

 逆に手倉森ジャパンで個レベルの弱点は、両サイドバックの守備力の低さでしょう。空中戦はもちろん地上戦での一対一の守備能力に、相当の不安があります。

 オーバーエージについてですが、まったく必要ないと思います。

前回ロンドン五輪では、センターバックの吉田選手をオーバーエージとして召集したのですが、五輪に出場したことでオフに体をじゅうぶん休めることができなかったせいか、サウサンプトン移籍後にグロインペイン症候群を発症してしまいます。

そのような犠牲を払ってまで得た、ロンドン五輪ベスト4進出という結果でしたが、ベスト4という記録こそ残ったものの、関塚ジャパンの選手たちの成長も含め、日本サッカー界に与えたメリットがあまり思いつきません。

むしろスペインを破ってベスト4になったという“成功”に浮かれ、選手たちの個の能力やチームの組織力を高めることができたのか、本当に大事なことがうやむやになったまま、今に至ってしまった感じがします。

五輪でベスト4になった選手を加えた日本のA代表が、2年後のブラジルW杯でベスト4に進出なんてことにはなりませんでしたし、現在A代表でレギュラーポジションを獲得できている関塚ジャパンの主力選手は、かろうじて山口選手の名前があがるかどうかというところです。

リオ五輪についてはオーバーエージは使わず、あと半年かけてU-23の選手たちの能力を底上げする作業を地に足をつけてしっかりやって、世界はおろかJリーグでも実戦経験を積むチャンスが限られている彼らに、リオ五輪で成功も挫折も味わわせた方が良いと思います。

それこそが将来を担うべき若い選手たちの真の成長や、日本サッカー界全体の長期的な利益につながるのではないでしょうか。

南米のある強豪国は、W杯、コパアメリカ、五輪、U-20・17W杯など、主要国際大会のすべての金メダルをコレクションしたいという理由で、オーバーエージを使い全力で結果を取りに行っているようですが、日本がそのマネをする必要はないと思います。

 最後に、リオ五輪予選の準々決勝ヨルダン対韓国戦で、日本人ラインズマンによる“誤審”がありましたが、近年日本人レフェリーの質が低くなってきているのではないかという懸念が出ております。

ブラジルW杯開幕戦も物議をかもしましたし、2006年W杯アジア予選では日本人主審による誤審で、ウズベキスタンVSバーレーン戦が再試合なんてこともありました。

「これだからアジアのレフェリーは」なんて、日本もだんだん言えなくなりつつありますが、JFAも事態を重く見て早急に対策を打つべきです。

さらに、選手がどこまで手や体を使ってコンタクトすることが許されるのか、Jリーグの判定基準を世界基準に合わせないと、いつまでたっても日本人選手のフィジカルコンタクト能力があがりませんし、フィジカルコンタクトの闘いがほとんどないJリーグがガラパゴス化して、ちょっと大げさに言えば、世界のサッカーとは別の競技になってしまいかねません。




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