■2013年06月

■コンフェデ総括(その2)

 コンフェデ総括の2回目は、まず日本人選手個々の能力面でどのような課題が浮き彫りになったかを見ていきます。

サッカー選手に求められる能力は大きく分けて4つあるのではないでしょうか。

1.フィジカル能力(スピード・持久力・ボディコンタクトの強さ・ジャンプ力など)

2.技術(ボールを正確に蹴る・止める・ドリブルする・ヘディングするなど)

3.戦術理解(個人戦術・チーム戦術両方を理解して的確な状況判断にもとづいてプレーする能力)

4.精神力(積極的にゲームに参加できるか・自信と勇気を持ってコンスタントに実力を出し切れるか・苦しい時どれだけ頑張れるかなど)


日本代表選手の場合、2の技術面では世界の列強にかなり追いついてきていると感じました。しかし残りの3つに関してはまだ差があるように思います。

特にゴール前での攻防において、その差がはっきりと表れていました。

コンフェデでは日本の守備崩壊が指摘されましたが、日本人選手は基本のところで差をつけられているために、押し込まれると我慢しきれず、簡単に失点を許してしまっています。

守備における個人戦術の一番の基本は、ピッチのどこに居てもまず相手のボールホルダーと自軍ゴールとを結んだライン上に立って、相手と適切な間合いを取るということです。

ゴール前でこれがしっかりできていれば、相手がボールを持って前を向いていても、シュートコースをとりあえず消すことができているということを意味します。

さらに自分のゴール前では、クロスやパスに対して常にこちらが先に触ってクリアするのがベスト、それができないと判断したらボールに関与しそうな相手に体を寄せて自由を奪い、相手のシュートなりパスなりを弱く不正確なものにしてGKのセービングを助けるのがセカンドベストでしょう。

これが3の戦術理解の基本です。

ところが今の日本代表はこれができていません。

メキシコ戦のバロテッリのゴールのように、DFに体を寄せられてもそれをはねのけてゴールしてしまうのが世界トップレベルのゴール前の攻防ですが、日本の選手は簡単に相手をフリーにしてしまいます。

世界トップレベルの選手をフリーにしたら、かなりの確率で正確なシュートをゴールに叩き込まれるのは当たり前。

ブラジルの先制点を振り返りますと、ネイマールのシュートをアシストしたフレッジのポストプレーに対し誰も体を寄せることなくフリーで仕事をさせています。

もし長友選手がフレッジに体を寄せることで胸で落としたボールを1mずらすことができていたら、少なくともあのダイレクトシュートはなかったかもしれません。

ブラジルの2点目も、ペナの中でパウリーニョを離しすぎです。

イタリアの1点目も、ヘッドしたデ・ロッシを長谷部選手がフリーにしてしまったことが敗因ですし、メキシコの先制ゴールは日本の今野・栗原両選手がボールウオッチャーになって、チチャリートをいとも簡単にフリーしてヘッドでやられています。

彼の2点目も、まずニアで遠藤選手が競り負けて相手の思惑どおりにフリックされ、ファーにいた内田選手が一瞬ボールウオッチャーになって対応が遅れたところをチチャに押し込まれて失点という形でした。

チチャの駆け引きも上手いんですが、まず相手より先にボールに触る、それが無理なら相手の体の自由を奪いにいくという意識を持っていれば防げた可能性があります。

日本人選手がゴール前の攻防でたやすく負けてしまう理由は、3の戦術理解の不足というよりも、4の精神力の問題、特に選手個々の勇気と積極性の問題が大きいのかもしれません。

一発で抜かれるのが怖いから自軍ゴール前で相手選手と距離をとり、相手が何かしたらそれに合わせてどうにかしようという受け身の姿勢がけっきょく後手後手にまわって、相手に先にボールを触られてしまう、フリーになった相手に決定的な仕事をやられてしまうことにつながっているのではないでしょうか。

相手より先にボールに触るということは正しい判断力(戦術理解)とともに、自分がマークしている相手を一度捨ててボールに飛び込んでいく勇気と積極性が必要ですし、そこが世界トップレベルとの差なのかもしれません。

コンパクトな守備ブロックを完璧につくれていたとしても、守備ブロックの前から相手FWへ目がけて放り込んでくるロングボールや、こちらのサイドバックを抜ききらない前から入れてくるクロス、さらにコーナーキックなどのセットプレーを100%防ぐことは不可能です。

そのたびに、日本のゴール前での1対1で競り負けて簡単に失点していたのではサッカーになりません。例えサイドを抜かれても、ゴール前での1対1には絶対負けないことが極めて重要となります。

 ブラジルの3点目やイタリアの2点目は、3の戦術理解の不足が露呈したのではないでしょうか。

ブラジル戦ではネイマールを良く抑えるなど健闘した内田選手でしたが、ブラジルの3点目のシーンでは、オスカルとの1対1で常にインを切ってオスカルをタッチライン方向へドリブルするよう仕向ければ、たとえオスカルにサイドを突破されてクロスを入れられたとしても、まだゴール前にいる味方がジョーのシュートを防ぐチャンスがありました。

しかし内田選手がインとアウト両方を切ろうとしたために、ジョーについていた吉田選手が内田選手がオスカルにイン側を突破されるのに備え一瞬ジョーのマークを離して前進したところで、オスカルにゴール中央へのスルーパスを出されてジョーにゴールを決められました。

チームによって戦術上の約束が違うこともあるでしょうが、相手のドリブルにしろパスにしろサイドよりゴール中央方向のほうが失点のリスクは高まりますから、サイドで相手と1対1になったらまず「インを切る」のが基本でしょうし、チーム全体にそういう共通理解があれば、吉田選手もジョーへのマークに専念して、ブラジルの得点の可能性を減らすことができたと思います。

イタリアの2点目は、日本のゴール前というリスクマネジメントで一番注意しなければならないエリアで、吉田選手が相手をブロックしてゴールキックにしようとしたボールを相手にかっさらわれて失点という形でした。

安全第一で前へクリアしておけば何でもないプレーでしたし、イタリアの決勝ゴールも日本が自陣深くで細かくパスをつなごうとしすぎてクリアが窮屈になったところを拾われてカウンターという形でしたが、これも戦術理解があれば防ぐことができた、もったいない失点でした。

これまで述べてきたことは細かいことかもしれませんが、世界トップレベルの選手ほど細かい基本がしっかりできているように思います。

「基本練習は退屈だからいいや」で放っておくか、それとも妥協を許さず細かいところまで詰めていくか、その毎日の積み重ねが試合の勝ち敗けという大きな差につながっていきます。

コンフェデで惨敗したことにより、W杯アジア予選やテストマッチを通じていかに高くないレベルのサッカーに満足していたか、自分に対するサッカーの要求レベルが低かったかを思い知らされたことでしょう。

もし今回のような悔しい思いをW杯でしたくなければ、すべての選手が失敗の経験をしゃぶりつくしてそこから多くのことを学び、二度と同じ間違いをしないということに尽きます。

戦術理解や精神力だけでなく、1のフィジカル能力でもこの大会に限っては持久力で相手より劣り、フィジカルコンタクトの弱さはあいかわらず多くの日本人選手にとって課題となっています。

こうした課題を解決し、自分のゴール前ではしっかりと守り、相手のゴール前では最初のチャンスで勇気と自信をもってシュートし、その数少ないチャンスに集中して確実にゴールする。

それによって試合内容の良さを勝利という結果につなげる「勝負強さ」が身につくのではないでしょうか。

本番まであと一年間しかありません。クラブや代表での練習・実戦において残された時間を大切に使って欲しいと思います。

 最後にザッケローニ監督の采配に触れておきましょう。

ザッケローニ氏の戦術家としての能力は、歴代日本代表監督のなかではトップではないかと私は考えています。実際、ゲーム前に対戦相手に応じた戦術を選手たちにさずけ準備させることがとても上手いと感じます。

しかしキックオフ後に臨機応変に采配をふるう、“アドリブ”についてはあまり得意ではないようにも見えます。

スコアが動いてから後手後手で選手を交代させていくのではなく、ゲームの流れを読み、流れが悪ければその原因を把握して適切な指示や選手交代によってチームを良い結果に導いていくようなタイプの監督が私は好みです。

ザッケローニ監督なりに意図がおありなのでしょうが、流れが良くて動いてはいけないときに動いてしまったり(6/4 対オーストラリア戦)、逆にコンフェデのように流れが悪くてもなかなか動かなかったり選手交代が機能しなかったりと、“アドリブ”がうまくいっていないように感じます。

本田選手や香川選手など先発メンバーより信頼できる控えがいないということも動けない理由なのかもしれませんが、もしそうであるなら控え選手を固定してきた弊害が出ているのではないでしょうか。

先発組をおびやかす気配さえ見えない選手に“指定席”を与えて招集しつづけるなど、ザッケローニ監督の用兵はかなり保守的だと思われます。

それがチーム内における競争の欠如と、控え選手の伸び悩みにつながっているのではないでしょうか。

ザッケローニ監督はつねに選手に成長を求めていますが、監督にもゲームの流れを読んで適切な対処をする能力、チームに活気を与え競争を促す人事・用兵能力での成長をお願いしたいです。

一部でザッケローニ監督の解任論がとりざたされています。

彼より監督としての能力が抜群に優れていて、日本サッカーの現状を理解しそれにふさわしい強化策を実行できる方が存在するなら監督交代を考慮しても良いかもしれませんが、そういう人で「オファーを受けても良い」という方が現実におられるでしょうか?

でなければ、ザッケローニ監督を解任してもっとレベルの低い監督しか見つからなかったということにもなりかねず、それは賢明な策とは言えません。

個人的には、改善点はあるとしてもザッケローニ監督にブラジルW杯を任せられるだけの能力はある、最低限の合格ラインはクリアしていると考えています。

南アフリカにおいて、日本はボール支配率で劣り、パス成功率は60%と出場32か国で最低でした。

岡田ジャパンは攻撃における組織力に欠け、チームでボールをポゼッションする能力が低かったと言えます。

コンフェデではパス成功率が3試合平均74%、ブラジル戦を除いてボールポゼッションでほぼ互角でしたが、それはザッケローニ監督の戦術によって攻撃における組織力が改善されたことが理由の一つでしょう。

FIFA公式データ

「ザックジャパンになって日本は悪い方向へ向かっている」とか「南アフリカW杯よりレベルが下がった」などという感情論もあるようですが、それは事実とは違うように思います。

選手はもちろん監督さんにも成長してもらって、来年のブラジルW杯では決勝トーナメントを堂々と勝ち進んでいく日本代表の姿を見てみたいです。

<了>




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■コンフェデ総括(その1)

 各大陸王者が集うコンフェデレーションズカップ、アジア王者として出場した日本代表は3連敗でグループリーグ敗退という残念な結果に終わりました。

大会はまだ続いていますが、今回は日本の戦いぶりを総括してみたいと思います。

 W杯優勝国を相手に日本人選手が広いスペースにおける選手個々の一対一でまだ勝つ実力がないと見ていた当研究所は、リアリズムに徹して「4-1-4-1のコンパクトなフォーメーションで堅守速攻のサッカー」で臨むことを提案しました。(当ブログ記事・コンフェデをどう戦うべきか?

しかしザッケローニ監督が選択したのは、これまで通りのサッカーによる真っ向勝負でした。

その結果が3連敗、得点4・失点9だったわけですが、コンパクトな陣形を保ったままバックラインを押し上げて、ある程度相手が守備を固めているところを崩してゴールを奪うという、W杯南アフリカ大会のような堅守速攻型サッカーより難易度が高いことにチャレンジしたわけですから、ザックジャパンがあえて困難な道を選択したその意気込みは買いたいですし、全敗という結果も前向きな失敗だったと思います。

コーチングスタッフを含めたザックジャパンのメンバー全員が、この挫折から学んだことをしっかり自らの血となり肉としていって、ブラジルW杯での成功に結びつけられれば、むしろ有意義な経験となるでしょう。

 それを考えると、初戦のブラジル戦はあえて難しいことに挑戦しにいったはずなのに、何の工夫も改善点も最低限のファイティングスピリットさえも見せられず、昨年のテストマッチと同じか、それ以下の内容で惨敗してしまったのはとても残念でした。

ドイツ代表のレーブ監督やジョゼ・モウリーニョもトランジション(攻守の切り替え)の速さの重要性を以前から指摘しており、当研究所もW杯予選のときから「日本代表は攻守の切り替えが遅い」としつこく言ってきましたが、この試合ではブラジルのトランジションの速さと日本の遅さが際立った試合でもありましたね。

ブラジルは守備への切り替えとプレスのスタートが速くて、次のプレーへの判断が遅い日本の攻撃は機能せず、逆に日本は攻撃から守備への切り替えと選手の帰陣が遅く、ブラジルの速い攻撃にやられっぱなしでした。

 それでも次のイタリア戦は、日本はチームをうまく立て直し、なかなか良い内容のサッカーを見せてくれました。

人とボールが良く動いて、判断スピードを速くしてリズム良くパスを回せている時は、魅力あふれるスペクタクルな攻撃を見せてくれ、目の肥えたブラジルのサッカーファンも、日本のパスが回るごとに「オーレ!オーレ!」と声援をかけてくれました。

当研究所が、W杯の予選からずっと「ボールを持ちすぎるな、次のプレーへの判断を速くせよ」としつこく言ってきた理由はこれです。

それはメキシコ戦も同様で、例えば前半4分の遠藤選手のパスをペナの中で受けた香川選手がトラップしながらターンして一瞬でメキシコのDF2人をかわしてシュートしたプレーは、創造性の面でレベルが高かったですね。ゴールが決まれば最高でしたが。

トルシエジャパン時代からずっと「ゴールまで残り20~30mからの攻撃における創造性に欠けるのが課題」といわれてきた日本サッカーにとって、着実な進歩を感じさせるものでした。

南アフリカW杯では、流れの中からの攻撃で通用したのは本田選手のみか、せいぜいフランスでプレーしていた松井選手ぐらいで、パス成功率60%は出場32ヶ国中最低でしたから、決勝Tのパラグアイ戦が典型なんですが、相手が守備で待ち構えているところを崩してゴールを奪う力は当時の日本にはありませんでした。

(南アフリカ大会で優勝したスペインはパス成功率80%。W杯全参加国の平均は70%でした)

コンフェデでのパス成功率等のデータはまだ見ていませんが、イタリア戦やメキシコ戦の前半を見る限り2010年W杯と比べると格段の進歩があったように見えますし、ザックジャパンのサッカーの方向性は決して間違っていないと思います。

攻撃における創造性の面ではイタリアやメキシコの方が平凡のように私には見受けられましたから、「身内びいき」を抜きにしても、攻守におけるサッカーのレベルの「瞬間風速」は日本の方が高かったと思います。

ただ「瞬間風速が高い」時間帯ではイタリアやメキシコを押し込んでも、それをコンスタントに1試合90分間持続させることができず、「瞬間風速が低い」時間帯では足が止まって相手に一方的に押し込まれ、我慢できずにあっけなく失点してしまうのがコンフェデにおける日本代表でした。

そこが今後解決すべき課題です。

 かなり実力差のあるチーム同士の対戦であっても、片方が90分間攻めっぱなしというゲームはまずありません。

試合の流れが相手に行ってこちらが押し込まれる時間帯でもコンパクトな守備陣形を保ち、チーム全体でどこでボールを奪うのか統一された意識をもってプレスをかけて、相手に攻撃の自由を与えないことで失点をゼロに抑えることがとても重要です。

GKもゴールキック等で時間をかけて、相手の良い時間帯を寸断して、相手が良いリズムで継続して攻撃できないように妨害するのも有効でしょう。

別に押し込まれたからといって動揺する必要は1%もありません。ゴールさえ許さなければ試合に負けることはないのです。そこはずうずうしく構えて、慌てず騒がず失点を防ぐために必要なことは全部やることが大事です。(慌てず騒がず、守備で手を抜いて失点では最悪ですが)

相手の時間帯をしっかりゼロに抑えれば、試合の流れがこちらにやってくるチャンスが生まれてきます。相手に攻め疲れが見えたら押し返して、日本の時間帯ではチャンスを確実にモノにして試合に勝つためのゴールを奪う。

ゲームの流れを的確に読み攻守の勝負どころを見極め、それを勝利という結果に結びつけることができる試合巧者としての能力を磨いていくことが日本代表の今後の課題です。

そのためには、まず相手より走り勝つ体力的スタミナとゲーム終盤でも冷静に正しい判断を下すことを可能にする精神的スタミナが求められます。

今や日本は欧州のビッグクラブでプレーする選手を輩出するようになりましたが、コンフェデで明らかになったようにまだまだ個の能力では劣勢であり、守備ではフィールドプレーヤー10人でコンパクトな陣形を維持して相手が使えるスペースを限定し、攻撃では複数の選手が味方のボールホルダーを適切な距離(7m以下)でサポートしてやる必要があります。

それを90分間可能にするには、相手が1試合で11㎞走るならこちらは12㎞走れるようなスタミナを身につけることが最低条件ではないでしょうか。

 来年はいよいよワールドカップイヤーです。

海外組の代表選手は数週間しっかり休養し体のケアをしたあと、新シーズン前の自主トレやクラブのキャンプで走り込みをするなどして、W杯で相手に走り負けないだけの持続力を養ってほしいと思います。

ケガ防止のためにも、代表のコーチングスタッフが協力して適切な走り込み指導をしてあげるのが望ましいですし、シーズン中も試合に出れなかった選手は、クラブのフィジカルコーチの指導のもと、ボールを使ってダッシュとストップを繰り返しながら長距離の走り込みをするなどして、スタミナ維持を図った方が良いかもしれません。

「瞬間風速」が高い時間帯は、日本が攻守両面においてイタリアやメキシコを圧倒したように見えましたが、あれが単なるまぐれだったとは思えません。

もしそうであるなら、「瞬間風速」で相手を上回る時間を90分持続させられれば、イタリアやメキシコともW杯で互角以上の戦いを見せられる可能性が高まります。

そして、自分たちに流れが来ている時にチャンスを確実にゴールに結びつけ、相手の時間帯はしっかり我慢して無失点に抑えることで、良い内容のゲームを勝利という結果に結びつけることができるでしょう。

そのためには、これまで述べてきたチーム組織力の強化はもちろん、選手個々の能力アップが欠かせませんが、それは次回に述べることにします。

またザッケローニ監督の采配も分析して、コンフェデ総括を締めくくりたいと思います。

(次回につづく)




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■日本代表、メキシコに惜敗

 日本代表のコンフェデ最終戦となるメキシコとのゲームが行われ、日本は1-2で落としました。

対戦相手のメキシコは国内リーグでプレーする選手を中心に、イングランドやスペインでプレーする海外組を組み合わせたチーム。

日本との実力差はほぼ互角で、中立地ブラジルでの試合であれば両チームにとって勝ち・引き分け・負けのいずれの可能性もあると考えていましたが、こういう相手に勝っていかなければW杯ではお話にならず、1-2で日本の敗戦という結果はとても残念でした。

試合内容は、良い時間帯はあったものの、90分を通してみれば、やや残念な内容であったと思います。

        ☆        ☆        ☆
 
 いつものように、まずゲーム展開を振り返りましょう。

試合の立ち上がりは両チーム互角の展開。やや日本が優勢だったでしょうか。

前半4分、バイタルエリアに侵入した遠藤からパスを受けた香川が相手DFの間を抜けてシュートしますが、GKオチョアが片足でセーブ!

9分、遠藤がミドルシュートしたボールをゴール直前にいた岡崎がヒールでコースを変え、先制ゴールかと思われましたが、オフサイドの厳しい判定。

14分、メキシコのクロスを日本のDFがクリアしたボールがグアルダードの前にこぼれ、ワントラップからボレーシュートしますが大きくふかします。

17分、栗原からのパスを受けた岡崎がゴール前で相手につぶされながらもシュートしますが、ゴール左へ外れました。

日本は前半の良い流れの時間帯でゴールが欲しいところでしたが決めきれず、疲労のせいか運動量の低下とともに試合の流れはメキシコへ。

27分、メキシコの左サイドからFK、サバラがヘディングシュートしますが、酒井宏がよく体を寄せて自由にシュートさせません。

33分、ドスサントスからパスをもらったエルナンデスがシュート、これは細貝が体を張ってブロック。

37分、長友が左サイドからクロス、本田がボレーを狙いますが空振りし、ボールが立ち足に当たってしまいます。

40分、メキシコに日本の右サイドをくずされてセンタリング、ゴール前で完全にフリーになったグアルダードがヘッドしますが、ポスト直撃で助かります。

 後半も、前半の25分すぎから足が止まったままの日本に対して、メキシコが攻める展開となります。

7分、メキシコのCKからヒメネスがヘッドしますが、GK川島がナイスセーブ。

9分、左サイドからグアルダードがクロス、日本のDF陣がボールウオッチャーになったところをエルナンデスがフリーとなってヘディングシュートを決めメキシコが先制。

動きが重く、なかなか反撃できない日本。

20分に吉田を投入して3-4-3にフォーメーション変更しますが、その矢先の21分、メキシコのCKから遠藤に競り勝ったミエルがボールをフリックし、最後はエルナンデスがヘッドして日本は痛すぎる追加点を奪われます。

29分、右サイドでパスを受けたドスサントスが長友をかわしてミドル、これは川島が横っ飛びセーブ。
このプレーで長友が痛み、中村を入れて再び4バックに戻します。

37分、香川が左から逆サイドへクロス、これを受けた遠藤がゴール前へ流し込み、最後は岡崎が押し込んで日本が1点返します。

後半ロスタイム、日本DF陣のウラへ出たボールにエルナンデスが抜け出し、内田がペナルティエリア内で倒したという判定でPK献上。エルナンデスのPKキックは川島が良く反応してストップ!

しかし、貴重なロスタイムを消費してしまった日本に反撃の余力なく、このままタイムアップとなりました。

        ☆        ☆        ☆

 それでは試合内容の方を見ていきましょう。まず攻撃から。

攻撃が良かったのは前半20分ごろまででした。

イタリア戦と同様、人もボールも良く動いて攻撃を組み立て、惜しい決定機を何度もつくりましたが、前半の後半以降から日本が1点返すまで、周囲の選手が味方のボール保持者が何とかするのを足を止めて見ているシーンが増え、ボールホルダー自身もボールも動きが止まった状態ではパスがつながらず、なかなかメキシコの守備が崩せませんでした。

日本人選手が持つアジリティは、選手が動きながらボールを扱わないとやっぱり生きてきません。

メキシコと同じ中2日の試合間隔のはずですが、メキシコより日本の方が先に足が止まってしまうのはなぜでしょう?ブラジル戦でも日本の方が先に足が止まりましたが、試合会場の標高の高さが原因なんでしょうか。

ブラジル戦の行われたブラジリアもこの試合が行われたベロオリゾンチも標高1000m近い高地にありますが、逆にイタリア戦が行われたヘシフィ(英語ではレシフェ)は海岸沿いの低地で、このときは日本は良く動けていたと思います。

標高1000m程度では、まだそれほど低酸素が選手の体力に影響を与えることはないはずだとは思うのですが、どういう理由であれ相手より先に足が止まるのではサッカーになりません。

最近良く使われるようになった“インテンシティ”という言葉を、私なら「試合内容の濃さ・密度あるいは強度」と訳したいのですが、この試合なら前半20分まで見られたインテンシティを90分間持続できなければ、W杯で強豪を倒して決勝トーナメントに進出することはできません。

それが残り1年間で解決すべき日本の課題です。

 守備も前半20分すぎまでは良かったと思いますが、前半終了まであと5分という時間帯でメキシコのグアルダードを完全にフリーにして決定的なヘディングシュートを浴び、後半キックオフから9分でエルナンデスに先制ゴールを決められてしまうなど、選手の集中が切れやすいと言われる前・後半の始めの10分と終わりの10分で失点してしまうという問題が相変わらず解決されていません。

この試合では、どうプレスをかけてどこでボールを奪うのかチームで意志統一がなされておらず、攻撃の選手は前からプレスに行ってもDFラインが後ろに下がったままなのでチーム全体が間延びしてしまい、DFラインで跳ね返したボールをことごとくメキシコの中盤に拾われてしまいました。

前からプレスをかけに行くなら、DFとボランチもラインを押し上げて、チーム陣形をコンパクトな状態に維持しないといけません。

前半20分以降、メキシコがゲームの流れを支配しましたが、そこでしっかり辛抱して無失点におさえ、こちらにゲームの流れがくるまで我慢するというしたたかさが欲しいです。

そのためにも、コンパクトな陣形をなるべく90分間持続させ、それを保ったまま、どこでプレスをかけてボールを取るのかチームの意思統一が欠かせません。

コーナーキックからまたしても失点してしまいましたね。日本はアジアでならともかく世界レベルで見ると守備力が弱いです。

        ☆        ☆        ☆

 選手個人で特筆すべきは岡崎選手。

ゴールも良かったのですが、攻守に渡って豊富な運動量が素晴らしいですね。残り9人のフィールドプレーヤーにも岡崎選手並みのスタミナが欲しいです。

川島選手は素晴らしい読みでエルナンデスのPKをストップ!相手がフリーで打ったヘッドも1本良く防ぎました。

遠藤選手も積極的に動いて好アシスト。
ただCKで相手に競り負けてメキシコに追加点を許す要因となってしまうなど守備では問題も。
この試合のように世界レベルの相手だと遠藤選手の守備力が攻撃面でのメリットを打ち消してしまうことも予想されます。ピルロもそれは同じですが、イタリアはそのために彼に護衛をつけた3ボランチにしたわけで、さて日本はどうしますか。

 逆に今野&栗原の両センターバックはメキシコのクロスに完全なボールウオッチャーとなり、エルナンデスをフリーにして痛い先制点を許してしまいました。ゴールへ向かうボールはGKに任せれば良いわけで、まず人をマークしてつかまえないと!バックラインの押し上げも足らず、チーム陣形を間延びさせて防戦一方となる原因にも。

交代出場の内田選手はゲームにうまく入れなかったのか、CKでエルナンデスに競り負けて決勝点となるヘッドを許し、後半ロスタイムにもエルナンデスに先に体を入れられてPK献上とボロボロの出来。

        ☆        ☆        ☆

 日本のコンフェデ最終戦は、勝って成長した証を見せて欲しかったのですが、負けという結果も残念でしたし、試合内容も良かったのは前半20分までで1試合トータルでは今ひとつでした。

90分間、攻守に渡って一定レベル以上のインテンシティ(試合内容・密度)を保つことができないというのが、大きな課題となっています。

精神的にも肉体的にも、1試合を通して高いクオリティを保ったゲームを持続させるためのスタミナがぜんぜん足りません。

その原因を必ずつきとめて、1年後のW杯本番までに絶対にこの問題を解決して欲しいです。

次回はコンフェデにおける日本の戦いぶりを総括してみようと思っています。
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 2013.6.22 エスタジオ・ゴベルナドール・マガリャエス・ピント
                       (ベロオリゾンチ)

         日本 1 - 2 メキシコ

          岡崎 86'     エルナンデス 54'
                     エルナンデス 66'


        GK 川島        GK オチョア

        DF 長友        DF ミエル
          (中村 77)        レジェス
           今野           モレノ
           栗原           トーレス
           酒井宏
          (内田 59)    MF サバラ
                         トラード
        MF 細貝           グアルダード
           遠藤          (サルシド 71)
           香川           ドスサントス
           本田          (バレラ 78)
           岡崎       
                     FW ヒメネス
        FW 前田         (アキーノ 90+)
          (吉田 65)       エルナンデス




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■日本代表、イタリアにもったいない負け

 決勝トーナメント進出に向けてもう負けられなくなった日本の第2戦はイタリアとの対戦でしたが、激しい打ち合いの末3-4で敗れました。

対戦相手のイタリアはユーロ2012準優勝国。日本との実力差は日本のホームで引き分け、アウエーでイタリアの勝ち程度と見ていました。

ブラジルという中立地での対戦であれば、地力に勝るイタリアの勝利は順当な結果だったとは思いますが、日本より1日休養日が少なかったイタリアは明らかにコンディションが悪く、日程上の有利さを生かして日本が何とか勝ち点を取り、決勝トーナメント進出への望みを第3戦につなげて欲しかったのですが本当に残念です。

試合内容は、どん底だった今年3月のヨルダン戦に比べれば、かなり良くなってきたと思います。

それでは試合展開を振り返ってみましょう。

        ☆        ☆        ☆

 立ち上がりは、厳しいプレスからボールを奪うとテンポ良くパスを回してゴールへ向かうなど、ブラジル戦とは見違えるような動きを見せた日本のペースで始まります。

5分、香川が左サイドから早いタイミングでクロス、マークをうまく外した前田がヘッドしますがGKブッフォンの正面。

17分、バイタルエリア中央へ切れ込んだ香川がミドルシュート!これもブッフォンがセーブします。

21分、川島のゴールキックを受けたデ・シリオのブッフォンへのバックパスが弱く、かっさらおうとした岡崎をブッフォンが倒したとしてPK獲得。本田のキックがゴール右隅に決まって日本が待望の先制点。

33分、今野が放り込んだボールをペナルティエリア内でイタリアがクリアミス、こぼれてきたボールを香川がダイレクトボレーで決めて、早くも日本が2-0。

気持ちが守りに入ったか、徐々に運動量が落ちてきた日本に対し、イタリアが反撃を開始。

41分、ピルロが日本の集中力の欠如を見逃さず素早いCK、デ・ロッシがヘッドでゴールにねじ込み、イタリアが1点返します。

1点取れたことで冷静さを取り戻したか、イタリアが息を吹き返します。

前半ロスタイム、バロテッリの落としを受けたジャッケリーニがシュートしますが、日本は右ポストに救われました。

 後半も、前半のイキイキとした動きがなくなってきた日本に対し、イタリアが攻めます。

5分、ゴールキックに逃れようとした吉田からジャッケリーニがボールをかっさらいセンタリング、これを内田がオウンゴールしてイタリアに追いつかれてしまいます。

こうなると試合はイタリアのペースに。

7分、バイタルエリア中央でパスを受けたジョビンコがミドルシュート、長谷部がブロックしますが、ハンドがあったとしてPK献上。バロテッリがワンフェイント入れてゴールに蹴りこみ、とうとうイタリアが逆転。

体が重いイタリアは守備ブロックをつくって逃げ切りを図り、追いつきたい日本が押し込むという展開。

イタリアの消極性が逆に仇となったか24分、遠藤のフリーキックを岡崎がヘッドで決めて3-3の同点に。

試合の流れは再び日本へ。

26分、本田がドリブルで相手をかわし、ミドルシュートしますがブッフォンがセーブ。

37分、長友のクロスを相手がクリア、これを岡崎がシュートしますがポスト直撃!こぼれ球を香川がヘッドするも決まらず。

41分、大切なところでまたしても日本に痛恨のミス。自陣深くで細かくつなごうとして窮屈になったクリアボールをデ・ロッシに拾われるとマルキージオにパス、カウンターから最後はジョビンコがつめてゴール、日本は息の根を止められました。

        ☆        ☆        ☆

 続いて攻撃から試合内容を分析します。

特に前半30分ぐらいまで、日本の攻撃はとても良かったですね。

各選手の次のプレーへの判断が速くボールホルダーへのサポートも的確で、ワンタッチ・ツータッチでオートマティックにどんどんパスが回っていきました。

ブラジル戦では各選手の判断が遅く、選手もボールも動きを止めながらプレーしていてブラジルのプレス守備の餌食となっていましたが、この試合はテンポよくパスが回るのでイタリアの選手も一発でかわされないようにうかつにプレスには飛び込めず、それによってフリーになった日本の選手のパスがさらに回るという好循環になっていました。

前半5分の前田選手のシュートシーンのように、クロスを入れる時も迷って切り返し切り返しするのではなく、ゴール前にいるDFの準備が整う前にダイレクトで正確なクロスを入れられれば、味方のFWもマークを外しやすくなりますね。

こうした攻撃をW杯の予選から見たかったんです。

ただし、途中で相手に押し込まれる時間帯があったとしても、このレベルの攻撃を最低90分間続けられなければ、日本がW杯の決勝トーナメントを勝ち抜いていくという可能性は見えてきません。

しかも決勝トーナメントは中2日~3日の試合間隔で、イタリアやブラジル・スペインレベルの相手に勝ち進んでいかなければ、優勝はありえないのです。  

そうした意味において、今の日本代表は肉体的にも精神的にも持久力・スタミナがぜんぜん足りません。

 シュートに対する意識もかなり改善されてきました。

ただ、カウンターからこちらが数的優位にある状況でシュートではなく弱気なパスを選んでミスになってしまうなど、まだまだ改善点はあります。

ミドルシュートの意識も高まってきたのは良いのですが、最低限ワクに入れて欲しいところ。

長谷部選手や清武選手なんかがそうなんですが、ミドルを打つとき上半身がのけぞり、腰だけを前に押し出してキックするので、シュートが大きくワクを外れるかボールにうまくパワーが伝わらない感じがします。

シュートを打つとき、上半身をややかぶせ気味に踏み込んで腰を入れて打つと、強くて押さえの効いた正確なミドルがゴールマウスの狙ったところへ向かうと思います。

 守備については、やはり前半30分までは日本のプレスが良く効いて、イタリアからボールが面白いように取れていました。これも攻撃と同様に最低90分間続けなければ、意味がありません。

イタリアのタテパスが入る瞬間、バロテッリやジョビンコの背後に体を寄せて、相手を自由にさせまいとする努力もうかがえました。

あとはフィジカルコンタクト能力や体の使い方のテクニックを高めて、手で相手のユニをひっぱらなくても守りきれるよう練習を積んでほしいです。

しかしながらこの試合の敗因はやはり守備。

日本の選手は、今自分がピッチのどこでプレーしているか、どういう時間帯なのかに応じたリスクマネジメントがまったくできていません。

ピッチを三分割したとき、自分たちのゴールに近い1/3のゾーンは、たった一つのミスが即失点につながる危険な場所であり、何よりも安全第一が優先されます。

「自分がミスするはずがない」ということをプレー選択の前提にしてはいけません。

たった一度でもミスすれば失点の可能性があるプレーを選択するくらいなら、タッチラインの外へ大きくクリアして失点の可能性そのものを消すべきです。

優先順位
(クリックで拡大)

後半5分に、吉田選手が日本のゴールキックにしようとしたボールをペナの中で相手に奪われ、オウンゴールを誘発してしまいましたが、シンプルにクリアしておけば何でもないプレーでした。

決勝ゴールのシーンも、イタリアに前線からプレスをかけられていたのに、日本の守備陣が自陣深くで細かくパスをつなごうとして、追い込まれた今野選手が窮屈な体勢からクリアしたボールが短くなり、バイタルエリアにいたデ・ロッシに拾われてショートカウンターを食らうという形からでした。

この試合は日本が前線で非常にテンポ良くパスを回していて、DFがタッチラインの外へクリアして相手ボールにするのはもったいないような気がしたのかもしれませんが、「失点を防ぐこと」が「ボールキープ」より大切なのは今さら言うまでもありません。

これまで「消極的な安全策ほど危険な策は無い」と繰り返し述べてきましたが、「DFがゴールキックにしようと相手をブロックしたつもりがボールをかっさらわれてゴール」というプレーはその典型であって、私が一番嫌いなプレーの一つです。

(もう一つは、DFがダイレクトでクリアできるのに「空振りしないよう確実に」と思って、ゴール前でわざわざワンバウンドさせたボールを相手FWに奪われて失点というプレー)

また、前後半開始から10分と終わりの10分は選手の集中が切れやすく点を取られやすい時間帯であり、リスクマネジメントをよりしっかりやっておかなければならないのですが、ブラジル戦もこの試合も、何度も何度もこの時間帯にやられていて、失敗から学ぶということが見えません。

日本は、経験の浅いユースチームのような、本当にもったいない試合をやってしまったと思います。

 チーム全体として気になるのは、選手同士で声を掛け合うことの少なさですね。失点するとみんなで下を向いてしまうシーンがこれまでも目立っていました。

チームが苦しい時こそ全員で声を掛け合って闘志を奮い立たせ、失点にからむようなミスをしたチームメートをそっとしておくのではなく、すぐさま駆け寄って「みんなで取り返せばいい。頭を切り替えていこう」とみんなでフォローしてあげて欲しいです。

        ☆        ☆        ☆

 選手個々で特筆すべきはまず香川選手。これまでの代表マッチで一番出来が良かったのではないでしょうか。味方がヨーロッパのチームのようにテンポ良くパスを回してくれると彼が生きるのかもしれません。

日本の2点目となったボレーシュートも思い切りが良かったですし、判断の速いクロスから味方のチャンスもお膳立て。バイタルでスピードに乗ったドリブルから強烈なミドルシュートを放ってブッフォンを脅かしました。代表でもクラブでもこのミドルにもっと磨きをかけていくべきです。中盤のパスの組み立て時に球離れを早くすると、もっと良くなるでしょう。

岡崎選手も、後ろから相手に体を寄せられていたと思いますが素晴らしいヘディングシュートでした。あのように正確なヘッドができるならブンデスでゴールが量産できるはず。守備でも運動量豊富でチームへの貢献度は高いです。

本田選手は、名手ブッフォンを破る見事なペナルティキックでしたね。

遠藤選手も、岡崎選手へナイスアシストでした。
普段、遠藤選手はCK・FKの時にふわっとした山なりのボールを使ってそのままGKにキャッチされることが多いような気がしますが、このアシストのようにスピードが速くて急激に落ちるボールを蹴った方が味方のゴールの確率は高まると思います。キックの名手である遠藤選手もミドルシュートは苦手のようですね。練習でもっと精度を上げて欲しいです。

 逆に吉田選手は、前述のようにリスクマネジメントの判断ミスから痛恨の失点の原因に。
2-0でリードしていたチームが同点ゴールを許すと逆転まであっという間という「サッカーで2-0は一番危険な点差」であることを示す教科書のような試合でしたが、その意味で吉田選手のミスはこのゲームの勝敗を決定づける大変残念なものであったと思います。

長谷部選手は相手CKの時に一瞬集中力を切らし、そこを抜け目のないピルロにつかれてデ・ロッシのゴールを許す痛いミス。

長友選手は依然として本調子ではないのか、相手のアーリークロスを再三許し、攻めてもサイドの突破にキレがありません。

 ザッケローニ監督の采配面では、前半30分以降日本の足が止まりはじめ、試合の流れが相手に傾いて後半10分までに3失点してイタリアに逆転されても動かず。

中盤に運動量のある選手を投入するなど早めに手を打って逆転される前にチームを立て直し、ゲームの流れを日本に引き戻すべきだったと思われますが、後半ロスタイムにようやく中村選手を入れたのは遅きに失したのではないでしょうか。

        ☆        ☆        ☆

 決勝トーナメント進出のために勝負のかかったイタリア戦、3-4という結果はイタリアとの地力や経験の差からすれば順当だったとは思いますが、イタリアは1日休みが少なくコンディション不良だったのは明らかで、日本が勝たなければいけない試合でしたし、勝てた試合だったと思います。

こういう厳しい試合を勝って結果を出していかなければ、チームの成長はあり得ませんし本当に残念です。
2連敗ということで日本のグループリーグ敗退が決定しましたが、それにも深く失望しています。

ただ試合内容の方は、特に攻撃面で最悪期を脱しつつあるのは明るい兆しです。

前半30分までの攻守にわたって高いクオリティのゲームを90分間続けられれば、それを中2~3日で毎試合繰り返すことができる肉体的精神的スタミナを身につけられれば、ブラジルW杯の決勝トーナメントで日本が好成績を残す希望が見えてきます。

 これで決勝トーナメント行きの可能性はなくなりましたが、香川選手のチームメート・チチャリート率いるメキシコに何としても勝ち、ブラジルで1試合でもしっかりと結果を残して、日本のコンフェデでの冒険を締めくくりましょう。

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   2013.6.19 イタイパバ・アレナ・ペルナンブコ(へシフィ)

      イタリア  4 - 3  日本

        デ・ロッシ 41'        本田(PK) 21'
      O.G.(内田) 50'         香川 33'
    バロテッリ(PK) 52'        岡崎 69'
       ジョビンコ 86'


       GK ブッフォン        GK 川島

       DF デ・シリオ        DF 内田
          キエッリーニ        (酒井宏 73)
          バルザーニ         吉田
          マッジョ            今野
         (アバーテ 59)        長友

       MF モントリーボ      MF 長谷部
          ピルロ            (中村 90+)
          デ・ロッシ           遠藤
          ジャッケリーニ        岡崎
         (マルキージオ 68)     本田
          アクイラーニ         香川
         (ジョビンコ 30)
                        FW 前田  
       FW バロテッリ         (ハーフナー 79)




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■日本代表、またしてもブラジルに力負け

 日本代表のコンフェデレーションズカップ初戦となるブラジルとのゲームが行われ、日本は0-3で良いところなく敗れました。

対戦相手のブラジルについては説明の必要はないでしょう。戦力差から言って、今の日本ではアウエーのブラジル戦に引き分けるのも容易なことではないと考えていましたが、敗戦という結果は残念ながら順当だったと思います。

試合内容の方も、昨年のブラジル戦と比べて日本に成長のあとが見られませんでした。

        ☆        ☆        ☆

 試合の立ち上がりは両チームとも慎重な入り方。

それでも前半3分、左サイドからマルセロのライナー性のクロスをフレッジが胸で落とし、ネイマールが打ったミドルシュートがゴール右上に決まって早くもブラジル先制。

しかし、ブラジルは決勝トーナメントにピークを合わせるつもりなのか、全体的に動きが重い感じがします。
一方昨年と同じ大敗は繰り返せない日本。必死に反撃にかかります。

6分、本田のFKは難しいバウンドでしたがGKジュリオ・セザールが横っ飛びセーブ。

9分、香川のパスを受けた清武が右サイドからクロス、ゴール前に飛び込んだ本田のボレーは大きくふかします。

19分、本田がバイタルエリアで相手をかわしながらミドルシュート、GKがいったん前にこぼしますが押さえました。

21分、右サイドを突破したフッキがクロス、ゴール前にいた選手にあたったこぼれ球がゴールへ向かいますがGK川島がなんとかセーブ。

前半の終盤は再びブラジルが攻勢。

41分、右サイドでパスを受けたフッキがフェイントで長友をかわしてシュートしますが、わずかにゴール右。

43分、ネイマールのパスを受けたフレッジがゴール正面からシュート、これは川島が良くセーブし、こぼれ球も川島がスライディング・クリア。

 後半も前半同様、日本は出鼻をくじかれます。

3分、右サイドからダニエウ・アウベスのクロスをゴール前で受けたパウリーニョがシュート、川島の手をはじいたボールがネットに突き刺さって0-2。

苦しくなった日本は前田を投入していつもの4-2-3-1へ。

11分、香川からパスを受けた前田がバイタルエリアからミドルシュートしますが、GKがセービング。

26分、再び本田のFK。シュートはいったん壁に跳ね返されますが、こぼれ球を拾った本田が浮き球のパス、混戦から最後は前田がシュートしますがGKが押さえます。

後半30分をすぎると日本の足が止まり始め、攻撃は手詰まりぎみに。ブラジルにボールを奪われてもだんだん守備に戻れなくなっていきます。

後半ロスタイム、ブラジルのカウンター。左サイドからオスカルがスルーパスを出し、交代出場のジョーが決めて0-3。

またしても日本の完敗に終わりました。

        ☆        ☆        ☆

 試合内容の分析です。今回は守備から。
 
守備は、W杯予選からずっと指摘してきた課題が解決できていないため、高い攻撃力をもつブラジルには通用しませんでした。

日本は守備ブロックをつくっていてもただスペースを埋めているだけでプレスが弱く、ブラジルがタテパスを出してもボールの受け手にほとんどプレッシャーをかけないために、かなり自由にやらせてしまいました。

特にゴール前で相手に自由にやらせすぎましたね。ゴール前で自分がマークすべきブラジルの選手を離しすぎです。

先制点は、胸でボールを落としたフレッジにもっと長友選手が体を寄せて、ポストプレーが不正確になるように仕向ければ、ネイマールのシュートはなかったかもしれません。

2点目も、吉田選手がパウリーニョから離れすぎです。パウリーニョがパスを受けた瞬間、あわてて距離をつめましたがシュートブロックが間に合いませんでした。

前回記事で、「日本の選手がフィジカルコンタクトをいとわず、ブラジルに厳しくプレスをかけて相手に自由を与えなければ、勝ち点を取るチャンスは十分にある」と書いたんですが、日本の選手はブラジルとフィジカルコンタクトをするのを避けていた感じでした。

もしかしたら日本で「ゾーンディフェンス」というのが誤解されているのかもしれません。

ゾーンディフェンスは、ただゾーン(スペース)を埋めていれば良いというものではなくて、自分の受け持ちスペースにボールを持った相手選手が侵入してきた場合、あるいは自分の受け持ちスペースにいる相手選手に次の瞬間ボールが渡りそうになったらマンマークに切り替えて、体を寄せて相手の自由を奪わなければなりません。

ですから自分の受け持ちスペースにいる相手選手を離しすぎると、その選手にボールが渡りそうになってもマークにつくのが遅れ、自由にプレーされてしまいます。

ネイマールの先制点へのアシストとなったフレッジの胸でのポストプレーや、パウリーニョのシュートのように。

 また攻守の切り替えの遅さもW杯予選からずっと指摘していることですが、なかなか改善されませんね。

後半の30分すぎから日本の選手の足が止まって守備に戻れなくなってしまいましたが、原因は何でしょうか。

長いシーズンの疲れが出たのかそれともスタミナ面でもブラジルに劣るようになってしまったのか、気がかりです。

 攻撃面でも課題はあいかわらず同じです。

次のプレーへの判断が遅く、ボールを持ちすぎてしまうことが多いです。

サイドからクロスを上げる場合でも、2タッチ3タッチして切り返している間にゴール前ではDFがポジショニングの修正を終えて待ち構えており、これではクロスをあげてもなかなかマークが外れません。

できるだけダイレクトで正確なクロスをあげて、相手DFが自分のゴールに戻りながら応対しなければならない状況をつくりたいところです。

そうすればDFの準備が整わず、クロスボールとゴール前に飛び込む日本の選手両方をいっぺんに見られないことでマークのズレが発生しやすくなり、味方がフリーでシュートするチャンスが生まれるのですが。

味方がリズム良くパス出しできないのは、ボールホルダーをサポートすべき周りの選手の動きにも問題があるからです。

ボールホルダーの周囲7m以内に最低2人は「顔出し」してパスコースを複数用意してやります。

もちろん相手はその動きに応じてプレスをかけますから、こちらもさらに動き直してパスコースが消えてボール保持者が孤立しないようにしなければなりません。そしてパスが一本通りそうなら、次のパスコースを予測してあらかじめ動いておく。(第三の動き)

こうした質の高い動きを90分間やっていかなければ、ブラジル・スペインクラスと互角の戦いはできません。

シュートもGK正面というのが多いですね。

相手GKの動きを見ているうちに、素直に相手GKの胸に向かって打ってしまうのでしょうか。

        ☆        ☆        ☆

 選手個人で特筆すべきは内田選手。ネイマールはもちろんオスカルが日本の右サイドへまわってきたときも良く抑えて善戦していたのではないでしょうか。ブラジルの3点目の基点となったオスカルとの一対一はもうちょっとねばって欲しかったですが...

逆に長友選手は、フレッジを一瞬フリーにして先制点のアシストとなる仕事を許してしまいました。フッキの突破にも苦心させられていましたし、まだ本調子とはいかないようです。

吉田選手もゴール前でパウリーニョへのマークを離しすぎて、フリーでシュートを打たれて2点目を献上。もしかすると本来マッチアップしていたフレッジに気を取られていたのかもしれませんが、あそこはフレッジへのマークは捨ててパウリーニョに行かなければやられます。

長谷部選手はパスミスが多く、ブラジル選手のドリブルにも苦しめられました。ブンデスでボランチのポジションを獲得するためにも課題が残ります。

清武選手は足元の技術はあるのですが、ただパスをさばいているだけで、相手にとってほとんど脅威を与えられていません。

香川選手は、やはり次のプレーへの判断をもっと速くすべきです。香川選手がドリブルしてルックアップしながらクルッと1回転するうちに、ブラジルの選手がみんな戻ってしまいます。  

        ☆        ☆        ☆

 ザッケローニ監督の采配については、試合開始からたった3分で先制を許したので、その後のゲームプランを立てるのがかなり困難だったとは思いますが、本田選手と岡崎選手を横に並べた4-4-2っぽい新システムを試したものの、何が狙いだったのか今一つわかりませんでした。

日本が2点リードされている状況で遠藤選手を下げて細貝選手を投入したのも疑問ですし、後半の半分をすぎると日本の攻撃がまったくの手詰まりになっているのに、3枚目のカードを切るのが大幅に遅れたのも残念でした。

        ☆        ☆        ☆

 ザックジャパンのコンフェデレーションズカップ初戦は、日本代表が進歩したところを見せることができず、ブラジルとの実力差通りの結果となってしまって残念でした。

試合内容も自分たちの努力次第で改善できることがたくさんあるのに、攻守においてやるべきことができておらず、それがそのまま0-3という結果に結びついてしまいました。

工夫や改善点がほとんど見えないまま、昨年と同じように負けてしまったのが本当に残念です。

グループリーグを突破するために、得失点差マイナス3という大きな重荷を背負ってしまいましたが、次のイタリア戦は気持ちを切り替えて勝つしかありません。

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               2013.6.15 
  エスタジオ・ナシオナウ・ジ・ブラジリア・マネ・ガリンシャ

       ブラジル 3 - 0 日本

       ネイマール  3'
       パウリーニョ 48'
       ジョー     90'+


      GK J.セザール         GK 川島

      DF マルセロ          DF 内田
         D.ルイス             吉田
         T.シウバ             今野
         D.アウベス           長友

      MF L.グスタボ         MF 清武
         パウリーニョ          (前田 51)
         オスカル             長谷部
                            遠藤
      FW ネイマール           (細貝 78)
        (ルーカス 74)          香川
         フレッジ        
        (ジョー 81)         FW 岡崎
         フッキ               本田
        (エルナエス 75)        (乾 88)




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■コンフェデをどう戦うべきか?

 いよいよコンフェデレーションズカップの開幕が迫ってきましたが、今回は「日本代表はコンフェデをどう戦うべきか?」というテーマで述べてみたいと思います。

日本のライバルは、開催国ブラジル・ユーロ2012準優勝国イタリア・CONCACAFゴールドカップ優勝国メキシコとなっています。

ブラジル・イタリアは日本より格上、互角に戦えそうなのはメキシコぐらいというのが当研究所の見立てです。

よってブラジルとは何としても引き分けて、イタリアにできれば勝って、メキシコ戦に望みをつなげたいところ。メキシコとの試合は「勝ち・負け・引き分け」すべての可能性があると思いますが、この試合を落としているようでは希望がなくなります。

グループリーグ2位でも良いですから突破して、おそらくもう一つのグループを首位で突破するであろうスペインと試合をやって経験値を積み重ねることができれば、ひとまず成功ではないでしょうか。

 初戦のブラジルとのゲームをどう戦うか、いろんな考え方があるとは思いますが、格下のチームが実力で勝るチームと点をとりあって4-3で勝ったというゲームを見た記憶はほとんどありません。格下が番狂わせを起こしたいなら、格上チームに先制点をやるべきではありません。

よって現実をふまえて勝負に徹するなら「固く守ってカウンター」がオーソドックスな戦略でしょう。

ブラジルが前回と同じように4-2-3-1で来るなら、こちらはバイタルエリアにアンカーを置いた4-1-4-1の守備ブロックをぶつけるのも一つの策です。(下図 クリックで拡大)

ブラジル対策 


アンカーの長谷部選手がブラジルのトップ下や、こちらのセンターバックの前のスペースに入り込んでくる他の選手をマークして、危険なラストパスやミドルシュートを防ぎます。

遠藤・本田の両選手はブラジルのダブルボランチをしっかり押さえて、両サイドハーフの乾・岡崎選手を含めた4-1-4のコンパクトなブロックで厳しくプレスをかけて、ブラジルに90分間自由とスペースを与えません。

ボールを奪ったら、遠藤・本田のどちらかと香川・乾、あるいは遠藤もしくは本田に香川・岡崎のトライアングルで、ブラジルDF陣と4対3や3対3の形をつくってカウンターを仕掛け、先制点を奪ってブラジルを慌てさせたいところです。

理想のイメージは、サンドニでフランスを沈めた香川選手のゴールですね。

 イタリア戦も同じ戦術が使えそうですし、メキシコとは普通に4-2-3-1に戻して勝ちに行っても良いでしょう。こうした戦略がうまくハマって2勝1分か1勝2分でグループリーグを突破し、スペインとやれれば理想的ですが、どうでしょうか。

皆さんが監督ならどういう戦略を立てますか?

 日本にとって、まずブラジル戦が重要になってきますが、選手の心構えとして大事なのは、戦う前から「負けを認めないこと」。

ポーランドでのテストマッチでは、日本の選手たちがブラジル代表をリスペクトしすぎていたように見えました。

ブラジルの選手にちょっと華麗な足技を見せられただけで「もう負けだ」みたいな感じで、中盤をドリブルするブラジルの選手を恐れてズルズルと下がっていき、プレスがかからないままミドルシュートをドカン!で試合が終わってしまいました。

サッカーの試合の勝敗は、足元の技術だけで決まるわけではありません。

実際ブラジル代表は、足技はなくても強いフィジカル能力でガチガチプレスをかけてくるチームを苦手にする傾向にあります。

90年代後半「ブラジル・キラー」ぶりを発揮していたのがエギル・オルセン率いるノルウェー代表で、98フランスW杯のグループリーグ最終戦において2-1でブラジルを破っていますし、97年に行われたテストマッチでもノルウェーはブラジルを破っていたはずです。

ノルウェー代表は、4-4-1-1のブロックによるゾーンディフェンスで激しくプレスをかけて、トップのトーレ・アンドレ・フローや右サイドハーフのホーバル・フローにロングボールを放り込んで、落としたボールを1.5列目のスールシャールやCMのレオナルドセン・レックダルが拾って攻撃するというサッカーでしたが、ブラジルはこういうフィジカルコンタクトを前面に押し出してくるチームを苦手にしていました。

当時ブラジルの監督だったマリオ・ザガロは試合に負けたあと「あんなものはサッカーとは言えない」と怒っていましたが、ブラジルの華麗な「フッチボウ・アルチ」もノルウェーの「ひたすらロングボール放り込み」も同じサッカーの一部なんですね。

日本代表は、平均身長185㎝以上というノルウェー代表のマネはできませんが、良いところは取り入れることができます。

足元の技術でかなわないからといって試合をあきらめる必要はありません。

日本の選手がフィジカルコンタクトをいとわず、ブラジルに厳しくプレスをかけて相手に自由を与えなければ、勝ち点を取るチャンスは十分にあると思います。

ともかく、ブラジル人選手の華麗な足技を見せられただけで「無条件降伏」しないことです。




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■日本代表、勝利で予選を締めくくるも...

 W杯アジア予選のラストゲームであるイラクとの試合が中立地のカタールで行われ、日本が1-0で勝利をおさめました。

対戦相手のイラクは、カタールなど海外でプレーする選手もいるものの、国内リーグでプレーする選手中心のチームです。

日本はアウエーのヨルダン戦を落とし、ホームでオーストラリアと引き分けるなど、最近公式戦で結果を出せていません。

よって日本の格付けをワンランクダウンさせてイラクと戦力比較しましたが、現時点においてホームで日本の勝ち、アウエーで引き分け程度の実力差があると見ていました。

日本が実力で勝るなら中立地ではイラクに確実に勝利が欲しいところでしたが、1-0という結果は順当だったと思います。

ただ試合内容のほうはレギュラーポジションが獲得できていない選手を多く起用したせいもあってか、課題が多く残るものとなりました。

それでは試合をざっと振り返りましょう。

        ☆        ☆        ☆

 この試合に勝たなければブラジルへの道が閉ざされるイラクが、気合のこもった試合の入り方をしてきて、日本が立ち上がり受け身になったところもありましたが、徐々に実力通りの展開となります。

9分、細貝が不用意にボールを失ってイラクのショートカウンター、ダウッドのドリブルをリトリートする伊野波が一度は見失いますが、体のバランスを崩しながらもなんとか止めました。

12分、左サイドから長友がクロス、これを受けたハーフナーが振り向きざまシュートしますが、イラクDFが防ぎます。

15分、ゴール前で相手のクリアを拾った今野が後ろへ戻し、遠藤がミドルを放ちましたがワクをとらえません。

26分、清武のパスを受けた香川がペナルティエリアに侵入して、清武へリターン、彼のシュートは相手に当たってコースが変わりますが、イラクGKが必死のセーブ。

31分、左サイドから清武がクロス、ゴール前のハーフナーが相手に競り勝ってヘッドしますが、惜しくもゴール右へ。

 後半に入ると、暑さのせいか日本の足が止まり始め、思うような展開をつくれません。

8分、左サイドでパスを受けたアルタミミが強烈なミドル、これは川島が横っ飛びでおさえます。

14分、右サイドでクロスを受けた香川が落とし、遠藤がシュートしますが大きくふかします。

19分、日本のゴール前でイラクのFK。ユニス・マフムード・ハラフのキックは日本の壁に跳ね返されました。

35分、ゴール前でのラフプレーからイラクの選手が退場処分を受けたこともあり、イラクの足が止まりだすとゲームの流れは再び日本へ。

42分、中村からパスを受けた長友がカットインしてミドルシュート、これはゴールバーの上。

44分、日本のカウンター攻撃。岡崎がドリブルからDFラインのウラへ抜けた遠藤へスルーパス、遠藤はGKと一対一になるも中央への折り返しを選び、最後は岡崎がつめて日本がようやく先制点を決めます。

4分間のロスタイムをうまく消費した日本が久しぶりの勝利をおさめました。

        ☆        ☆        ☆

 つづいては試合内容の分析です。まずは攻撃から。

 攻撃面では、日没後も30℃を軽く超えるような暑さの影響もあったとは思いますが、やはり一つ一つのプレー判断が遅いですね。

以前にも言いましたが、5mでも自分より相手ゴールに近いところでフリーな味方がいたら、とりあえず前方へのパスを試してみるという“オートマティズム”をもっと取り入れたらどうでしょうか。

それでパスを受けた味方が前を向ければ、そこを新たな攻めの基点として周囲がサポートしていけば良いのです。

逆にパスを受けた選手にプレスがかかって前を向けず、バックパスせざるをえなかった場合でも、パスを受けた味方に敵選手が食いつけば、その選手が動いた分スペースができているはずですから、そのスペースに別の味方がポジショニングして、バックパスを受けた選手がそこへパスをすれば、そこが新たな攻めの基点となります。

ボールを持ってルックアップして、ドリブルしながらどこへ出すかグズグズ迷っていると、その時間だけ相手が守備隊形を整えてしまい、いつも相手の守備ブロックの前から攻撃しなければならなくなります。

それでは相手を崩せません。

ドルトムント時代がそうでしたが、バイタルエリアで香川選手がフリーでいるときに、ボランチなどからタイミングよく彼の足元にパスが入ると、それがスイッチになってうまく攻撃につながっていったのですが、代表だとそういうシーンがほとんど見られませんね。

チーム全体としてシュートの意識が低いのも相変わらずではないでしょうか。

 守備面ではヘッドの競り合いの時、あからさまに相手の肩に手をかけてジャンプする選手が目立ちます。Jリーグでは許されても国際審判の多くはファールをとりますし、それがペナの中だとPK献上となります。

できるだけ手を使わずに空中戦に勝つスキルを身につけて欲しいですし、腕やヒジを使って相手を押さえるならレフェリーに絶対に見つからないようにやって欲しいです。
 
ボランチやサイドバックがパスミスやドリブルで相手を抜きにかかって不用意にボールを失い、イラクのカウンターを浴びるというシーンも目立ちました。

自陣深くで相手選手に囲まれたら無理してつなごうとせず、大きくクリアすべきです。

バックやボランチのように、自分より後ろでカバーしてくれる味方があまりいないポジションの選手や、自分のゴールに近いピッチの1/3でボールを扱う時は、リスクマネジメントをしっかりして安全第一にお願いします。

バックが自陣深くで相手FWを抜けたとしても、ただちに得点には結びつきませんが、もしドリブル突破に失敗して相手FWにボールを奪われた場合、ただちに失点に結びつく可能性があります。

同じドリブル突破の失敗でも、相手ゴール前でやるのとは全く意味が違います。そうした意味において、ハイリスク・ローリターンのプレーを選択すべきではありません。

        ☆        ☆        ☆

 選手個々で特筆すべきは、決勝点をあげた岡崎選手。常にシュート意識が高いのは評価できますし、攻守に体を張った活躍が光ります。ただしFWとしての能力にはまだまだ「のびしろ」がありますね。

ストライカーはパスを受けた時、トラップしたボールを自分の思い通りのところへ置けるかどうかで、シュートが入るかどうか50%以上決まります。トラップしたボールが体から離れすぎれば、バイタルエリアではあっという間に相手DFにつつかれますし、ボールが足元に入りすぎれば正確なシュートは望めません。

味方からどんな強いパスを受けたとしても正確にトラップする能力を練習で身につけること、そしてキックはもちろんのこと、ヘッド(前頭部だけでなく、側頭部を使ったヘッドやバックヘッドも含めて)を使った正確なシュート力を身につけること、これが当面クリアすべき課題でしょう。

遠藤選手はミドルシュートへの意識が高かったことが評価できます。シュートがゴールマウスの中に入ればもっと素晴らしかったです。

決勝アシストも素晴らしかったのですが、本気でW杯で優勝を狙うなら、あの場面でシュートを打つ意志の強さとそれをゴールに入れる能力の高さを、セントラル・ミッドフィルダーには求めたいですね。

清武選手も惜しいシュートがありましたし、クロスからチャンスメークしていましたが、後半16分に左サイドを突破してGKと一対一になりかけたシーンでは、シュートを打てなかったでしょうか。

 逆に、細貝選手は不用意にボールを失って何度もピンチを招いていました。今のところボール奪取力も特別高いというわけではありませんし、ヘルタベルリンで実力をつけて代表へ再チャレンジしてもらってはいかがでしょうか。

伊野波選手は一生懸命さは痛いほど伝わってくるものの、CBとしては不安定な出来。イラクはワントップにロングボールを当てて、バックヘッドで日本のDFラインのウラへ落としたボールを二列目が飛び出して拾い、ゴールを狙うというのが戦術でしたが、伊野波選手はユニス・マフムード・ハラフとの空中戦で競り負けるシーンが多かったです。

途中からハラフにフリーでヘッドさせてそのこぼれを拾うという戦術に方針転換したようですが、伊野波選手はバックラインの押し上げが足らず、ヘッドするハラフと後ろで待ち構える伊野波選手との距離が近すぎるため、ハラフがフリーでバックヘッドしたボールが伊野波選手の後方に落ちて、飛び出してきたイラクの二列目と川島選手が一対一になりかけるというケースもありました。

イラクの足が止まり始めた後半はやや安定したものの、W杯に出場して伊野波選手がイブラヒモビッチやファンペルシー、ファルカオなんかを完封するというイメージが持ちにくいです。

中村選手は、停滞した日本の攻撃にカツをいれる目的で投入されたはずですが、ほとんどの時間消えていました。

ハーフナー選手は惜しいシュートが2本ありましたが、ポストプレーは改善の余地が大きいですね。恵まれた体格の上手い使い方を考えて、ボールを確実におさめて攻めの基点をつくって欲しいです。オランダ出身の偉大な先輩、ルート・ファンニステルローイのビデオを見て研究してみてはどうでしょうか。個人的には彼のポストプレーが世界最強だったと思います。

香川選手は、ドリブルでボールを持ちすぎです。もっと次のプレーの判断を速くすると、より攻撃がスムーズになると思います。

        ☆        ☆        ☆

 日本のW杯アジア最終予選は勝利で締めくくることができました。

レギュラーポジションがとれていない多くの選手にチャンスが与えられましたが試合内容は今一つで、レギュラー陣を脅かすような選手は残念ながら見当たりませんでした。

個人的には、身長が比較的恵まれているC大阪の扇原選手に「ボール狩り」のスキルを教え込んだら、長谷部選手を脅かすような良い守備的MFになりそうな予感がありますし、柿谷選手もトップ下でどれくらいやれるか見てみたいですね。

もう若くはないですが、鳥栖の豊田選手もセンターフォワードとして体をはれそうですし、ポスト前田候補として試す価値があるのではないでしょうか。

Jリーグに良いセンターバックがいないなら酒井宏樹選手をコンバートして、センターバックとして安定したプレーができるように仕込めば、ユーティリティープレーヤーとして重宝しそうです。

 さて日本代表はアジアカップ2011に優勝した「ご褒美」として、いよいよブラジルに乗り込んでコンフェデレーションズカップに臨みます。

世界の強豪との距離を測るという目的のほかに、W杯の貴重なシミュレーションの場でもあります。

スタジアムの芝やその下の土質はどうか、6月のブラジル各都市の気温や湿度、高地では酸素濃度が体力にどう影響するか、いろいろなデータを集めてきてほしいと思います。

初戦はブラジルが相手ですが、昨年のテストマッチは小細工せず正面からブチ当たって完敗したわけですが、今回もそうするのか、それともシステムや選手を入れ替えて別の戦い方をするか。

ザッケローニ監督はどうするのでしょうか。今から楽しみです。

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     2013.6.11 グランド・ハマド・スタジアム(ドーハ)

         イラク 0 - 1 日本
 
                      岡崎 89'


    GK アルバイラウィ     GK 川島

    DF アルタミミ        DF 酒井宏
       I.ハラフ            今野
       エルハイマ          伊野波
       アルラミ           (高橋 90+)
                        長友
    MF アルジルジャウィ
      (カラール 85)     MF 細貝
       アルダイーア        遠藤
      (ファディル 79)       岡崎
       アルムハマダウィ     香川
       ダウッド           清武
       アルアザウィ       (中村 67)

    FW Y.ハラフ        FW ハーフナー
                      (前田 70)




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■コンフェデに臨む日本代表メンバー発表

 W杯アジア予選の最後の試合となる対イラク戦と、15日に開幕する、各大陸チャンピオンの世界一決定戦、コンフェデレーションズカップ2013ブラジル大会に臨む日本代表メンバーが発表されました。


GK 川島 永嗣 (リエージュ:ベルギー)
   西川 周作 (広島)
   権田 修一 (F東京)

DF 今野 泰幸 (G大阪)
   吉田 麻也 (サザンプトン:イングランド)
   長友 佑都 (インテルミラノ:イタリア)
   内田 篤人 (シャルケ:ドイツ)
   酒井 高徳 (シュツットガルト:ドイツ)
   酒井 宏樹 (ハノーファー:ドイツ)
   栗原 勇蔵 (横浜M)
   伊野波 雅彦(磐田)

MF 本田 圭佑 (CSKAモスクワ:ロシア)
   遠藤 保仁 (G大阪)
   長谷部 誠 (ヴォルフスブルク:ドイツ)
   細貝  萌 (レヴァークーゼン:ドイツ)
   中村 憲剛 (川崎)
   高橋 秀人 (F東京)

FW 香川 真司 (マンチェスターU:イングランド)
   岡崎 慎司 (シュツットガルト:ドイツ)
   前田 遼一 (磐田)
   清武 弘嗣 (ニュルンベルク:ドイツ)
   乾  貴士 (フランクフルト:ドイツ)
   ハーフナー・マイク(フィテッセ:オランダ)


 メンバーを見ますと、磐田の駒野・柏の工藤・FC東京の東の各選手が外れました。ザックジャパンではもうおなじみとなった顔ぶれですね。

ザッケローニ監督はイタリア人らしいと言いますか、選手起用が非常に保守的であまり冒険しない方だなと思います。

それは、ある程度固定されたメンバーで合宿や試合をすることにより、チーム組織の熟成がはかれるという長所がある反面、

いつもゲームで起用される選手とそうでない選手との間に、実戦経験で大きな差がついてしまい、控え組の層が薄くなって、レギュラー組の選手が欠けるとチームの戦力がダウンしてしまうという問題をかかえています。

日本代表の場合、特にセンターバックとボランチ、ゴールキーパーのポジションの控え層が手薄で、インターナショナルマッチで通用する選手がぜんぜん足りないように個人的には思われます。

代表に呼ばれていてもレギュラー陣を脅かす気配さえない選手にベンチの指定席を与えるよりは、クラブで実績をあげている別の選手にどんどんチャンスを与えるべきではないでしょうか。

もしすぐさま実戦で使えそうな選手が見当たらないのであれば、「のびしろ」が大きそうな将来性豊かな若手選手を呼んで、ザッケローニ監督自らチームの欠けたピースを埋めるためにその選手に経験を積ませて育てていった方が良いと思います。

2010年W杯が終わったあと、代表の大きな課題はポスト中澤・闘莉王でした。

当研究所は、その候補として当時VVVでプレーしていた吉田選手をプッシュしたわけですが、その時点で彼に代表のセンターバックとして求められる実力や経験が十分だったわけではありません。

彼の将来性の大きさを買ったわけです。

実際アジアカップ2011では、カタールのFWセバスチャン・キンタナに“チンチン”にやられて、イエローを二枚もらって退場するという苦い経験をしています。

しかしそういう失敗の経験があったからこそ、サザンプトンでセンターバックのポジションを獲得するまでに成長できたのです。

そしてプレミアでデンバ・バやスアレス、アグエロらとマッチアップした経験が、オーストラリアとの大一番で発揮されました。空中戦でもフィジカルコンタクトの戦いでも、吉田選手はかなり安定していました。

選手をただベンチに座らせておくだけでは成長しません。
実戦で使ってやって失敗も成功も含めた経験をさせてやらないと。

W杯ブラジル大会まであと1年、ザッケローニ監督がこれはと思う若手選手を代表に呼んで、みっちり育てるべきです。

前述のとおり、レギュラー陣がケガや警告累積で出られないとガクッと戦力が落ちてしまう、センターバックやボランチのポジションのバックアップ育成は急務。

1年後ブラジルに行ってから「控え層が薄いじゃないか、どうしてなんだ!」と大慌てしたくはありません




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■日本代表、ロスタイムの同点弾でブラジル行き決定!

                   

日本代表、ブラジル・ワールドカップ出場決定!!

 2014年W杯アジア最終予選の対オーストラリア戦が埼玉で行われ、日本代表は後半ロスタイムの同点ゴールで辛くもブラジル行きを決めました。

対戦相手のオーストラリアは、イングランド・ドイツ・アメリカ・カタールでプレーする選手プラス国内組という、国際色豊かなチーム。

日本との実力差はホームでもアウェーでも日本が勝てる程度と見ていました。

それを踏まえると、ホームで引き分けという結果は残念でしたし、試合内容もヨルダン戦・ブルガリア戦と比べると少し改善されましたが、全体としてあまり良い出来ではなかったと思います。

それでも何とかW杯出場を決めたわけですから、今は良しとするべきでしょうか。

        ☆        ☆        ☆

それでは日本がW杯出場を決めた激戦を振り返ってみます。

前半はほぼ互角、やや日本が優勢かという展開。

6分、ゴール前左からのFKを遠藤が蹴りましたがゴール左へ。

16分、バイタルエリアに侵入した遠藤がワンフェイントで相手をすべらせると、そのままドリブルしてミドルシュート!惜しくもクロスバーの上。

18分、本田のパスを受けた岡崎がペナルティエリア内でつぶされたこぼれ球を香川が拾ってシュート、GKシュウォーツァーが倒れながら片手一本で防ぎます。

19分、クルーズからパスを受けたブレシアーノのミドルシュート、これは内田が体を張って防ぎました。

34分、オーストラリアのカウンター攻撃。ホルマンからのスルーパスを受けたクルーズがシュートするもGK川島がビッグセーブ。こぼれ球をケーヒルがシュートしますが大きくふかします。

44分、ゴール前で香川・本田らが細かくつなぎ最後は岡崎がミドルを狙いましたが、GK正面。

 コンパクトな守備陣形をつくれず、ボールを失った後の戻りも遅いために、前半はオーストラリアのカウンターに冷や汗をかかされた日本。

ハーフタイムで監督から注意があったのか後半はやや改善され、守備の安定とともに攻撃も良くなってきます。

9分、左サイドを突破した香川がクロス、ファーポストで待ち構えていた本田のシュートは残念ながら枠の外。

11分、ゴール前の本田のキープから香川がミドル、これもGK正面。

13分、遠藤のラストパスを受けた香川が左サイドの角度のないところからループシュート、ボールはバーを直撃してゴールラインを割りました。

18分、本田の無回転FKは落ち切らず、バーの上を通過。

30分、ウィルクシャーに右サイドを突破されてマイナスのクロス、ケーヒルが狙いますが、吉田が体を張ってシュートをストップ!

34分、日本は先に選手交代をしますがこれがチームに微妙な変化を与え、良い流れを失ってしまいます。

37分、左サイドを突破されオアーがあげたクロスが川島の頭上を越えてそのままゴールイン。痛い時間帯で日本はよもやの失点をしてしまいます。

後半ロスタイム、右サイドから本田のクロスがペナの中にいたマッケイの手に当たってPK獲得。本田が蹴ったボールはゴールのど真ん中に決まって値千金の同点弾!!

試合は直後に終了。

日本は5大会連続5度目のW杯出場を、世界最速のオマケつきで決めました。

        ☆        ☆        ☆

 つづいて試合内容を分析しましょう。

まず全体的に、日本の選手の動きが重かったですね。

その原因が、1年におよぶ欧州各国リーグの厳しいシーズンが終わったばかりで選手に疲労が蓄積しているせいなのか、それとも冷涼な欧州の気候に慣れてしまって、日本の蒸し暑さに適応できなかったせいなのかはわかりませんが、コンディション調整があまりうまくいっていないように見えました。

ケガから復帰した本田・長友両選手も、試合勘を含めてまだまだ本調子には至っていません。

 次に攻撃面ですが、ヨルダン戦やブルガリア戦よりも少し改善されました。

シュートに対する意識も前より強くなりましたし、ミドルシュートも少し増えました。

パスを受けたらそのままバックパスするのではなくて、トラップしつつ前方へターンする回数も増えてきました。

ただ中盤における攻撃の組み立てで、次のプレーをどうするかボールを持っている選手の判断が遅すぎます。

子供向け特撮ヒーローもので、○×ライダーが必殺技の名前をとなえながらポーズを決めている間、間抜けな悪役が何もせずそれをボケーっと見ていて、そのままやられてしまうことが良くありますが、今の日本代表はその特撮ヒーローのようです。

まるでこちらがパスを出すまで、敵がボールホルダーにプレスをかけてボールを奪ったり、フリーになっている日本の選手をマークするためにポジショニングを修正するのを待ってくれるような、真剣勝負の世界では絶対にありえないことを前提とした攻撃になってしまっています。

だからパスを受けて、前方をルックアップして、どこへパスするか考えているうちに、後ろから来た相手選手にボールを奪われたり、

グズグズ迷っているうちにフリーの味方にマークがついてしまい、常に相手の守備体勢が整ってから攻撃するような形になっていて、なかなかゴールできない原因の一つになっています。

 せっかくの日本のカウンター攻撃も、判断が遅いためにゴールにつながっていません。

相手DFが自分のペナルティエリアに入って、もう後退できなくなってからようやくラストパスを出すので、味方がシュートを打つスペースがなくなって、あまり良いチャンスになっていません。

できれば相手DFラインが下がりきる前にラストパスを出して、ウラに抜け出した味方と相手GKとの一対一の局面を作り出したいところです。

カウンターがうまく決まらないもう一つの理由は、サポートしている味方がドリブルするボールホルダーからどんどん離れていってしまうことにあります。

例えば岡崎選手の例をあげると、相手DFのウラでパスを受けたいのはわかるんですが、ひたすら外へ外へと走っていって、ウラへ抜け出してパスを受けた後のことを考えていないように見えます。

アウトサイドへいけばいくほど、パスを受けた後ゴールの角度がなくなってシュートが難しくなります。

ウラへ抜けるダイアゴナル・ランをするときはドリブルする味方とあまり離れすぎず、ウラへ抜け出すときはなるべくゴール中央へ向かって走るべきです。

そうすればパスを受けた後ゴールしやすくなりますし、ドリブルする味方と適切な距離を保っていれば、ボールホルダーが本田選手だとすると、岡崎選手がパスを受けてもう一度本田選手に戻してワンツーの形でDFラインを突破、本田選手と相手GKとの一対一をつくるということもできます。

 今度は守備をチェックしましょう。

前半はコンパクトな守備陣形がつくれず、オーストラリアのカウンター攻撃で危ない場面を何度かつくられてしまいました。

ゲームの後半は監督からの指示があったのかDFラインを高く押し上げて、コンパクトな陣形もまずまずつくれていました。

これによってオーストラリアのロングボール攻撃への対処もうまくいったのではないでしょうか。

まず日本のDFラインを高く押し上げておいて、相手がロングボールをFWへ蹴った瞬間、あえて相手FWをフリーにヘッドさせて、こちらのセンターバックは数m後退します。

そして相手FWがヘッドで落としたボールを拾うことに集中するというやり方をとっていたように見えましたが、これはかつてボローニャでプレーした身長193㎝のスウェーデン人FWケネット・アンデルソン対策として、セリエA各チームがとっていた戦術ではないでしょうか。

ただ、チーム全体として攻守の切り替えが遅く、相手ボールになっても守備への戻りが遅くて、安定感に欠けるものでした。

こちらもまるで、日本の守備が整うまで相手が攻撃するのを待ってくれることを期待するような、のんきなプレーぶりでした。

このままの守備では、ブラジル・イタリア・メキシコのコンフェデ三連戦で、8~9点はとられることを覚悟しなければなりません。

        ☆        ☆        ☆

選手個人で特筆すべきは、プレッシャーのかかる中、見事PKを決めた本田選手。
本当にW杯で優勝を目指すなら、彼のような強いメンタル・積極性・ゴールへの執念を持った選手があと10人は必要です。ただ、まだ試合勘がもどっていないのでしょうが、次のプレーへの判断が遅かったのは致し方ないのかもしれません。

遠藤選手は、相手をフェイントでかわしながらバイタルからのミドルシュートが良かったですね。遠藤選手にあのようなシュートが1試合3本ぐらいあってその1本でも決まれば、日本の攻撃のバリエーションがぐっと厚くなります。

吉田選手は、フィジカルの強い相手に競り負けることなく安定した守備ぶり。ファールで相手をとめざるを得ないシーンもほとんどなかったんじゃないですか。体を張って相手の決定的なシュートも一本止めています。プレミアでレギュラー・センターバックをはっている経験が大きいですね。

 逆に、川島選手はビッグセーブもあったんですが、やや不運な形から失点。
オアーのゴールはミスキックだったと思いますし、GKとしても一番難しいボールでしたが、やはりゴールマウスへ向かうボールはGKの責任とせざるを得ません。落下点の判断はどうだったか、後退するときのステップの仕方に改善点はないか、GKとしての能力向上に期待したいです。

        ☆        ☆        ☆

 監督の采配面では、オーストラリアが先制点をあげる直前、79分の選手交代は明らかな采配ミスだと思います。

それまで日本は良い流れでプレーしていましたし、特別いじらなければならないところがあったとは思えません。

ザッケローニ監督としては、栗原選手を入れて「より確実に」引き分けを狙いに行ったのかもしれません。

しかし、サッカーの試合の流れは両チームの微妙なバランスの上に成り立っているものであり、名監督といえどもそれをいじって、流れがどう変わるか完全に予測することも困難だと思います。

押されているとかゲームの流れが悪くなったわけでもないのに選手を替えると、失敗するケースが多いのではないでしょうか。

ザッケローニ監督は同じような采配ミスをアジアカップ2011の準決勝・対韓国戦でもやっています。

日本が1点リードして迎えた延長後半11分、FW前田選手の代わりにDF伊野波選手を投入して5バックにしましたが、攻撃が手薄になって防戦一方となり、ゴリゴリのロングボール攻撃で同点に追いつかれたことがありました。

イタリアのチームですと、「残り10分を失点せず守りきれ」と指示してDFを交代投入しても守りきれるんでしょうけれど、トルシエいわく「守備の文化がない」日本の場合、なかなかそれができないんですよね。

サッカーは守備側に有利なスポーツで、極言すれば「攻撃側にとって今一番嫌なこと」を常にやっておけば、そうそう点を取られることはないはずですが、「まわりに迷惑になることは絶対にしちゃいけません」といって育てられる日本人にとって、相手がやられて今一番嫌なことは何かを考えて実行することに、なかなか慣れないのかもしれません。

ともかく、ザッケローニ監督も3度同じ采配ミスを繰り返さないよう、この試合から教訓をくみとって欲しいと思います。

        ☆        ☆        ☆

 日本のW杯出場が決まって気持ち良い記事が読みたかった方には申し訳ないんですが、日本代表はW杯参加が目的という段階から次のステップへ進むべき時だと思います。

ほとんど負けゲームをドローにした粘り強さは評価できますが、この試合の結果は残念でしたし、試合内容も改善は見られたものの、あまり良くはありませんでした。

2010年W杯でベスト16に進出した後、アルゼンチンにテストマッチで勝ったころまでは、代表の各選手がもっとひたむきに走り回って、攻守にわたってもっと組織的でした。

昨年6月のW杯予選・対ヨルダン戦(6-0)は結果・内容ともザックジャパンのベストゲームだと私は考えていますが、今の代表はあのころのひたむきさを失っているように見えます。

日本人選手はまだまだ個の力が世界トップレベルと比べて弱いので、攻守にわたって相手に走り勝たなければ、W杯で決勝トーナメント進出は見えてこないと思いますが、チーム全体に「ビッグクラブの選手がいるから大丈夫でしょ」みたいなうぬぼれを感じます。

欧州でやっている選手の多くもあまり成長が見られません。

香川選手の活躍で欧州で日本人の評価が高くなっていますが、それぞれのクラブで実力を示せなければ、日本人への評価もバブルと消えかねません。そのあたりどの程度まで危機感をもってやっているのでしょうか。

世界中のプロサッカー選手でも限られた人しかプレーできない、ブラジルW杯という一生に一度の最高の舞台で素晴らしい経験ができるかどうか、それはすべて自分たちの努力次第なのに、地に足をつけず油断したまま大会に突入して惨敗を喫するなら、とてももったいないことだと思います。

 次のイラク戦は厳しい暑さが予想されますが、良い結果と良い内容の試合でW杯予選を締めて、コンフェデへとつなげていって欲しいです。

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            2013.6.4 埼玉スタジアム2002

      日本  1 - 1  オーストラリア

        本田(PK)90'+      オアー 82'



      GK 川島        GK シュウォーツァー

      DF 長友        DF ウィルクシャー
         今野           ニール
         吉田           オグネノフスキ
         内田           マッケイ
     (ハーフナー 85)
                    MF ブレシアーノ
      MF 遠藤           ミリガン
         長谷部         クルーズ
         香川          (トンプソン 90+)
         本田           ホルマン
         岡崎          (ビドシッチ 72)
        (清武 87)        オアー

      FW 前田          FW ケーヒル
        (栗原 79)
 



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