■2011年06月

■U-22日本代表、精神面に課題

 ロンドン五輪をめざすU-22日本代表のアジア二次予選セカンドレグがクウェートで行われ、試合は日本が1-2で敗れたものの第一戦とのアグリゲートスコアは4-3となり、日本がアジア最終予選へと駒を進めました。

クウェート代表の個の能力や組織力のレベルを考慮すれば、たとえアウェーでも負けるような相手ではなかったと思います。

1-2という結果は残念でしたし、試合内容の方もあまり良くありません。

ただ気温39℃とサッカーには向かない気候の中、最後の一線でふんばって最終予選行きを決めることができたのは収穫でした。

 どうしてこの試合を落としてしまったのか、その最大の要因はチームが精神的に守りに入ってしまったからだと思います。

「サッカーとは弱気で消極的なチーム(選手)が罰を受けるスポーツである」と何度も言ってきましたし、「消極的な安全策ほど危険な策はない」というのもサッカーにおける真理でしょう。

この試合、監督さんの戦術的な指示だったのか選手個々の判断だったのかはわかりませんが、マイボールになってもパスをカットされるのを恐れていたのか前線へ大きく蹴るだけで、日本は単調なロングボール攻撃一辺倒になってしまいました。

なんだかドイツW杯のオーストラリア戦を見ているようでしたね。

一度だけそれが得点に結びついたまでは良かったのですが、その後はクウェートも守備を修正してきて、永井選手がいてもロングボール攻撃はまったく機能しなくなりました。

そこから相手に逆転ゴールを許すまで、日本がつくることのできた質の高いシュートチャンスは皆無でしたし、相手にイージーにボールをプレゼントしてしまうばかりなので、日本はゲームの流れを自ら手放してしまいクウェートの攻撃を必要以上に勢いづかせて2失点。

相手のホームで暑いのはわかりますし、試合の序盤ホームの相手に押しこまれたのはやむを得ません。

しかし前半10分過ぎには相手の攻勢が弱まったので、そこでボールを落ち着かせて豊田でのゲームのように2列目から前で丁寧にパスを組み立てて質の高いシュートチャンスを多くつくり、こちらが良い流れをつかむべきでした。

どうして豊田で上手くいっていた自分たちのやり方を捨てて、まったくよそ行きの消極的なサッカーをやってしまったのでしょうか。

確かにディフェンディングサードでは「安全第一」だと言いましたが、アタッキングサードでも「セーフティー」にやってしまうと、それが全然セーフティーなゲーム運びではなくなります。

相手にとって日本の攻撃はまったく怖くなくなり、それがめぐりめぐって日本の守備を苦しめることになります。

 豊田スタジアムの試合とは打って変わって、球際の競り合いに及び腰でフィジカル勝負で押されぎみになり、2人の選手の中間に来た味方からのパスを2人ともお見合いしたり、相手が放りこんだロングボールをDFがわざとワンバウンドさせてから「大事に」クリアしようとしたりと、この試合日本の選手たちの消極的なプレーぶりが随所に目立ちました。

そうなってはいけないと分かっていながら防げなかったのかもしれませんが、チームが精神的に守りに入った結果、自分たちのストロングポイントが生かせない「よそ行きのサッカー」をやってしまい、それが敗戦という結果につながってしまったように思います。

 「自分に対する自信の無さ」というのは今に始まったことではないですが、日本人選手が克服しなければならない課題でしょう。

試合前日のコメントでも、かつて自分たちがユース年代で負けた韓国代表のことを強く意識して発言していた選手がいましたが、公平に見て近年のユース年代では日本選手の方が技術はありますし、組織力も上回っていると思います。

でも日本の選手(指導者も)は自信が足りない。

ユース年代での日韓戦でありがちな展開は、例えば日本が良い形から先制して、韓国が日本のゴール前へロングボールを放りこんできて反撃。

日本のDFが「これまで何度もやられてきた韓国が相手だから『大事に』クリアしなきゃ」と考えて、ダイレクトにクリアできたのにわざとワンバウンドさせて「安全確実に」クリアしようとしたところ、そのボールを後ろから来た韓国のFWにかっさらわれて同点ゴールを献上、そこからチーム全体が動揺してあれよという間に逆転負けみたいなパターンじゃないでしょうか。

「これまで何度もやられてきたから」という相手への過剰な意識が「消極的な安全策」のプレーを選択させ、「いつかやられるんじゃないか」という心配を自分たちの手(この場合足かな)で現実のものとしてしまう。

日韓戦があった今年1月のアジアカップでも、ある日本人解説者が試合後に「これからも日本と韓国は良きライバルとして競り合っていくでしょうね」と語っていましたし、ネットでもそういう書きこみを見かけましたが、これは「生まれながらにしての敗北者」の発想だと思います。

相手が韓国に限ったことではありませんが、4-0とか5-0とか私はいつも日本代表の圧倒的な勝利を願って観戦していますし、韓国側も日本が相手となれば同様でしょう。

しかし「競り合って」ということは、この日本人解説者は「日本が韓国相手に五分で勝ったり負けたりしても良い」と自分から望んでしまっているわけで、「相手と勝ったり負けたりでいいや」と考えている人たちと、「相手に絶対に勝ちたい」と望んでいる人たちが戦ったら、どっちが勝率で上回るかは火を見るより明らかです。

だから敗者の発想だと言ったのです。

こんな負け犬根性は、この日本からすぐさま一掃しなければなりません。

これだけ技術があって「アジアのFCバルセロナ」と言われるぐらい組織力も向上しているのに、自分たちに対する自信が欠けているというのは日本サッカー界全体の課題です。(「自信」と「油断」は違いますけど)

日本のディンフェンダーがダイレクトのクリアに自信が無いのであれば、絶対的な自信がつくまで練習あるのみです。

 クウェートで行われたアジア二次予選のセカンドレグ、日本代表は試合中のメンタルの持ちかたでミスをおかしてゲームを落としてしまいましたが、ホームでがんばった1点のおかげで、まだまだロンドンへ向けての冒険を続けることができます。

日本の若い選手たちにとっても貴重な経験となったことでしょうし、この敗戦を世界で通用するフットボーラーになるために生かせば良いことです。




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■U-22日本代表、勝利でスタート

 ロンドン五輪を目指すU-22日本代表のアジア予選がスタートしました。

当ブログはA代表専門ですので本来なら五輪代表はフォローしないのですが、観戦する時間ができましたのでダイジェスト版をお届けします。

日本は2次予選からの登場で相手はクウェートでした。H&A2回戦で勝った方が最終予選への切符を手にします。

初戦の結果はホームで日本が3-1の勝利。

きちっと勝利という結果を出したのは良かったですが、アウェーゴールを許してしまった点は残念でした。

 試合内容で、まず良かったところは選手個々のフィジカル勝負で優勢に立てたところです。

これまで日本が中東諸国に苦しめられてきた最大の原因は、フィジカルコンタクトで劣勢に立たされていたからでした。

中東諸国の戦術は、優勢なフィジカル能力を生かして自陣に引いてガッチリ守り、日本が使えるスペースを少なくしておいて、手薄になった日本の守備をカウンターで突くというもの。

そのため技術の高さという日本人選手のストロングポイントがかなり打ち消されてしまっていましたが、日本人選手のフィジカル能力が上がったのか相手の能力が下がったのかはわかりませんが、まず球際の争いで優勢に立てたことでゲームを有利に進めることができました。

チーム組織の面でもパスが良く回っていましたし、サイドからクロスをあげてヘッドで決めるという、引いて守備を固めたチームを崩す定石である「飛び道具」を使った攻撃がうまく機能したのも良かったですね。

 課題としては、前半30分あたりから徐々にチーム陣形が間延びし始め、特にバックラインとボランチが離れて失点しやすい形になっていたこと。

3点目を取ってから気が緩んだのか、相手のボールホルダーへのプレッシャーを弱めてしまったこと。

このようにチーム全体で失点しやすい素地をつくってから出てしまった、意味もなく高リスクを冒した個人プレーからアウェーゴールを献上してしまいました。

以前指摘したように、このチームはDFラインとボランチの間で不用意にボールを失い、カウンター攻撃を受けてしまうという悪いクセがあります。

失点のきっかけとなった、自陣深くで敵を背負った選手がボールと一緒に前方へターンするプレーが個人戦術上のタブーであるということは、ユース(U-20)年代を卒業するまでに覚えておかねばならない常識だと思います。

そろそろ「若さゆえの経験の無さ」では許してもらえなくなってくる年代ですので注意が必要です。

 監督の采配面では、3-0となった直後の選手交代は評価の分かれるところではないでしょうか。

私がもし監督なら、ゲームの流れがひどく悪くて失点するのは時間の問題だという状況ならまだしも、うまく行っているチームをいじるのは好みません。

自分たちに良い流れをもたらしている両チームのバランスが、監督が思いもよらない複雑な要因で成り立っていることもあるからで、特に問題が無いなら、選手交代をしてあえてその微妙なバランスを崩すようなリスクを冒す必要はないと考えるからです。

山崎選手もそれほどひどい出来には見えませんでしたし、控え選手に経験を積ませるにしてもクウェートに残された時間が多すぎたように思います。

もしあの状況でどうしても代えたいなら、DFラインとボランチが間延びしていた状況を修正するための選手交代ぐらいですが、山崎選手をピッチから出したことで結果的にゲームの流れが変わり、失点に結びついてしまいました。

 ホームでの第1戦としては3-1で勝利という結果はまずまず良かったですし、試合内容も修正すべき点こそあるものの、良かったと思います。

ただ、H&A180分で戦う2次予選はまだ「前半」が終わったばかり。

クウェートでの第2戦も、良い結果・良い内容の試合を期待します。





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■フットボールとは?

 今シーズンのチャンピオンズリーグ決勝はFCバルセロナの圧勝に終わりましたが、みなさんはどうご覧になられたでしょうか。

思いのほか一方的な展開となりましたね。バルサ有利にしても、もっとマンチェスターUが抵抗するかと思っていたのですが。

バルサのパスサッカーは、組織力の高さと個の能力の高さが理想的な形で調和した「美しくて、しかも強いサッカー」であると言えるでしょう。

これまで「美しいスペクタクルなサッカー」と「勝負に勝つサッカー」は両立しないと言われることもしばしばでしたが、人があきらめてしまうような困難なことにあえて挑戦し続け、ついにそれを成し遂げたFCバルセロナ関係者の皆さんの熱い情熱とたゆまぬ努力には、深い敬意を抱かざるを得ません。

バルサはここ3年でチャンピオンズリーグ優勝2回、クラブだけでなく代表レベルでもスペイン代表がユーロ2008・2010W杯を連続優勝していますから、「太陽の沈まぬ国」バルサとスペイン代表の時代はいつまで続くのかと思ってしまいます。

 さて、FCバルセロナに自らのサッカー哲学を植えつけ、数十年かけてバルサの現在の地位を築き上げたのは、言わずと知れたヨハン・クライフです。

そのクライフのインタビュー記事が、サッカーマガジン2月1日号に掲載されていたのですが、彼はバルサのサッカーについてこんなことを言っていました。

「(バルサでは)ボールを持つ選手の重要度が最も低い。他の選手は常に動いてボールを受ける位置にポジションを取る。周囲の選手は皆フリーでボールを受け、ボールを持つ選手はほとんど動かずに済む」

「ボールを持つ選手の重要度が最も低い」とは、現代サッカー戦術に大きな影響を与えた先駆者の一人であり、組織的なパスサッカーの「ファンダメンタリスト」である彼らしい過激な発言ですが、日本の多くの人は逆に「サッカーはボールを持っている選手が一番重要ではないの?」と思われるかもしれません。

 ところで、クライフがプレーしリヌス・ミケルス監督に率いられた1970年代前半のアヤックスやオランダ代表は、プレッシング・コンパクトな布陣・オフサイドトラップ・ポジションチェンジといった戦術を駆使し、しばしば「現代サッカー戦術のルーツ」と言われることがありますが、それは正確ではありません。

実は東欧に現代サッカー戦術のルーツがあると言われています。

当研究所所長のハンドルネーム「スパルタク」からもお分かりのように、私も東欧のサッカーは嫌いじゃありません。

しかし地理的にも心理的にも日本のサッカー界から東欧は果てしなく遠いようです。

日本語版wikiが無いことがいかにも日本との距離を感じてしまいますが、「現代サッカー戦術の祖」「トータルフットボールの創始者」と言われているのが、ソ連、そしてウクライナの名門ディナモ・キエフ監督だったヴィクトル・マスロフという日本ではほとんど無名の人物です。

ゾーンで守る4-2-4システムで1958年W杯に優勝したブラジル代表の戦術を参考に、4-4-2という現代で最もポピュラーになっているシステムを考案した先駆者が彼です。

そして彼の最も偉大な発明の一つが、今や日本のJ2クラブでも当り前になっているプレッシング戦術でした。

守備にプレッシングが導入される前と後では、世界のサッカースタイルがガラリと変わったと言われています。

1964年にディナモ・キエフの監督に就任したマスロフは、当時としては革新的なサッカーをひっさげ66年からソ連リーグ3連覇を成し遂げ、ディナモ・キエフを一気に常勝軍団へと変貌させました。

このマスロフのサッカーを発展させたのが、1974年から長くディナモ・キエフの監督をつとめ、「ドイツの皇帝」ベッケンバウアーをして「生まれながらにしての名将」と言わしめた、ヴァレリー・ロバノフスキーです。

私は、かろうじてロバノフスキーが現役の監督時代(ディナモ・キエフがチャンピオンズリーグでベスト4に入った98/99シーズン)に間に合って、リアルタイムで試合を見ることができましたが、彼はベンチに座って前後にゆっくりと体をゆする癖があり、うつむき加減になると白いブラシのようなフサフサの眉毛が邪魔をして目を開いているのかよく見えなくなるので、ナイトゲームの時なぞは「夜遅いから、このおじいちゃんもう寝ているんじゃなかろうか」と何度も思ったものですが、このおじいちゃんがただものではありません。

ロバノフスキーが偉大だったのは「ボールを持っていない選手は、持っている選手と同様に重要である」ということに気づいたからであり、さらに彼はこう言っています。

「フットボールとは11人の個がすべてではなく、11人がつくりあげるダイナミックなシステムである」

11人が連携してつくりだすコンパクトな布陣によって相手が使えるスペースをコントロールし、プレッシングからボールを奪うと、ポリバレントな能力を持つ選手たちがポジションチェンジを織り交ぜながら、パスワークで攻撃していく。

73年にロバノフスキーがディナモ・キエフの監督に就任すると、74・75年とソ連リーグ連覇、75年にUEFAカップウイナーズカップに優勝し、同年の欧州スーパーカップではベッケンバウアーやゲルト・ミュラー擁するバイエルン・ミュンヘンを破っています。

70年代の前半、ベルリンの壁をはさんで西側にミケルス監督が率いクライフがプレーしたアヤックスやオランダ代表、東側にはロバノフスキー監督のディナモ・キエフと、現代サッカー戦術の先駆者と言うべき二つのチームが存在していました。

88年の欧州選手権決勝では、ロバノフスキー率いるソ連代表とミケルス率いるオランダ代表が激突しています。ファンバステンのミラクルボレーにソ連代表は沈められてしまいましたが、この2人の監督の対決には因縁を感じます。

(ミケルスの「トータルフットボール」は、ウィーンのスタジアムにその名を残すエルンスト・ハッペル監督率いるフェイエノールトのサッカーに影響を受けたようです。永世中立国オーストリアの首都ウィーンは当時、共産主義のベールに隠された東側諸国への限られた窓口となっていました。ハッペルがマスロフのサッカーから影響を受けたのかは定かではありませんが、実際どうなのか興味深いところです)

「フットボールとは11人がつくりあげるダイナミックなシステムである」と考えるロバノフスキーは「ボールを持っていない選手は、持っている選手と同様に重要である」と言い、クライフはさらに一歩踏みこんで「ボールを持つ選手の重要度が最も低い」と言う。

彼らのサッカー観というのは、日本のそれとは正反対ではないでしょうか。

南米サッカーの影響が強い日本では、サッカーをやる方も見る方も「ボールを持つ選手が一番重要」、もっと言えば「ボールを持つ10番をつけた『ファンタジスタ』が何をするかが一番重要」というサッカー観が多数派を占めていたと思います。

日本のマスコミも、10番タイプの選手がボールを持って長時間ドリブルすればするほど「圧倒的な存在感」と持ち上げます。

やる方も見る方も、シンプルにパスをはたくと逆に何か物足りないと感じたり、「それでは他の選手と違いが出ない」と不安になったりするのではないでしょうか。

「ボールを持つ選手の技術さえ高ければすべてが解決される」と考える傾向も強く、「個の能力で劣勢なのをチーム組織でカバーする事は不可能」と言われ、サッカーの勝敗の原因もしばしば選手個々だけに求められがちでした。

ボールを持たない選手に注意が払われたとしても1人か2人ぐらい。

日本ではせいぜい「第3の動き」が言われるぐらいで、11人全員が一つのチームとしてある目的のためにピッチ上で連携して動くということは、あまり重視されてきませんでした。

少なくとも2010年W杯の直前までは。

そうしたサッカー観は「使う、使われる」という言葉に象徴的にあらわされています。

私はこの言葉が好きではありませんが、「使う選手」つまりボールを持っていてパスを出す選手の方がエラくて、パスを受ける選手は地位が低い「使いっパシリ」であるかのような語感があります。

ロバノフスキーやクライフの思想とは逆です。

そのせいでしょうか、日本サッカーの特徴として良いパサーはたくさん出てくるけれども、パスを受けてゴールを決めるストライカーがなかなか出てきませんでした。

「ボールを持つ選手が一番重要」というサッカー観が日本代表に一番強く反映されていたのが、「個の自由」が流行語となっていたジーコジャパン時代です。

ジーコジャパンは、ボールを持つ選手が次に何をするか周囲の味方が足を止めて見ているという、ほとんどの局面でボールを出す人と受ける人の2人だけしかサッカーをしていませんでした。

陣形もだら~んと間延びしていて、守備も個々の能力頼み。

そのジーコジャパンは06年ドイツW杯において3試合で7失点を喫し、壊滅的な打撃を受けて敗退します。

過去記事を見てもらえばわかりますが、欧州サッカーからこの世界に足を踏み入れた私は、「陣形をコンパクトにしろ、グラウンダーでパスが受けられるスペースへみんなが顔出ししろ」と悲痛な叫びを繰り返していましたが、少数派である当ブログの声はとうとう最後まで届きませんでした。

オシム氏が倒れた後を引き継いだ岡田ジャパンも、基本的には「ボールを持つ選手が一番重要」というサッカーから脱却しきれなかったように思います。

皮肉にも中村俊輔選手がコンディションを崩し、4-1-4-1でブロックをつくる堅守速攻型サッカーへの転換をはからざるを得なくなったことで「日本の常識は、サッカー先進地・欧州の非常識」だった状況が変わり、南アフリカで勝利という結果となってあられたわけです。

日本人選手の評価もぐっと上がり、ドイツ・イタリア・オランダ・スペインへと続々と進出しています。

そして今、クライフのサッカーを参考にするためにかつてバルセロナに通った、ザッケローニ氏が日本代表の監督を務めています。

 サッカーは見る人が見たいように見れば良いですし、「サッカーを見る時こういうことに気をつけろ」なんて説教がましいことを言うつもりはありません。

もちろん、ボールを持つ選手の動きに焦点を合わせてそれを楽しむのも十分アリだと思いますし、私もそういう見方をする時はあります。

しかしロバノフスキーの言葉を借りれば、「11人がつくりあげるダイナミックなシステム」であるチーム全体の動き(チーム戦術)にも、私は美しさを感じます。

例えばFCバルセロナやスペイン代表の流れるようなパスワークは本当に美しくて強い。

かつてのディナモ・キエフやポーランド代表のコレクティブなカウンターアタック、あるいはフィールドプレーヤ10人が一糸乱れぬ動きで鉄壁のゾーンディフェンスを形成している時も美を感じます。

サッカーの試合を見る時、あえてボールホルダーへの焦点をぼかしてチーム陣形全体を見る時間をつくると、「まったく別の景色」が見えてきます。

もしかしたら、私のような感じ方をするのは日本では少数派なのかもしれませんが、多くの人が気づかないような「こういうサッカーの見方もあるのでは」ということをこのブログを通して読者の皆さんにお伝えできれば良いかなと思っています。

 最後に再びクライフの言葉で締めましょう。

「私の言う技術とはリフティングではない。適切な足と正しいタイミングでボールを正確に味方へ渡すこと。ほんの少しの遅れが命取りになる」

バルサのシャビは、もうちょっと持つと持ちすぎになるよという直前で、的確なパスをスパーンと通していくんですよね。

バルサのようなポゼッションサッカーに限らず、現代サッカー戦術における基本だと思います。

家長選手や本田選手が、もし欧州のビッグクラブで成功したいのであれば、クライフの言葉やシャビのプレーはとても参考になるのではないでしょうか。





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一つの時代の終わり・新しい時代のはじまり?(その1)
  

■五輪予選に臨む日本代表メンバー発表

 五輪予選に臨むU-22日本代表メンバーが発表されましたので、当初の予定を変更してこちらを先にお伝えします。

お約束の記事は明日のアップを予定しております。



GK 権田 修一 (F東京)
  増田 卓也 (流通経済大)
  守田 達弥 (京都)
  安藤 駿介 (川崎)

DF 比嘉 祐介 (流通経済大)
  村松 大輔 (清水)
  鈴木 大輔 (新潟)
  吉田 豊  (甲府)
  酒井 宏樹 (柏)
  浜田 水輝 (浦和)
  酒井 高徳 (新潟)
  扇原 貴宏 (C大阪)

MF 山本 康裕 (磐田)
  清武 弘嗣 (C大阪)
  山村 和也 (流通経済大)
  東  慶悟 (大宮)
  山口 蛍  (C大阪)
  登里 享平 (川崎)

FW 永井 謙佑 (名古屋)
  山崎 亮平 (磐田)
  大迫 勇也 (鹿島)
  原口 元気 (浦和)


 先日のオーストラリア戦を観て気になった点は、サッカーのベーシックなところでは、相手との球際の競り合いで気迫負けをしていて、特に試合の立ちあがりで相手に主導権を握られてしまったところ。

さらに自軍ゴール前での空中戦の時、相手選手へのマークのズレが気になりますし、DFからボランチの間で不用意にボールを失うことが多く、危険なカウンターを何度も浴びていたことですね。

攻撃面では、シュートへの意識をもっと高めて欲しいです。

チーム組織は良く鍛えられていて、縦にも横にも非常にコンパクトになっています。

ただ、ダブルボランチがセンターバック直前のバイタルエリアを広く空けないのは良いのですが、センターバックとの距離が近すぎる場面もしばしばあり、ボランチがDFラインに吸収されて相手に極端に押しこまれてしまうところがあるのも気になります。

本番までにそのあたりの課題を最終チェックすれば、良いのではないでしょうか。

H&Aの一発勝負でリーグ戦とは違った難しさがありますが、ロンドン五輪へ向けて関塚ジャパンに期待します。




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■日本代表、チェコの堅守を崩せず

 キリンカップ最終戦となった日本対チェコはまたしても0-0のドロー。

得失点差・総得点でも差がつかず、珍しいことに日本・チェコ・ペルーの3チームが同時優勝となってしまいました。

今回の対戦相手はチェコ。

戦前の評価としては、フルメンバー同士で当たれば日本とほぼ互角の相手と見ていましたが、チェコはバックラインから後ろはほぼレギュラークラスで、アーセナルのロシツキー、ガラタサライのバロシュ、シャフトル・ドネツクのフブシュマンらを欠いていました。

日本のホームで有利な日程、そしてチェコが攻撃面で「飛車・角落ち」であることを考慮すれば、どうしても日本が勝たなければいけない試合でしたが、またしても引き分けという結果は残念でした。

それでは試合の流れを追っていきましょう。

 前半はほぼ互角の展開。やや日本が優勢か。

10分、チェコのFKからライノフがフリーでヘッドするもバーの上。

12分、本田からパスを受けた長谷部がドリブルで持ちこみバイタルエリアで相手選手をかわしてシュート。惜しくもゴール右へ外れます。

14分、チェコのCKからまたしてもフリーでシボクにヘッドされますが、バーの上で助かります。

37分、チェコのゴール前・正面でFKをゲット。遠藤のキックはGKチェフが横っ飛びでファインセーブ。

 後半はかなり日本が押しぎみにゲームを進めます。

6分、CKからつないで本田がクロスを上げ李が中央へ折り返し、最後は吉田がヘッドするがボールはバーの上を大きく越えていきます。

11分、左サイドから中央へ切れこんでの長友のシュートはうまくヒットせずゴールラインを割ります。

32分、日本代表この試合最大のチャンス。本田が左サイドからクロスを上げ、フリーになった岡崎がヘディングシュートを地面に叩き付けます。チェフがなんとかセーブしたボールは前へ転がりそれを李がプッシュしますが、後ろにバランスを崩しながらもチェフが左手一本でボールをかき出し、どうしてもゴールできません。

後半ロスタイム、ゴール右からの本田のFKは落ちきらずゴール上のネットへ。

そのままタイムアップとなりました。

 この試合も日本代表は3-4-3システムで戦いましたが、まず攻撃面から。

攻撃はほとんど機能しなかったペルー戦よりかなり改善されていました。

右ウイングに入った本田選手が中へ絞ったりしてパス回しにからんだため、攻撃の組み立てが良くなりましたね。

ただ、本来の右ウイングのポジションから離れてかなり自由に動いていたので、3-4-3というシステムが機能したのかと言えば微妙なところです。

攻撃がかなり改善されたのにペルー戦と同様無得点に終わったのはフルメンバーを揃えたチェコの守備が固かったせいもあると思います。

組織的なブロックをつくって日本の選手に厳しくプレスをかけてきたので、相当苦しめられました。

特にレギュラーセンターバックのR.フブニクをサイドにもってくるなど右サイドの守備にはかなり神経を使っていたため、スタンドが注目のインテル・長友選手が攻撃にうまく絡めませんでした。(逆にセンターフォワードの李選手は相手にナメられたとも言えそうです)

アジアレベルを超えたチェコの組織的なプレスのせいで使えるスペースが狭くなると、トラップなどの基本技術の差がはっきりと現れます。

前の3人のうち、相手のDFとMFの間のスペースが狭くなってもあまり苦にしない本田選手はさすがでしたが、岡崎選手と李選手はパスを受ける時にトラップが粗く、ボールが強くはねてしまうので相手選手に奪われる場面がありました。

W杯でレベルの高い相手に打ち勝つためには、必ずクリアしておかなければいけない課題です。

 守備面はまずまずでしたが、日本のゴール前でのセットプレーでセンターバック陣が相手選手へのマークをずらし、危険なヘッドを何度か許してしまったのはいただけません。

W杯の予選や本大会ではたった1度のマークのズレが命取りになります。

また、伊野波選手に失点につながりかねない危険なバックパスが2度ほどありました。

新潟でのU-22日本対豪州戦でも相手DFのバックパスが弱く永井選手にかっさらわれて決勝点を食らっていましたが、サッカーという競技は消極的なプレーに「罰」が与えられるものです。

自陣内で無理をしてでもパスをつないでボールを守ろうとするよりは、前線へ大きく蹴った方が良いですし、相手が放りこんできたロングボールもバウンドさせて様子を見るのではなく、バウンドする前にダイレクトで積極的にヘッド等でクリアしておくべきでしょう。

 選手個々では、本田選手の出来が良かったと思います。

ペルー戦と違ってこの試合は判断のスピードや球離れが速く、チェコの厳しいプレスにも適応できていました。

決定機を演出するクロスも2度ありましたね。もっと流れの中からのシュートそしてゴールがあればベストなのですが。

長谷部選手は特別悪いというわけではないのですが、ブンデスリーガのクラブと同等レベルのフィジカルの強い相手に攻守にわたり少し劣勢だったかなという印象。まだボルフスブルグで定位置を獲得するに至っていないわけですが、そのための課題が見えたのではないでしょうか。

岡崎・李両選手はパス・トラップを含む技術やフィジカル能力、オフ・ザ・ボールの動きを含む戦術理解など、世界と戦う上で課題は多いです。

内田選手は体調不良のせいでしょうか、守備がちょっと軽い印象でした。

そして後半からボランチに入った家長選手が注目されましたが、パスを受けてまずボールをキープ、相手にプレスをかけられてクルッと一回転しあまり意味の無い横パスと、依然として次のプレーへの判断が遅いです。

バルセロナのシャビ等のプレーを参考にしてまず現代サッカー戦術への適応をした上で、そこから自分の色を出していった方が良いのではないでしょうか。 

そうでないとリーガエスパニョーラでも厳しくなると思います。

 チェコ戦の結果は残念でしたが、内容は前の試合より改善されていました。

ただ3-4-3システムが上手く機能したかと言えば微妙ですね。

3-4-3が有利になるのは、相手が中盤をフラットにした4-4-2だった場合ではないでしょうか。

ザッケローニ監督が一気に名声を獲得したのはウディネーゼ時代の96/97シーズンに、4バックから3バックに変えて(というか変えざるを得なくなって)ユベントスを破った試合がきっかけでした。

その試合の正確なメンバーはさすがに覚えていませんが、ユベントスのリッピ監督はサッキの影響を受けた4-4-2でプレッシングをかける戦術を取っていたので、たぶんその試合もそうだったのだろうと思います。

一人少ないウディネーゼに0-3と敗れたリッピは衝撃を受け、その後試合中に3バックと4バックを自在に変化させるシステムをユーベに導入した記憶があります。

で、ザッケローニ監督が狙っているように3-4-3のチームのサイドハーフが4-4-2のサイドを突破できれば、相手チームと最終ラインで4対4の形をつくれます。これは3-4-3側にとってかなり有利な展開です。(下図)

有利
(クリックで拡大)

しかし、当時は2トップが「常識」だったのでそれで良かったのですが、以前の記事で取り上げたように3バックはワントップと相性が良くありません。

その後ワントップ系のシステムが増えるにつれ徐々に3バックはすたれていったわけです。

ペルーもチェコも日本の3バックを見てワントップをぶつけてきました。

ある解説者が「だったら3バックのうち誰か1人が上がればいい」と言っていましたが、DFを前へ上げるなら例えば4-2-3-1にして最初から足元が上手い選手を中盤におけば良いのではという疑問が浮上します。

もしくは3人のセンターバックがトップ下並に足元が上手くなるか。

ザッケローニ監督が会見で「11人全員で攻撃も守備もこなすサッカー」とおっしゃっていたように、3-4-3でトータルフットボール的なサッカーを求める彼は後者を望んでいるのかもしれません。

ともかくザッケローニ監督は、キリンカップでまず3-4-3に選手を慣れさせることを最優先にして、相手がこちらに不利なシステムをぶつけてきても、あえて3-4-3をやり通したのだと思います。

ペルー戦の記事で「3-4-3は使えるシチュエーションが限られる」と言ったように、もしそのシステムが効果を発揮するとすれば、4-4-2では良さが出るがワントップにするとチーム力がガクッと落ちるような相手に使う場合ではないでしょうか。

どんなシステムにも長所と短所があるわけですが、これまで述べてきた3-4-3システムの短所をどうカバーしていくか、ザッケローニ監督がどういったソリューションを持っているのか興味あります。

 3-4-3の習熟に時間を大きく割いた今年のキリンカップとなりましたが、日本代表の戦術オプションが広がるきっかけとなれば良いと思います。

ただ戦術の「Aプラン」である4-2-3-1の約束事を忘れてしまわないよう注意が必要です。

アジアカップ優勝で美しく「お化粧」されてしまいましたが、決してあの時は完璧ではなかったので。

 次回は、FCバルセロナの圧勝に終わったチャンピオンズリーグ決勝から感じたことをお話したいと思います。
記事の完成は今度の土日あたりを予定しています。

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       2011.6.7 日産スタジアム(横浜)


       日本  0  -  0  チェコ


      GK 川島       GK チェフ

      DF 伊野波      DF R.フブニク
        (槙野 64)       シボク
         今野         (セラシエ 46)
         吉田          ライノフ
                      カドレツ
      MF 長友
         遠藤       MF コラージ
        (家長 64)       ペトルジェラ
         長谷部        (ピラジ 83)
         内田          バチェク
                      レゼク
      FW 岡崎         (ヤンダ 90+)
        (関口 89)       フェニン
         李           (ネチド 80)
         本田
                   FW ラファタ
                     (M.フブニク 66)





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■壮大なマンネリズム

 これは前から言おう言おうと思っていたことですが、どういう方が日本代表の興行計画を立てているのか知りませんが、新潟ビッグスワンでの日本対ペルー戦というのは2005年に続いて2回目ですよね。

7日に行われる横浜国際でのチェコ戦も1998年に続いて2度目のはずです。

ペルー戦は新潟でしかやってはいけない、チェコ戦は横浜でしかやってはいけないという決まりでもあるのでしょうか。

さらに今年3月に震災でキャンセルになった静岡エコパでのモンテネグロ戦も、もし開催されていれば2007年に続いて2度目、カメルーン代表が来日すれば大分ビッグアイ(2003年・2007年)、サウジアラビアは札幌ドーム(2002年W杯・2006年AC予選)、ベルギーは国立(2009年・1999年)...

ちょっと間をおけばわからないだろうと思ったら大間違い。

これが偶然だとしたらできすぎています。

パラグアイ戦は埼玉スタジアム2002(2003年・2008年)や横浜国際(2010年)など首都圏で開催されることが多いですよね。

静岡の代表サポはモンテネグロ、大分の代表サポはカメルーン、東京の代表サポはベルギーかパラグアイとの試合しか見ちゃいけない決まりでもあるのでしょうか。

このように国内で行われる代表戦は、十数年をかけて日本全国を舞台に壮大なマンネリズムが繰り返されています。

官僚主義的にルーチンワークでそう決めておけば楽なのかもしれませんが、決して安くないお金を出してチケットを買ってくれる代表サポのことをちゃんと考えてマッチメークしているようには思えません。

特に代表戦を生で見る機会が少ない地方のサポのことをまったく考えていません。

すべての代表サポのためにも早急に改善をお願いしたいですね。




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■日本代表、不完全燃焼の3-4-3

 キリンカップ初戦となる日本VSペルー戦が新潟で行われ、0-0の引き分けとなりました。

対戦相手のペルーは、もしブラジル行きの切符をかけてW杯予選大陸間プレーオフで日本と当たったら、日本のホームで日本の勝利、アウェーで引き分けぐらいの実力差と見ていました。

ただ今回来日したメンバーはシャルケのファルファンこそいましたが、ブレーメンのピサロやハンブルガーSVのゲレーロ、フィオレンティーナのバルガスらを「ケガ」で欠く1.5軍といったら良いでしょうか。

そのことも踏まえても日本の勝利が求められる試合でしたが、引き分けという結果は残念でした。

 それでは試合の流れをざっと追っていきましょう。

日本代表は試合前から大きな話題になっていた3-4-3システムで試合に臨みましたが、ペルーの厳しいプレスもあってなかなか攻撃がうまく機能しません。

ペルーの攻撃もそれほど迫力のあるものではなく、前半は見せ場の少ない一進一退の攻防が続きます。

24分、FKから遠藤がトリックプレー、これを受けた長谷部がシュートするもワクを捉えず。

26分、パスを受けたバルビンが日本のDFラインの前からロングシュート、川島が好セーブでなんとかCKへ逃れます。

 後半、日本代表がシステムを4-2-3-1に戻してから攻撃が少し機能し始めますが、しばらくすると再び膠着状態に。

11分、ゴール前で得た本田のFKは惜しくもゴール左へ

40分、パスを受けた本田が倒されたものの、すばやく立ちあがってシュート!これも残念ながらゴール左へ。

41分、左サイドから長友のクロスを李が落とし、岡崎がダイレクトでシュートするもミートせず、こぼれ球を本田が詰めますが、相手GKがクリア。

日本の攻撃をしのいだペルーがここから怒涛の反撃。

1点ぐらい取られてもおかしくない感じでしたが、川島のファインセーブ連発やゴールポストが日本を守ってくれたこともあり、そのままスコアレスドローに終わりました。

 つづいて試合内容を分析します。

この試合で初めてザッケローニ監督は3-4-3を国際Aマッチの実戦で試すことになったわけですが、残念ながら機能したとは言えませんでした。

震災チャリティマッチの記事でも述べましたが、中盤をフラットにした3-4-3は4-2-3-1からトップ下を削ってセンターバックを一枚増やした形とも言え、サイドからの速い攻撃がやりやすいシステムである反面、ピッチ中央からショートパスで崩して行く場合、トップ下がいない分どうしても前線中央が手薄になってしまいます。

そのため両ウイングが中へしぼりぎみに動いてパス回しにからまないといけないわけですが、この試合で起用された岡崎・関口両選手が効果的にそういう動きをできなかったため、日本の最大の武器であるショートパスの崩しが前半は影をひそめてしまいました。

さらにペルーが3-4-3システムに比べて有利なシステムに変更してきたことも、日本の攻撃が機能しない原因となっていました。

ペルー代表は直近のテストマッチで4-1-3-2を使っていたと聞いていましたが、この試合もキックオフ直後は4-1-3-2で、日本が3バックなのを見てすかさずシステムを4-1-4-1に変更したように見えました。(ペルーのマルカリアン監督は4-3-3をやりたかったが前半は両ウイングが下がりすぎたと会見で言っていました)


数的不利
(クリックで拡大 以下同様)

上図を見て欲しいのですが、相手が4-1-3-2ならともかく4-1-4-1を使ってきた場合、選手のマッチアップを見ると3-4-3システムは中盤中央で相手より数的不利になってしまいます。

先ほど述べたように3-4-3はただでさえトップ下がいなくて中央からの攻撃が手薄なのに、クルサードと言いましたでしょうか相手チームのアンカーが中盤中央でフリーで余り、数的有利の状態になっています。

このため中央からのパス回しがよけいやりづらくなってしまいましたし、サイド攻撃をしようとしても岡崎・関口の両ウイングや安田・西のサイドハーフにペルーが厳しくプレスをかけてきてつぶされてしまったために、前半は日本の攻撃が機能しませんでした。

震災チャリティマッチの後半から若手選手に入れ替えたら、とたんに3-4-3が機能しなくなっていましたが、このシステムは両ウイングにとても高い能力が求められ、相手チームが3-4-3より有利なシステムをぶつけてきた場合も使うのが難しい、ザッケローニ監督としてはかなり思い入れがあるのでしょうが、使えるシチュエーションがかなり限定されるシステムだなというのが実感ですね。

ペルーに攻められた場面で、5バックぎみになってしまったところもザッケローニ監督の意図するところではなかったはずです。

 後半からは4-2-3-1に戻したわけですが、まず攻撃面から見てみますと本田選手や長友選手といった主力級を投入したものの、前半の不完全燃焼に終わった攻撃を引きずっているような展開。

トップからバックラインまで間延びし、選手一人一人の距離が遠くなったためにパスが通しづらくなり、アジアカップの時よりも連動性は低くなっています。

さらに選手一人一人がボールを持ちすぎてしまい、攻撃のリズムも悪くなってしまいました。(特に本田選手)

 もっと気がかりなのは守備面。


約束事


上の図を見て欲しいのですが、相手がサイドから攻撃してきてこちらのサイドバックが応対している場面ですが、バックラインの残りの3人が相手のボールホルダーに応対しているこちらのサイドバックに連動して横へスライドしないため、4バックが横に間延びしてサイドバックのウラに危険なスペースを何度もつくっていました。

さらにバックラインからトップまで間延びして、特にダブルボランチが日本のセンターバックの前にあるバイタルエリアを広く空けてしまったために、試合終盤にペルーの波状攻撃が止められない状態になり、いつ失点してもおかしくはありませんでした。

昨年秋のアルゼンチン・韓国とのテストマッチでは縦にも横にも陣形がコンパクトで日本の攻守両面における組織力は非常に高いレベルにありましたが、アジアカップもそうですしこの試合もそうですが、久しぶりの代表召集や選手の入れ替わりなどによって、選手が4バックによるゾーンディフェンスの約束事を忘れかけている状態にあります。

今の守備が不安定な状態では、W杯アジア予選は安心して戦えません。

前回記事で「まず4-2-3-1の守備組織をしっかりと再整備して2010年のレベルまで回復させてほしいところです」と言ったのは、そうした傾向がアジアカップからちらほら見えるのが少し懸念されたからです。

大震災の影響で3月のテストマッチがキャンセルされコパアメリカにも出場できない状況ですから、3-4-3へのチャレンジは時間に余裕ができる時までひとまず封印し、秋までの合宿やテストマッチでは、まず選手に4-2-3-1の約束事を思い出させ、高いレベルでの実戦感覚を維持するために、W杯予選スタートまでの限られた時間を使った方が良いように思います。

海外組はこれからオフに入りますから、秋のW杯予選までに彼らの実戦感覚や代表でのコンビネーションを取り戻させるだけでも一仕事になるはずで、今は新しいことに大きく手を広げる余裕はあまりないのではないでしょうか。

 選手個々では、川島選手の安定感が抜群でゲームを引き分けに持ち込めた最大の功労者です。

関口・西・安田の各選手に新戦力としての期待がかかりましたが、3-4-3システムが機能しなかったせいもあってか、ほとんど見せ場をつくれず。長い目で見て育てていく必要がありそうです。

後半ペルーに押しこまれたこともあり、久しぶりに呼ばれた興梠選手も消えてしまっていました。

 ザッケローニ監督の思い入れが深い3-4-3に、国際Aマッチの実戦で初めてチャレンジしたペルー戦でしたが、残念ながら機能しませんでした。

代表がいろいろな戦術オプションを持っていることは決して悪いことではありませんが、今は4-2-3-1の決まりごとや実戦感覚・コンビネーションを忘れないよう、高いレベルで維持し続けることに限られた時間を使うべきだと私は考えます。

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       2011.6.1 東北電力ビッグスワン(新潟)


        日本  0  -  0  ペルー


       GK 川島       GK リブマン

       DF 伊野波     DF アカシエテ
         (森脇 75)       ビルチェス
          栗原         レボレド
          今野         ラバナル
                     (ジョトゥン 63)
       MF 安田     
         (興梠 71)   MF クルサード
          遠藤        (ロバトン 73)
          長谷部        バルビン
         (細貝 90+)     (バジョン 62) 
          西          アドビンクラ
         (本田 46)      ラミレス
                      クエバ
       FW 岡崎        (チロケ 61)
          前田
         (李 67)    FW ファルファン
          関口        (ルイディアス 67)
         (長友 67)




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