■2011年01月

■日本代表、総力戦を制し4度目のアジア制覇

 アジアカップ2011カタール大会の決勝戦は文字通りの総力戦となり、延長のすえ日本代表がオーストラリアを1-0で下し、アジア単独首位となる4度目のアジアカップ制覇を果たしました。

決勝の相手となったオーストラリアは、エバートンのケーヒルやガラタサライのキューウェルなど、イングランド・プレミアリーグやトルコでプレーする選手が多いチームです。

ただ、近年オーストラリアは高齢化が進んでおりこのチームのピークは過ぎた感があります。

現時点では日本がやや上、ホームで日本の勝利・アウェーで引き分けぐらいの実力差と見ていました。

中立地でのこの試合、90分以内で相手をしとめられなかった点はちょっと残念でしたが、延長戦まで辛抱して辛抱して最後には日本が勝ちきったという結果については大変良かったと思います。

 それでは120分間の、あの激闘をおさらいしておきましょう。

PK戦までいった準決勝の影響で、日本の選手たちの動きは見るからに重いものでした。

ところが、前の試合を90分で終わらせたにもかかわらずオーストラリアもベテラン選手が多いせいか、かなり消耗している様子。

前半は互角の展開でした。

18分、CKからケーヒルが競り勝ったボールを最後はキューウェルがバックヘッド、GK川島が良く反応してセーブ。

29分、本田圭のパスからペナルティエリアに侵入した岡崎がシュート、相手選手がハンドで防いだように見えましたがレフェリーは流します。

31分、浮き球のクロスをケーヒルがヘッドで落としキューウェルがシュートするが、ゴールマウスを外してくれてホッとします。

36分、本田圭のスルーパスに遠藤がウラへ抜け出したもののシュートではなくバックパスを選択、前田がシュートするもふかしてしまいました。

 後半からだんだんとオーストラリアが日本を押しこみはじめます。

3分、ウィルクシャーのループぎみのシュート?がクロスバーに当たりゴール真下に落ちます。オーストラリアの選手が詰めに行きましたが吉田が懸命のクリア。

10分すぎ、ザッケローニ監督は悪い流れを断ち切るため藤本を外して岩政を投入。長友を左サイドハーフにあげたことで再び試合は一進一退に。

20分、長友がサイドを突破しダイレクトのクロス、岡崎がヘッドするも惜しくもゴール右へ外れます。

26分、ヘッドでボールを浮かして岩政を抜いたキューウェルが川島と1対1の大ピンチ。しかし川島が右足一本でシュートを防ぐ神懸り的ビッグセーブ!

41分、今野のバックパスが弱くなり、キューウェルが詰めてシュートしようとしますが、川島が反応良く飛び出して押さえます。

両チーム一歩も譲らず試合は延長戦へ。

延長前半11分、キューウェルのパスからエマートンがコントロールシュート、ゴール左へ外れヒヤッとさせられます。

延長前半13分、エマートンのクロスをクルーズがヘッド、川島がなんとか防ぎ最後は遠藤がクリア。
つづく日本のカウンターから本田圭がミドルを狙うが惜しくも外れます。

延長後半3分、左サイドを突破した長友がダイレクトのクロス、これをゴール前中央でフリーになった途中出場の李がボレーシュート!ゴールに見事に突き刺さり日本が待ちに待った先制点をあげます。

延長後半15分、日本のゴール前中央でのオーストラリアのFKを防いだ瞬間、日本の4度目となるアジアカップ優勝をつげるホイッスルが吹かれました。

 つづいて攻撃面から試合内容の分析に入ります。

得点シーンですが、まず長友選手によるサイド突破からダイレクトかつ正確なアーリークロスがとても素晴らしかったですね。

サウジ戦・韓国戦と日本代表にとってこの大会の大きな得点源となった長友選手のサイド攻撃ですが、無尽蔵のスタミナといい延長戦になってもクロスの正確さが落ちないところといい、彼は今アジアでまちがいなくNo.1の左サイドバックでしょう。

ユーベだバルサだと移籍の噂話が出ていますがビッグクラブから注目されるのも納得です。

そして李選手のボレーシュートも難しかったと思いますが、良く入れてくれましたね。

ヨルダン戦ではFWらしい仕事をほとんどさせてもらえませんでしたが、最後の最後で大仕事をやってくれました。素晴らしいです。

 ただ、大会6試合目で前の試合はPK戦までいったということもあり、日本の選手はキックオフの時点から体力的にも精神的にも疲れきっている様子がありありとうかがえました。

そのため、個人技や判断・チーム戦術でミスが目だったこともやむを得ませんでした。

日本の選手たちはベストを尽くし全力を出し切ってくれたと思いますし、現時点であれ以上のものを求めるのは酷かもしれません。

ただこのチームの最終目標がワールドカップであることを考えれば、そこへ向けての課題も見えたのではないでしょうか。

W杯はグループリーグこそ中4日で試合をやれますが、決勝トーナメントへ行けばアジアカップと同じ中3日で試合をやり、決勝戦まで行けばアジアカップより一試合多く決勝トーナメントを戦わなければなりません。

今よりも体力・精神力ともにもっとタフになり、そして決めるべきところできっちり決めてなるべく90分で相手をしとめていかなければ、W杯でベスト4に入ることは困難です。

前々回の記事で決勝戦の対策として「スピード感を大切にリズム良くショートパスをどんどん回していって、岡崎選手のように最初のシュートチャンスを見逃さずゴールマウスの中にどんどんシュートを打っていくこと」をあげておきました。

前半36分、本田選手のスルーパスに遠藤選手がウラへ抜け出してGKと1対1になった場面ですが、たとえ外してもバックパスではなくシュートにチャレンジして欲しかったです。

遠藤選手の技術力ならかなりの確率でゴールできたでしょうし、あそこで先制できていたら自分たちをもっと楽にしていたはず。

大事な試合であればあるほど、シュートのファーストチャンスで勇気を持って打てるかどうか、そしてゴールを決めて90分間で勝ちきれるかどうかで、W杯の決勝トーナメントでもどこまで上に行けるかが決まってくると思います。

そう考えると、南アフリカでの決勝戦であれほど高いレベルのサッカーを見せてくれたスペイン・オランダ両チームがどれだけ凄いかがわかるでしょう。

 守備では、疲労で足どりが重いなかでも準決勝よりはコンパクトな陣形がつくれていた時間が長かったですし、怖がって下がりすぎたMFのラインがDFラインに吸収されることもあまりありませんでした。

日本の選手はこぼれ球への反応も速く、オーストラリアの攻撃を完封することができました。素晴らしいです。

やはり前々回の記事対オーストラリア戦対策としては、英国系のチームは「Dのエリア」に人を配置してミドルシュートを狙ってくるから注意せよと書いておきました。(下図)

対策
(クリックで拡大)

思ったとおり後半29分にエマートンが、延長前半15分にマッケイが、延長後半13分にキルケニーが「Dのエリア」で待ち構えていて、そこからこぼれ球に反応してミドルシュートしてきましたが、長友選手らが良くケアしていたためゴールを許しませんでした。

これも素晴らしい守備でした。

 選手個々では、ビッグセーブを連発して3点ぐらいは防いだGK川島選手が個人的にはマンオブザマッチの活躍だったと思います。

決勝点のアシストを含め攻守に大車輪の働きだった長友選手も良かったですし、もちろん決勝点を決めた李選手も良くやってくれました。

運動量豊富で、日本キラーのケーヒルを封じこめた長谷部キャプテンも効いていました。

注目された香川選手の代役は藤本選手でしたが、サウジ戦の出来を見れば個人的には柏木選手かなと思っていたので意外でした。

 監督の采配に注目しますと、後半からオーストラリアの攻撃に押される一方になり流れの悪い時間帯が続くと、ザッケローニ監督は岩政選手を入れて藤本選手をアウト、フォーメーションは変えずに長友選手をそのまま左サイドハーフにあげました。

これで流れを五分に戻したばかりか長友選手のサイド突破から決勝点が生まれたわけですから、李選手の投入も含めて監督の采配が当たりましたね。

 というわけでアジアカップ2011カタール大会のフィナーレを飾る決勝戦は、延長戦のすえ日本が1-0でオーストラリアを下し、アジア単独トップとなる4度目の優勝をなしとげました。

とても気持ちが良いです。

そういえばカタール代表のブルーノ・メツ監督が日本代表を「アジアのFCバルセロナ」と呼んでいました。

日本代表がバルサのレベルに達しているかはともかくとしても、決勝戦を観戦した日本人以外のお客さんの反応はかなり日本に好意的だったのが印象的でした。

ロングボールを力任せに放りこんでくる単調なオーストラリアのサッカーよりは、ショートパスをつないで創造力あふれる多彩な攻撃から相手を崩そうとする日本のサッカースタイルの方を好んでいるように見えました。

ザックジャパンは、オーストラリアや韓国を含め他のどのアジアのチームよりも困難なことにチャレンジしていますし、このアジアカップで若い選手が貴重な実戦経験を積めたことに加えて、優勝という最高の結果を得られたことも本当に良かったです。

 次回はアジアカップ2011の日本の戦いぶりを総括したいと思います。(数日後にアップ予定)


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   2011.1.29 ハリファ・インターナショナルスタジアム
                           (ドーハ)

     オーストラリア 0  -  1  日本
                (延長)

                     李 109'



   GK シュウォツァー      GK 川島

   DF ニール          DF 内田
     カーニー           (伊野波 120+)
     オグネノブスキ        今野
     ウィルクシャー        吉田
                      長友
   MF ホルマン       
     (エマートン 65)     MF 長谷部
     ジュディナク         遠藤
     バレリ             藤本
     マッケイ           (岩政 56)
     ケーヒル           本田圭
    (キルケニー 110).      岡崎
   
   FW キューウェル     FW 前田
     (クルーズ 103).      (李 98)




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■日本代表、アジアカップ優勝!!!

                 

      日本代表アジアカップ優勝!

 
 選手・監督・スタッフ・サポーター、日本代表を支えた全ての皆さん、優勝おめでとうございます。

みんなが仲間を信じて、チームが一致団結して勝ち取った素晴らしい優勝でした。

私もとても嬉しいですし、大変良い試合を見せていただき本当に感謝しています。ありがとうございました。

選手や監督・スタッフの皆さん、今はこころゆくまで勝利の美酒に酔いしれ、喜びと幸福感を存分に味わって欲しいと思います。

本当に本当におめでとうございます。

(試合分析はのちほどのエントリーで)




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■決勝のオーストラリア戦、傾向と対策

 いよいよ明日、アジアカップ2011カタール大会の決勝戦が行われます。

日本代表の対戦相手はオーストラリアに決まりました。

明日の決勝戦がとても楽しみですね。

 それでは決勝の対オーストラリア戦の傾向と対策を考えてみたいと思います。

オーストラリアのサッカースタイルと言えば元英国の植民地だけあって、いわゆるイングランドスタイルの強い影響を受けています。

トップに身長が高くフィジカルの強い選手がいて、そこにロングボールをあげてヘッドで落としたところを拾って攻めの基点をつくり、クロスやセットプレーからヘディングシュート、それが決まらなければこぼれ球を拾ってミドルシュートを狙う、そういうイメージがあります。

日本代表の選手がやるべきことは、準決勝の傾向と対策で書いたとおり、オーストラリア相手だから特別やらなければいけないということではなく、サッカーの基本プレーを粘り強く日本の勝利が決まるまで忠実にやり抜くことがまず大事です。

これをきっちりと押さえた上でオーストラリア相手に特に頭に入れておくべきことは、守備面ですとオーストラリアはたぶんロングボールを多用してくると思いますが、こういうチームとやると相手も自分たちも陣形がどうしても間延びしやすくなります。

ですから今まで以上に日本代表はタテにもヨコにもコンパクトな陣形を心がけ日本のバイタルエリアを狭めておく、相手のトップがバイタルエリアに落としたボールは必ずこちらのボランチが先に拾うことによって、相手の攻撃の芽を一つ一つつぶしていくことが日本の勝利につながってきます。

相手が長いボールを放りこんできても、準決勝のPK戦で神がかり的なスーパーセーブを連発した川島選手や、ディフェンスリーダーの今野選手を中心に良く声をかけあい、各選手が他人任せにせず自発的に処理すれば難しいことは何もありません。

またオーストラリアのような英国系のチームにありがちなのは、流れの中からの攻撃やセットプレーから相手ゴール前に浮き球を放りこんだ時、いわゆる「Dのエリア」付近にこぼれ球に反応してミドルシュートをする役目の選手が一人ないし二人、チャンスをうかがっていることです。(下図)

対策
(クリックで拡大)

日本も「Dのエリア」付近にこぼれてくるボールに細心の注意を払い必ずそこをケアする選手を置いて、もしボールがこぼれてきたら必ず相手より先に触ってクリアする、相手にボールが渡ってしまっても冷静に相手のシュートコースに体を入れてブロックしてはね返すことが重要です。

 攻撃面でもまず陣形をコンパクトにすることが大切です。選手同士の距離感としてはグループリーグの対サウジ戦ぐらいがベストでしょう。

陣形をコンパクトにしておけば無駄な体力の消耗が防げますし、日本の選手同士が連携をとりやすくなります。

そしてスピード感を大切にリズム良くショートパスをどんどん回していって、岡崎選手のように最初のシュートチャンスを見逃さずゴールマウスの中にどんどんシュートを打っていくこと。

オーストラリアのDF陣は高さには強いでしょうが、足元で左右にゆさぶられるのは苦手なのではないでしょうか。

ですから相手のバイタルエリアで速いパスを受けすぐさま前へ向いて、相手DFの前からシュートコースが見えた時点で打っていき、ゴールを狙う攻撃が有効だと思います。

シュートコースがなければワンフェイント入れて相手DFをヨコにゆさぶってコースを空けてからシュートでも面白いでしょうし、ウラに抜けようとしている味方にグラウンダーのスルーパスを通すのも効果的です。

サイド攻撃は、準決勝の前半に飛び出した前田選手のゴールや岡崎選手の惜しいヘッドのように、ダイレクトパスからサイドに抜け出した選手がこれまたダイレクトでクロスを入れることで相手DFを自軍ゴールに向かって戻らせる状態をつくり、中に走りこんだ選手が決めるというパターンを多くつくりたいところです。

こうしたことを踏まえても、迷ってパス迷ってパスではなく、自分より前にいる選手があればどんどんパスを回していって、自分たちで日本の攻撃を良いリズムに乗せていくということで、良い結果が出るのはもちろん「やって楽しいサッカー」につながっていくことと思います。

 ところで残念ながら香川選手が負傷離脱となってしまいました。

彼の代わりとして誰が出るのかわかりませんが、私は代わりに出る選手も彼と同等以上のポテンシャルがあると考えていますし、その選手も世界中に自分の能力をアピールするチャンスです。

この大会の日本代表の攻撃はとてもうまく行っていますし、チームが一つにまとまって、監督が常々言っているように守備と攻撃とのバランスを取りながら、最後まで自分たちがこれまでやってきたサッカーをやり抜く事で勝利という結果が出る事でしょう。

 さて決勝戦を裁くのは、やはり日本対サウジ戦の主審だったイルマトフ氏となりました。

サウジ戦の記事にも書きましたが、このレフェリーは手で相手をひっぱったり両手を相手の肩にのせてジャンプするようなプレーを特に厳しく取る傾向にあります。

ですから日本のペナルティエリアの中やその周辺において、相手との競り合いで手を使わないように特に注意しなければなりません。

カンナバーロなんかが代表ですが、イタリアの選手はそれほど身長が高くなくてもフィジカル争いや空中戦はめっぽう強いので、絶好のチャンスですから日本の選手たちはファールをせずに相手とどうしたら空中戦に勝てるか、そのコツをザッケローニ監督にみっちり教わってみると良いでしょう。

 最後に一番重要なことは、日本代表の選手たちが自分たちの能力と日本の優勝を完璧に信じることです。

いよいよ明日にせまった決勝戦、私は日本の優勝を完璧に信じています。





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■日本代表、韓国をやぶって決勝進出!

 アジアカップ2011準決勝、日本対韓国戦は2-2のままPK戦にもつれこみ、3-0でこれを制した日本が韓国を破り決勝進出を決めました。

対戦相手の韓国は、インドに失点してみたりイランを90分でしとめきれなかったりと、この大会に限って言えばあまり良いサッカーをしているようには見えませんでした。

南アフリカで急成長をとげた日本代表が、メッシのいるほぼベストメンバーのアルゼンチンに勝利したあたりで、日韓の力関係は逆転していたように思います。

事実、昨年秋にソウルで行われた日韓戦はレフェリーのハンド見逃しがなければ日本が勝っていた可能性がありますし、現時点ではホームでもアウェーでも日本が韓国に勝つ能力は十分あると評価していました。

この試合韓国を90分間でしとめられなかった点はちょっと残念でしたが、延長戦終了間際に追いつかれてもPK戦で精神力の強さを発揮して韓国を打ち破るという結果をきっちり出したことは大変良かったです。

 それでは激闘となった試合を振りかえりましょう。

韓国は前の試合で120分戦ったせいか、いつものように前半から猛烈に飛ばしてくるのではなく省エネモードに入ったようなスロースタート。

これに対して日本は、日韓戦ということで過緊張ぎみだったのか立ちあがりの動きが硬く見えました。

前半15分、キソンヨンのFKを川島がファインセーブ、はねかえりをイチョンヨンがヘッドで押しこむが今野がクリア。

18分、左サイドで遠藤のスルーパスから長友がサイドを突破、ダイレクトのクロスに前田が韓国DFをつり出し後ろからフリーになった岡崎がヘッドするもポストに当たり最後は韓国GKがなんとかセーブ。

21分、韓国のロングボールに走りこんだパクチソンをペナルティエリア内で今野がショルダータックルしたところPKを宣告されるという不可解な判定。キソンヨンがこれを決めて韓国先制。

失点したことで開き直って固さがとれたのか、ショートパスがうまく回りだし日本が徐々に攻勢を強めていきます。

36分、本田圭のスルーパスに長友が長駆抜け出しペナルティエリアに侵入、いったん後ろに引いて相手DFをひきはがした前田がパスを受けてシュート!日本が同点に追いつきます。

ゴールが決まったことで主導権を握った日本が試合を優勢に進めます。

43分、本田のパスをバイタルエリアでフリーで受けた前田が振り向きざまシュート!しかし日韓戦ということで力みすぎたようでシュートをふかしてしまいます。

 後半もショートパスで相手を崩そうとする日本が試合の流れをつかみます。

1分、長谷部のパスを受け相手選手と入れ違いにターンした香川がチャドゥリと1対1になるという絶好のチャンス、しかしプレーを迷いボールを持ちすぎたことで相手が戻ってしまいシュートチャンスを逃してしまいます。

4分、岡崎のパスを受けた香川がペナルティエリアに侵入、こんどは果敢にシュートしますが相手選手にブロックされました。

その後は1-1という状況に居心地の良さを感じてしまったのか日本はペースダウン。日本の流れのうちに逆転ゴールをあげて相手をしとめることができませんでした。

逆に20分前後からそれまで省エネモードだった韓国がペースをあげはじめ、日本のゴール前にロングボールをどんどん放りこんでくるパワープレー攻勢を強めて日本が劣勢に立たされます。

21分、ゴール前の混戦から相手選手のバックヘッドにイチョンヨンが反応してつめますが、GK川島が危うくキャッチ。

26分、相手のシュートを防いだ遠藤のプレーがファールをとられ、日本のゴール前中央からのイヨンレのFKはゴール右ぎりぎりを外れて行きます。

37分、韓国がゴール前に放りこんだボールを日本のDF陣がバウンドさせてしまい自軍ゴールへ向かってボールを追いかけるという一番やってはいけないプレー。パク・チソンがボールを詰めに行きますが、岩政と交錯しながら川島が危うくキャッチ。

後半の前半までに勝ち越し点を決められず、スタミナ温存で後半勝負に来た韓国のゲームプランに日本はハマリかけましたが、なんとか相手の攻撃を耐えきって延長戦へ。

 延長前半5分、本田圭のラストパスを受けようとした岡崎を韓国DFが倒したとして日本がPKを獲得。本田のPKはGKにいったん防がれますが、途中出場の細貝が良く詰めていて日本が初めてリードを奪います!

ザッケローニ監督は5バックにして逃げ切りを図りましたが、延長後半15分ゴール前の混戦からファンジェウォンに押し込まれ同点とされてしまいます。

決着はPK戦に持ちこまれ、長友以外3人がきっちりと決めた日本に対し韓国は全員が失敗。

日本が韓国を破り、決勝戦へと駒を進めました。

 いつものように試合内容を分析しましょう。

前回記事で日本代表の選手が試合にのぞむにあたって一番重要なことは「日本代表の勝利を完璧に信じること」であると書きました。

この一試合を通して、日本の選手たちが時々顔をのぞかせる「自分の弱気」と必死に戦ってるさまが見て取れました。

延長戦終了間際に同点に追いつかれた前後の時間帯は、「韓国にまたやられるんじゃないか」という弱気がピークに達していたのではないでしょうか。

ですが、日本代表の選手たちがそこからきっちり頭を切り換えて、強い気持ちでPK戦のプレッシャーを乗り越え、韓国を破ったことは大変評価できます。

若い選手たちが貴重な実戦経験を積み、自分の弱さに打ち勝って精神的に一回り大きく成長できたことも日本サッカー界にとって得がたい宝物となりました。

 ただ冷静に韓国の試合内容を見れば、彼らが決して高度なサッカーをやっていたわけではなく、浮き球を放りこんでゴリゴリのパワープレーに頼ったワンパターンのものでしたし、当たりの強さは別としても個の技術や組織力・アタッキングサードでの崩しの創造力といった面では、日本の方が明らかにレベルが上でした。

にもかかわらず相手と互角の試合をやってしまったのは、日本が韓国をリスペクトしすぎてしまったことが原因だったと思います。

韓国のDFやボランチはハイボールには強いものの、速いショートパスで揺さぶられると日本の攻撃についていけてませんでした。

日本は自信を持って始めから自分たちのサッカーをやりぬくべきでしたが、立ちあがりから動きが硬く相手に先制されてから「点を取るしかない」と開き直れて、そこからようやく本来のサッカーができるようになりました。

同点ゴールをあげた後、流れがこちらに来ているうちに一気に逆転ゴールまでたたみかけ、90分間で韓国をしとめてしまうべきだったと思いますが、「『強い韓国』と1-1だからOK」という意識が強くなったのか、日本は90分で引き分けがあるようなゲーム運びをしてしまいました。

攻撃に関しても、韓国をリスペクトしすぎて「大事な試合だから」ということで選手ひとりひとりがボールを大切に持ちすぎてしまい、パスやシュートに思い切りが無くなってカタール戦までの流れるようなパス回しが徐々に消えていってしまいます。

それを象徴するシーンが後半開始直後、長谷部選手のパスを受けて香川選手が絶妙のターンで相手DFと1対1になったプレーです。

香川選手の技術力ならワンフェイントいれてチャドゥリの前からシュートをゴールへたたき込むことは十分可能だったと思いますが、迷って迷ってドリブルしているうちに相手が戻ってしまいシュートチャンスそのものが無くなってしまいました。

この試合、日本はこういうシーンが多かったですね。

「大事な試合」ほど選手はボールを大切に大切に持ちたがるという本能を持っていますが、アタッキングサードにおいてはその本能にあえて逆らって思い切ってシュートやラストパスが出せる選手こそが、世界でトップクラスにのぼりつめることができるのではないでしょうか。

この試合、日本の選手が自分たちのポテンシャルに気づかず、韓国を過剰にリスペクトしてしまったことで自分自身を苦しくしてしまったと思います。

次の試合に向けての課題となりました。

それでも相手の中心選手パクチソンにほとんど仕事をやらせませんでしたし、韓国を破って決勝に進んだことで、次の試合からは揺るぎない自信を持って戦えることでしょう。

 具体的な戦術面では後半以降、守備の時にDFラインを自分のペナルティエリアの中まで下げてしまい、ボランチがDFラインに吸収されてしまった点が気になりました。

そのため南アフリカでのカメルーン戦後半みたいに防戦一方になってしまう原因となりました。

大会5試合めということで疲れているとは思いますが、怖がってDFラインを下げすぎず、DFとMFで2つの守備ラインをつくってコンパクトな陣形を保ちつづけ、DFがはね返したボールをMFが拾ってクリアしたり反撃につなげたりして欲しいです。(特にヨコの間延びに注意)

 ザッケローニ監督の采配面では、延長戦でリードした後5バックにして守り切ることを選択しましたが、イタリア代表ではあれで守りきれるのでしょうけれど、守備の文化が南アフリカW杯で根づいたばかりの日本ではどうでしょうか。

気持ちが受身になりやすい日本人の民族性からすると、攻撃にフレッシュな選手を入れて前がかりになって守備が手薄になった相手のウラを3人ぐらいで突いて、韓国にトドメを刺すゴールをあげてしまったほうが良かったかもしれません。

ザッケローニ監督も、アジアのデルビー(イタリア語でダービーマッチのこと)に影響されて采配が慎重になりすぎたのかもしれませんが、日本人の民族性を良く理解する機会となったことでしょう。

 PK戦についてはサウジ戦の記事で、「PK戦はなんとか日本が先蹴りを取って相手にプレッシャーをかけたい」と書きました。

統計をとったわけではありませんが私の経験上、PK戦は先蹴りの方が勝率が良いイメージがありました。南アフリカでのパラグアイ戦、日本はどちらだったか皆さんは覚えていますか?

PKを蹴った各選手の強い精神力もすばらしかったのですが、遠藤選手が良くコイントスで先行を取ってくれたと思います。彼の強運にも感謝です。

 選手個々では、岡崎選手が本当に良いですね。

この大会で一番成長しているのは彼だと思いますが、ゴールへの強い意識、攻撃シーンにどんどんからんでいく積極性と、岡崎選手が日本の攻撃をぐいぐい引っ張っています。

攻撃の選手で韓国に向かって互角以上にファイトしていたのは、岡崎選手ぐらいでした。

香川選手や本田選手も彼の姿勢から見習う点はとても多いです。

ゴールした前田選手も、ゴール前で相手DFを外してフリーになったり、別の選手をフリーにさせるような動きがすばらしいですね。

逆に、延長終了間際に安易にファールして同点のきっかけとなるセットプレーを与えてしまった、本田拓選手の試合の入り方はややイージーだったのではないでしょうか。

 アジアカップ準決勝を舞台とした日韓戦。

日本の若い選手たちが精神的に一回り大きく成長し、韓国を破って決勝進出を決めました。

苦しみながらも、決勝へ勝ちぬきという結果をきっちり出したことはとても良かったと思います。

この大会の総決算となる決勝戦は、自分の力を完璧に信じて絶対に優勝を勝ち取ってくれることを強く信じています。



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 2011.1.25 サーニ・ビン・ジャシムスタジアム(ドーハ)

       日本  2  -  2  韓国
            (PK3-0)

      前田 36'     キ・ソンヨン 23'(PK)
      細貝 97'     ファン・ジェウォン 120'


   GK 川島         GK チョン・ソンリョン

   DF 長友         DF ファン・ジェウォン
     岩政           チョ・ヨンヒョン
     今野          (キム・シンウク 103)
     内田           イ・ヨンピョ
                  チャ・ドゥリ
   MF 遠藤
     長谷部        MF イ・ヨンレ
    (本田拓 117).      パク・チソン
     香川           ク・ジャチョル
    (細貝 87)        キ・ソンヨン
     本田           イ・チョンヨン
     岡崎          (ソン・フンミン 82)

   FW 前田         FW チ・ドンウォン
    (伊野波 106).     (ホン・ジョンホ 66)




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■準決勝の日韓戦、傾向と対策

 アジアカップ2011、日本の準決勝の相手は韓国に決まりました。

試合がとても楽しみです。

それでは準決勝の対韓国戦に向けて、傾向と対策を考えておきたいと思います。

これまで20年近く韓国の試合を見てきた経験を踏まえれば、彼らのサッカーは「先行逃げ切り型」というイメージがあります。

いわゆる80年代までの「イングランドスタイル」と似ていて、フィジカル(体の当たり)の強さとパワーを前面に押し出したサッカーで、90分持つかどうかなんておかまいなしに相手に猛烈なプレスをかけ続け、ボールを奪ったらタテに早いパスをフィジカルの強い前線の選手にシンプルに当ててくる、フィジカルの強さを生かした空中戦でのヘッドやミドルシュートで先制したら、カウンターを狙いつつ堅い守りで逃げ切ってしまう、そういうスタイルを思い浮かべます。(もちろん韓国が先制されればこの限りではありません)

反面、後半30分ぐらいになると前半飛ばした分さすがに運動量が落ちてきます。

次の試合もそういうゲームプランで来るかはわかりませんがもしそうであれば、日本が勝つためには、少なくとも後半30分まで続く相手の猛烈なプレス守備とタテに速い攻撃をあわてず騒がずしっかり我慢して絶対に先制点をやらない、冷静さを失わず自分たちのやろうとしているいつものスタイルでリズム良くパスを回してしんぼう強く攻撃する、たとえ後半30分まで同点であっても、チーム全員が共通理解を持って後半30分以降相手の運動量が落ちてきた好機を逃さず、日本が勝利を決定づけるゴールをあげてしまうというのがひとつのゲームプランでしょう。

もちろん後半30分以前に日本が先制点をあげられるならそれに越したことはありません。そこまでに日本が3点リードしていたら最高の展開ですね。

日本代表の選手がまずやるべきことは、韓国相手だから特別やらなければいけないということではなくすべてはサッカーの基本なのですが、守備ではタテヨコにコンパクトな守備ブロックをつくって相手にスキを与えない、球際の競り合いに絶対に勝つ、神経をとぎすましてこぼれ球には相手より先に反応して奪う、相手のボール保持者をフリーにせず必ず一人が正対してシュート・パスのコースを消す、カタール戦で岩政選手のマークのゆるさが気になったのですが日本のゴール前での空中戦は必ず相手に体を寄せて自由にやらせない、ということになります。

守備でもう一点、相手のロングボールは日本のゴール前でバウンドさせず必ずヘッドでダイレクトにクリアすべきでしょう。一番やってはいけない高リスクなプレーは、バウンドさせてしまったボールを日本のDFが自軍ゴールへ向かって追いかけるようなパターンです。

攻撃では、ボールを持ちすぎてしまうと相手のプレスにかかりやすくなるので、シンプルにリズム良くどんどんパスを回して相手のプレスを空回りさせうかつに飛びこめないようにしてしまう、パスを受けるときは相手ゴールに背を向けるのではなく半身になって受けることでパスを回りやすくする、そしてバイタルエリアに入ったらまずプレーの選択肢をシュートに置くこと、クロスも無駄に切り返さずできるだけダイレクトに正確なクロスをあげること、という点が重要です。

選手のメンタル管理の面では、「マンチェスターU所属」といった相手がしょっている看板をリスペクトしすぎないこと。

むしろ自分たちの力がどれくらい通用するか試す絶好のチャンスですから、パクチソンやイチョンヨンにはどんどんチャレンジしていったらどうでしょうか。

そして一番重要なのは、日本代表の勝利を完璧に信じること。

この試合と過去の対戦成績は一切関係有りませんし、新しい歴史をどうつくるかは常に自分たち次第です。

それではアジアカップ準決勝という絶好の舞台が用意された日韓戦、私は日本の勝利を完璧に信じています。




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■日本代表、のどもと過ぎれば熱さ忘れる

 今日は図をたくさんつくったので記事作成に時間がかかってしまいました。

 さてアジアカップ2011準々決勝、日本対カタール戦は荒れた試合となり、一人少ない日本代表が3-2でカタールを振り切り、ベスト4へと進出しました。

対戦相手のカタールは、ほぼ全員が自国リーグでプレーしています。

10年以上も前のデータも含めて「日本はカタールが苦手」なんて言うのはナンセンスで、ホームでもアウェーでも日本が勝利できるぐらいの差があると戦力評価していましたが、こちらが一人少ない状況から2点取って3-2で逆転勝利という結果は良かったです。

しかしながら、地獄と天国がクルクル入れ替わって観客は面白かったのかもしれませんが、「プロの視点」から見れば日本代表の試合内容は決してほめられたものではありませんでした。

サウジに5-0で勝って「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」なのか、日本はヨルダン戦・シリア戦で痛い目にあったこともすっかり忘れて、相手をナメて油断しきった状態にチームの雰囲気が逆戻りしてしまいました。

 試合経過をおさらいしておきましょう。

ヨルダン戦・シリア戦のようにキックオフ直後からチーム陣形が前後に間延びした日本代表を見て、嫌な予感がよぎります。

日本の選手の頭の中は95%攻撃のことで占められており、センターバック2枚を残して8人がガンガン攻め上がってしまうなど、イージーな試合の入り方をしてしまいました。

これに対してカタールは2トップ、特にフィジカルの強いセバスチャンにロングボールを当てて、こぼれ球を拾ってからのカウンター狙い。

日本の最終ラインで2対2の状況が続くという大変危険な状態。

9分、カウンターからセバスチャンがシュート、今野に当ったこぼれ球をアルハマドがすべりこみながらシュート、なんとかGK川島がCKへ逃れましたがヒヤッとさせられます。

12分、オフサイドぎりぎりでウラへ抜けたセバスチャンが吉田を抜いてシュート、カタールが先制しスタジアムの雰囲気が騒然としてきます。

ところがカタールは日本の攻撃力を恐れすぎていて、プレスもかけずにただひたすら自陣にベタ引き状態になって墓穴を掘ります。

25分、それまできれいにパスをつなごうとしすぎていた日本が、長友のミドルシュートで目を覚まします。

28分、香川→本田とつないで本田が相手DFのウラへパスを出し、ノーマークで抜け出した岡崎がボールを浮かしてGKをかわし、最後は香川がつめて同点に。

31分、セバスチャンからY.アリにパスが出てシュート、ゴール左へ外れましたがカタールのカウンターに日本の守備が不安定な状況は変わりません。

 後半立ちあがりカタールが攻勢をかけてきますが、ハーフタイムで監督から修正指示があったのか日本はいくぶんコンパクトな陣形に戻れたことで守備が安定し、これをいなします。

しかしホッとしたのもつかの間、16分に吉田が長友に出したパスがミスとなって相手にかっさらわれ、Y.アリを倒したとして吉田が2枚目のイエローで退場。

続くカタールのFKは川島がニアを破られて1-2とカタールにリードを奪われます。

一人少ない状況で1点を取らなければいけないというシリア戦とまったく同じ大ピンチに追いつめられました。

ところが、リードすると日本を恐れすぎるカタールが引きすぎてしまい自滅というパターンを繰り返します。

25分、本田圭のスルーパスが岡崎に当ってこぼれたところを香川が拾ってウラへ抜け出し、GKとの1対1を冷静に見切ってゴールに流し込み、値千金の同点弾。

一人少ない日本に対しカタールは猛攻をしかけてきますが、カタールのシュートやCKの雨あられをしのいだ後の44分、

長谷部のパスを受けた香川がまたしてもウラへ抜け出し、香川は相手選手に倒されましたがこぼれ球を伊野波がゴールへ蹴りこんで3-2と逆転します。

長めのロスタイムも守りきり、日本が準決勝へと駒を進めました。

 それでは試合内容を分析しますが、サウジに5-0と大勝したせいか、本田選手が戻ってきたせいか知りませんが、この試合の日本代表はシリア戦以前の、相手をナメきった油断しきった状態に戻ってしまいました。

それが一番良くあらわれていたのが、チーム陣形の間延びと攻守のバランスの悪さ。

カタール代表の「個の能力」「チームの組織力」を見れば、日本がサウジ戦のようにちゃんとコンパクトな守備ブロックをつくっていれば、2-0か3-0できっちり勝てた試合でした。

守備はザルでも攻撃力や選手の技術はカタールよりサウジの方が上だったと思います。

そもそもヨルダンにしろシリアにしろ、日本が点をやるような相手ではありません。

ところがサウジ戦の大量得点でチーム全員の頭の中は攻撃のことでいっぱいで、両サイドバックは同時に上がってしまうし、ダブルボランチもバイタルエリアを広く空けて攻めあがってしまうし、日本は2人で守って8人で攻め、しかも最終ラインに残っているセンターバックやサイドバックがオフサイドラインさえそろえないという油断しきった状態。

この試合もシリア戦以前と同様、日本の4バックがヨコに間延びしていることが守備の不安定さにつながっています。

今野選手もそういう傾向がありますし特にセンターバックの吉田選手がそうなんですが、彼が間延びの原因となっているケースが多いです。

こちらのサイドバック(SB)がボールを持った相手選手に応対しているときでも、吉田選手がそちらへ向かってスライドせずにゴール前中央にいるので、ゴール前に危険なスペースをつくってしまうばかりかSBまで遠すぎてカバリングさえできません。(下図)

スカスカ2
(クリックで拡大 以下同様)

逆サイドでこちらのSBと今野選手が相手に応対している時でも、そちらへスライドせずに吉田選手はゴール前中央にいるケースが多いです。

現代のサッカー戦術では、センターバックが常にゴール前中央にいること=適切なポジショニングではないんですね。経験の浅い吉田選手はまだそこがよく理解できていないようです。

さらにこの試合、遠藤・長谷部の両ボランチがイケイケで攻め上がっていたので、センターバックの前のバイタルエリアを広く空けていたことも、ロングボールを2トップに放りこんでこぼれ球を拾って攻めの基点をつくるという、決して高度とは言えないカタールの攻撃を有効にしてしまいました。(下図)

スカスカ3

アウェー戦ではレフェリーが、微妙な判定の場面では常にホーム側に有利な笛を吹くというのがわかっているのに、日本代表全体として大変軽率な守備へのアプローチをしてしまいました。

 そうではなくて、たとえ相手が誰であろうとボールを取られたらすばやく切り換えて、タテにもヨコにもコンパクトな守備ブロックをつくる。

DFラインとMFラインの間を10m以上空けることなく二つのラインをつくって、きっちりバイタルエリアを締めておく。


こちらが4-2-3-1で相手が4-4-2の場合、相手の攻撃的MF2枚をこちらのボランチで見るのか両SBが見るのか、その受け渡しが一つのポイントになってくるのではないでしょうか。

例えば相手FWがサイドに流れたら攻撃的MFをボランチが見て(1)、相手MFがサイドへ流れたらSBが見る。(2)そして相手の2トップと攻撃的MFがうまく連動できないようにする必要があります。(下図)

コンパクト2


 攻撃面でも、チームの間延びが原因でサウジ戦よりも攻撃のリズムがやや悪かったように思います。

サウジ戦とは違ってこちらの陣形が間延びしていて、攻撃の選手が早い段階から相手陣内深くへどんどん攻めこんで行ったために、相手の最終ラインが下がってウラのスペースが狭くなってしまいました。

にもかかわらずサウジ戦の先制点で味をしめたのか、岡崎選手を中心にみんながみんなウラへ抜けてパスを受ける動きをしてしまい、攻めのパターンが単調で強引すぎました。

確かに前半、浮き球のパスから岡崎選手がウラへ抜けるプレーで1点取りましたが、あれはウラへ抜けるプレーが上手くいったというよりは、カタール側の誰も岡崎選手を見ていなかったことが原因といえるでしょう。

強豪レベルではまずあり得ない守備です。

サウジ戦で破壊力抜群だった、サイドからのアーリークロスをヘッドで狙うという攻撃もほとんど影をひそめてしまい、前田選手が消えてしまっています。

陣形が間延びしたことで選手同士の距離が離れすぎ、一本一本のパスが長くなって相手がパスカットしやすくなったことで、サウジ戦よりもパスの回りがやや悪くなってしまいました。

日本のチーム陣形が間延びしてしまったことで守備が不安定になり、それが原因で攻撃のバランスも悪くなっていました。

攻守のバランスをしっかりとって、コンパクトな陣形を維持しながらチーム全体で前進したり後退したりすることで、サウジ戦のように攻撃も守備も上手くいくようになるでしょう。

次の試合までしっかり練習して欲しいです。

 選手個々では、吉田選手がボロボロでしたね。

1対1からセバスチャンの個人技にやられて先制点を献上し、後半も経験豊かなセバスチャンに体を上手くつかわれてイエローをもらうなど、退場への伏線をはられます。

そして自分のミスパスから相手にボールを奪われファールで止めて退場処分。

アウェーではレフェリーが相手有利の笛を吹くのはわかっているわけですから、自陣深くでは今まで以上に安全第一なプレーが求められたはずなんですが、自分が退場してチーム全体に迷惑をかけた上に、それが原因となったセットプレーが失点につながり大ピンチ。

若さと経験の無さといえばそれまでかもしれませんが、サウジ戦のあと「相手が強くなかった」とコメントした吉田選手に油断とおごりがあったのではないでしょうか。

吉田選手にとっては一生忘れられない試合になったと思いますが、幸いにしてチームが勝ったから良かったものの猛反省して欲しいです。

戻ってきたGK川島選手も出来はいまいち。

カタールの2点目ですが、壁が少なかったとはいえニアを抜かれるのはGKのミスと見なされてもしかたないのではないでしょうか。

吉田選手の退場でフィールドプレーヤーが9対10となったあのFKの場面では、全員がゴール前へ戻ってしまうのではなく香川選手あたりが前線ではるようにして、カタール側が香川選手に2人のマークをつけてくれば、ゴール前は同数になって守りやすくなるはずですから、その方が良かったのかなとも思います。

本田選手も、ヨルダン戦・シリア戦よりは球ばなれが早くなった点は評価できますし、彼のラストパスが2点につながった点も良かったのですが、サウジ戦よりはチーム全体のパスの回りが悪かったですね。

もっとシンプルにパスをはたけるはず。

そして2ゴールの香川選手ですが、前回記事で述べたように私は決して彼の状態が悪いとは考えていませんでしたが、ようやく彼の得点力が爆発してくれました。

シリア戦以前はチーム全体の攻めのリズムが悪く、それが香川選手に伝染したような感じでしたが、サウジ戦ではパスが良く回って香川選手も攻撃にからめていたので、ゴールは時間の問題だと思っていました。

 準々決勝のカタール戦、一人少なくなっても最後まであきらめずに逆転勝ちという結果を出したことは良かったです。チームが着実に成長していると言えるでしょう。

ただ、シリア戦の記事で「日本代表最強の敵は自分たちの心の中にひそんでいるのかもしれません」と書きましたが、サウジ戦の大勝によってチーム全体のムードがだらけ、相手を格下扱いしてナメて油断しきったままゲームに入って痛い目を見るという、ヨルダン戦・シリア戦とまったく同じ間違いを繰り返してしまいました。

誰だって間違いや失敗はあります。

全力を出した結果、上手く行かなかったのであればしょうがありませんし、一度の失敗から学んで同じ間違いを繰り返さなければ良いだけのことです。

ですが、相手を甘く見て油断したり手を抜いたりした結果やられてしまう、同じミスを何度も繰り返すことほど残念なことはありません。

私はそういうプレーを一番嫌います。

闘莉王選手のような怖~い先輩がいれば、「お前ら、勝つ気あんのかよ!!」とカミナリが落ちるのでしょうが...

若い選手が多いこともあるのでしょうが、長谷部キャプテンを中心にもう一度チーム全体の雰囲気がピリッとなるように引き締めて欲しいです。

ザッケローニ監督も言っているように、代表はクラブと違って試合が少なく練習の時間も短く、成長のための時間が限られます。

半年や1年なんてあっという間です。

この試合、自分たちの油断から危うく「真剣勝負の公式戦」という貴重な成長の場を失うところでした。

J1からユースにいたるまで全ての人にいえることですが、代表に呼ばれてザッケローニ監督と1試合でも多く一緒にサッカーをしないとサッカー選手として本当に損をすると思います。

それぐらい彼はサッカーのことを良く知っています。

日本人がこういうレベルの指導者に教えてもらえるチャンスはそうそうありません。

 対戦相手がどこであれ、次の準決勝こそ日本代表の選手全員がピリッと引き締まり全力を出し切って、きっちりと勝利してくれることを強く望みます。

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  2011.1.21 サーニ・ビン・ジャシムスタジアム(ドーハ)

       日本  3  -  2  カタール


      香川  28'      セバスチャン 12'
      香川  70'      モンテジン  63'
      伊野波 89'



      GK 川島       GK ブルハン
             
      DF 長友       DF ハリファ
        吉田          ラジャブ
        今野          I.アブドルマジド
        伊野波        (ムフタハ 14)
                     アルガニム
      MF 遠藤
        長谷部      MF アルハマド
        香川          (アルマリ 90+)
       (永田 90+).      ローレンス
        本田          W.アブドルマジド
        岡崎          アルサイード
                    (モンテジン 59)
      FW 前田       
        (岩政 64)    FW Y.アリ
                      セバスチャン



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■日本代表、ピリッと引き締まった好ゲームでトップ通過

 決勝トーナメント進出がかかったサウジアラビアとの第三戦は5-0の大勝という結果となり、日本代表はグループBをトップ通過することができました。

2位通過はヨルダンでしたが、日本が彼らに変な自信をつけさせてしまいましたね。

 さて今回の対戦相手・サウジは、原則として自国のスター選手を海外に出さないという方針をとっているはずで、全員が国内リーグでプレーしています。

ホームでもアウェーでも日本が勝利できるぐらいの戦力差があると考えていましたが、敗退が決まっているサウジのモチベーションの低さを割り引いても、5-0の大勝という結果は大変良かったと思います。

試合内容も前の二試合と比べて、かなり良くなってきましたね。


 いつものように試合経過を追っていきましょう。

両チーム、立ちあがりは互角。

2分、サウジの早いリスタートに日本側の反応が一瞬遅れ、抜け出したアルカハタニがボールを胸で落としてシュートするも、ゴール右へ。

しかしコンパクトな守備ブロックをつくって相手の攻撃をいなし、ワンタッチ・ツータッチでリズム良くボールを回す日本が徐々にペースをつかんでいきます。

8分、フリーでボールを受けた遠藤が高めのサウジDFラインのウラへパス、サウジDFがオフサイドラインをそろえない初歩的なミスを犯すなか、抜け出した岡崎がパスを受けループでGKをかわして早くも先制点ゲット!

13分、左サイドから香川がクロス、サウジDF陣がまったくのボールウオッチャーとなるなか、岡崎がゴール前へ飛びこみヘッドで2点目。

19分、柏木→長友とダイレクトパスがリズム良くつながって、長友のファーストタッチはとても正確なクロス。相手GKの直前で前田が右足アウトサイドを使った技ありシュートで3点目。

25分ぐらいから日本はややペースダウンしサウジに押し込まれますが、コンパクトな守備ブロックをつくって決定的な仕事はやらせません。

35分すぎから日本は試合の流れを取り戻します。

42分、再び小気味良いパスの連続からチャンスをつくり、遠藤から岡崎、前田のスルーをはさんで第三の動きでゴール前中央を突破した香川がパスを受けてGKと1対1となりますが、GKを抜こうとした香川のボールタッチが大きくなりシュートチャンスを逸します。

後半も日本ペース。

6分、岡崎のパスを受けた途中出場の伊野波がダイレクトでこれまた正確なクロス、GK直前に走りこんだ前田がヘッドで確実にミートし4-0。

その後長く見せ場のない状態が続きましたが、35分バイタルエリアでフリーで前を向いた前田がパスし、それを受けた岡崎がためらうことなくゴールへ向かってターンし強烈なシュート!

GKがさわりましたが防ぎきれずボールがサウジゴールへ突き刺さって5-0とダメを押します。これで岡崎選手はハットトリック。

38分、サウジのFKからシャルフーブが意表をついたシュート!クロスにヤマをかけていた感じのGK西川でしたがよく反応してセーブしました。

結局、日本がサウジに5-0と大勝しました。

 それでは試合内容を分析しますが、本田圭選手や松井選手の負傷欠場ということでチーム全体に危機感が走ったせいでしょうか、良い意味で緊張感のあるピリッと引き締まったゲームを、この大会初めて日本代表はやることができました。

ヨルダン戦シリア戦の記事では具体的な戦術上の問題点をいくつか指摘しておきました。

守備では、タテ・ヨコにコンパクトな守備ブロックがつくれていないこと。

攻撃では、この3点を指摘しておきました。

1.持てるからといってボールを持ちすぎず、少ないタッチでどんどんパスを回していくこと。

2.中央突破にこだわりすぎず、もっとサイドからの速いクロスを使うこと。

3.シュートへの意識を高めること。

「サウジ戦ではこうした問題点がかなり修正できた、だから勝てた」という極めて論理的な結果になったと思います。

 まず守備では、この大会で初めて日本代表はコンパクトな守備ブロックをつくって相手の攻撃に対応していました。(ヨルダン戦やシリア戦の録画映像と見比べてください。それがはっきりとわかるはずです)

おかげで90分間を通して、ほとんど決定的なチャンスを相手に与えることはなかったと思います。

これまでの二試合のような守備の不安定さがかなり改善されました。

守備が安定してくると攻撃にも良い影響を与えます。

特に岡崎選手の先制点は日本のコンパクトな陣形が導いたものと言えます。

サウジはベタ引き戦術をとってきませんでしたが、もし日本の陣形が間延びしていて早い段階でFWや2列目が相手陣内深くへ攻めこんでしまうと、ウラを取られたくないサウジDF陣が引いてしまい、ウラのスペースが狭くなってしまいます。

つまりこちらの陣形が間延びすることで、ウラへ走りこむスペースを自分から消してしまうことになるわけです。

しかしこの試合の日本代表はコンパクトな陣形であったために相手のウラに広いスペースが空いていて、遠藤選手の浮き球のパスと岡崎選手のウラへの飛び出しが成功しやすい状況にありました。

ウラへの飛び出しが好きな岡崎選手はこうした法則を良く覚えておきましょう。ブンデスリーガで生き残りたいなら必須の戦術理解です。

 「持てるからといってボールを持ちすぎない」という課題についても格段に良くなっています。

前の試合までは選手一人一人がボールを持ちすぎて、相手が何人もいるところへ単騎ドリブルをつっかけていってはボールを失い、攻撃のリズムが悪くなっていました。

サイドからクロスを入れるときでも、無駄に何度も切り返すので相手の守備陣形が整ってしまうし、ゴール前で合わせる選手もその都度動き直さなければならず、攻撃が「各駅停車」になっていました。

ところがこの試合は柏木選手がトップ下に入ったおかげでしょうか、中盤の組み立てやラストパスにおいて少ないタッチ数でどんどんパスを回して行ったので日本の攻撃リズムがとても良く、周りでパスを受けたりシュートしたりする選手もとても動きやすくなっています。

 「サイドからの速いクロスを使え」という課題についても、実際にクロスから前田選手が2ゴール・岡崎選手1ゴールと破壊力抜群でしたね。

長友・伊野波の両サイドバックが無駄に切り返さず、相手の陣形が整わないうちにダイレクトで正確なクロスをあげたことも勝因でした。

 日本の選手は「シュートへの意識」も高かったと思います。アタッキングサードではプレーの優先順位をまずシュートに置くということができていました。

岡崎選手の3点目はシュートへの意識の高さが良く表れていました。

これまで日本人選手でありがちなのは、あの場面でもシュートではなく「確率の高い選手」を探してまずパスを考えてしまうのですが、岡崎選手は迷わず自分でボールを持って前方へターンしそのままシュートを打っていきました。

シュートはややGK正面でしたが、岡崎選手の積極性と強気な気持ちがボールをゴールへとねじ込みました。

サウジのモチベーションの低さはあったものの、この試合の日本代表は「勝つべくして勝った」といえるでしょう。

 次の試合へ向けての課題があるとすれば、後半の後半、守備ブロックがややばらけてしまったので、90分・120分と攻守にわたってコンパクトな陣形を保てるよう完成度をもっとあげていくということがまず一点。

こぼれ球への反応がまだ遅い場面も見られるので、集中力を高めて球際の競り合いには絶対に勝つということ。

そして一番重要なのが、日本のゴール前で時たま見られるマークの甘さをきっちり修正すること。(特に内田選手)

たとえ日本が圧倒的に攻撃していても、たった一度でも自分のゴール前でボールウオッチャーになったり出足が一歩遅れたことでフリーにしてしまった相手選手のヘディングシュートを食らい、それで勝敗が決まってしまうことがあるのがサッカーという競技の怖さです。

次の試合からはいよいよ決勝トーナメントの一発勝負。

自軍ゴール前では水も漏らさぬ鉄壁マークで、次も完封をめざして欲しいと思います。

一発勝負といえば決勝トーナメントからはPK戦がありえます。

常に90分内での日本代表の勝利を祈っていますが、もしPK戦になるようなことがあった場合、PK戦はなんとか日本が先蹴りを取って相手にプレッシャーをかけたいのと、プレッシャーのかかる1人目・2人目や4人目・5人目には普段あまりシュートしないDFの選手は避けた方が良いというのが個人的な考えです。

まあ知識と経験が豊富なザッケローニ監督のことですからそのへんも手抜かりはないでしょう。

 選手個々では、第一戦から好調を維持している岡崎選手が体を張ったキレのあるプレーでハットトリック。素晴らしいです。

前田選手も過緊張がとれたみたいで、シュートチャンスで冷静さを保ったまま2ゴールは良かったですね。

この試合日本の攻撃が機能したのは、トップ下に抜擢された柏木選手が少ないタッチ数でどんどんパスを回してチーム全体の攻撃リズムを良くしたことが大きかったです。

攻撃の中心選手は自分のゴールやラストパスだけでなく、こういう役割も果たすことがとても大事だと思います。

日本代表にしろCSKAでのゲームにしろ、私が本田圭選手に求めるのはこういうシンプルなプレーですね。それでこそ彼の個性が生きてくるはずです。

W杯前のロシアリーグの試合ではそんなことは無かったのですが、W杯直前の対談企画で「W杯で自分の思い通りにやらなかったので後悔している」という中田英寿氏の発言を聞いてそれが悪い方へ出てしまったのか、本田選手は一度ボールを持ったらなかなか放さない選手になってしまいました。

「自分が攻撃の中心にならなければ」という気持ちはわかるのですが、本田選手がボールを持ちすぎてそのたびに相手にひっかかるので、チーム全体の攻撃リズムやパスの回りまで悪くなってしまいます。

CSKAのスルツキ監督が本田選手をトップ下にしないのは決して意地悪しているからではないと思います。

本田選手もうかうかしていると、代表でもトップ下のポジションを奪われてしまうかもしれません。

 ここまで3試合見ましたが、香川選手も決して状態が悪いわけではないと思います。

前半42分に、遠藤→岡崎とダイレクトパスがつながったところに香川選手が第三の動きで中央突破し、サウジDFを完全に崩したシーンは得点にこそなりませんでしたが、さすがでした。

ただ、ゴールという結果が出ていないことで香川選手はパスを受けた後のことを考えすぎているのか、ボールを受けるときにややプレーが雑になっている気がします。

パスを受けたとき自分の思い通りのところへボールを置けるかどうかでシュート成功率の半分以上が決まってきますので、まずは丁寧なトラップを心がけ、自分の隣のポジションにいる選手がボールを持ったらそちらへ寄って行って、バイタルエリアでボールにからむ回数を増やしていくことでおのずと良い結果が得られるでしょう。

次のゲームでは相手のマークが前田・岡崎両選手に集中することが予想されますし、香川選手にとってはチャンスではないでしょうか。

後半出場の伊野波選手も良かったですね。

内田選手は、ゴール前で相手を一瞬フリーにしたり球際の争いでやや「軽いプレー」が見られますので、やはりうかうかしているとレギュラーポジションが危うくなることでしょう。

競争が激しくなることでチーム全体もレベルアップしていく。
この試合は若い選手をどんどん試し、経験と実績を積ませることができたことも大きな収穫でした。

 最後に余談ですが、この試合を裁いたイルマトフ主審は、手で相手をひっぱったり両手を相手の肩にのせてジャンプするようなプレーを厳しく取る人のようです。

決勝トーナメントで再びイルマトフ主審に当ったら、そうしたレフェリングのクセは頭に入れておいた方が、無駄なFKやPKを与えたりせずに済むことでしょう。 

 この試合、5-0で勝利という結果は大変良かったですし、試合内容もぐっと良くなってきました。

いよいよ次からは、延長・PK戦があり勝負の決着を必ずつける決勝トーナメントに入ります。
たった一つのミスで勝敗が決まってしまうこともある一瞬の気も抜けない戦いが続きます。


対戦相手は地元のカタールで、これが本当のアウェー戦。
地元の大観衆に、審判の判定も影響されかねません。

厳しい戦いが予想されます。

南アフリカでは決勝トーナメント1回戦で日本代表は悔しすぎる思いをしましたから、その思いを次のカタール戦へぶつけて絶対に勝利を勝ち取って欲しいです。


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 2011.1.17 アハメド・ビン・アリスタジアム(アルラヤン)

    サウジアラビア  0  -  5  日本

                     岡崎 8'
                     岡崎 13'
                     前田 19'
                     前田 51'
                     岡崎 80'


    GK W.アリ          GK 西川

    DF シュハイル       DF 内田
      ハウサウィ          (伊野波 46)
      アルハルビ          今野
      カミル             吉田
                      (岩政 63)
    MF アハメド           長友
      アブド
      (アブシャギル28)   MF 長谷部
      (ムタズ 46)         遠藤
      シャルフーブ        (本田拓 87)
      タイシル            岡崎
                       柏木
    FW アルハザジ         香川
      アルカハタニ
                    FW 前田





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■日本代表、まだ足りない「勝負への厳しさ」

 日本代表のアジアカップ第二戦となった対シリア戦は2-1で日本が大会初勝利をあげました。

この試合の相手シリアは、やはり国内組を主力としクウェートやベルギーなど海外でプレーする選手が数人いる程度。

ホームでもアウェーでも日本が勝つぐらいの戦力差があると評価していましたが、2-1で日本の勝利という結果は良かったです。

アジアカップ96でも日本はシリアと対戦していますが、シリアに先制されて苦しみながら高木琢也選手(当時・広島)のゴールなどで2-1と逆転勝利した試合をつい思い出してしまいました。

この試合、同点にされてしかも一人少ない不利な状況から勝ち越し点を奪ったことは評価できますが、内容は良いとは言えないものだったと思います。

 まず試合経過を振り返りましょう。

前半は、引き分けでも十分なシリアが引きぎみで守るのに対し、勝たなければならない日本が押し込むという展開。

10分、右サイドからの内田のクロスをゴール前で完全にフリーになった前田がヘッド、しかしゴール左に外してしまいます。

18分、シリアがカウンターからワントップへロングボールを放りこみ、日本の選手がヘッドでクリアしましたがゴール前へボールがこぼれ、反応良くJ.アルフセインがシュートするも空振りで助かります。

25分過ぎぐらいから徐々にシリアの元気が無くなっていき、日本が相手にとって危険なチャンスをつくりはじめます。

34分、遠藤の左CKから競り勝った今野がヘッドするが惜しくもGK正面へ。

35分、本田のドリブルから香川がパスを受け、ゴール右へ持ちこんでから切り返しシュート! これは一旦防がれますが松井が拾って相手をブロックしながらバックパス。長谷部が正確なシュートをゴールへ流し込み日本が待望の先制点。

 後半はロッカールームで監督からカツが入ったのか、シリアが攻勢に出てきます。

6分、シリアのロングスローがバウンドしたところをハティブがシュートに行くが、GK川島が胸ではじいてCKへ逃れます。

17分、CKからディアブが強いヘディングシュートを放つも川島の正面で助かります。

26分、中盤でボールを奪われ最終ラインで4対3の危険な状況をつくられてしまいます。一旦はボールを奪い返したものの長谷部のバックパスを長友と川島が一瞬お見合い状態となり、出遅れた川島のミスキックがハティブの正面へ。

ゴール前でハティブからのパスを受けようとしたマルキを川島が倒したとして一発退場。そしてPK献上。

線審がオフサイドの旗をあげており日本の選手が猛抗議するも主審は認めず、ハティブがPKを左隅に決めてシリアにとって貴重すぎる同点弾、相手より一人少なくなってしまったこともあり日本のグループリーグ突破に黄色信号が点灯します。

一人少ないながらも死に物狂いで攻め始めた日本。

35分、今度はペナルティエリアに侵入した岡崎をシリアの選手が二人がかりで倒したとして日本がPKゲット。
本田が正面に蹴ったボールは横っ飛びしたシリアGKの両足の間を抜けていきヒヤッとさせられましたが、再び日本がリードします。

43分に強烈なシュートを西川が防いだのがシリアのラストチャンスで6分という長いロスタイムを守りきり、苦しみながらも最後まであきらめなかった日本が勝ち点3を獲得しました。

 それでは試合内容を分析していきますが、ヨルダン戦よりはいくぶん良くなったものの日本代表はまだまだ「勝負への厳しさ」「勝つためのリアリズム」に欠けていると思います。

監督始めフィジカルコンディションの不調を指摘していますが、試合内容が不安定になっている最大の要因は選手一人一人がまだ心のどこかでアジアでの勝負を甘く見ているからでしょう。

相手が「格下」であったり世界のメディアが「日本が優勝候補No.1」と騒ぎ立てたりしていることで、地に足をつけたサッカーができていないのかもしれません。

悪い意味で余裕を持ってプレーしすぎです。

南アフリカW杯におけるデンマークやカメルーンに日本がなってしまい、あの時の日本のひた向きなサッカーを今ヨルダンやシリアがやっています。

シリアがPKを獲得した時、ベンチにいたシリアの控え選手が涙を流してシュートが決まることを祈っていましたが、これに比べて日本の選手たちの心構えはどうだったでしょうか。

この試合における両チームの戦略目標の違いは、最悪引き分けでも良いシリアに対して、日本がグループリーグを突破するためには絶対に勝たなければならないというもので、実力が下とは言え相手のカウンターを警戒しながら守りを固めた相手から先にゴールしないといけないという、日本の方が相手よりも困難なことを成し遂げなければならない状況に追い込まれていました。

日本にとって、この試合は大量点を取るための試合ではなくて、是が非でも勝ち点3を確保しなければいけない試合でした。

W杯ベスト16を経験した今の代表なら、先制したあと引き過ぎる必要はありませんから普通に守備ブロックをつくってシリアの反撃をいなし、1点のリードを絶対に失わないようにリスクマネジメントしながら虎視眈々と追加点を狙うような大人のサッカーができたはずです。

それが「地に足をつけたサッカー」であり「勝利へのリアリズム」というものではないでしょうか。

しかし「格下だから大丈夫だろう」という意識があったのか、その後も高い失点リスクを冒しながら不用意に追加点を狙いに行ってしまいました。

前半終了まで時間がない中でセンターバックが攻めあがってしまったりと、間延びした陣形のまま3人ぐらいで守り7人かけて相手陣内深くまで攻めこむようなことを繰り返したことは、今の日本代表に「実戦でのしたたかさ」や「勝利へのリアリズム」が欠けていたと言わざるをえません。

選手達もミスの原因は良くわかっていると思いますが、失点の場面はレフェリーのミスジャッジうんぬん以前に、絶対に同点にさせてはいけないのに日本の最終ラインが整わない状態で4対3の危険な状況をつくられたのがまず敗因で、長谷部選手が前方へ大きくクリアしておけばリスクはもっと少なかったはずですが、相手選手が3人もプレスをかけてきている中で最終ラインでボールをつなごうとしてバックパスしたのが2番目の敗因、最悪タッチラインへ蹴り出しても良かったのですしバックパスを長友選手が主体的に処理しておけばまだ大丈夫だったはずですが、GK川島選手へボールを譲ってしまったために一瞬出遅れた川島選手のキックミスと一発退場を招いてしまったのが第3の敗因でした。

優先順位
(クリックで拡大 以下同様)

ピッチを三分割して自分達が守るゴールに1番近いゾーンである「ディフェンディング・サード」では、たった一つのミスが即失点につながりますので、シンプルで何よりも安全第一なプレーが求められます。

ましてや絶対に勝ち点3を取らなければ優勝どころかグループリーグ敗退も有り得る状況で、意味の無いハイリスクなプレーを繰り返した日本代表は、「勝負への厳しさ」がまだ足りないと思います。

 守備の組織戦術でも前回指摘したチーム陣形のタテヨコの間延びがほとんど修正されていません。

ここまで日本の守備が不安定なのはこれが最大の原因でしょう。

スカスカ

ヨルダン戦の失点シーンが象徴していますが、上図のように4バックがヨコに間延びしているため、バイタルエリアに危険なスペースを広く空けてしまっています。

これではボランチが一人抜かれると、センターバックのカバーが間に合いません。

日本の選手同士が前後左右に離れすぎていて大きなスペースが空いているために、相手がロングボールを放りこんでくる単純な攻撃でも日本の選手がクリアしたボールを相手に拾われて、2次攻撃・3次攻撃を受けてしまう危険性を大きくしています。

引いた相手から得点するためにリスクをかけなければならない時は前後の間延びは多少やむを得ないところはありますが、相手がどこであれ相手にボールを奪われたら守備への切り換えを早くして、W杯でやったように両サイドハーフが引いてきてフラットな4-4-2で守備ブロックをつくり、相手が使えるスペースを限定しなければいけません。

コンパクト


この試合のように勝ち点3が取れなければ負けに等しい、絶対に1点もやれない状況ではなおさらです。

守備のときチーム陣形が前後左右に間延びしていることはザッケローニ監督もわかっているはずですが、どうして修正しろという指示が出ないのかちょっとわかりません。

選手が自分で気がついて修正するのをあえて待っているのか、それともアジア各国を甘く見て間延びした陣形でも大丈夫だろうと油断しているのか。

どちらにせよ、ディフェンスリーダーの今野選手がリーダシップをとって、若い吉田選手や両サイドバック、さらには遠藤・長谷部の両ボランチに的確な指示を出して守備組織をまとめていかなければなりません。


昨年のW杯やテストマッチのアルゼンチン戦・韓国戦では日本の守備ブロックがまさに鉄壁を誇っていましたが、アジアカップでそれをやめてしまったのは、「格下相手にいちいち守備ブロックなんかつくっていられるか。日本は優勝候補No.1なんだ」という勝負への甘さが、やっぱり心のどこかにひそんではいないでしょうか。

こういうことはフィジカルコンディションの問題とあまり関係ないと思います。

 反面攻撃は、ヨルダン戦よりも少し良くなりましたね。

しかしシュートへの意識がまだ足りず、パスやドリブルで相手を完璧に崩しきってやろうという悪い意味で余裕がありすぎる「格上プレー」も見受けられます。

ボールを支配するものの、前半10分の前田選手のヘディングシュートから20分間ぐらい流れの中からシュートがまったく無かった時間帯があったように思いますし、相手が引いて2人も3人も待ち構えているところへ単騎ドリブルを仕掛けていってボールを失い、時間ばかり無駄にするようなシーンも目立ちました。

引いて守らなければならないようなレベルの高くないチームは、サイドからクロスが入ってくるときボールウオッチャーになりやすい傾向にあります。

サイド攻撃から鋭く曲がって落ちるクロスを上げてヘディングシュートをもっと使っても良かったのではないでしょうか。

 選手個々では、やはり岡崎選手がひたむきな泥臭いプレーでチームに活気を与えていると思います。

前田選手、本田選手、松井選手もヨルダン戦よりは少し調子があがってきたように見えます。

開始10分の前田選手のヘッドは惜しかったですね。

代表で得点していないという精神的プレッシャーがあるのか、力みすぎて頭を振りすぎてしまったようですが、同じサッカーですから難しく考えすぎず、クラブの試合でやっているように普通にシュートすればおのずと結果はついてくるでしょう。

香川選手はフィジカルの強い相手による厳しいマークに苦しみました。トップ下の方が合うのかもしれません。

 一人少ない状況で最後まであきらめず2-1で勝つという結果を出したことは良かったですが、こちらのミスからPKを与えGKが一発退場するなど試合内容、特に日本の不用意なゲーム運びが目につきました。

その最大の要因は、日本代表に「勝負への厳しさ」がまだ足りないからではないでしょうか。

球際の競り合いはまだぬるいところがありますし、こぼれ球への反応もにぶいところがあります。

この試合絶対に勝たなければいけない日本は、0-0の状態でもコーナーキックのときにボールをセットするまで時間をかけてゆっくりやるなどチームに危機感が感じられません。

悪い意味で余裕を持ちすぎています。

他と比べて日本が入ったグループBは決してレベルの高いところのようには見えません。

今はだましだましできても、厳しいグループを勝ち抜いてきて勝負勘が鋭く研ぎ澄まされた抜け目のないチームと負けたら終わりの決勝トーナメントで対戦した場合、ぬるい環境でやってきた日本代表が「格下」相手に思わぬ足元をすくわれかねません。

「格上」や「優勝候補No.1」なんていう意識はきれいさっぱり捨て去って、W杯直前に4連敗したとき、南アフリカで必死にボールを追っていたとき、自分たちがどんなことを考えてサッカーをやっていたのか、もう一度原点から自分を見つめ直して欲しいと思います。

次の対戦相手サウジは、07年アジアカップの準決勝でやられた相手です。

あの時も、1992・2000年とアジアカップ決勝で2度も日本に敗れてリベンジに燃えるサウジに対し、日本は余裕を持ちすぎて相手の攻撃に受けて立ってしまい、2度サウジにリードされて追いついたものの、3度目にリードを奪われた時には、すでに日本には追いつく時間も体力も残されていませんでした。

アジアカップにおける日本代表最強の敵は案外、選手一人一人の心の中にひそんでいるのかもしれません。

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    2011.1.13 スハイム・ビン・ハマドスタジアム(ドーハ)

 
       シリア  1  -  2  日本


   ハティブ 76'(PK)       長谷部 35’
                     本田  82’(PK)



    GK バルホウス        GK 川島

    DF アブドルダイブ      DF 内田
       ディアブ            今野
       サバグ             吉田
       ディカ              長友

    MF J.アルフサイン      MF 遠藤
      (アルアグハ 77)       長谷部
       A.アルフサイン        松井
       イスマイル          (細貝 90+)
       アヤン             本田圭
       アワド              香川
      (ハティブ 46)        (岡崎 65)

    FW アルゼノ         FW 前田
      (マルキ 64)         (西川 74)





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■日本代表、にぶい「戦う意識」

 アジアカップ2011・カタール大会が開幕。

日本の初戦となった対ヨルダン戦は1-1の引き分けに終わりました。

対戦相手のヨルダンは国内リーグでプレーする選手がほとんどで、サウジやキプロスリーグでやっている選手がちらほらという程度。

エジプトの知将・エルゴハリ監督に率いられた2004年のチームはかなり良いサッカーをやっていましたが、近年はパッとした成績を残せていません。

ホームでやってもアウェーでやっても日本が勝利できるぐらい力の差があるというのが当研究所の戦前の評価でした。

それをふまえれば、1-1でドローというのは日本にとって大変残念な結果でした。しかも後半ロスタイムにようやく追いつくという薄氷を踏むような展開。

ただ、ヨルダンがびっくりするような特別な日本対策をやってきたとか、東アジア勢との対戦に特別強いということではないと思います。

むしろこの試合は「日本の自滅」と言って良いでしょう。

試合展開を振りかえります。

 試合は地力に勝る日本が圧倒的にボールを支配し、ヨルダンが引きぎみに守ってプレスをかけてカウンターを狙うというおなじみの展開。

6分、本田のパスを受けた前田がミドルシュートを放つもワクをとらえず。

14分、遠藤のFKは壁にはね返されました。

23分、左サイドを突破した香川がファーサイドへコントロールシュートするもGKがなんとかパンチングで逃れます。

25分、相手クリアを拾った長谷部がミドルシュート、これをGKが前へこぼし吉田が押し込むも残念ながらオフサイド。

40分、ゴール前の細かいつなぎから前田がスルーしたボールを受けた香川がGKと1対1、香川が放ったシュートはGKが防ぎます。

45分、自陣深くで日本の選手同士が衝突、ミスからボールを相手に奪われてしまい、ラストパスを受けたハサンのシュートが吉田の足に当って角度が変わりヨルダンが先制。

後半も同じような展開が続きます。

10分、本田の曲がるFKはGKがセーブ。

16分、ゴール前でパスを受けた香川がドリブル突破し、最後はループシュートするもGKがキャッチ。

18分、後半出場の岡崎が左サイドを突破しセンタリング、これを長谷部がすべりこみながらダイレクトシュートするが惜しくもゴール右へ。

日本は選手を次々に交代させるものの、引いて守るヨルダンをなかなか崩せません。

ロスタイムに入ってようやく選手のお尻と闘争心に火がつき、ショートコーナーから長谷部のクロスを吉田が打点の高いヘッドでゴールにねじ込み、どうにかこうにか同点に。

そして直後にタイムアップ。

最悪の事態は避けられたものの、痛い痛い引き分けとなってしまいました。

 それでは試合内容の分析に入りますが、内容もあまり良くありません。

その原因は、闘争心にあふれ勝利に飢えた「戦士の集団」にチームがまだなっていないこと。

50/50のボールへの日本の選手の反応がにぶく、棒立ちになっているボールウオッチャーが多くてこぼれ球をなかなかマイボールにできませんでした。

相手のボール保持者への体の寄せも足りず、中盤ではフリーでボールを持たれ、ゴール前では危険なヘディングシュートを何度か許してしまいます。

前半に失点しても「相手は格下だから、点はいつでも入るよ」といった感じで、後半ロスタイムに入るまでチームに危機感というものが感じられませんでした。

こういったことはサッカーで勝つ上で、個人技やチーム戦術うんぬん以前の問題です。

攻撃の戦術面でも「相手が格下だから簡単にできるだろう」という意識が強いのか、日本の攻撃の選手はメッシみたいにドリブルで何人も相手を抜くことや、アルゼンチン得意の中央突破みたいにゴール前で細かいパスをつないで相手を完璧に崩すことにこだわりすぎていたと思います。

「シュートは相手を完璧に崩してから」というこだわりから各選手がボールを長く持ちすぎで、シュートへの意識が低かったですね。

日本の選手がバイタルエリアに入ってもプレーの第一選択肢をシュートではなくパスにおいている選手が多く、あの試合にかぎってはシュート17本でも少なかったと思います。

ヨルダンの先制点や、オフサイドになりましたが長谷部選手のミドルシュートをGKがこぼして吉田選手が押し込んだシーンのように、シュートを打たないことには何も始まりません。

「あとからもっと良いチャンスが来るかも」という迷いは捨てて、シュートは打てるときに打つべきです。

日本代表は、欧州クラブ所属という「貴族の称号」でサッカーに勝とうとし、自分の美しい勲章をじゃらじゃら相手に見せびらかしているうちに、決して剣さばきが上手くないヨルダンから死に物狂いの一太刀を浴びて大ケガ、もうすこしで首まで取られるところでした。

典型的な、上位チームが下位チームに「金星献上」をしてしまうパターンだったと思います。

 引いてスペースを無くし守備を固めるチームを崩す定石は、「飛び道具」を使うことです。

持てるからといって決してボールを持ちすぎずワンタッチでどんどんパスをまわして相手が守備態勢を整えないうちにサイドから、できればペナルティエリア角付近から鋭いクロスを入れてゴール前の一瞬できたスペースに飛びこんだ選手がヘッドで決める。

あるいは長谷部選手が再三狙っていたように、相手DFラインの前からミドルシュートを積極的に打っていくべきでした。

 守備戦術で細かい問題点を指摘すれば、ザックジャパンの約束事はコンパクトな守備ブロックをつくって、日本のゴール前中央へのコースを切って相手のボール保持者をサイドへ追い込む、横にコンパクトな4バックが逆サイドを空けても良いのでボールがあるサイドへスライドして守備する、というものだったはずです。

しかしこの試合では、やはり「格下の相手」という意識が強いのか、相手ボールになっても守備への切り換えが遅く、縦にも横にもコンパクトな守備ブロックをつくれませんでした。

攻撃のとき、引いた相手を崩すために日本がピッチをワイドに使ってパスをまわしていましたが、相手ボールになったとき、そのままの陣形で守備へ移行してしまったということです。

これでは例え相手が「格下」でもやられます。

失点シーンでも、自陣深くでミスからボールを失ったのが痛かったですが、4バックが横に間延びしすぎていてスカスカ。こちらのボランチが抜かれたあと誰もカバーがいません。

センターバックの吉田選手が相手に正対できず、遅れぎみに足を出してシュートを防ぎに行ったので、防ぎきれずにボールが日本ゴールに突き刺さってしまいました。

相手がアルゼンチン・韓国だろうがヨルダン・シリアだろうが、ボールを失ったらできるだけ速く切り換えて、コンパクトな守備ブロックをつくらなければなりません。 

攻撃のとき、日本の陣形が縦に間延びしていたことも、コンパクトな守備ブロックをつくりにくくしていました。

一刻も早く、昨年秋のアルゼンチン戦・韓国戦のクオリティーを取り戻さなければ。

 選手個々で目だったところは、交代出場の岡崎選手が入ってからゲームの流れが良くなりました。彼だけが最初からファイティングスピリットを持ってピッチにあがっていました。

同じく交代出場の李選手は、FWなのにシュートを打てるところでもパスばかりで残念。

これは「戦い」なのですから遠慮会釈なく、打てるときはどんどん打っていって欲しいです。

 アジアカップ初戦となったヨルダン戦ですが日本代表は、何年も戦闘に参加していないのにヨーロッパの王様(クラブ)からもらった「貴族の地位」があれば、やる前から「アジアの平民」に対する勝利は約束されているかのように勘違いしたような試合ぶりでした。

「紅白戦と、ユニホームの色が違うチームとの対戦は違う」とは良くいいますが、これもテストマッチを一切やらずにぶっつけ本番でアジアカップに突入してしまったことが響いているのではないでしょうか。

前々回の記事で、「『アジア相手なら7割の力で流しても勝てらあ』みたいに油断さえしなければ、日本は文句なく優勝候補の一角だとは思いますが、テストマッチもせずにぶっつけ本番なのが気になります」と書きましたが、やはりそうした懸念が現実になってしまったようです。

次の相手シリアはヨルダンのお隣さんで両チームの違いがわからない人もいるかと思いますが、タイやシンガポールと引き分けて出てきたヨルダンと比べ、中国を1勝1分で下して予選トップ通過でアジアカップ本大会にやってきたシリアはヨルダンより強い相手です。

日本代表は次の試合までに目の色をかえて戦闘態勢を整え、泥まみれになり死に物狂いで勝ち点3を奪いに行かないと、大変なことになりかねません。


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   2011.1.9 スハイム・ビン・ハマドスタジアム(ドーハ)


      日本  1  -  1  ヨルダン


     吉田 90'+       ハサン 45'



     GK 川島       GK シャフィ

     DF 長友       DF スリマン
       今野         バシャール
       吉田         シャディ
       内田         ハテム
                 (アルドメイリ 80)
     MF 遠藤       
       長谷部      MF バセム
       香川         バハー
       本田         アメル
      (藤本 90+)      ハサン
       松井         ウダイ
      (岡崎 58)     
                FW ディーブ
     FW 前田        (アブデルハリム 72)
      (李 45)






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■日本、FIFA理事ポスト失う

 新年あけましておめでとうございます。2011年もどうぞよろしくお願いします。

 ところで、1月6日アジアサッカー連盟(AFC)総会で選挙が行われ、国際サッカー連盟(FIFA)理事選に立候補していた日本サッカー協会の田嶋幸三副会長が落選しました。

現職のFIFA理事で定年退職する日本サッカー協会(JFA)会長の小倉純二氏の後継ポストを狙った田嶋氏でしたが、この落選によって日本は9年間維持したFIFA理事のポストを失いました。

世界のサッカー界における日本の発言力や政治力の更なる減少とともに、W杯開催地を決定する投票権を持つFIFA理事のポストを失ったことで、W杯の日本単独開催もいっそう遠のいてしまうこととなりました。

日本がFIFA内部の情報収集力を失ったのも痛いです。

また、同時に行われたアジア選出のFIFA副会長選挙では、12年間つとめた現職の鄭夢準(チョン・ムンジュン)韓国サッカー協会名誉会長が落選し、ヨルダンの王族アリ・フセイン氏が初当選しました。

「自分は香川のゴールが見られればいいので、政治の世界なんか興味ない」という人もいるでしょうが、大人が日本サッカーのために国際政治の場でしたたかに立ちまわってやることで、日本の選手たちが全力を発揮できる環境が整えられるという面もあるのが現実だと思います。

これまで日本はW杯招致にしろFIFA理事選挙にしろ、「日本・韓国・中国といった東アジア諸国が結束することで日本の発言力が増す」「日本は政治力が足りないので、政治力の強い韓国と手を組んで韓国に助けてもらおう」という戦略でやってきたと言われています。

そのために過密日程のなか、代表レベルでは「東アジア選手権」クラブレベルでは「A3」という大会までつくったわけですが、こうした戦略については大いに疑問でした。

なぜなら韓国にしろ中国にしろ「日本の風下に立つなんて自分のメンツが絶対に許さない。自分が1番で日本が2番以下なら日本に協力してやってもいい」という人達ばかりだからです。

「東アジアサッカー界全体の利益のためなら、ここは日本に譲ろう」という発想が基本的にできない人達といえるでしょう。

実際「東アジアで結束すれば日本の発言力が増す」どころか、2022年W杯招致では日本の立候補に対抗して韓国も立候補し、日本は韓国よりも少ない票数しか取れず最初の決選投票レース脱落国となってしまいました。

そして今回のFIFA理事選挙でも東アジアとして候補者の一本化に失敗し、日本の田嶋氏は中国人候補と共倒れになっています。

「東アジアの結束」どころか、完全に同床異夢であったことが明らかになりました。

特に韓国の鄭夢準名誉会長ですが、この人は韓国の偏狭な民族主義政治家で根っからの反日主義者です。

今だから言いますが、南アフリカW杯の日本対デンマーク戦において、日本がゴールした瞬間スタジアムのロイヤルボックスがTVに大写しされたのですが、JFA名誉総裁の高円宮妃殿下がメガホンをふって大喜びなさっている横に座っていた鄭夢準が苦虫をかみつぶしたような表情をしていて、「ああこの人は、今も本心では心の底から日本の不幸を願っているのだな」と思ったものです。

今回のFIFA理事選も、韓国の鄭夢準とカタール人でAFC現会長のハマム氏との権力争いの、とばっちりを日本が受けたようなものでした。

鄭はアジア代表として次期FIFA会長職につき、それを踏み台にして将来の韓国大統領にという個人的な野望を持っていることは有名です。

そのためにはライバルであるハマムAFC会長が邪魔でした。

2009年5月に行われたFIFA理事選挙で再選を狙うハマム氏に対して鄭はその落選を狙い、鄭が「ハマムは精神病院へ行くべきだ」とののしれば、ハマム氏も「韓国人会長の首をはねてやる」と言い返すなど、泥試合の中傷合戦に発展します。

日本協会は平田竹男専務理事のいた時代までは、カタールサッカー協会とは良好な関係でした。

しかし日本は「東アジアの結束」や「政治力の強い韓国と手を組んで韓国に助けてもらう」ことにかけたのか、ハマム氏を「汚職まみれでアジアサッカーを私物化した」と批判する鄭夢準側につき、日・韓でハマム氏落選のための刺客としてバーレーン人候補を擁立したのです。

確かにハマムAFC会長の手法にも問題はありましたが、観客不足を埋めるために2002年W杯では中国代表を無抽選で韓国会場に振り分けるなど、鄭夢準のやりたい放題、W杯の私物化はひどいものでした。

韓国側が紳士協定をやぶり、日本国内での名称を「2002年韓国・日本大会」に変えさせ多額の追加出費を強いられるなど、鄭には日本協会もさんざん痛い目にあってきたはずです。

むしろハマム氏の方が、日本にとって害が少ないように思われました。

双方ともたいした違いがないなら、もともと日本に好意的な方と組んだ方が良く、鄭の個人的な野望に付き合わされて日本がわざわざAFC会長のいらぬ恨みを買う必要はなかったはずですが、これが大きく裏目に出ます。

結局2009年5月のFIFA理事選挙でハマム氏が再選を決め、日・韓が推した候補は落選しました。

すると鄭夢準はさっさと日本を裏切り、「自分は大きな間違いを犯した。今後は全力でハマム氏を支える」と言ってハマム会長にすり寄り、日本だけがはしごを外され、反ハマム派として取り残された格好になります。

そして今回のFIFA理事選では、ハマム派といわれるタイのマクディ、スリランカのフェルナンド両氏が当選し、東アジアで候補者を一本化することができなかったこともあり日本の田嶋氏は落選しました。

日本が韓国と組んでハマム会長追い落としをはかることについて懸念を持っていましたが、それが現実となってしまったようです。

こうして日本は、FIFAにおける発言力を失ってしまいました。

ところがハマム会長は、鄭夢準を許してはいなかったようです。

ハマム会長は、FIFA会長のポストを狙う鄭夢準を快く思わないブラッターFIFA現会長と手を組み、立候補したヨルダンの王族を支援して、最初で述べたようにFIFA副会長選挙で鄭夢準を落選に追い込んだと言われています。

「日本・韓国・中国といった東アジア諸国が結束することで日本の発言力が増す」「日本は政治力が足りないので、政治力の強い韓国と手を組んで韓国に助けてもらう」という戦略については大いに疑問でしたが、その答えはこういう結果となりました。

田嶋氏はAFC理事ではあるものの、日本はFIFAにおける橋頭堡をまったく失ってしまい、「ゼロ(あるいはマイナス)からの再出発」となりそうです。

私に再びFIFAに日本人理事を送りこむ策がないわけではありませんが、それにしても、AFCの財源の大半が日本企業がAFCに支払う広告費とTV放映権料だと言われているのに、日本が南アフリカW杯でアジア最高の成績をおさめ、日本人の香川選手がブンデスリーガで前半戦最優秀選手に輝いたというのに、どうしてアジアサッカー界にほとんど貢献もしていないタイやスリランカの候補に日本が負けるのでしょう?




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