■2010年07月

■パスの種類とその長所・短所

 今回は図をたくさんつくったので記事を作成するのに長い時間がかかってしまいました。

さて、今日はパスについてクローズアップしてみます。

パスの種類はたくさんありますし、いろんな分類のしかたがあると思います。

足のインサイドやアウトサイドを使ったパス、あるいはヒールを使ったパス。

まっすぐ進むパスやボールが左右に曲がるパス。

私が一番重視するのはグラウンダーのパスか、浮き球のパスかの違いです。

日本のサッカー界ではこうした区別はあまり意識されていないような気がします。

もし意識されていたとしても「グラウンダーだろうと浮き球だろうと、パスが通ってしまえば一緒でしょ?」

こういうふうに考える人が多いのではないでしょうか。

グラウンダーのパスと浮き球のパスはそれぞれ違った特徴を持ち長所・短所も違いますが、実際のプレーを見る限り日本サッカー界ではそれらをよく理解した上で使い分けているようには見えません。

 それではグラウンダーのパスと浮き球のパス、それぞれにどんな特徴があるのでしょうか。

両者の重要な違いは、グラウンダーのパスはボールが地面を転がることでパスの出し手と受け手の2点間を最短距離で移動しますが、浮き球のパスはボールが空中を遠回りして移動するということです。(下図)


パスの質
(クリックで拡大 以下同じ)


浮き球のパスは、芝との摩擦で勢いが弱まることがないのでロングパスに向いていますし、敵選手の頭上をボールが通過するのでその死角にいる味方にもパスを出すことができます。

しかし必ず地球の引力に引かれてピッチ上のある1点にボールが落ちてくるので、守備側にパスの最終目的地(落下地点)が読まれやすく、遠回りする分だけボールの移動時間も長くなるので守備側にポジショニングを修正する時間を与えやすいと言えます。

よって、浮き球のパスを確実にマイボールにしたいならば受け手に広いスペースが要求されます。

じゅうぶんに広いスペースでパスを受けられれば、ワントラップして確実にボールを自分のコントロール下においても、守備側がポジショニング修正して体を寄せるのが間に合いません。

広いスペースがフリーでパスを受けることを許してくれます。


浮き球1


ところが、浮き球のパスを受けるのにじゅうぶんなスペースが取れなかった場合、ボールが空中を移動している間に守備側がポジショニングを修正して体を寄せる時間を与えてしまいます。

そうなると必然的に攻撃側と守備側とで1対1の競り合いになり、マイボールにできる確率はぐっと下がります。

特に攻撃側が当りの強さやジャンプ力・身長などフィジカル能力で劣っている場合ボールを失う確率が高く、浮き球のパスを使うメリットがありません。


浮き球2


よって浮き球のパスは、広いスペースにいる味方に出すのに適していると言えます。(それ以外絶対に使うなと言っているわけではありません)

例えば、相手DF陣がオフサイドラインを高く上げていてそのウラに空いた広大なスペースに味方が走りこむのに合わせてパスを出すといった場合で、実際には相手も警戒しているので簡単には通させてくれませんが、成功すれば直接ゴールに結びつきます。

もしパスが通らなくてもウラを取られたくない相手のDF陣がズルズルと下がれば、相手のコンパクトな陣形を間延びさせ、味方のために敵のバイタルエリアにスペースをつくり出すという効果もあります。

相手チームがボールがあるサイドに寄っていて、逆サイドの広く空いたスペースにいる味方にサイドチェンジする時などにも浮き球のパスは向いています。

相手よりフィジカル能力で勝てるという自信があれば、バイタルエリアにいる味方の頭にロングパスを合わせてもよいでしょう。

先ほども述べましたが浮き球のパスを使う場合、特に注意しなければならないのが受け手のフィジカル能力です。

受け手のフィジカル能力が弱ければ浮き球のパスをマイボールにできる確率はぐっと低くなってしまいます。

フリーでパスを受けられればフィジカルが弱くてもマイボールにできますが、相手陣内、とくにゴール前へ近づけば近づくほどスペースは狭くなりフリーになりにくくなっていくのが通常です。

その点に注意する必要があります。

例外は、センターフォワード(CF)が両サイドのスペースに流れてロングパスを受けるプレーです。


CFの墓場


Jリーグではゴールの次に大歓声があがる場面ですが、これは思ったほど得点につながりません。

CFがボールを受けた地点を「センターフォワードの墓場」と呼ぶ人もいるようですが、この位置でロングフィードを受けて前を向けてもゴールまでは距離が遠く角度も悪いのでシュートという選択肢は取りづらいところです。

数的不利な状況がほとんどですから単独でのドリブル突破も難しく、たいていはボールをキープしてタメをつくり味方が押し上げる時間を稼ぐことになりますが、味方が押し上げる時間をつくるということは守備側の選手が自陣へ戻る時間を与えるということです。

よって絵的にはカウンターの大チャンスに見えても思ったほど得点にはつながらないということになります。

浮き球のロングパス主体の攻撃はどうしても陣形の間延びを招き、陣形が間延びするとたとえトップにボールがうまく収まっても、どうしても味方のフォローが遅れるために直接ゴールには結びつきにくいです。

「地のサッカー」の記事で書いたとおり、日本では浮き球のロングフィードが好んで使われる傾向にありますが、残念ながら日本のサッカー界ではロングパスが持つ短所についてあまり考えていないように思えます。

特に世界と比べてフィジカル能力で劣勢な日本人選手は、浮き球のパスの使い方に特に注意しないと、簡単にボールを失ってしまうことになります。


 これに対してグラウンダーのパスは、ボールが地面を転がると芝との摩擦でだんだん勢いが弱まるのでロングパスには向かず、また敵選手の死角にいる味方にはパスを出すことができませんが、それをおぎなって余りあるメリットがあります。

まず出し手に難しい技術があまり必要とされずパスミスが起こりにくい。(特にショートパスの場合)

パスを受けるのが容易でトラップミスが起こりにくく、パスが来たらそのままワンタッチ目でシュート・ドリブル・パスとダイレクトに次のプレーにつなげやすい。

ダイレクトプレーがやりやすいので敵選手に体を寄せられるより先に仕事を終えられる、つまり狭いスペースでもフリーでパスが受けやすい。

といったことがあげられます。

 グラウンダーのパスはロングパスに向かない以外は、非常に使い道が広いと言えます。

中盤の組み立てからラストパスに至るまで、さらにワンツーやオーバーラップの一部分を形成するなど汎用性が高いです。

グラウンダーのパスが浮き球のパスに比べて優れる部分は、受け手がフィジカル能力や身長で劣っていてもパスを確実に受けやすいという点です。

常に地上を転がってくるボールを受けますから身長の高低は関係ありませんし、パスを受けたワンタッチ目でシュートなりパスなり次のプレーにダイレクトにつなげることができますから、フィジカル能力が弱くても相手にボディコンタクトされてバランスを崩すまえに仕事を終えてしまうことができます。

さらに浮き球と違って相手にポジション修正の時間を与えにくいので、より狭いスペースでもパスを受けることができます。

センターバックの前のスペース(バイタルエリア)のような危険なスペースほど相手は警戒して狭くしているものですが、相手にとって一番危険なスペースにいる味方にパスを出したりそこからゴールに直結するラストパスを出すのに、グラウンダーのパスは向いていると言えるでしょう。

2010年W杯優勝国で、いま最もモダンな戦術をとっていると言われるスペイン代表ですが、攻撃の中核を担うイニエスタやシャビは身長170cm代前半と日本人選手とあまり体格は変わりません。

そのスペイン代表がグラウンダーのショートパスを中心に攻撃を組み立てているのは、とても理にかなっています。

自分たちの長所・短所とパスの種類ごとの長所・短所をよく理解して、スペイン人の長所とグラウンダーのパスの長所を組み合わせた攻撃戦術を取っていると言えます。

ただ、前述のようにグラウンダーのパスは敵選手の死角にいる味方には出せないという弱点があります。

ですからグラウンダーのショートパスを中心に攻撃を組み立てるには、常に敵選手の死角から出るようにして周囲がボールを持つ味方をサポートして複数のパスコースを用意してやらなければなりません。


グラウンダー


敵が味方のボール保持者にプレスをかけるために動けば当然死角の位置も移動しますから、それに応じて攻撃側の選手も移動して、複数のパスコースを維持し続けることが欠かせません。

これこそ連動性であり組織力ですが、スペインの選手が世界一優れているのはこの高い組織力を支えるポジショニング能力です。

ほとんどの試合でスペインのボールポゼッション率が対戦相手より上回り、パス成功率も80%とW杯出場国平均より10%は上回ることができるのも、グラウンダーのパスを正確に出す技術力とこのポジショニング能力のおかげです。

対照的に、受け手が死角にいても出すことができる浮き球のパスをこれまで多用してきたせいでしょうか、日本のサッカー選手はボールを持っている味方から見て死角にいることをあまり気にしない傾向にあります。

それでは当然パスは回らないわけで、日本代表の攻撃面での組織力が低く、パス成功率が60%と32ヶ国中最下位だったのもうなづけます。

新しい日本代表監督にはそうした面での指導を期待したいです。


 それではグラウンダーのパスと浮き球のパス、それぞれの長所・短所をおさらいします。

まず浮き球のパスの長所ですが、強風の向かい風なら話は別としても芝との摩擦で勢いが弱まることがないのでロングパスに向いている。

敵選手の頭上をボールが通過するので、その死角にいる味方にもパスを出すことができる。

浮き球のパスの短所は、必ず地球の引力に引かれてピッチ上のある1点にボールが落ちてくるので、守備側にパスの最終目的地を読まれやすい。

ボールが空中を移動する間に落下地点を読んだ敵選手がポジショニングを修正することができる。よって味方がパスを受けて確実にマイボールにするためにはより広いスペースを必要とする。

パスの受け手がワンタッチ目をそのままシュート・ドリブル・パスとダイレクトかつ正確に次のプレーに移行するには高い技術力が要求される。よってミスプレーが起こりやすい。

距離が長くなればなるほど、正確なパスを出すためには出し手に高い技術力が求められ難易度が高い。

 グラウンダーのパスの長所ですが、出し手に難しい技術があまり必要とされずパスミスが起こりにくい。(特にショートパスの場合)

パスを受けるのが容易でトラップミスが起こりにくく、パスが来たらそのままワンタッチ目でシュート・ドリブル・パスとダイレクトに次のプレーにつなげやすい。

ダイレクトプレーがやりやすいので敵選手に体を寄せられるより先に仕事を終えられる。つまり狭いスペースでもフリーでパスが受けやすく、身長が低くボディコンタクトを苦手としていても確実にマイボールにしやすい。

といったことがあげられます。

次に短所ですが、芝との摩擦でボールの勢いが弱まるのであまりロングパスに向いていない。

敵選手の死角にいる味方にはパスを出すことができない。無理に出そうとすると敵選手にボールをぶつけて渡してしまうことになる。

よって味方がパスを受けられるスペースが限定されます。

 グラウンダーのパスと浮き球のパス、それぞれの特徴と長所・短所はこんなところでしょうか。

実戦でパスを使う時は、グラウンダーのパスと浮き球のパスそれぞれの長所・短所をよく頭に入れて、場面に応じて適切なパスを選択する必要があります。




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■組織か個か

 日本は、学校や会社といった「組織」からの制約やプレッシャーがどちらかというと強い社会といえるでしょう。

「お前は場の空気を読んで行動しろ」なんてことがしょっちゅう言われること自体、個が組織からの制約を受けやすいという日本社会の特徴をよくあらわしています。

そのせいか、この日本ではサッカーの分野において「組織力の強化」を訴えると、これに対して反感を持つ人たちが必ずといっていいほど出てきます。

彼らを便宜上「アンチ組織力強化派」と名づけておきますが、前回お話した通り、私はこのブログを立ち上げた時から、「日本サッカー強化のためには個の能力アップも必要だし、組織力アップも必要」と考えてきました。

その意味で私も「組織力の強化」を訴える人間の1人です。

「サッカーは個の能力さえ高めれば組織力に頼る必要はない」という考え方の裏返しなのか、「アンチ組織力強化派」の人は「『サッカーは組織力さえ高めれば個の能力がゼロでも試合に勝てる』なんてことはありえない」という批判を展開しがちです。

しかし、いったい誰がそんな極論を主張しているのでしょうか? 

そんな人がいるなら私も一度会ってみたいものですが、先に述べたように少なくとも私は違います。

個の能力と組織力、どちらか一方を強化すればもう片方はいらないとか弱体化するに決まっているといったゼロサム理論でものごとを単純化して考えるのは、脳みそに楽をさせることはできますが正しい結論を導き出すことはできません。

 さて「アンチ組織力強化派」の人たちにありがちなのは、「個の能力で劣るチームが個の能力で勝るチームに勝つことは不可能」「個の能力で劣るところを組織力でカバーするなんてできるはずがない」という考え方を持っていることです。

彼らがそうした結論に至った前提として、「サッカーとは1対1の攻防が映画フィルムのコマ送りのように90分間連続していくスポーツである」という認識があるのではないでしょうか。

だからこそ「1対1の能力で劣るチームがそれに勝るチームに勝つことは不可能だし、それを組織力でカバーするなんてことも不可能」という発想が出てきたのでしょう。

「アンチ組織力強化派」の人たちは「1対1至上主義者」、言いかえるなら「マッチアップ至上主義者」的な傾向を強く持っているように思います。

もし「サッカーとは1対1の攻防の連続である」という前提が正しいのだとすれば、ブラジルでもアルゼンチンでもかまいませんが、世界最強の個を持つチームが1対1を前提とした完全なマンツーマンディフェンスを採用すれば、絶対に負けることはないということになるはずです。

ところが、いまや完全なマンツーマンディフェンスはすたれてしまい、世界最強の個を持つチームどころかそれをやっているチームはごくまれになってしまっています。

なぜでしょうか?

 確かに19世紀のイングランドで近代サッカーが生まれてから第二次世界大戦後しばらく(WMシステムの全盛期)までは、サッカーは「1対1の攻防の連続」という性格が強かったと言われています。

イングランドで近代サッカーが産声をあげた当初、ボールを持ったらひたすら相手ゴールに向かってドリブルをしかけていましたから1対1の攻防の連続でしたでしょうし、さもなくば相手ゴール前へボールをロングフィードして攻撃側の選手がこぼれ球を狙って押し上げる「キック・アンド・ラッシュ」という原始的な戦術を使うのがせいぜいでした。

ドリブルならドリブル、ロングフィードならロングフィード、シュートならシュートと選手の役割は細分化・スペシャリスト化されており、攻撃なら攻撃、守備なら守備と各ポジションも固定的でした。

そのため守備戦術も、自分の対面の相手に1対1でつく完全なマンツーマンディフェンスが主流でした。

その典型がWMシステムです。

おそらく「1対1至上主義者」である「アンチ組織力強化派」の理想郷がそこにあったのではないでしょうか。

 話は前後しますが、世の中には頭の良い人がいるもので、個人がひたすら相手に肉弾戦のようなドリブル突破をしかけるよりも、はるかに速く効率的に相手選手を抜いて前へ進む方法が考案されます。

1870年代のスコットランドで、パス(pass)によって相手を抜く(passする)初めてのパスサッカーが考案され、イングランド対スコットランドの代表戦でドリブルとロングフィードしか知らなかったイングランド代表に衝撃を与えたそうです。

(ロングフィードを主な武器とするいわゆるイングランドスタイルの影響は今も残っています。イングランドを象徴する選手であるベッカムもジェラードもロングフィードを得意としていますが、優勝候補と言われながら近年W杯でもユーロでもイングランドが準決勝にさえ出て来れないのは、ロングフィードの比率が多いイングランドサッカーはスペインやオランダ、ドイツと比べて粗くやや緻密さに欠けるからだと思います)

ちなみに、スコットランドで始まったパスサッカーはオーストリアの「ヴンダーチーム」やハンガリーの「マジック・マジャール」に影響を与え、大陸欧州諸国の黄金時代をつくりあげます。ヨハン・クライフを擁した1974年オランダ代表のトータルフットボールの源流ともなりました。

さらにハンガリー経由でブラジルにもパスサッカーは伝わったと言われますが話が長くなるので割愛します。興味があったらご自分で調べてみてください。

パスというのは出し手と受け手がいなければ成立しない、攻撃における組織戦術のもっとも基本的なものです。

パスの発明から始まった攻撃における組織戦術は、選手の運動量の増加とあいまってどんどん進化していきました。

ポジションチェンジ・ワンツー・オーバーラップ...

攻撃面におけるグループ戦術の発達が、徐々に1対1を前提とした完全なマンツーマンディフェンスを破綻に追いこんでいきました。

世界最強の個の能力を持つチームであっても、それを防ぐことはできなかったようです。今のところは。

完全マンツーマンですと、例えばワンツーパスで守備側の選手が1人抜かれると、ボールを持ったフリーな選手ができてしまいます。

これは危ないということで近くの選手が自分のマークを捨ててボールを持った相手選手にマークにつくと、マークが1個づつ順番にずれていってやっぱりフリーの選手ができてしまいます。

フリーになった選手につぎつぎとパスを出されて、ゴール前で敵選手にボールを持ってフリーになられたら守備側は万事休す。

つまりパスの速さに人間がつききれなくなったということです。

また、完全マンツーマンですとチーム陣形のバランスを失いやすく、ポジションチェンジが攻撃側にとって当り前の戦術となると、右サイドでのプレーを得意とする選手が敵選手の動きにつられて左サイドにいることを余儀なくされたり、自陣に引いた敵FWについていったバックがゴール前から簡単に引きずり出されるといったことが起こってしまいます。

1950年代にゾーンディフェンス戦術が考案されると、1対1のマッチアップを大前提とするマンツーマンディフェンスはだんだんとすたれていき、1980年代に3バックのうち2人のストッパーだけがマンツーマンで1人余ったリベロがカバー、3バックより前の選手はゾーンで守るという部分的な形でマンツーマンディフェンスはかろうじて生き残りました。

しかしながら、よほどのサッカー後進国でもないかぎりリベロが1人余る3バックも今ではほとんど見かけません。

参考文献

1対1を前提に人についていくのではなくて、フィールドプレーヤー10人が分担を決めてお互いカバーし合いながら組織で守り、あらかじめこちらにとって危険なゾーンで守備側が待ち構えていて、自分の受け持ちゾーンにボールを持った敵選手が入ってきたり、敵選手にボールが渡りそうになったら応対する、自分の受け持ちゾーンから出て行けば味方にマークを受け渡してチーム陣形全体の崩れをなるべく防ぐという、いわゆるゾーンディフェンスが現代における守備戦術の主流となりました。

1対1の攻防が完全になくなったわけではありませんが、現代サッカーではいかに効果的に動いてボールがある局面で2対1や3対2といった数的有利の状況をつくり出すかがますます重要になってきており、グループ対グループの攻防という面の方が強くなっています。

現代ではもはや「サッカーとは1対1の攻防が映画フィルムのコマ送りのように90分間連続していくスポーツ」ではなくなりました。

「温故知新」はサッカーでもきわめて重要です。

10年かそこいらでサッカー史をさかのぼるのをやめてしまうのではなくて、ちゃんと「古典」から出発してサッカー戦術の進化の歴史を勉強しておくことで、最新の戦術も正しく理解することにつながるのではないでしょうか。

 前提が間違っているのですから、「個の能力で劣るチームがそれに勝るチームに勝つことは不可能だし、それを組織力でカバーするなんてことも不可能」という結論も間違っているということになります。

現代サッカーでは世界最強の個を持つチームでさえ、1対1のマッチアップを大前提とする完全なマンツーマンディフェンスをやっていないことと理由は一緒でしょう。

ボールを正確に蹴る・止める・ドリブルする・フェイントで相手をあざむくといった技術力や相手に体を寄せられてもバランスを崩さないフィジカル能力などを「個の能力」と定義しますが、相手チームの選手の個の能力が10でこちらが7だったとしましょう。

そして「アンチ組織力強化派」は、個の能力が7の選手は10の選手を絶対に抜くことはできないと考えるわけですよね。(下図(1))


1対1攻
(クリックで拡大)


満足にトラップやインサイドキックすらできないほど個の能力が低いなら話は別ですが、そんなことはありません。

ワンツー(2)やオーバーラップ(3)といった組織戦術を使えば、例え相手が個の能力で勝っていても相手を抜いて前進することができますし、敵の最終ラインを突破するのに使えばゴールにつながります。

敵選手の死角にいる味方がパスを受けるために「顔出し」してやるだけでも、相手を抜くことができます。(4)

だからこそ1対1を前提とするマンツーマンディフェンスをやるのがきつくなったわけです。

守備だってそうです。

「アンチ組織力強化派」は、個の能力が7の選手は10の選手の突破を絶対に防ぐことはできないと考えるわけですよね。(下図(1))


1対1守


欧州などレベルの高いリーグでは普通に見られる組織戦術(上図2 局面を拡大したのが下図)ですが、相手選手がこちらのサイドバックを抜きにかかった時、SBは相手に体を寄せてできるだけバランスを失わせます。

そして相手がSBをドリブルで抜くためにボールを体から離した瞬間に、後ろでカバーしているCBなりボランチなりがボールを奪って相手の突破を防ぐというやり方があります。

相手選手が1対2の数的不利な状況を見てドリブル突破をあきらめ、バックパスしても守備側の勝利と言えるでしょう。


ゾーンディフェンス正


あるいはこちらの選手が相手のボール保持者をディレイさせている間に、戻ってきた味方と挟み込んで奪うというやり方もあります。(3)

これも守備側の能力があまりにも低すぎれば突破を防げないこともあるでしょうが、1対1では劣勢でも組織で守ることで個の能力で勝る相手に抜かれる可能性を低くするのに有効な戦術です。

このように個の能力で劣勢であっても、組織力でそれをカバーしていくことは可能です。

「アンチ組織力強化派」の人々は、現代サッカーではありふれた光景であるこうした組織戦術がなぜ見えていないのか不思議です。

「サッカーとは1対1の攻防の連続である」という思いこみから「日本がどこどこに勝ったということは、1対1に勝って点を取り、1対1に勝って守りきったからだ」と決めつけているのでしょうか。

それではサッカーを見ているようで実は大事なところが見えていない、「木を見て森を見ず」だといわざるを得ません。

カメルーンから得点できたのは、本田選手が1対1で相手を全部抜いていってゴールしたのではなく、まず基点となった遠藤選手のパスでカメルーンの選手2人ぐらいを置き去りにして、さらに松井選手のクロスで5~6人の相手が抜かれて本田選手の前に立ちはだかる敵はいなくなり、後は落ち着いてGKが詰めるより先にシュートするだけでした。

遠藤・松井・本田の3人が協力して組織でカメルーンから貴重な先制点を奪い、日本の快進撃はここからスタートしました。

守備でもゾーンディフェンスで相手にスペースを与えないようコンパクトなブロックをつくる日本の組織戦術が、大いに威力を発揮しました。

スペースが狭くなればなるほど攻撃側が正確なパスを通し、正確にトラップして前を向くのが難しくなります。

日本が快勝したデンマーク戦でも、日本のフィールドプレーヤー10人が協力して相手が使えるスペースを狭めたので、そもそも日本のセンターバックとボールを持って前を向いたベントナーやトマソンが1対1になるというケースが少なかったのが一つの勝因でした。

後半デンマークがロングボールを放りこんでパワープレーをしかけてきた時、日本の選手はゴール前での1対1の競り合いにすべて勝ったわけではありませんでした。

デンマークの選手との1対1のヘッドの競り合いに負けて日本のペナルティエリア内にボールを落とされてしまったこともたびたびありましたが、周囲の味方がカバーしてこぼれ球をクリアしました。

1対1で負けたら終わりではなくて、これも組織で守るということです。

逆に前半10分まで日本代表は前からどんどんプレスをかけていきましたが、陣形が間延びして相手に広いスペースを与えてしまったことで、日本の陣内で前を向いたデンマークの選手から正確なパスが次々と出てきたために、何度も危ないシーンをつくられました。

まず守備が安定しなければ、攻撃を機能させることも試合に勝つことも困難です。

岡田ジャパンのベスト16進出に一番貢献したのは、ゾーンディフェンスでコンパクトなブロックをつくった組織的な守備だと思います。

 「アンチ組織力強化派」の人々に限らず、日本では「1対1至上主義」「マッチアップ至上主義」の傾向がとても強いように思います。

それはなぜかと言えば、日本で組織戦術論というと4-2-3-1かそれとも4-2-2-2かといった数字の羅列と、相手チームのフォーメーションとの相性を見ながらどのポジションにどの選手を当てはめて、相手とどうマッチアップさせるかで話が終わってしまうからではないでしょうか。

そうしたことも大切ではありますが、組織戦術論の一部に過ぎません。

ちなみに岡田ジャパンは南アフリカに入ってからコンパクトな守備ブロックをつくるゾーンディフェンスに転換し、長谷部選手も「初めてのやり方だけど、この方がやりやすい」と発言したと報じられていました。

岡田ジャパン総括(2)

今から振りかえると、それより前の岡田ジャパンの守備戦術は、自分とマッチアップしている選手についていき、その選手にボールが渡ったら猛烈に追い掛け回すという、かなりマンツーマンに近いものだったのではないかと考えています。

現代サッカーで主流となっているゾーンディフェンスの基本となる、フィールドプレーヤー10人がコンパクトな陣形を形成し、ボールがピッチのどこにあるかで一つのまとまりとしての陣形全体をどう動かしていくかという知識が、日本には決定的に不足していると思います。(下図)


コンパクトな隊形

ゾーンディフェンスの基本


日本サッカー協会の指導者ライセンスを持っている人が言うには、協会が発行した指導教本には2対2でどう動けばよいかは書いてあっても、10人のフィールドプレーヤーが一つのまとまりとしてどう動いていけばいいのか、まったく書かれていないそうです。

最近ではよい戦術本もちらほら見かけるようになりましたが、いまだに書店で売られている大部分のサッカー本は、足元のテクニックとフォーメーションの数字の羅列で終わっています。

ミクロばかりで、マクロの視点がまったく欠けています。

だからこそ「サッカーとは1対1の攻防がひたすら連続していくスポーツである」みたいな誤解が日本で生まれたのでしょうし、強豪国と比べて日本サッカーの組織力が低い、そうした自覚も足りないということにつながっているのではないでしょうか。

日本のサッカーが世界最強の組織力を持っているのであれば、「あとは個の能力をアップさせるだけだね」という話になるのかもしれませんが、現状では全然たりないと言わざるを得ません。

岡田ジャパンは守備はかなりのところまでレベルアップしましたが、攻撃面で組織力が不足していました。

前述のようにパスは組織戦術のもっとも基本的なものですが、優勝したスペインのパス成功率が80%近くあったのに対し、日本のパス成功率は60%と32ヶ国中最低でした。

私がイタリアやイングランドの戦術書で得た知識をこのブログで皆さんに無料で公開しているのは、日本のこうした現状を改善したい、日本の代表やクラブチームが世界で勝利するのを見て美味い酒が飲みたいからです。

組織でショートパスをまわし、ミドルサードをなるべく速くしかもボールを失わずに確実に突破して、相手の守備組織が整う前にアタッキングサードに侵入してシュートまで持っていきたい、というのが現代の攻撃戦術の基本トレンドだと思います。


現代戦術


メッシのように1人で2人も3人も相手を抜いてしまう選手がいればこんなにありがたいことはありませんが、もしドリブルで1対1の勝負をしかけるなら、アタッキングサードに入ってから、もっと言えばペナルティエリアの中とその周辺部でこそ効果的です。

DF側はPKやFKを与えたくないので、ペナルティエリアの中とその周辺部では、ドリブルする相手選手に体を接触させて突破を防ぐという手段を取り難くなります。

接触プレーが少なくなればフィジカルが弱くても技術のあるドリブラーの方が1対1で有利になります。

ところが日本の選手はミドルサードで時間をかけてモタモタとドリブルしたがる傾向が強いですね。


オシム氏がオランダ戦後に「(中村俊・遠藤の)2人がモダンなサッカーができれば日本にとって収穫」「(デンマーク戦は)1人がキープする時間を短く、パススピードを上げて戦ってほしい」とコメントした意味はそういうことでしょう。

プレミアリーグやリーガエスパニョーラ、UEFAチャンピオンズリーグの試合を日本ではいくらでも見ることができますが、日本サッカーの組織力は世界からまだまだ遅れをとっています。

 マラドーナ擁するアルゼンチンがW杯で優勝した1986年ぐらいを境に、1人の傑出した天才が残り10人の能力不足や組織力の不足をカバーして勝つということが、だんだん難しくなっていきました。

南アフリカ大会でも、メッシという世界一の個の能力を持つ選手をかかえるアルゼンチンが、組織サッカーの代表ともいえるドイツに大敗を喫し、準決勝にさえ出て来れませんでした。

将来のサッカーがどう進化していくかはわかりませんが、ユーロ2008、2010W杯と組織的なポゼッションサッカーの理想形とも言えるスペイン代表が連続優勝し、今のところこれが「強いサッカー」の一つのトレンドであると言うことができます。

(もう一つはインテルの堅守速攻型)

 私が言いたいことを正しく理解してもらうためにもう一度確認しておきますが、現代サッカーにも1対1の攻防があるのは事実ですし、日本のサッカー選手の個の能力を高めるのはもちろん重要なことです。

組織か個かという不毛な二者択一論ではなくて、どっちも重要という複眼的な考え方を私は取ります。

しかし現代サッカーとは1対1の攻防がひたすら連続していくスポーツではありません。日本で長らく全国民的な娯楽であった、団体競技でありながらピッチャーとバッターの1対1の対決がひたすら連続していく野球とは違います。

「個の能力で劣るところを組織力でカバーするなんてできるはずがない」という考え方も、現実が見えていないと思います。

そもそも「アンチ組織力強化派」の人々は「個の能力」や「組織」とは何かをよく理解せず、そうした言葉もちゃんと定義せずに他者を批判しているのかもしれません。
 
サッカーはまぎれもなくチームスポーツであり、そうである以上、チームの組織力を高めることが欠かせませんし、チームを支える1人1人の能力を高めることも大切です。

どういうサッカーを見たいか、どういうサッカースタイルを理想とするかはその人の自由でありそれを私も尊重しますが、「組織」を嫌悪する人がドリブルとロングフィード主体でスペシャリスト同士による1対1の攻防がひたすら連続していく近代サッカー草創期のようなスタイルを好むという点は、とても興味深い現象だと思います。

遠い将来そういう攻撃方法や完全なマンツーマンディフェンスが復活し、主流になることがあるかもしれませんが、少なくとも今そういうサッカースタイルでW杯やチャンピオンズリーグで勝っていくのは非常に困難でしょう。

ただ、ジュニア世代には練習や試合でどんどんドリブルさせて、どんどん失敗の経験を積ませるべきです。

そうしないと1対1に強い、高い個の能力を持った優秀なドリブラーは生まれませんから。





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■岡田ジャパン総括(3)

 ワールドカップ南アフリカ大会はスペイン初優勝で幕を閉じました。

「古豪ウルグアイ復活」という話題はありましたが、結局優勝スペイン、準優勝オランダ、3位ドイツと上位は欧州勢独占でした。

あわてんぼうの人が「2010年W杯は南米のための大会だ。南米勢がベスト4を独占するんじゃないか」と言っていたのが嘘のようです。

大会前からスペインとドイツの強さは別格だなと思っていたのですが、この大会はグループリーグで波乱が多くて決勝T1回戦から決勝戦にしてもおかしくないカード続出となったわけですが、終わってみれば順当な結果となりました。

決勝の顔合わせはスペインとオランダになりましたが、どちらも「空飛ぶオランダ人」ことヨハン・クライフと縁の深い国です。

現代サッカーにおける守備面での組織戦術に大きな影響を与えたのがACミランを率いたアリゴ・サッキなら、攻撃面での組織戦術に大きな影響を与えたのがアヤックスやFCバルセロナを率いたクライフでした。

クライフが目指した美しいパスサッカーはスペイン・オランダ両国に大きな影響を与えました。

もっとも今大会のオランダ代表はスタイルが手堅すぎて、クライフからこきおろされていましたけど。

スペイン代表はこれでユーロ2008に続く連続優勝ですから、一つの時代を築いたといえるでしょう。

クラブレベルでは相手の良さを消す堅守速攻型のインテルが優勝しましたが、代表レベルではポゼッションサッカーで自らの良さを創造していくスペインが優勝しました。

現代サッカーの進化の一つの方向性が指し示されたと思います。

 こうしたこともふまえながら日本代表はどういうスタイルのサッカーを目指せばよいのか考えてみます。

日本代表は、今回のワールドカップにおいてコンパクトな陣形を保ちながら守備ブロックをつくる堅守速攻型スタイルで大いなる結果を残し、強豪を相手にした場合に有効なサッカースタイルを確立しました。

今後、自分たちより明らかに戦力で勝る相手と試合をする時や、対等の相手であっても絶対に点をやりたくない試合展開になった時は、この堅守速攻型スタイルで戦うべきだと思います。

(Jリーグでも格上だろうが格下だろうがサッカースタイルがほとんど変わらないクラブが多いですが、これを機に堅守速攻型のスタイルを取るチームが現れてJのクラブ同士が高いレベルで切磋琢磨されるといいですね)

 しかし、これをアジアの戦いでやるというわけにはいかなそうです。

なぜならオーストラリアや韓国をのぞいて、アジアに戻れば「引き分けでも十分なので、守ってカウンター」というサッカーをやられる立場になるのは日本だからです。

アジアでは日本がボールをポゼッションして(させられて)相手を攻撃し、ゴールをこじ開けないといけなくなる場合が多くなるでしょう。

その場合でも重要なのは、コンパクトな陣形を保ち続けるということを忘れてはいけないということです。

岡田ジャパンは4-1-4-1にして自陣に引いたときはコンパクトな陣形を保てていましたが、4-2-3-1にして前へ出て行くと途端に間延びしてしまいます。

デンマーク戦ではキックオフから10分間ぐらい間延びした4-2-3-1にしましたが、やはり苦戦の原因となりました。

私は「破れた毛布」と名づけていますが、日本人選手は昔からコンパクトな陣形をつくるのをたいへん苦手としています。

今後日本代表が堅守速攻型とポゼッション型を使い分ける時は、フォーメーションやDFからFWまでの距離を変えるのではなくて、フォーメーションは同じでもよいですから、コンパクトな陣形を保ったままDFラインをピッチ上のどこに置くかで堅守速攻型かポゼッション型かを使い分けるべきだと思います。


堅守速攻型
堅守速攻型
(クリックで拡大)


ポゼッション型
ポゼッション型



これまでどんな相手でも一本調子のサッカーしかできず批判されてきた日本のサッカーですが、「守備の文化」を身につけたことと「相手によって戦略を変える」ということを覚えたのは進歩だと思います。

 ただ、堅守速攻型をやるにしろ、ポゼッション型をやるにしろ、課題としてあげられるのは攻撃面での組織力アップです。

岡田ジャパンはW杯で戦いながら守備面での組織を構築していきましたが、それはかなりの程度成功しました。

ところが攻撃面での組織力アップまでは時間が足りず、ほとんど手つかずに終わってしまいました。

各種データを見ると、日本代表のボールポゼッションは4試合とも50%以下で、パス成功率60%は32ヶ国中最低、パスの総数も1試合当たり369本で最下位から二番目です。

組織的なパスサッカーの代名詞である優勝国スペインの場合、パス成功率は80%ぐらいいっていますし、パス総数も日本の2倍以上もあります。

W杯参加国平均でもパス成立率は70%はあったと思いますが、日本はパス成功率・本数とも非常に少ないです。

そのかわりファールを受けた数は32ヶ国でトップとのことです。

こうしたデータから推測できる日本サッカーの姿は、世界と比べて日本代表は個の能力が低いのはもちろん、数人のグループ、つまり組織でボールをキープし続けることが苦手なので、相手よりボールポゼッションで劣ってしまう、パスの出し手と受け手のポジショニングや連動性が悪いためにミスパスが多くすぐにボールを失ってしまう、選手1人1人がモタモタとボールをキープする時間が長いためにパスの本数自体が少なく、すぐ相手に体を寄せられてしまうので受けるファールの数がとても多いということではないでしょうか。

私も「いつかは日本代表も攻撃サッカーでスペインやオランダといった世界の強豪を相手に5分と5分の勝負を挑めるようになれたら」という希望を持っていますが、これほど組織力が低いと世界はおろかアジアレベルであってもポゼッションサッカーで有効な攻撃をやるのは困難です。

堅守速攻型をやるにしてもパラグアイ戦で課題が出たとおり、カウンター攻撃が個の能力に頼った単発のものになってしまって、ちょっと相手が強くなると防戦一方になってしまいます。

ミリトやスナイデルなどがからんで展開されるインテルがやったようなナイフのように鋭い組織的なカウンター攻撃を身につけないと、日本がW杯でベスト8・ベスト4と先へ進んで行くのは難しいでしょう。

 それではこれから日本のサッカー界はどうすれば良いか。

これについて、私は4年前のドイツ大会からずっと同じことを繰り返し言っています。

日本人選手の個の能力をこれからの4年間だけでスペインやオランダのレベルにまでいきなり引き上げるのは、困難かもしれません。(そうなったらなったで大変うれしいことですが)

そこで両手をあげて降参してしまうのではなくて、南アフリカ大会で日本代表が成功したように、個で劣勢なところを組織力でカバーしてW杯で勝っていく。

代表がW杯で成功すれば、サッカー人気が高まって優秀な人材が日本のサッカー界に集まってくるでしょうし、多くの日本人選手がレベルの高い海外クラブへ移籍することにもつながってきます。

そこでレギュラーポジションを獲得してプレーすることが、ひいては日本代表選手の個の能力アップにつながっていくことでしょう。

以下は4~3年前の記事からの抜粋です。

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高度に組織化された現代サッカーにおいて、少なくとも世界トップレベルのサッカーをしているチームが、個の自由だけで成功しているという実例を私は見たことがありません。

個人が基礎能力・高い応用力を持っているのは当たり前で、そうした選手たちが協力していかに高い組織をつくりあげるかというのが現代サッカーの方向性となっています。

チーム組織が個をダメにするというのは、時代錯誤的な考えであって、組織と個の能力は両方大事であり一緒に強化をはかるべきというのが世界のサッカー界の最新の流れです。

(ジーコ監督の4年間は何だったのか?(最終回))



「個の自由」といった耳に心地よい言葉に惑わされて、フラフラするのではなくて、勤勉で技術が高いという日本人の長所を生かした組織サッカーを日本のスタイルと位置付けて、この方針にしたがって、長期の強化戦略を実行するべきでしょう。

個と組織は、ゼロサムで両立しないものではありません。
個あっての組織ですし、組織あっての個です。


組織で勝ちながら、長期的には個の能力(経験値・フィジカル・テクニック・状況判断力)をあげていく。

これが一番有効な強化策ではないでしょうか。

(アジアカップ総括) 



当分日本代表は、組織力で個のフィジカルの弱さをカバーするとして、長期的な計画では、最低でも技術の足を引っ張らない程度にはフィジカルの強化をしなくてはいけません。

(アジアカップ総括(その3))

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 日本人選手の個の能力アップのために、Jリーグで今すぐにでもできることがあります。

ユース組織で優秀な若手選手を育てることもそうですが、Jリーグのレフェリーがファールを取り過ぎないようにすることです。

上の(アジアカップ総括(その3))の記事に詳しく書いてありますが、Jリーグではあまりにも「フェアプレー」が強調されすぎていて、ファールの基準が甘く選手同士がちょっと接触して倒れただけでもレフェリーにファールを取ってもらえます。

相手選手が接触してきて踏ん張ってそのままプレーするより、シミュレーションぎみに倒れてFKをもらった方がだんぜんお得なのです。

これでは世界基準でフィジカルの強い選手が日本から生まれてくることはほとんどまれでしょう。

ことフィジカルコンタクトに関して、Jリーグは世界で最も選手を甘やかしているリーグの一つだと言えます。

Jリーグよりファールの基準が厳しいW杯や欧州各国リーグでは、そうやって甘やかされた日本人選手は苦戦必至です。

個の能力で日本人選手が世界から遅れをとっている分野の一つは、相手に体を寄せられてもバランスを失わないフィジカル能力の強さだと思います。

今回のW杯で例外だったのは両CBと本田選手でしょう。

日本代表でもW杯やその予選で相手選手がちょっと体を寄せてきただけでシミュレーションを繰り返し、外国人レフェリーがファールをとってくれなくて地面に寝っ転がってジタバタやっている選手がいました。

そうしたシーンを見るたびに、ドリブルで相手を抜こうとしたら相手に当りの強さで負けてボールを奪われたので、FKをもらうことでレフェリーになぐさめて欲しくて大げさに倒れてみたが、レフェリーはそのままプレーを流したので子供が親に甘えるように「そんなんじゃヤダヤダ」とジタバタしているように見えてしまいます。

サッカーとラグビーは共通の先祖を持つスポーツということを思い出して、Jリーグにおけるファールの判定基準を厳しくして、Jリーグからフィジカル能力の高い選手を生み出してほしいと思います。

もちろん持久力や技術力、戦術理解の向上も引き続き努力していかなくてはならないことは言うまでもありませんが。 

 それでは最後に日本代表監督にはどういう人がふさわしいかを考えてみたいと思います。

岡田さんが続投を完全否定したので後任監督を選ばないといけなくなったわけですが、巷ではアルゼンチン人のビエルサやペッケルマン、鹿島を率いるオリベイラとどういうわけか南米人の名前ばかりがあがっています。

私が新しい日本代表監督に望むのは、攻守両面での組織力のさらなる向上です。

個の能力アップのための指導もできるかぎりやって欲しいのですが、クラブと違って代表は限られた時間でチームづくりをやっていかなくてはいけないので、あまり多くは期待できません。

個の能力アップは各クラブや個人レベルで長期計画をたてて努力していく課題だと思います。

前述のようにあと4年でいきなりW杯優勝国レベルにまで個の能力を持っていけないのであれば、せめて組織力は世界最高水準にまで近づけてほしいということを新しい代表監督に望みます。

日本代表は大会直前になってオーソドックスなゾーンディフェンスに転換して大成功を収めましたが、よく見ているとまだ経験不足なところも見受けられます。

ですから(1)新監督には基礎的なところからより高度なレベルまでゾーンディフェンスをみっちり指導できる人を希望します。

奇をてらった世界のどこもやっていない革新的な守備戦術だが、不安定で点をとられてばかりというのはいりません。

(2)岡田ジャパンではまったく手つかずだった攻撃面での組織力、敵選手の間・間でショートパスをスムーズにつないで相手守備陣を崩すことができる組織戦術の指導ができる人を望みます。

(3)攻撃の時も守備の時も、そして最終ラインをどこに置くにしても常にコンパクトが陣形を維持し続けるという日本人の一番苦手な部分を修正する能力を持った人を希望します。

どれも現代では常識となっている戦術ばかりですが、こうした基礎をおさえた上で、日本人の長所・短所をふまえて創意工夫することができる人ならば国籍は問いませんが、もともと現代サッカーで常識となっている戦術はヨーロッパで生まれたので、本場ヨーロッパの人を呼ぶのが自然ではないでしょうか。

日本サッカー協会とスペイン協会との間に協力関係があったはずですが、だったらスペイン協会によさそうな人を紹介してもらうというのも一つの手でしょう。

南米人の監督にありがちなのは、「スタメンを決めれば監督の仕事は終わり。あとは選手個々で何とかしなさい」というタイプで、欧州人ではポルトガルのカルロス・ケイロスもこういったタイプのイメージを私はもっていますが、日本代表監督に一番選んではいけないのがこういう人だと思います。

あと、もともと南米サッカーに陣形をコンパクトにするという思想がなかったので戦術上そういうことに無頓着な人もいますから、そういう人も不適格でしょう。

名前があがっているビエルサ氏やペッケルマン氏は(1)(2)(3)の条件を満たしているのでしょうか?

個人的に鹿島のオリベイラ氏だけは明確に反対です。

鹿島でオリベイラ氏がやっているサッカースタイルを見る限り、私の希望する条件に一部合わないですし、国内では常勝でもACLでの鹿島の勝負弱さは世界と戦う代表監督としては大きなマイナスポイントです。

 2010年W杯の成功が次の日本サッカー界の成功を導く好循環へとつなげていくために、いま世界ではどういうサッカースタイルがどういう理由で成功しているのかを正確に分析し、それをどう日本代表の強化に生かしていくかしっかりとした戦略を立てて欲しいです。

その上で、代表監督の人選を熟慮のうえ慎重にお願いします。

間違っても「自分が知っている元Jリーガーの大物外国人だから」みたいな、軽佻浮薄な理由で選んでほしくはありません。

次回はちょっとした特別企画をやりたいと思ってます。



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■岡田ジャパン総括(2)

 今回は、岡田ジャパンがなぜW杯で成功できたのか、戦術面からその要因をさぐっていきたいと思います。

結論から言えば、パラグアイ戦の前日の記者会見で岡田監督が「わたしも好きなサッカー、理想のサッカーというのはあります。しかしわたしは今、日本代表監督として、勝つことを常に考えています」とコメントしていたように、大会直前に「現実主義への転換」を決断したことが最大の要因でした。

これまでの岡田ジャパンは、どんな相手であっても前からどんどんプレスをかけて真っ向勝負を挑むというスタイルでやってきました。

アジア相手ではそれでも良かったのですが、今年になってW杯常連国とのテストマッチで大敗を続けたことで、現実主義への転換を決断せざるをえなくなりました。

W杯壮行試合の韓国戦に敗れた後、日本代表はグラーツでのイングランド戦でフォーメーションを4-1-4-1にして、自陣に引いてカウンターを狙う堅守速攻型へと変貌をとげました。

しかし、いかんせん練習時間と経験が足りなすぎました。

イングランド戦でも次のコートジボアール戦でもコンパクトなブロックをつくって我慢していられたのは試合開始から20分間ぐらいで、それをすぎると再びフィールドプレーヤー10人が好き勝手に動いてしまい、そのために陣形が間延びして1人1人の担当スペースが広くなると、個の能力で劣勢というマイナス面がもろに出て結果が出せませんでした。

守備が機能していないのを見た私は、コートジボアール戦後の記事(自分から手放してしまった希望 6/5アップ)で、「オーソドックスなゾーンディフェンスに戻すべきではないでしょうか」と提案しました。

すると、まるで岡田監督が当ブログをご覧になっていたかのように、6/6日にキャンプ地ジョージに入ってから「日本代表はゾーンディフェンスを徹底する戦術練習を行っている」と報じられました。

(6/10 読売新聞) 

今だから打ち明けますがこの記事を読んでとても驚いたのが、長谷部選手の「初めてのやり方だけど、僕はこの方が守りやすい」というコメントでした。

ゾーンディフェンスが初めてのやり方ということは、岡田ジャパンではこれまでどういう守備戦術を採用していたのだろうか?完全マンツーマンだったのだろうか?と、驚くとともに強い興味を持ちました。

私自身これまで「セオリーをまだ十分理解していない人がやっている未完成のゾーンディフェンス」だとばかり思っていたので。

それよりも「カメルーン戦まであと3~4日しかないのに大丈夫か、どうにか間に合ってくれ」と正直かなり焦ったのを覚えています。

 そしてカメルーン戦当日を迎えましたが、結果は日本の勝利でした。

欧州の一部マスコミは「大会4日間で最も低調な試合」と書き、一部の日本人が憤慨していましたが、まあプロのコーチやジャーナリストなど見る人が見ればわかってしまうので、残念ながら私には返す言葉がありませんでした。

4-1-4-1というか4-3-3というか、ともかくコンパクトなブロックをつくって相手の攻撃をしのぐゾーンディフェンスが前半45分間は機能していました。

ところが後半になると、4バックがズルズルと下がってペナルティエリアの中まで最終ラインを下げてしまい、3人のMFも最終ラインに吸収されて、DF-MF-FWのスリーラインを維持できませんでした。

これでは世界から「日本代表はアマチュアか?」と思われても仕方ありません。

その結果バイタルエリアがぽっかりと空いて、そこからフリーになったムビアにミドルシュートを食らってポストを直撃、あわや同点の危険なシーンも有りましたが、経験のなさが招いた戦術上のミスを選手の意地とプライドと気合でカバーして無失点に抑えきったのでした。

日本代表、泥にまみれてつかんだ勝利

とにもかくにも初戦に勝てたことは、とてつもなく大きかったです。

 続くオランダ戦ですが、日本代表のゾーンディフェンスは目覚しい進歩を遂げていて、後半25分ぐらいまでコンパクトな陣形とスリーラインが保てるようになっていました。

強力な攻撃を誇るオランダを1点に抑えた守備力というのは十分評価できます。

W杯2試合目にして、どうにかこうにか日本代表の守備組織構築が間に合いました。

正しい戦術さえ示してやれば、日本のサッカー選手の理解力・吸収力というのは、世界的に見てもすごいものがあるというか、トップレベルだと思います。

ただ、問題点も露呈しました。 

デンマークがオランダに2点差で敗れていることを考えると、日本が決勝トーナメントへ行くためには最低でも1点差負けに踏みとどまっておくべきではないかとゲーム前に私は考えていました。

日本がオランダに負け、デンマークがカメルーンに勝って最終戦を前にして勝ち点3で並んでも、得失点差で日本が上回る可能性が出てくるからです。

そこは「オランダ戦迫る!」のエントリーでも、「1点差であればこれまで通り点を許さないような守備をしつつ、あまり人数をかけないで同点を狙っていくというやり方もあると思います」と書いた通りです。

オランダ戦の後半立ちあがりにスナイデルのゴールを許したのですが、後半25分すぎから日本は明らかに同点を狙いに前掛かりになって攻め込んでいきました。

これは「日本代表、オランダに惜敗」の記事で指摘したとおり、戦略上の大きな判断ミスだったと思います。

その結果オランダのカウンター攻撃を浴びて、大きく空いたDFラインのウラをアフェライに突かれて、GK川島選手と1対1の場面を何度もつくられてしまいました。

たった一度でもアフェライのシュートが決まっていたら、日本の決勝トーナメント進出は消し飛んでいたかもしれません。

日本対オランダ戦の後で行われたカメルーン対デンマーク戦はデンマークの1点差勝利に終わり、最終戦を前にして日本とデンマークは勝ち点で並び得失点差で日本が上回って、デンマーク戦は引き分けでも日本の決勝T行きが決まるという大変有利な状況になりました。

日本対オランダ戦が1点差負けで終わったことがいかに大きかったことか。

オランダ戦で同点を狙いに行ったのが誰の判断だったかはわかりませんが、例え選手がそれを望んだのだとしても監督が制止すべきでした。

アフェライの決定的なシュートを2本防いだ川島選手に、岡田さんは足を向けて寝られません。

オランダ戦を中継した民放の解説者も元サッカー選手のゲストも「日本はもっと攻めろ!攻めろ!」だったので、
オランダ戦の記事をアップした後「誰かまともなことを言っている人はいないのか?」と思ってネットを探したら、私の知る限りオシム氏だけがこのことを指摘していました。

「川島が素晴らしいセーブで2点を阻止した。もし失点していたら、ただ単に負けること以上の計り知れないダメージを負ってしまうことになっていた」

「リスクを冒すのもほどほどにしろという場面があることも付け加えておきたいと思う」

日本が常時決勝Tに進出できるような強豪国となるためには、こういう失敗の経験を国民全体で共有していかなくてはいけません。

 そして決勝T行きをかけたデンマーク戦ですが、自陣に引いてブロックをつくる日本のゾーンディフェンスは、ほぼ完成の域に達していました。

得失点差で下回り、勝たなければ決勝T行きの道が断たれるデンマークが積極的に前へ出てきたので堅守速攻型の日本代表にとって試合を有利に進めやすい、おあつらえ向きの展開となりました。

セットプレーから2点、カウンターから1点と、堅守速攻型のチームとしては理想的な点の取り方でした。

これがもし得失点差や総得点で日本を上回ったデンマークが引き分けでも決勝Tへ行けるという逆の状況だったら、デンマーク戦はパラグアイ戦のように0-0で終わっていたかもしれません。

そうなれば日本の決勝T進出は幻となっていました。

アフェライのシュートがたった1本でも決まっていたら単なる1失点にとどまらず、まさに計り知れないダメージとなっていたことでしょう。

ただこの試合も戦術の選択に問題があって、立ち上がりの10分間ほど4-2-3-1で前からどんどんプレスをかけていく戦術を取ったわけですが、やっぱりデンマークとの個の能力差がもろに出て、日本陣内に広く空いたスペースにどんどんパスを回されて危険なシーンを何度かつくられました。

前半10分ぐらいでいつものゾーンディフェンスに戻して事無きを得ましたが、ここまでで失点しなかったのはとてもラッキーでした。
(日本代表、決勝トーナメント進出!!) 

 日本にとって未知の領域となるベスト8行きをかけたパラグアイ戦でしたが、残念ながらPK戦での敗退でベスト16どまりとなりました。

パラグアイもどちらかと言えば堅守速攻型のチームで、パラグアイがやや優勢にゲームを進めましたが、試合は膠着状態になって120分間戦って0-0でした。

PK戦はもちろんそれまでの120分間も、プレーするパラグアイの選手からは時々笑みがこぼれていましたが、日本代表はずっと必死の形相で、ハイレベルの試合の経験や精神的な余裕といった面でやはりパラグアイの選手の方が一枚上手だったと思います。

(プレトリアの死闘)

 ワールドカップの組み合わせが決まった時、オランダ・デンマークと欧州予選トップ通過国が二つも同じ組に入り正直「これはきつい」と思いました。

グループE組を2位通過し、決勝T1回戦で南米3位の強豪パラグアイと実質引き分けという岡田ジャパンの出した結果は、日本代表の現有戦力を考えて見ても上出来だったと言えます。

埼玉での韓国戦に大敗して岡田監督が進退伺いを出した時、あれがジョークか否かにかかわらず選手に大きな動揺が走ったでしょうし、あの時点で指導者として正常な判断が下せない状況にまで追い込まれていたと思います。

あのどん底からチームを短期間で立て直してW杯ベスト16に進出させた岡田監督は素直にすごいと思います。

まず崩壊していた守備を安定させたことが日本のここまでの成功につながったと思いますし、大会直前に現実主義にもとづく堅守速攻型への転換をよくぞ決断したと思います。

コートジボアール戦後にゾーンディフェンスに転換したわけですが、あれがW杯に間に合うギリギリのタイミングでした。

イタリアのリッピ監督が日本を評価していましたが、本大会まで時間がぜんぜん足りなかったですから、日本人とイタリア人ぐらいしか楽しめないような、スペクタクルに欠け守備的な堅守速攻型サッカーへの転換もやむを得ませんでした。

W杯にのぞむ23人の代表メンバーを決定した後に堅守速攻型へ戦術をチェンジしたため、召集したのに戦術にあわなくてほとんど使われない選手が何人もいたことも問題点としてあげられます。

それでもベスト16という結果は日本サッカー界全体にとって大きいと思います。

魅力的な内容のサッカーで勝利という結果がついてくるのが理想ですし、勝ちさえすれば内容やそこまでのプロセスなんてどうだっていいというつもりはまったくありませんが、やはりW杯では結果を出すことが大事ですしね。

 ですが直前で堅守速攻型に転換したからといって、岡田ジャパンで3年近くやってきた「がむしゃらにプレスをかけ、走りまくるサッカー」がまったくの無駄だったかというとそうではないと思います。

W杯で日本代表はパラグアイ戦をのぞいて、だいたい選手1人につき1kmぐらい相手チームよりも多く走っていたようです。

デンマーク戦データ 

がむしゃらに走りまくるサッカーは確かに非効率だったかもしれませんが、3年近くそれをやってきたおかげで選手個々にスタミナがつき、パラグアイやオランダといった強豪国といえどもそう簡単には点が取れないような、ブロックをつくって粘り強く守るゾーンディフェンスを90分・120分と足が止まることなく続けることができました。

この守備なくして日本の成功はありえませんでした。

「真っ向勝負」から「堅守速攻」へと転換しましたが、「相手に走り勝つサッカー」というコンセプトだけは貫き通したと言えるでしょう。

しかし、いつかは日本代表もスペインやオランダといった世界の強豪国を相手に、世界を魅了する攻撃サッカーで5分と5分の勝負を挑めるようになれたらという強い希望を私自身は持っています。

思ったより記事が長くなってしまいました。

次回は、これから日本代表が目指すべきサッカースタイルはどんなものか?

そうしたサッカースタイルを確立するために日本サッカー界はどうすれば良いのか?

新しい代表監督はどんな人物が適任なのか?


について考えてみたいと思います。

次回につづきます




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■岡田ジャパン総括(1)

 それではお約束どおり、岡田ジャパンのワールドカップ南アフリカ大会での成功にはどんな意味があるのか、岡田ジャパンの勝因はどこにあったのかを考える総括を2回ぐらいに分けてやってみたいと思います。 

 カメルーン戦後、ある読者の方から「この勝利が日本のためになるのだろうか」というコメントをいただきました。

その問いに答えるならばもちろんYESです。
というか、絶対にそうしないといけません。

W杯直前までは「代表人気の低迷」「日本人のサッカー離れ」が盛んに言われましたが、日本代表がカメルーンに勝利し、デンマークもやぶって決勝トーナメントに進出したときの国内の盛り上がり方は久しぶりにすごかったと思います。TVの視聴率も。

「W杯に日本代表も参加したい」という段階を越えて「決勝トーナメントに進出してそこで勝ち進む」という次のステップへ歩み出すことを日本国民がいかに強く望んでいたかをあらわしていました。

実はカメルーン戦の当日、帰宅途中の小学生グループとすれ違ったのですが、子供たちの会話の内容がプロ野球セ・パ交流戦だったので正直がっくりしました。

近所の芝生公園でも、最近見るのは野球をする子供たちばかり。

ところがカメルーン戦後の最初の土曜日、芝生公園では野球をしている子供グループ2に対してサッカーをするグループ1になっていました。

決勝トーナメント進出が決まったデンマーク戦後の土・日には、野球2に対してサッカー2になっていました。

子供は正直なもので「勝利するヒーロー」にあこがれます。

日本代表の活躍に胸を熱くした子供たちの中から、きっと第2・第3の本田選手や中澤選手、川島選手が現れることでしょう。

私が常々、代表とJリーグは日本サッカーを発展させる上での「車の両輪」と言ってきたのはそういうことです。

だからこそ、日本サッカーの発展に一番重い責任を負うサッカー協会会長の最も重要な仕事の一つは、「世界で勝てる日本代表をつくりあげることができる監督を選ぶ」ということなのです。

ワールドカップ南アフリカ大会における日本代表の成功は、日本のサッカー界にポジティブな影響を与えました。

これを一過性のブームで終わらせてしまうか、成功が次の成功を呼ぶ好循環のサイクルにするかは、日本のすべてのサッカー関係者の努力にかかっています。

 日本代表がワールドカップで勝利したことで世界が日本を見る目も変わりました。「善戦したけど、カメルーンやデンマークに負けた」ではこうはいかなかったでしょう。

ワールドカップは「プロサッカー選手の見本市」みたいな面を持っているのも事実です。VIP席には欧州クラブ関係者や代理人が陣取って、選手一人一人をチェックしています。

世界のサッカー市場で日本人選手に対する評価があがり、欧州に移籍する選手も増えそうです。

Jリーグ各クラブで不動のポジションを占めていた選手が海外へ行くということは、若手にそのポジションを奪うチャンスが与えられるということです。

「人気選手を海外クラブに取られてしまう」というマイナスの発想ではなくて、海外クラブに選手を高く売ったお金で、次の若手スター選手をJリーグで次から次へと切れ目なく育てて行くというプラスの発想が欲しいです。

それこそ、日本がサッカー強国となるための着実な歩みにつながっていくはずです。

ところでW杯直前、あるサッカー雑誌にサッカー選手の海外移籍を手がける代理人の話が載っていたのですが、そこに書かれていたことはかなりショックでした。

その代理人が言うには、欧州のクラブにとって「日本人選手は文句が多くて使いづらい」のだそうです。

誰とは書いてありませんでしたが、日本人選手は自己評価が異常に高いらしく、「このポジションはやりたくない」「監督の戦術が俺にはあわないから変えてくれ」などと言っては監督やクラブからけむたがられる反面、プレーが消極的で実戦で結果が出せないのだと代理人は言っていました。

サッカー選手は自己主張が大事ですが、その方向性が間違っています。

サッカー選手なら誰よりもゴールするとか、自分のプレーで積極的に結果を出すことで自己主張しないとまわりから認められません。

でなければ、自分がやりたいポジションを獲得することは不可能です。

与えられたチャンスの中でベストを尽くして自分のプレーで結果を出すこと、それプラス前回ちょっと書きましたが、現地の言葉を覚えてチームメートや監督と積極的にコミュニケーションすること、これが日本人選手が海外で成功するのに最低限必要なことだと思います。

ワールドカップ南アフリカ大会の成功がきっかけとなって、多くの日本人選手が欧州のレベルの高いクラブでレギュラーポジションを獲得してプレーするようになれば、それが将来のベスト8・ベスト4につながってくるはずです。

 今からこういうことを書くと鬼が笑うかもしれませんが、2014年ワールドカップアジア予選のことを考えてみても、南アフリカでの成功は大きかったと思います。

アジアからは日本・韓国・オーストラリア・北朝鮮が出場したわけですが、日本代表はアジア勢ではナンバーワンの成績をあげることができました。

私の記憶が確かならば、PK戦で勝敗がついた場合はFIFAの公式記録では引き分けとなったはずです。

つまり日本も韓国もベスト16どまりでしたが、韓国は決勝トーナメント1回戦で敗北したのに対し、日本は引き分けで韓国を上回ったということになります。

またグループリーグでの成績を見ても、日本代表の2勝1敗、勝ち点6という成績は文句なくアジアナンバーワンでした。(韓国、オーストラリアは勝ち点4、北朝鮮は0)

予選のやり方に変更がなければ、2014年W杯アジア最終予選のシード国は日本と韓国ということになるでしょう。

これで次回アジア予選が戦いやすくなるのであれば、南アフリカでの成功は大きかったということになります。

アジアカップ2004で優勝したので、次の2007年大会は日本は予選免除となるはずだったのですが、アジアサッカー連盟(AFC)の突然の方針転換で日本は予選から戦わなければなりませんでした。

ところが2007年アジアカップでは3位までに入れば再び予選免除だということになって、4位になった日本は貧乏クジばかりを引くことに。

どうもAFCには日本が成功したり有利になったりすることを喜ばない人たちがいるみたいで、日本の第一シード入りに変な妨害が入らないことを祈ります。

 最後に大会直前の記事で私はこう書きました。


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今の日本代表には「谷間の世代」と呼ばれた選手も多いですが、このままそれを認めて引退していくのか。

それとも意地とプライドをかけて南アフリカで勝利をかちとり「谷間の世代」と言った人間を見返してやるか。

パクチソンみたいに外国の選手から名指しで「弱い」と言われて、それを認めておめおめ引き下がるのか。

それとも「日本は弱い」と馬鹿にした選手がいる国よりも南アフリカで良い成績を収めてリベンジを果たすか。

すべては選手しだい。

サポーターも、意地とプライドをかけて全力を出しきった日本代表を見たいはずです。


---------------------------------------


岡田ジャパンは単純に11人の個の能力を足していったら、中田英・中村俊・高原・福西・小野・小笠原といった豪華タレントを揃えたジーコジャパンには劣ったのかもしれません。

オリンピックでもぱっとせず、「谷間の世代」なんて言う人も現れましたが、岡田ジャパンは組織の力で不足する個をカバーし、グループリーグで2勝をあげてベスト16進出というジーコジャパンも成し遂げられなかった好成績をあげました。

W杯直前に韓国にホームで2連敗してパクチソンに名指しで弱いと言われるなどこれ以上ない屈辱を味わいましたが、前述のように日本代表は韓国を上回る成績をワールドカップであげることによって、少しだけリベンジを果たすことができました。

とても素晴らしかったと思います。

南アフリカで、「自分たちは勝者に値する」という岡田ジャパンの意地とプライド、魂のこもった戦いぶりをしっかと見させてもらいました。

これからは代表にしろJクラブにしろ、世界を相手に戦う時はワールドカップ・ベスト16の名に恥じないような試合をしなくてはいけません。

すべての日本人選手がその意地とプライドを持って世界とファイトし続けることを希望します。

次回は、戦術面から岡田ジャパンの勝因をさぐります。






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■器の大きさ

 南アフリカから日本代表が無事帰国し、選手・監督がいろいろなコメントを残しています。

彼らがどういうことを考えてこれまで戦ってきたか、興味深くコメントを一つ一つ拾っていたのですが、一番印象に残ったのがこれでした。

「多くの人が批判してくれたことに感謝している。批判する人がいなかったら、ここまで来られたか分からなかった」

(本田圭佑選手)


本田選手は精神的に大人というか、プロ魂があるというか、若いのに立派だと思います。

いい年をした大人でも、なかなかここまで言える人はいません。

日本のサッカー界では、その人がやっているサッカーについてちょっとでも批判されるとヘソを曲げて、自分の全人格が否定されたと思って感情的になり、大人気ない行動に出る人もいます。

しかしここは強調しておきますが、本来プロスポーツ界の人間にとって一番嫌なこと・一番恐ろしいことは、誰かから批判されることではなくて人々にまったく関心を持たれず無視されることではないでしょうか。

サポーターがわざわざ手間ひまかけて批判するということは、まだその選手なりチームなりに関心や愛情が残っている証拠です。

実際そのスポーツをやっている人たちには申し訳ありませんが、この日本でスケルトン競技について真剣に批判してくれる人がどれだけいるでしょうか?

スケルトンは選手がプロとして一生食っていけるほど経済的に成功しているでしょうか?

残念ながらほとんどの日本国民にとってスケルトンとは、冬季オリンピックを見ていて「へえ、こんなスポーツあったんだ」という程度の存在でしょう。

サッカーでメシを食ってる人間は自分がやっているサッカーについて批判されるのは宿命であり義務であると思いますが、「多くの人が批判してくれたことに感謝している」と言える本田選手のプロ魂はすばらしいと思います。

 ワールドカップ直前にVVV時代の本田選手を密着取材した番組がNHKで放送されていましたが、ご覧になった方はおられるでしょうか。

オランダのVVVに加入した当初の彼は、FKを他の選手に譲ってしまうような日本人らしい自己主張の弱い選手だったのですが、「お前が活躍するのはビデオ映像の中だけか」とチームメートから面と向かってガツンと言われてから変わったみたいですね。

プレーに積極的になりゴールを量産し出した本田選手はそのうちVVVでキャプテンを任されるようになりましたが、若手選手にはキャプテンとしてぐいぐいひっぱっていくような言葉をかけ、プライドの高いベテラン選手には「こうした方が君のためになる」と説得するように話しかたを変えるなど、リーダーとしての気づかいを見せていたのが意外でした。(失礼!)

本田選手が22~23歳ぐらいの話だと思いますが、こういった経験が本田選手を人間的にもフットボーラーとしても大人にしていったのでしょう。

 日本代表がW杯で躍進したことで世界から注目され、日本人選手に欧州のクラブからオファーが増えると思います。

オファーが来た選手は迷わず欧州や南米へ行くべきですし、Jクラブも日本サッカー界全体のために快く送り出してあげて欲しいですね。

次回、岡田ジャパンの総括をやるつもりですが、ワールドカップで0-0の均衡を破るだけのパワーを持っていたのは本田選手だけでしたし、本田選手が先制点をあげられなかった試合はとうとう勝てませんでした。

結局世界で通用する個の能力を持っていたのは、攻撃面では本田選手と松井選手の海外組だけでした。

日本代表がベスト8・ベスト4と勝ち進むためには、最低でも本田クラスの選手が前に4人は欲しいです。

そのためにも日本人選手はどんどん欧州に行って厳しい環境でもまれるべきです。

海外に行く時に重要なことは、「自分は目立たなくてもいいから、縁の下の力持ちになれればいい」みたいな消極的な考えはきっぱり捨て去ることと、自分が行く国の言葉か最低でも英語を絶対にマスターすることでしょう。

お金があるから、サッカーの練習に専念したいからという理由で通訳兼話し相手の日本人を雇う選手は、成功しないと思います。

ゲーム中にチームメートに正確かつ微妙な要求をしたいとき、いちいち通訳を呼ぶわけにはいきませんし、言葉がしゃべれないのはとても不利です。

カカーは流暢なイタリア語をしゃべりますし、モウリーニョはポルトガル語なまりの英語をしゃべりますが、サッカーで成功するためにも語学は大切です。

本田選手の場合オランダでもロシアでも通訳を雇わず、自分以外日本人がまったくいない環境で英語を使って監督やチームメートとコミュニケーションをとっていましたが、彼の成功の理由はそういうところにもあると思います。

これから海外へ行く日本人選手は、成功したかったらまずその国の言葉を覚えるべきです。

 今日は本田選手についてクローズアップしてみましたが、彼の成功は偶然ではないと思います。

身長180cm以上と体格に恵まれたこともありますが、成功哲学を持っているというかまず物事に対する考え方が良いですね。

「本番でゴールしても、練習で外すととても悔しい」と彼が言っているように、練習のように試合して試合のように練習するという、大舞台でも緊張をコントロールする訓練を普段から意識してやっていたり、「パスの美学は捨てた。ゴールの美学を追及している」と言っているところも、海外で成功するのに大切な心構えです。

なんか本田選手をベタ褒めしてしまいましたが、あとは変な勘違いさえしなければと思います。

レアルマドリードで10番をつけるのが夢だそうですが、ぜひその夢が実現するよう応援しています。

 せっかく日本が手に入れたゴール決定力のある選手ですので、今後「出る杭は打たれる」みたいなことがないと良いですね。

私も子供のころ草サッカーをやっていたときにそういう会話を何度か聞きましたが、日本ではFWがゴールすると「あいつばっかり目立ちやがって」と後ろの選手がしばしば嫉妬するんですね。

目立つもなにも点を取るのがFWの仕事なのに、生理的に受けつけないというかいわれなき反感を持つ味方が少なからずいます。

点を取って「出る杭」になると敵はもちろん味方の一部からもたたかれるので、「使われる方(点取り屋)より使う方(パサー)がえらい」という日本サッカー独特の価値観が生まれ、だから中盤のパサーばっかりが出てきて、ゴール決定力のあるFWが生まれないのではないかと私は考えます。

サッカーは点を取って勝つために11人が協力するスポーツという本来の目的を忘れて欲しくありません。

もっとも、出る杭となってたたかれてもへこむようなヤワな本田選手ではないと思いますが。



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