■2010年05月

■一筋の希望

 30日にイングランド代表とのテストマッチがオシム氏の自宅があることで有名なオーストリア・グラーツで開催され、日本は先制しながらも逆転負けを喫しました。

対戦相手のイングランドはいまさら解説の必要はないと思います。

日本代表の現在の絶不調を考えればアウェーでやってもホームでやってもイングランドの勝利が妥当。
2チームの戦力差をそう評価していました。

試合は日本から見て1-2という順当な結果となりましたが、前半25分ぐらいまでは日本の試合内容が良かったです。

3年間ずっとこのチームの課題であったフォーメーションの間延びがやっとのことで少し修正されました。


ようやくうっすらと一筋の希望が見えてきたという感じです。

 それでは試合を振りかえりましょう。

日本は4バックの前に阿部選手をアンカーとして置く4-1-4-1の新布陣。

前半立ちあがりは意識してコンパクトな陣形を保つことができており、1人1人の距離が良かったので攻守にわたって組織的なサッカーをすることができました。

逆にイングランドは日本をなめていたのかケガを恐れていたのかわかりませんが、本来の出来と比べて動きが重かったように感じました。

前半6分、日本がコンパクトな陣形を維持できたためにイングランドの裏に大きなスペースが空き、カウンターからウラへ飛び出した大久保に中盤でダイレクトパスの交換から阿部が浮き球のパス、これはイングランドDFのG.ジョンソンがヘッドしてなんとかCKへ逃れます。

7分、そのCKからニアサイドにつめた闘莉王がダイレクトシュート!
これがイングランドゴールに突き刺さって日本先制。

13分、中盤で小気味よいパス交換からサイドの大久保にパスが出て、大久保と阿部のワンツーでイングランドの右サイドを崩して突破、残念ながらセンタリングは防がれます。

25分、今野を基点に遠藤→阿部→大久保→遠藤→岡崎→遠藤→長谷部と中盤で日本の選手が何人もからんでワンタッチでの素早いショートパス攻撃に、さすがに個の能力で勝るイングランドの選手もうかつには飛びこめず、ボールにも日本選手にも触ることができません。

残念ながら長友へのラストパスが長すぎましたが、サッカーの目が肥えているグラーツの観客からも日本代表に拍手が沸き起こります。

ところが30分あたりから日本代表の足が止まり始めます。

攻撃も岡崎に単純なロングボールを放りこむだけとなり、日本が徐々に攻め手を失うとイングランドがゲームを支配するようになります。

31分、ファーディナントのロングフィードを中澤がうまくクリアできず、こぼれ球をGK川島と競ったベントにシュートを食らうも危うくゴール左へ。

39分、ゴール前で強いパスをもらったルーニーが角度をかえてシュートするも外れます。

イングランドは日本に先制を許したことで明らかに焦っており、攻撃で凡ミスを連発。

日本がこのまま失点しなければジャイアントキリングもありましたが...

 後半ジェラードをはじめとしてイングランドは選手を大幅入れ替え。
ハーフタイムで監督からカツが入ったのか運動量を増やして日本を攻めたてます。

日本は前半25分ぐらいまでのコンパクトな陣形をすっかり忘れてしまったように間延びします。


10分日本のゴール前でイングランドのFK。蹴ったボールを本田が手で弾いてしまいPK献上。
しかしランパードのPKを川島が見事にストップしました。

それでもいったん足が止まって受身になってしまった日本代表は、イングランドにゲームを支配され続けます。

27分、日本の左サイドで長友が上がったウラをJ.コールにつかれてセンタリングを許し、これを闘莉王がヘッドでクリアしようとしてオウンゴール、同点に。

38分、イングランドの早い展開から日本の右サイドをA.コールにつかれてクロス、今度は中澤がオウンゴールしてしまい逆転を許します。

A.コールのアーリークロスは、DFの頭より低いところへ強く正確なボールを入れたもので、これぞイングランドの戦術教科書に書いてあるお手本のようなクロスでした。

ロスタイムに阿部の惜しいヘッドがありましたがスコアは動かずにタイムアップ。

日本はイングランドに惜しい逆転負けとなりました。

 それでは試合内容を見ていきましょう。

前半25分ぐらいまでは攻守に渡って日本代表の内容は良かったと思います。

その理由は何と言ってもDFラインからFWまでのフォーメーションをコンパクトに維持できたことに尽きます。

先日の韓国戦の録画を見比べてもらうとその違いが一目瞭然だと思います。

アンカーを置いたことも多少プラスになったと思いますが、一番大きかったのはやはりコンパクトなチーム陣形をつくれたことです。

日本代表がコンパクトなチーム陣形を保つことで選手間の距離が適切になり、中盤でテンポ良くショートパスをつなぐことが出来るようになって攻撃がやっと機能しはじめました。

前半25分にワンタッチのショートパスがリズム良くつながり、フィジカルの強いイングランドの選手にボールも日本選手の体も触らせなかったシーンは象徴的です。

できればバイタルエリアで遠藤選手や長谷部選手が前を向いて、ウラへ抜ける岡崎選手や本田選手などにグラウンダーのスルーパスが欲しいところでしたね。

前半25分ごろまで日本がイングランドと互角に渡り合えたのはそのおかげであり、コンパクトな陣形を保ってこうした攻撃をどんどんやるべきです。

また日本の陣形がコンパクトであったためにイングランドがバックラインを高くあげてきたので、イングランドDFのウラにスペースが広く空き、日本がカウンターをやりやすくなりました。

イングランドが「寸足らずの毛布」を頭からかぶったために足が出てスースーしていたということです。

前半6分に、イングランドのウラのスペースに大久保選手が飛び出してカウンター攻撃が決まりそうになったシーンがその象徴でしょう。

このプレーによって日本の先制点を引き出すCKを獲得したわけですが、韓国戦後に「どうして相手のカウンターが決まって日本のカウンターが決まらないんだろう」と言っていた大久保選手、これで理由がハッキリとわかりましたよね?

 この試合の勝敗の分かれ目となったのは、前半30分あたりから日本代表の足がぱったり止まって徐々に4-1-4-1のフォーメーションが崩れ出したこと。

このあたりからまたしてもピッチ上の選手が本来の自分のポジションを維持できなくなって、フォーメーションがグチャグチャに崩れてチーム陣形がバランスを失いはじめるとゲームの流れはイングランドへ。

後半キックオフ時になるとはっきりとDFからFWまでの陣形が間延びして、選手間の距離が離れすぎて個の能力で勝るイングランドにボールを支配されてしまいました。

間延びするから前半のようにカウンター攻撃もほとんどできなくなり、そして1点取られたらダムが決壊するように逆転負け。

前半30分あたりから日本代表の足がぱったり止まった理由はなんでしょうか?

イングランドの動きが重くそれほど運動量はありませんでしたし、日本代表からさほど激しいプレスをかけていたわけでもありませんでしたから、前半30分で早くもスタミナ切れとは思えません。

やはり精神的なものが理由ではないでしょうか。

あのイングランド代表から先制点を奪ったことで「最近負けっぱなしなので、このまま1点を守りきりたい」という弱気で消極的な気持ちに日本の選手が負けて、精神的に受身になってしまい、イングランドのプレーを足を止めて見ていたか。

それとも自分のミスで日本のリードがパーになってマスコミやサポから叩かれるのが嫌だから、足を止めてボールにからむことから逃げたのか。

どちらにせよあのイングランドを相手にチームのやり方が上手く行っているのに、どうして自分とチームを信じて最後までそれをやり通そうとしないのでしょうか!

ワールドカップで勝ちたいなら歯を食いしばって、1試合90分なり120分なりDFからFWまでのチーム陣形をコンパクトに保ちつづけなければなりません。

試合終了のホイッスルが鳴るまで、例えばアンカーなら自分とDFラインの前後の距離が10m以内か、自分と二列目のラインとの距離が10m以内かいつも確認してポジショニングを修正しなくてはいけません。

これを試合に夢中になって忘れるようでは勝利から遠ざかってしまいます。

これからカメルーン戦まで毎日特訓ですね。

縦の距離をコンパクトにすることも大事ですが、横の選手間の距離も一定にキープして4-1-4-1の陣形を保ち続けることが死活的に重要です。

前半30分ぐらいから、選手が前後左右に好き勝手にポジションチェンジしてそのままになってしまうので、チーム全体のバランスが崩れてパスがつながらなくなりましたし、相手の攻撃にももろくなってしまいました。

 失点シーンのオウンゴール2発はやむをえないところもあったと思います。

しかしクロスを入れられるその前の段階で日本代表のDF陣は問題を抱えています。

日本の4バックはゾーンディフェンス戦術のやり方がおかしいです。(下図)


ゾーンディフェンス誤0
(クリックで拡大)

まず4バックが横に等間隔で並ばず、しかもサイドバック(SB)が自分の前のスペースにいる敵選手に対しボールを持っていない段階からマンツーマン状態でついてしまうためにオフサイドラインがそろいません。

そのせいでSBのウラに大きなスペースを空けてしまっています(1)。

その上、前へ出たSBとセンターバック(CB)との距離が離れすぎていて、その間にも危険なスペースをつくりだしています。(2)

すると日本代表にどういうことが起こっているか。(下図)


ゾーンディフェンス誤1


サイドバックが前へ行きすぎて(1)、空けてしまった後ろのスペース(2)に敵選手が入りこむと(3)、日本のセンターバックがリトリート・ラインの外側まで簡単に引きずり出され(4)、残りのCBとSBが横へスライドしないので日本のゴール前がスカスカになる非常に危険な状態になります。

日本の場合、ボールを奪われた直後に行われる相手のサイドチェンジに対し、横へのスライドが遅れるのはDFラインに限らず、MF陣もそうですね。

後半になると日本のフォーメーションが間延びしすぎて選手間の距離が遠くなり、CBがSBの後ろのスペースへ走りこめなくなりました。(下図)


ゾーンディフェンス誤2


それでも両サイドバックが自分の前にいる相手選手にマンマークぎみについていってしまうので(1)、サイドバックの後ろに広大なスペースが空く(2)。

そのスペースに敵選手が走りこみ、イングランドの中盤から精度の高いパスが出る(3)。

広いスペースからイングランドの正確なクロスがゴール前へ入ってきて、日本のセンターバックのオウンゴール2発で逆転負け。

あのオウンゴール2発は偶然ではなく必然というわけですね。

 前回記事でもふれましたが、もう一度正しいゾーンディフェンスのやり方を確認しておきます。

まず4バックがリトリート・ラインに応じた幅で1人1人が等間隔で守るのが基本です。(下図)


リトリートライン


相手がボールをサイドへ動かしたら、4バックはリトリート・ラインの幅をなるべく保ってすばやくスライドします。この時点ではオフサイドラインをそろえておきます。(下図)


ゾーンディフェンス正0


相手がこちらのサイドバックより外側へボールを動かした場合をみましょう。(下図)


ゾーンディフェンス正


この時はじめてサイドバックが相手のボール保持者との間合いをつめるためにやや前進します(1)。

センターバックは相手選手のマークをサイドバックに受け渡してむやみにアウトサイドへ引きずり出されないようにします。センターバックのポジショニングは相手のボール保持者がこちらのサイドバックを抜いてインサイドに切れこんできてもアウトサイドにきてもカバーできるように前にいるサイドバックのナナメ後方です(2)。

その結果、4バックはフラットなラインではなくやや前方へしなることになります。

(ボール保持者がアウトサイドを突破した場合は、まずサイドバックに任せます)

敵がこちらの手薄な逆サイドに選手を配置してきた場合は、サイドハーフ等がマークにつきます。

これが4バックによるゾーンディフェンスの基本です。

カメルーン戦まで一試合を通してきっちりできるように毎日猛特訓です。

ちなみに、4人のMFによるゾーンディフェンスのやり方も基本的にはこれと同じなので、よく覚えておきましょう。

4-4-2なら4人の選手によるゾーンディフェンスのラインが二つできます。4-1-4-1ならそのラインの中間にアンカーがいてスペースを埋めるというイメージでしょう。

 さて今回アンカーを置いた新フォーメーションを採用したわけですが、アンカーを置いたから良かったというよりは、陣形をコンパクトにできたことの方が守備の安定につながったと思います。

アンカーがいるのに日本が後半間延びしたことで2失点したことがそれを示しています。

アンカー1人だとカバーすべきスペースが横に広すぎて、サイドバックの前にいる敵選手を誰がみるかで混乱が起きていました。

先ほど言ったように、サイドバックが前へ行ってしまうとそのウラにスペースが空いて相手に使われてしまいます。

たとえばデンマーク代表は、サイドハーフがサイドを突破してクロス、ゴール前にいるベントナーやトマソンが決めるというのが一つの攻撃の形でしょう。

今の状態だと日本のサイドバックのウラをサイドハーフのロンメダールあたりにやすやすと突破されかねません。

日本はダブルアンカー制(守備的ダブルボランチ2枚)にしてサイドバックの前にいる選手は二人のアンカーのどちらかがみるようにした方が良いのかもしれません。

もちろん陣形をコンパクトに維持してDFラインとMFラインの間を狭くすることが大前提です。
 
 さらに日本の両サイドバックの守備の位置どりが悪い上に、イングランドに1点リードしていてがんがん攻撃参加のためオーバーラップするとは、無謀どころの話ではありません。

だから逆転負けなのです。

(日本のサッカー記者はちょっとSBの攻撃参加が少ないとすぐ5.0とかつけるでしょう。日本サッカーに守備の文化がないのはそのせいもあるでしょうね)

前半18分にはCBの闘莉王選手まで上がってしまい、そのスペースをつかれてレノンにシュートを食らいましたよね。

こちらが先制されたのならいざ知らず、もしオランダやデンマーク・カメルーン相手に日本がリードしたら、4バックとアンカー(もしくは2ボランチ)は上がるな!と声を大にして言いたいです。

4バックとボランチは守備ブロックを維持するのに専念し、攻撃は二列目とワントップの4~5人だけでフィニッシュまでもっていかなくてはなりません。

もちろんチーム陣形全体をコンパクトにすることは忘れずに!

陣形が間延びしたから中盤でパスがつながらなくなり、イングランドのウラも狭くなってカウンターができなくなったのです。

陣形をコンパクトにして前半25分のようなパス回しを試合終了まで断続的にできるように。

それでこちらのカウンターが決まれば勝利が見えてきます。

 個人では、このシステムならもうちょっと長谷部選手に攻撃の組み立てに参加して欲しいところです。

本田選手もボールに触りたくてアンカーより下がったり、逆サイドへ流れたりするなど動きすぎてしまっています。

まず自分本来のポジションをキープして例えば本田選手が右サイドハーフに入ったら、自分の左横に遠藤選手がいて後方左にアンカーの阿部選手、前方左にワントップの岡崎選手がいるというポジションと彼らとの適度な距離をキープしつつ、自分ととなりあった3選手がボールを受けたらその選手に近づいてフォローしてあげる。

(もちろんグラウンダーでパスを受けられるポジショニング。近づきすぎる必要はないでしょう)

自分がその選手からパスを受けたら、ショートパスを出したいなら別のとなりあった選手へ。ロングパスならそれ以外の味方やスペースへパスを送る。

センターハーフに入ったときもそれは同じ。

その位置関係を崩すのは、基本的には自分が相手のウラへ抜けてスルーパスをもらってシュートといった決定的なケースに限られます。

この動き方を覚えたら、CSKAでジャゴエフからトップ下のレギュラーを奪い取れるんじゃないでしょうか。

選手の名前とフォーメーションを覚えてTVを見れば、ヨーロッパのチームなら攻撃時でも守備時でも背番号が見えなくてもだいたいどのスペースに誰がいるかわかります。

ところが日本代表はすぐフォーメーションがグチャグチャになるので、背番号を見ないと誰がどのスペースにいるのか良くわかりません。

この重要な違い、わかるでしょうか?

今野選手は、反スローをとられないように練習しましょう。

 今回のテストマッチ、逆転負けという結果は残念でした。

しかし試合内容は良かったと思います。

イングランドと互角に戦った前半25分までは。

ワールドカップに向けて日本代表に一筋の希望が見えてきました。

試合開始からたった25分間しか続かなかったチーム陣形をコンパクトにするということを、90分・120分と持続することができるか。

その成否に日本代表のすべてがかかっていると言っても過言ではないと思います。

(あとは4バックのゾーンディフェンスをしっかり安定させること)

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       2010.5.30 UPCアレナ(グラーツ)


      日本  1  -  2  イングランド


    '7 闘莉王       '72 O.G.(闘莉王)
                '83 O.G.(中澤)


     GK 川島        GK ジェームズ
                  (ハート 46)

     DF 長友        DF A.コール
       闘莉王         ファーディナンド
       中澤          G.ジョンソン
       今野         (キャラガー 46)
                   テリー

     MF 阿部        MF ハドルストーン
       長谷部        (ジェラード 46)
       遠藤          ランパード
      (玉田 86)       レノン
       本田         (ヘスキー 77)
                   ウォルコット
     FW 岡崎         (ライトフィリップス 46)
      (森本 65) 
       大久保       FW ベント
      (松井 71)      (J.コール 46)       
                   ルーニー




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■理想と現実と

 日本代表の南アフリカW杯壮行試合となる韓国戦が埼玉で行われ、0-2でまたしても完敗という結果に終わりました。

対戦相手の韓国の戦力は、前回対戦時の結果から日本よりやや上と見ていましたが、やはり日本のホーム。

二度と同じ失敗は許されない状況でしたが、またしても2点差をつけられての完敗でした。

 試合を振り返っておきましょう。

前半は、日本より優勢なフィジカル能力で厳しいプレスをかけてきた韓国がやや押しぎみの展開。

前半6分、日本のボランチのところでボールを失い、パク・チソンがゴール前へドリブル、日本のセンターバックの寄せが甘いところをDFラインの前からミドルシュート。これが決まって韓国先制。

あまりにも早すぎる失点に日本のゲームプランが狂います。

13分、韓国のCKからキムジョンウがヘッド、日本ゴールをかすめていきます。

20分をすぎると、疲れがあるのかケガをしたくないのか韓国代表がややスローダウン。

21分、左サイドをドリブルで切りこんだ大久保がミドルシュートするも枠をとらえず。

40分、こぼれ球を拾った本田がミドルシュートするがヒットせず。

日本は韓国の強固な守備網になかなかバイタルエリアへ近づけず、質の良いチャンスをつくることができません。

 後半も長い時間同じような展開が続きます。

後半32分、森本が韓国の右サイドから強烈なシュートを放ちますが、残念ながらGK正面。

このあたりから日本は何とか同点に追いつこうと前がかりになりますが、逆に韓国は試合を決定づけるためにカウンター狙い。

33分、韓国のカウンターをいったんは防ぐも、こぼれを拾ったキム・ナミルがループシュート、GK楢崎がCKに逃れるので精一杯。

45分、前がかりとなった日本からボールを奪った韓国の速攻。スルーパスにパクジュヨンが抜け出し楢崎と一対一。
楢崎がたまらず飛びこんでパクを倒してしまいPK献上。

これをパクが決めて勝負あり。

日本がホームで大敗とも言える0-2の完敗を喫しました。

 つづいていつものごとく試合内容を見ていきたいと思います。

W杯直前になって問題点ばかりあげつらってもチームが自信を失うだけなので、悪いところよりも良いところを取り上げてチームに自信を持たせてワールドカップに送り出したいというのが試合前の本音でした。

前回ドイツ大会直前の記事もそのつもりで書きました。

しかし昨日の試合はそういう記事を書くのが難しい内容でしたね。

ポジティブに考えれば、問題点が今の段階で明らかになって良かった、あれがワールドカップ本番じゃなくて良かったという点がこの試合の良かったところでしょう。

東アジア選手権の韓国戦からセルビア戦と日本代表はホームで大敗を続けていて、今回の試合でも修正すべき点がまったく修正されておらず、同じような失敗を繰り返しています。

日本代表はバックラインからトップまでが間延びしていて、特にセンターバックの前に広いスペースを空けてしまう、「破れた毛布」なのですが、このために一人一人の距離が離れすぎてしまい、選手一人当たりがカバーすべきスペースがそれだけ広くなってしまいます。


図1「破れた毛布」
毛布
(クリックで拡大)


一人一人の距離が離れてすぎていて組織で攻撃も守備もできないとなると、個の能力で劣勢のチームはとても不利です。

並のディフェンダーがメッシやロッベンに広いスペースを与えて一対一の勝負を挑んだら、彼らのドリブルを防ぎきれないのは自明の理ですよね。

大久保選手が「日本はなんであんなにカウンターを食らうんだろうなって思っていたし、逆に日本はなんでカウンターができないのかとやってて思う」とコメントしていましたが、その答えはこれまで何度も言ってきたように、日本代表のFWや二列目が得点を焦ってあまりにも早いタイミングで前へ前へ行くから警戒した相手DFラインが下がって裏のスペースが狭くなるので、カウンターを仕掛けにくくなるのです。(下図)


抜けちゃえば一緒1


逆に日本が同点を狙ってDFラインを押し上げ韓国陣内へ攻めこめば、日本の裏に大きなスペースが空きます。(日本の場合DFラインの前にも広いスペースが空く)だから韓国のカウンターが決まるのです。

本田選手も記者から日本代表の中盤が間延びして距離が遠くなっていた点を問われて、「それは難しいところ。後ろに下がって(パスを)回せてもシュートが打てなかったという可能性もあるし」とコメントしていますが、日本の攻撃の選手がゴールから遠ざかる恐怖をあえて辛抱し、DFラインを引きぎみにしてきっちりゾーンディフェンスを敷いて、4-2-3-1のバックからトップまでを30m前後に維持することで相手チームがDFラインを高くあげてくれば、相手のウラが広くなってカウンターがやりやすくなる。(下図)

「押してもダメなら引いてみな」ということですね。

(アラブのチームみたいに最終ラインをペナルティエリアぎりぎりに置いてベタ引きからカウンターというのは、日本代表には無理だと思いますが)


堅守速攻


もし相手チームが日本代表を押しこんでいるのにDFラインを上げてこなければ、それは相手チームが間延びしているということを意味しているので、人と人の間のスペース(特に相手のバイタルエリア)で素早くボールを回して相手を崩せばいいわけです。

相手チームがDFラインを上げず、コンパクトな陣形を保つ堅守速攻型をとってくれば、相手のウラにも人と人の間にもスペースがあまりないということでそれを崩すのは一番やっかいということになります。

今シーズン、チャンピオンズリーグで優勝したインテルなんかが堅守速攻型チームのもっとも完成された形でしょう。

 岡田さんはこの試合でも、どんな相手であっても前からプレスをかけて相手を押しこんでボールを回しゴールを奪うという彼の理想とするサッカーを目指していたのではないでしょうか。

ボランチから前の選手たちもそれを実現するために相手陣内深くへと向かっていったのではないかと思います。

しかしガーナ戦・韓国戦・セルビア戦とカウンターでやられ続けているDFラインは、カウンターからウラを取られるのが怖いので前へ行きっぱなしのボランチについていくのがどうしても遅れる。(もしどうしても前から行きたいなら思いきってDFラインをあげないといけません)

日本の中途半端なDFラインの位置取りは、DFラインの前(バイタルエリア)とDFラインのウラに広いスペースをつくりだし、やっぱりカウンターでやられてしまう。

結果が出ないので選手が焦り、日本代表の「破れた毛布」がもっとひどくなる。

そんな悪循環に陥っているように見えます。

岡田監督が理想を追い求めても、厳しい現実がそれを許さないというのが、今年に入ってからの代表戦ではないでしょうか。

現状を何ら修正せずに監督がこのまま理想を貫こうとすれば、本大会でも玉砕の可能性が高いと思います。

日本サッカー界の将来を真剣に考えてそれでも良しとするのかどうか、日本サッカー界の最高責任者が速やかに決断を下すべきでしょう。

 次に守備にしぼって見ていきますが、先制されたシーンは自陣で、しかもボランチのところであっさりボールを失ったのがまず敗因。

次にドリブルするパクチソンに対し、センターバックがシュートコースを切るのが遅れたことで失点につながりました。

Jリーグですと、たいていの選手はセンターバックを抜いてペナルティエリアに入ってからシュートを打つケースがほとんどですしミドルシュートの精度も低いです。

でもワールドクラスの選手になると、バイタルエリアで前を向けたらセンターバックの前からでも十分、ミドルシュートの有効射程距離なんですね。

だから口を酸っぱくして「バイタルエリアを広く空けるな。バイタルエリアでボールを持った相手選手を前へ向かせたら、スナイデル・トマソン・エトオあたりに何点やられるかわかったものではない」と言っているわけです。

Jリーグの感覚で「まだシュートを打ってこないだろう」と思ったのかパクチソンと一対一で抜かれるのを恐れたのかはわかりませんが、日本の選手がパクチソンのシュートコースを切る動きが緩慢でした。

これも勇気と積極性の問題です。

さらに4バックの横の位置取りにも問題があったように思います。

4バックはリトリート・ラインに応じた幅で一人一人等間隔で守るのが基本です。(下図)


リトリートライン


ボールがサイドにあるときは、4バックがなるべくリトリート・ラインの幅を維持して横へスライドして守ります。(下図)


リトリートライン2


もちろん相手がサイドチェンジしたら幅を保ったまま素早く逆サイドへスライドしなくてはいけません。

リトリート・ラインより広がって守ると、一人一人の担当スペースが広くなりすぎて、よほど個の能力が高くないと守りきれません。(下図)


リトリート誤


先制された時も、ドリブルするパクチソンの前に日本のセンターバックがなかなか姿をあらわさず、4バックの横幅や選手個々の位置取りが適切だったのかなという疑問が浮かびました。

 早い時間に先制されて同点に追いつかないといけなくなりましたからやむをえないところもあるのでしょうが、日本代表はしばしば両サイドバックが同時に上がってしまって、前述のようにボランチ二人も前へイケイケなので、結局守っているのはセンターバック二枚だけというケースが多々あります。

これではサイドバックに守備的な選手を入れてもぜんぜん意味がありません。格下ならいざ知らずカウンターを浴びるのも当然かと。

これからデンマーク戦まですべて日本より戦力が上のチームとばかり当たりますが、相手の出方を慎重にうかがって両サイドバックとボランチ二枚の不用意な攻めあがりは自重すべきだと思います。

二点目は楢崎選手も良くわかっていると思いますが、結果が出ていないことからくる焦りでしょうか、相手に飛びこむのが早すぎました。

 攻撃面では、パス回しにおける連動性がほとんど見られません。

相手の方がフィジカルで勝っているというのはわかりきったことなのですから、相手が自分の体にさわる前にパスをはたいてしまう、リズム良くパスが回れば、相手もうかつに飛び込んでこれなくなります。

しかし今年最初のベネズエラ戦からそうなのですが、パス回しに連動性がほとんど見られません。

ボールを持っている味方が自分でなんとかするのを周りの選手がだまって見ている。

ボールを持っている選手もパスが出せる位置に味方がいてもなかなかパスをせず、ドリブルしながら次にどうすべきか迷っています。

そして最後には韓国の選手が3人いるようなところへ単独でドリブルをしかけてひたすらボールを失うだけ。

今年に入って選手が自信を失っているのか積極性が見られず、W杯アジア予選やオランダ遠征の時と比べて連動性はがくっと落ちています。

守備から立て直して結果を出すことで選手の自信を回復させないと、攻撃の連動性も回復しないのではないでしょうか。今は「日本対オランダ戦の前半」という理想を追い求めるのはいったん中断すべきです。

チームが間延びしていて選手一人一人が離れすぎているので攻撃でパスが回らないというのもあります。

選手個々があまりにも自由奔放に動いてしまうのでチーム陣形がグチャグチャになってカオス状態になっています。

下図はちょっと極端な例ですが、両サイドバックが同時に上がってしまう(1)、ボランチもバイタルエリアを放り出して上がってしまう(2)、パスが回らないことにじれた二列目が盛んにボランチまで下がる(3)、トップ下がサイドハーフに近づきすぎたりその外側まで行ってしまう(4)、センターフォワードがサイドへ流れすぎる(5)


アンバランス


そうではなくて4-2-3-1の陣形ならなるべくそのフォーメーションを保ちつつ、ボールを前へ運ぶのに連動してチーム全体で前進する。(下図)

フォーメーションの形にはちゃんと意味と役割分担があるわけですから、よほどの場合以外、そのバランスを崩さないことが重要です。

もしポジションチェンジをしてもフォーメーション全体の形やバランスをなるべく維持しなくてはいけません。


チームバランス


 個人技では、相手に厳しいプレスをかけられてスペースが狭くなると日本人選手のトラップ技術の甘さが目立ちます。要改善点です。

 今回の韓国戦は結果も思わしくありませんでしたし、試合内容も問題点がまったく修正されず、そのことが最近3試合の結果につながっています。

W杯代表メンバー発表後に、選ばれた選手があっちこっちのテレビ番組に出ていましたが、とてもがっかりさせられたのは「南アフリカに何のDVDを持っていくか」ということを盛んにしゃべっていたことです。(お笑い番組のDVDがどうとか)

結果が出ているなら南アにDVD持って行こうがホテルに彼女連れこもうが文句は言いません。プロですから。

しかし今年に入ってからのチーム状態で、選手が南アでDVD見ているひまなんてあるのでしょうか。

以前にも言いましたが、ワールドカップはサッカー選手引退前の卒業旅行先じゃありません。

プロサッカー選手という夢をかなえ、さらにW杯の代表にも選ばれたという大変な幸運に恵まれたのが今の日本代表選手でしょう。

だったら一度しかない人生でこれからのたった1ヶ月間死ぬ気で24時間サッカーのことだけに集中する毎日を送ってみてはどうですか。

どうやったらカメルーンに勝てるのか必死に考えてみる。カメルーン戦が終わったらその反省をもとにどうやったらオランダ・デンマークに勝てるか考える。

シュートの正確性を高め、どんな強いパスを受けても足にすいつくようなトラップができるようになるまで練習する。

フィジカルが劣勢でもボールを取られない技術を研究する。

チャンピオンズリーグの録画を見て日本代表とどこが違うかじっくり勉強する。

南アで何のDVDを見るか気にするJリーグの日本人選手と、欧州リーグで活躍するオランダ・デンマーク・カメルーンの選手たち。サッカーに賭けているものが根本から違うのではないですか。


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        2010.5.24 埼玉スタジアム2002


       日本  0  -  2  韓国


                '6  パクチソン
                '90+ パクジュヨン(PK)



     GK 楢崎        GK チョン・ソンリョン

     DF 今野        DF イ・ヨンピョ
       中澤          イ・ジョンス
       阿部          チャ・ドゥリ
       長友         (オ・ボムソク 67)
                   カク・テヒ
     MF 遠藤 
      (駒野 79)     MF パク・チソン
       長谷部        (イ・スンリョル 76)
       中村俊         キム・ジョンウ
      (森本 63)       イ・チョンヨン     
       本田          キ・ソンヨン
      (中村憲 82)     (キム・ボギョン 76)
    
     FW 大久保       FW ヨム・ギフン
      (矢野 87)      (キム・ナミル 46)
       岡崎          イ・グノ
                  (パク・ジュヨン 46)
 




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■実戦的とは何か

 日本代表の試合やJリーグを観ていて、「世界と比べて日本人選手はここの経験が足りない」とか「ちょっとした工夫でもっと良くなるのに」と思うことがあります。

W杯本番が近づいていますが、日本代表がより実戦的なチームになれるよう戦術上の改善ポイントを今回は見ていきます。

 世界と日本のサッカーで大きな差を感じるのはカウンターアタックです。

図1
誤カウンター
(クリックで拡大)

図1は3対2でカウンターをしかけている場面ですが、日本人選手にありがちなのは、普段コーチから「攻撃でタメをつくれるのが良い選手」と言われているせいかもしれませんが、カウンターでもボール保持者が周囲をキョロキョロ見回しながらドリブルのスピードをわざと遅くしてタメをつくっているケース。(1)

イングランドでは「時間は常に守備の味方」と言われます。

もうカウンターアタックに必要な人数はそろっているわけですし、ドリブルを遅くして不必要なタメをつくっている間に背後から迫っている敵にボールを奪われかねません。

ボール保持者はなるべく速いドリブルでゴールへの最短距離を進む必要があります。

ボール保持者をサポートする選手のポジショニングもまずい場合が多く、ドリブルする味方とは遠いところを平行に走ってしまうケース(2)や、ひどい場合になるとどんどんアウトサイドへ離れていってしまう選手さえいます。(3)

これも普段コーチから「現代サッカーではサイド攻撃が有効」「サイド攻撃の時は自分のスパイクにラインの石灰がつくようにしろ」と言われたことを選手が忠実に守っているせいかもしれません。

しかしこれではせっかく3対2の局面をつくったのにボールがあるところでは1対2でこちらが不利になってます。

サポートすべき選手がボール保持者から離れすぎていては相手を崩しにくくなりますし、仮に味方へスルーパスが通ったとしてもパスを受けた選手がシュートするためには結局ゴールへ向かわなければなりません。(4)

それでは最短距離を戻った相手DFに先回りされて防がれてしまいます。(5)

一度抜いた敵選手をもう一度抜かなくてはならないというのは二度手間ですし、この選手を抜くために手数をかけて中央へセンタリングすればパスミスや受ける方のトラップミスなどミスの可能性が高まり、その分ゴールの可能性は低くなります。

「ゴールは横68mのゴールラインの中央にある」というのはサッカーにおける絶対不変の真理ですが、この当り前すぎる法則を選手がよく理解していないとこういうことが起こってしまいます。


図2
正カウンター1

図2はより効果的なカウンターアタックですが、場面は同じ3対2のシーン。

ドリブルする選手は確実にボールをコントロールできるなるべく速いスピードでゴールへの最短距離をドリブル。

サポートする選手は、スルーパスをもらったらゴールまで最短距離を進んでシュートできるようにポジショニングを考えながらドリブルする味方をサポートしやすい距離まで近づいてフリーランニングします。

こうすればボールのある局面で3対2の形をつくれてこちらが有利、スルーパスをもらった選手も一度抜いた相手に妨げられることなくシュートが打てます。

かける手数も時間も最小限で済み、そのためミスの可能性も少なくなります。

図3
正カウンター2

図3はより高度なカウンターアタック戦術です。

サポート役の選手は敵DFをかく乱するために、ドリブルする味方を追い抜いたらその前方をクロスしてスルーパスをもらいます。

前方をクロスした選手に敵DFがついていかなければその選手にスルーパスを出してシュートさせ(1)、もしスルーパスを阻止するために敵DFが前方をクロスした味方にピッタリついていけば真中にシュートコースが空くわけですから、
ドリブルしている選手がためらうことなく自分でシュートを決めてしまいます。(2)

カウンターアタックはスピードが命。

的確かつ素早い判断力と二手三手先を読んだポジショニングが重要です。

 ロシアリーグ第11節、ルビンカザン対CSKA戦でこういうシーンがありました。

ルビンの中盤左サイドで本田選手がボールを奪取してCSKAが高速カウンター発動。

本田選手はピッチ中央にいた味方(ジャゴエフ?)にパスし、ジャゴエフからリターンのスルーパスをもらった本田選手がルビンの最終ラインを突破してシュート、残念ながらGKにセーブされてしまったというシーン。

本田選手は図1の(2)のケースみたいにジャゴエフよりやや遠いところを平行にランしてしまったので、スルーパスをもらった地点がややアウト側にふくらんで、シュートを打つときゴールへの角度が少なくなってしまいました。

本田選手があと1~2mジャゴエフに近づくようにランニングすればスルーパスをもらったときにゴールへの角度が広がり、もっとゴールを決めやすくなったのではないでしょうか。

ちょっとした工夫で大きく結果が変わるという例ですが、本田選手はロシアリーグで実戦的なよい経験を積んでいると思います。

図4
スルーパス

図4は数年前Jリーグで観たシーンですが、前がかりになった相手の深いところでボールを奪い返し、裏へ飛び出す味方へスルーパスを出したケースです。

この時(1)と(2)両方の選択肢があったわけですが、裏へ抜け出した選手もスルーパスを出した選手も(1)のコースを選択して私は頭を抱えました。(もちろんシュートまで持っていけず)

スルーパスを出したあとのことを考えていない、「ゴールは横68mのゴールラインの中央にある」というサッカーにおける絶対不変の真理をよく理解していないという一例です。

逆に守備側の視点で見れば、こういう形をつくられた時点で負けなのですが、一人残ったDFがイン側へのスルーパスを切るような守備を心がけることで失点の可能性はいくらか低くできるということになります。

 続いて、サイド攻撃やセットプレーからのセンタリングに対し味方がゴール前につめる場合、日本代表にありがちなのは、ゴール前に飛びこむ選手がみんな同じタイミングで同じような場所につめてしまうということです。

図5
飛びこむタイミング誤

これだと、クロスのタイミングに一人合わなければ全員が合わないということになり、得点の可能性が低くなってしまいます。

図6のようにゴール前に飛びこむタイミングを少しづつずらしてニアも中央もファーポスト側もまんべんなく攻めることで、一人タイミングが合わなくても他の誰かが合わせられる可能性が高まりますし、もし図6の真中にいる選手がシュートを空振りしても後からつめている選手にシュートするチャンスが生まれます。

図6
飛びこむタイミング正

これもちょっとした工夫で、得点の可能性が大きく変わってくる一例です。

 こんどはゴール前で自分のマークを外してフリーでシュートするテクニックです。
世界クラブ選手権のガンバ大阪対マンチェスターU戦から取り上げます。

図7
マークの外し方

録画を消してしまったので位置関係などちょっと不正確なところがあるかもしれませんが、前半ロスタイムにマンチェスターUのコーナーキックからC.ロナウドがヘディングシュートを決めたシーン。

ロナウドをマークしていたのは橋本選手だったと思いますが、ロナウドはマークしている橋本選手が自分を見た瞬間あえて前方へランニング。

橋本選手はロナウドとCKからのボールをいっぺんに見ることはできませんから、ロナウドが自分の背後についてきていると思って一緒に前方へランします。

橋本選手が自分を見ずに前方へのランニングを続けるところを見はからい、ロナウドが前方へのランニングをやめてその場で立ち止まるかやや後方へ下がるとマークが外れます。

自分がフリーなったところでGKの位置を確認しつつ落ち着いてヘディングシュートを決める。

イングランドの戦術書に載っている基本的なマークの外し方ですが、覚えておくと実戦で使える戦術です。

セットプレーの前にキッカーと、「自分はこのあたりで止まってマークを外すからそこへボールを頼む」と打ち合わせておくとよいかもしれません。

 最後に戦術ではなく個人の技術面についてですが、日本人選手は世界のトップレベルと比べると足技では差がかなり縮まりましたが、ヘディングでボールを狙ったところへ送るという技術ではまだまだ差をつけられています。

シュートだけでなくヘッドを使ったパスもそうです。

フリーでヘッドさせてもらっているのに、日本人選手がまんまと敵にパスしてしまうシーンを良くみかけます。

本番まであまり時間がありませんが、要改善ポイントでしょう。

 今回は、知っているかいないかで試合の結果が大きく分かれるような実戦的な戦術のポイントを厳選して見てきました。

戦術的にはやはり中級レベル以上の知識になるかと思います。

ワールドカップでは日本より戦力が上のチームが多く、日本が相手に押しこまれる時間が長いことも予想されます。

そうした場合、日本代表が我慢して我慢して数少ないカウンターアタックやセットプレーのチャンスから点を取れるかどうかで勝敗が大きく分かれることもあるでしょう。(データ上、W杯における日本のセットプレー成功率は低かったように思いますが)

世界で勝つためにはこういうプラグマティック(実戦的・実用的)な戦術をしっかりマスターすることが重要です。

日本では、ゴール前でパスをもらったらそれをまたいだりヒールキックしたりするいわゆるサーカスプレーが「オシャレ」と高く評価されるみたいで、惨敗した東アジア選手権の韓国戦でも相手のゴール前でしきりに代表選手がやっていました。

しかし地に足がついていないと言うか、「良いプレー」や「勝つためのサッカー」の方向性が世界とちょっとずれているように思います。




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■寸足らずの毛布

 1950年代にブラジル代表で活躍したジジという選手がいましたが、彼はこんな名言を残しているそうです。

「サッカーは寸足らずの毛布だ。足下にかければ上半身が寒い、頭からかぶると足が出る」

サッカーとスペースの関係をこれほど的確にあらわした言葉はないと思います。

DFラインからトップまでのチーム陣形を「寸足らずの毛布」にたとえて、足元にかければ上半身が寒い=自陣にベッタリ引き過ぎると相手ゴールまで遠くなりすぎて得点しづらい。(図1)

図1
毛布2

(クリックで拡大 以後同様)

頭からかぶると足が出る=逆にゴールが欲しくて前がかりになりすぎると、カウンターから失点しやすくなる。(図2)

図2
毛布1


「サッカーは寸足らずの毛布」

サッカーの本質をついた言葉に、うなってしまいます。

日本のサッカー界はやる方も観る方も「サッカーチームの強弱は個人の技術の高低で決まる」という考え方がとても強いように思います。

市販されているサッカーのテキストも、足技に関するものがほとんどです。

高い個人技ももちろん重要ですが、ワールドカップで勝つためにはそれだけでは十分でありません。

日本サッカーが世界の列強国にはっきりと差をつけられているのが「スペースの上手な使い方」への理解です。

ジジの「寸足らずの毛布」という表現を借りて日本のサッカースタイルをたとえれば、「上半身も下半身も寒いのは嫌なので、寸足らずの毛布をムリヤリにひっぱった結果、毛布がまん中から破れてしまった」という風に言えるでしょう。(図3)

攻撃が大好きで前へ前へと行きたがる攻撃陣と、失点を恐れてズルズル下がる守備陣。

結果としてセンターバックの前のバイタルエリアを広く空けてしまい、そこを相手に支配されて2次攻撃・3次攻撃を受けて失点してしまう。こちらはまったく反撃できなくなる。

図3
毛布

ジーコジャパンの時代から、当国際サッカー戦略研究所が「悪い時の日本代表はチーム陣形が間延びしている」と口をすっぱくして言っているのはそういうことです。

トップのビドゥカにロングボールを当てて、日本の広く空いたバイタルエリアにボールがこぼれたところをキューエルら二列目が拾って2次攻撃・3次攻撃。

先制したあと防戦一方になった日本は最後には耐えきれなくなって大量失点で敗れたW杯ドイツ大会のオーストラリア戦が典型です。

岡田ジャパンにもそうした傾向があります。

日本サッカー界の傾向として、なんといっても攻撃が大好きで
0-0で引き分けるぐらいなら2-3で負けた方が納得がいくという考え方があるように思います。

Jリーグのスコアを見ていると2-3とか4-4みたいな、しまらない点の取り合いが多い印象を受けます。

今年のACLで早くもJリーグ勢が全滅してしまいましたが、Jリーグ各チームの、陣形が間延びしたイケイケの攻撃サッカーというスタイルも関係しているのではないでしょうか。

ジジの「寸足らずの毛布」という格言を聞いたことはあるでしょうが、それを本当に理解できている日本人監督や選手は少ないと思います。

 日本サッカー界ではヨーロッパと南米の両方をサッカーの先進地域と考える人が多いと思いますが、ことサッカー戦術に限って言えば、世界の最先端を走っているのはヨーロッパです。

ヨーロッパにおける近年の戦術進化の傾向は、FCバルセロナに代表される攻撃的ポゼッションサッカーと、モウリーニョ監督率いるインテル・ミラノに代表される堅守速攻型サッカーに二分されるのではないでしょうか。

試合で大半の時間ボールをポゼッションして前からガンガン攻める前者のスタイルをとれるチームは、FCバルセロナやスペイン代表など限られています。

一方、程度の差はありますが後者のスタイルをとっているチームの方が多いかと思います。

ブラジル代表というとこれまで自由奔放で華やかな攻撃サッカーのイメージがありましたが、ドゥンガ監督が就任してからのブラジルは堅守速攻型にスタイルを変更したように見えます。

今年岡田ジャパンが対戦したセルビア代表3軍もこのタイプでした。

DFラインを自陣のやや引きぎみのところに置いて、DFからトップまでを30mぐらいでコンパクトに保って守備ブロックをつくり、そこからプレスをかけていくという堅守速攻型が一番手堅い戦術と言えます。(図4)

ベッタリ引かれても相手が間延びしていればDFラインの前にスペースがあるので崩せますが、コンパクトな陣形でやや引きぎみに構える堅守速攻型を崩すのは一番苦労します。

図4 堅守速攻型
堅守速攻


 さてワールドカップメンバーの発表記者会見で、抱負を聞かれた岡田監督は「日本らしくプレスをかけて高い位置でボールを奪って攻めたい」とコメントしていました。

フランスW杯アジア予選でクビになった加茂周元日本代表監督も「日本人選手は深い位置からボールを奪っても相手を崩す力はない。相手ゴールに近いところでボールを奪わないと日本人は得点できない」というのが持論でした。

図3で示した通り、日本の攻撃的な選手は得点が欲しいあまり、焦って早くから相手ゴールに近づきたがる傾向にあります。

しかし「相手ゴールに近いところでボールを奪わないと日本人は得点できない」とは限らないと思います。

もし岡田監督の言う「前からプレスをかけて相手ゴール近くでボールを奪う」ということが、図2の頭から毛布をかぶった状態のことを指しているのであれば、こちらが相手を押しこんでいる分相手DFラインが深くなって裏が狭くなっているということを意味します。(図5)

図5
抜けちゃえば一緒1
(敵の4バックの裏へ日本の選手〔青〕が抜け出したところ)

「バイタルエリアが使えない日本代表」の記事で、「ゴールの確率が一番高い攻撃の形はどんなものかというと、オフサイドにならずにボールを持った味方が前を向いて相手GKと一対一になること」と言いました。 

ここが重要なポイントですが、オフサイドにならずにボールを持った味方が相手DFラインの裏へ抜け出せれば、相手DFラインが深かろうが浅かろうが得点の可能性にたいした違いはありません。

(裏へ抜け出したこちらの選手より相手のDFの足の方が相当速いというなら別ですけど)

むしろこちらが堅守速攻型の陣形をとることで相手がDFラインを浅くして押しぎみに来てくれた方が、相手DFの裏のスペースが広くなってGKと一対一の形をつくりやすくなると言えます。(図6)

先ほど言ったとおり、いったんボールを持った味方が相手DFラインの裏へ抜け出してしまえば、よほどの鈍足かドリブルが下手くそでもない限り、得点の可能性にたいした違いはありません。

裏へ抜け出してさえしまえば後は図の5と6は一緒ということです。
だったら図6の方が広いスペースがある分だけ断然裏へ抜けやすいと言えるのではないでしょうか。

図6
抜けちゃえば一緒2

後で詳しく述べますが、ドイツW杯直前にドイツ代表とテストマッチをやってもう少しで勝つところでしたが、日本がドイツから先制したシーンは日本陣内でボールを奪って、相手が高く上げた最終ラインの裏へ味方選手とボールを送りこんでカウンターから奪ったゴールでした。

つまり加茂元監督が言う「相手ゴールに近いところでボールを奪わなければ日本人選手は得点できない」とは限らないわけです。

そういう発想は「サッカーは寸足らずの毛布」という格言に代表される、サッカーとスペースとの関係をよく理解できていないことのあらわれです。

 さらに言えば、こちらが相手を押しこんで攻撃的にやりたいという理想を持っていても、相手が格下のアジア諸国だけならいざしらず、ワールドカップに行けば日本代表より戦力で勝るチームの方が多いわけですから、ほとんどの時間、相手に押しこまれる展開が続く試合もあるかと思います。

たとえ互角の相手であっても、こちらが先制して相手が同点にしようと猛攻をしかけてきて、日本代表が相手の攻撃をがっちりと受け止めて失点しないよう耐えなければいけない時間帯というのもあるでしょう。

そういう時は日本代表も堅守速攻型の陣形をとって我慢する必要があります。

逆に日本が勝たなければいけない試合で相手が最初から堅守速攻型の陣形をとってきたり、こちらが先制されて相手が1点を守りきる戦術に切り換えた場合、日本がボールをポゼッションして(させられて)相手を押しこんで攻撃しなければならないケースも出てくるかもしれません。

日本代表が攻撃的なポゼッションサッカーを理想とするのはとてもよいことだと思いますが、世界で勝ちたいなら相手との力関係やゲーム展開に応じて攻撃的なポゼッションサッカーと堅守速攻型サッカーを上手に使い分けられるようにしておく必要があると思います。

堅守速攻型をとったからといって「日本らしいサッカー」を放棄することにはならないと思います。

DFラインをやや引きぎみにしてそこから相手に厳しくプレスをかけ、ボールを奪ったら「人とボールをよく動かして」すばやいパス回しから相手の浅いDFラインの裏へ味方とボールを送りこむ。

DFラインをどこへ置くかの違いだけで、それだってアジリティの高い日本人に合ったサッカーではないでしょうか。

(余談ですが、二つのチームが両方とも堅守速攻型をとったら、試合が膠着状態になって引き分けの可能性が高そうです)

 これまで試合を観た経験から言って、ジャイアントキリング(大番狂わせ)が起こるパターンというのは、弱小チームが強豪チームに先制されてそれをひっくり返して大逆転したケースというのはほとんど観たことがありません。

弱小チームが強豪チームに攻められても我慢してゴールを許さず、逆に弱小チームの方が先制点をとったことで強豪チームが焦って攻撃でミスを連発、結局そのままタイムアップになってしまったというのがジャイアントキリングの典型的なパターンです。

アトランタ五輪で日本がブラジルを破ったケースしかり、昨年のコンフェデでアメリカがスペインを破ったケースしかりです。

ワールドカップでは、オランダもデンマークもカメルーンも「日本から勝ち点3を取れないチームが決勝トーナメント行きを逃す」と考えていることでしょう。ここに日本がつけこむスキがありそうです。

オランダもデンマークもカメルーンも日本から先制点を奪えない時間が長くなればなるほど焦ることでしょう。

勝ち点3を取るために相手が押しこんでくるなら、相手の裏のスペースが広く空きます。
それを利用して日本が先制できれば、どんな強豪でも相当焦ります。

日本がしっかりと相手の攻撃をいなすことができれば、焦りからくるミスも手伝って、番狂わせの可能性が出てきます。

先ほど言った、W杯ドイツ大会の直前にレバークーゼンでドイツ代表とテストマッチをやった時のことですが、もう少しで日本がドイツから大金星をあげるところでした。

あの試合も地力で勝るドイツが日本を圧倒的に押しこんで、日本は引かされて守るという展開。

日本が先制したシーンは、日本人の俊敏性を生かして素早いパス回しからスルーパス、ドイツが高く上げた最終ラインの裏へ高原選手が抜け出しGKレーマンをかわしてゴールしたものでした。

日本の2点目もカウンターからでしたが、ドイツが本気で攻めに来て日本の守備が耐えきれず、ドローに終わってしまったのは残念でした。

ドイツはW杯初戦のコスタリカ戦でもメッツェルダーとメルテザッカーの両センターバックが高く上げたDFラインが不安定で、カウンターからワンチョペにゴールを食らっていましたが、南アフリカで日本が強豪国を打ち負かすヒントがレバークーゼンでのドイツ戦にあると思います。

ではどうしてこの試合で日本はコンパクトな陣形(堅守速攻型)ができたのに、本番ではできなかったのかというと、日本は自分で意識的に陣形を決めることができず、対戦相手につられる傾向があるからです。

つまり、ドイツのようにコンパクトな陣形をとる欧州型のチームとやる時は日本もつられてコンパクトな陣形になるために、時たまびっくりするような好ゲームを見せることがあります。(プラハでチェコを破った試合など)

ところがオーストラリアのように相手が間延びしたチームだとそれにつられて日本も間延びしてしまいがちです。

ロングボールを多用するオーストラリアは間延びした陣形でもOKというか、それが彼らの得意とするスタイルですし、逆に日本にとって不利なスタイルと言えます。

日本が相手につられて間延びすることで相手が得意とする土俵にまんまと乗ってしまった、それがドイツW杯のオーストラリア戦だったということです。

日本代表は、どんなに緊張する試合でも冷静さを失わず、自分たちの意志で陣形を決められるようにならなければいけません。

ワールドカップで日本代表が決勝トーナメントを勝ち進んで行くためには「サッカーは寸足らずの毛布」であることをよく理解して、相手との力関係や試合展開に応じて攻撃的なポゼッションサッカーと堅守速攻型サッカーを上手に使い分けられるようになることが必要だと思います。


 今日はサッカーの戦術としては、中級から上級編のお話をしました。

日本代表の最近の試合内容が気になるので、ある代表選手にメールをしてみました。

返事はありませんでしたけど、実際に取り入れるかどうかは別として、当国際サッカー戦略研究所の問題提起が岡田ジャパンに届くとよいと思います。





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■効果的な攻撃の組み立て方

 5月4日の記事で、サッカーは積極性と勇気が求められるスポーツであると言いました。

しかし戦術を知らなければ「有意義な挑戦」と「無謀な自爆行為」との区別がつかず、ただ単にがむしゃらに走りまわっていただけでは気がつくと試合に負けていたということになりかねません。

やはり自分より強い相手に効率よく勝つためにはサッカーというスポーツを深く知る必要があり、そのためには戦術理解が欠かせません。

 今回は攻撃の組み立て方についてとりあげたいと思います。

岡田ジャパンの攻撃面における課題として、バイタルエリアを上手く使って相手を崩すことができないということを再三指摘しました。

「日本の場合、前線に人数をかけないと点が取れない」と岡田監督はしばしばコメントします。

ところが、前線に人数をかけてもあまり効果的な攻撃ができていないのがこれまでの岡田ジャパンであり、前線で相手を崩すための有効な動きができないために将棋で言う「死に駒」になっている選手が多いのがその原因です。

逆にいえば、選手が有効に動ければ前線にそれほど人数をかけなくても点はとれるわけで、岡田ジャパンはそれができないから守備が手薄になってカウンターから失点しているとも言えます。

 あるサッカー雑誌に、パスで攻撃を組み立てる時の岡田ジャパンの練習方法がのっていました。

好ましくない練習
(クリックで拡大 以下同様)

まずセンターバックが縦にクサビのパスをいれ、前方の選手が下がってきてボールを受けてバックパス、それを受けた選手が前方へパスをするというものです。

書店で普通に売っているJリーグの元監督が書いたサッカーのテキストでも、いわゆる「ポストプレー」と称して攻撃のお手本とされています。(黄色い円内のプレー)

しかし、こういうプレーを絶対にやってはいけないとは言いませんが推奨はしません。

なぜなら選手に間違ったプレーを習慣づけてしまいかねないからです。

後方からパスが来た場合、選手が第一に選択すべきプレーはボールを持って前方へターンすることです。そして前方へのシュートかパスかドリブルかを選択することになります。

必要もないのにバックパスすればそれだけ攻撃が遅くなりますし、時間がかかれば相手の守備も整ってしまいます。

後方から来たパスを受けて前方へターンする場合、相手ゴール方向への視界を確保するために自分のヘソをタッチライン方向へ向けて半身でボールを受けるのが理想的なボディシェイプです。(下図の右)


ボディシェイプ


自分の背後に相手選手がぴったりついている場合は半身になってボールを受けるのは難しくなりますが、そういう場合はパスを受ける前に一旦パスを受けたいスペースとは逆方向などへ動いて相手のマークを外し、そこからパスを受けたい本来のスペースへ戻ってきて半身でパスを受けるようにするのが理想です。

こういうプレーはスペインの選手が伝統的に上手いですし、細かいことですが選手が手を抜かないできちっとやることでスペインの芸術的なパスワークが支えられていると言えるでしょう。

サッカー番組ではメッシのドリブルやC.ロナウドのブレ球シュートといったミラクルな個人技の映像を好んで流すせいか、レベルの高い試合で勝敗を決定するのはミラクルな個人技を出せるかどうかだみたいな誤解が日本にあってその分基礎がおろそかになっているように思うのですが、むしろ後ろから来たボールを正しいボディシェイプで受けるといった地味なサッカーの基本を11人の選手がどれだけ正確に積み重ねていけるか、それが二つのチームの優劣を分けるベースだと思います。

私がサッカーの試合を見るときも、まずそこに注目します。

高いレベルで基礎ができているチーム同士が他者に差をつけるための応用力、その一つがミラクルな個人技でしょう。

 さて一番上の図で示した日本でお手本とされるポストプレーの練習ですが、後方からパスを受ける選手は相手ゴールに完全に背を向けてパスを受けることがほとんどです。

これでは相手ゴール方向への視野が確保できず、ボールを持って前方へターンするのがやりづらいです。(上図の左)

しかも練習によって「後方から来たパスを受けたら必ずバックパスしなければいけない」という間違った習慣が身についてしまいかねません。

後方からパスが来たら第一選択肢はボールを持って前方へターン、それができない時はバックパスという、サッカー選手として正しい優先順位でのプレー選択が実戦ではできなくなるおそれがあります。

実際、岡田ジャパンの攻撃は無駄なバックパス・横パスが多く、パスが回っている割には攻撃が機能していません。

岡田ジャパンがやっているというああいった練習法では高度なパスサッカーはできないと思いますし、バイタルエリアを有効に使って相手を崩すこともできないでしょう。

後方からパスが来たらできるだけ半身でボールを受けて前方へのターンを心がける、パスを出すほうもできるだけパスに角度をつけてジグザグにボールを前方へ運んでいくのが理想的です。


パスの組み立て方


上の図は、パスを回す選手を消去してボールの動きのみを黄色い矢印で表したものですが、岡田ジャパンがやっているポストプレーの練習(図の下)のようにタッチラインと平行のパスを中心に攻撃を組み立てるのは、あまり好ましくないと思います。

(相手の陣形の都合上、実戦ではどうしてもタッチラインと平行のパスを出さなければならないケースはありますから、絶対にやるなとは言いません)

図の上のように、ワンツーやオーバーラップを組み合わせて、角度をつけたパスでジグザグに前方へボールを運んでいくのが理想的です。

そのためには細かいことですが、ボールを受ける時のボディシェイプに注意したり、相手のマークを外すためにボールをもらう直前の動きを工夫する必要があります。

 そこであるイタリアのサッカー戦術書から岡田ジャパンにあいそうな練習メニューを紹介しておきます。


オーバーラップ練習


ボールを持った選手がドリブルし敵に見立てた人形の前方へ来るまでに、もう一人の選手がドリブルする選手を追い抜いてパスを受ける体勢を取ります。パスを受ける時は常に正しいボディシェイプを心がけましょう。
 
ドリブルする選手は味方にパスを出した後、前方の人形を抜きます。

この時重要なのは、パスを出したのと逆方向から人形を抜くことです。

こうすることで、敵選手をパスを受けてドリブルする選手と自分を抜いてフリーランニングする選手のどちらについて行くかで迷わせ、守備側の混乱を誘います。

人形を抜いた選手はドリブルする味方を背後から追い越し、ドリブルする選手が人形に近づきすぎてしまう前に正しいボディシェイプでパスを受ける体勢を取ります。

このオーバーラップを何回か繰り返した後、最後は必ずGKをつけたゴールにシュートでフィニッシュします。

今度はパスを出す方向を左右逆にして練習します。右と左を交互に織り交ぜても良いでしょう。

この練習の途中にワンツーの練習を組みこむのも有効だと思います。

二人の選手がタイミングを合わせることが重要ですし、ドリブルする選手があまりノロノロドリブルしていたのでは実戦で使えません。

「練習のための練習」では意味がありません。常に実戦で使うことを意識させます。

ミスがないようにできるだけ速く正確にプレーできるようになるまで練習します。

 それができるようになったら、今度は三人が同時にからみます。


第三の動き


この練習によって実戦で常に第三の動きを選手に意識させることで、プレー中に関係のないところでボールウオッチャーとなって突っ立っている無駄な「死に駒」を日本代表からなくしていきます。

上手くできるようになったら、止まっている人形ではなく実際に動く選手にプレスをかけてもらって練習するともっと効果的です。

こうした練習メニューを繰り返すことで、後方からパスを受ける時に常に正しいボディシェイプをとる、パスを受けたらまず前方へのターンを試みるというよい習慣が身につき、実戦においてオーバーラップやワンツーを組み合わせた高度なパス回しによる攻撃展開を実現できるのではないでしょうか。

ただがむしゃらに走りまわるのではなくて、考えて走ることが重要です。



(高校やユースチームの練習に取り入れてもOKでしょう。実戦で使えるようになるまで練習したら、あなたのチームも「セクシーフットボール」なんて言われてしまうかもしれません)



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バイタルエリアが使えない日本代表




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■ワールドカップ南アフリカ大会にのぞむ日本代表メンバー発表

 2010年ワールドカップ南アフリカ大会にのぞむ日本代表メンバーが今日発表されました。


GK 

 楢崎正剛      名古屋グランパス  187cm 34歳

 川島永嗣      川崎フロンターレ   185cm 27歳

 川口能活      ジュビロ磐田     180cm 34歳


DF 

 中澤佑二      横浜マリノス     187cm 32歳

田中マルクス闘莉王 名古屋グランパス 185cm 29歳

 岩政大樹      鹿島アントラーズ  187cm 28歳

 今野泰幸      FC東京        178cm 27歳

 長友佑都      FC東京        170cm 23歳

 内田篤人      鹿島アントラーズ  176cm 22歳

 駒野友一      ジュビロ磐田     172cm 28歳


MF 

 中村俊輔      横浜マリノス     178cm 31歳

 本田圭佑   CSKAモスクワ:ロシア  182cm 23歳

 長谷部誠   ボルフスブルク:ドイツ  179cm 26歳

 遠藤保仁      ガンバ大阪      178cm 30歳

 松井大輔   グルノーブル:フランス  175cm 29歳       

 稲本潤一      川崎フロンターレ   181cm 30歳

 中村憲剛      川崎フロンターレ   175cm 29歳

 阿部勇樹      浦和レッズ       177cm 28歳


FW 

 岡崎慎司      清水エスパルス   173cm 24歳

 玉田圭司      名古屋グランパス  173cm 30歳

 森本貴幸     カターニア:イタリア  180cm 22歳
 
 矢野貴章     アルビレックス新潟  185cm 26歳

 大久保嘉人    ヴィッセル神戸    170cm 28歳


年齢はW杯開幕時点    23人平均   178.8cm 27.8歳



 ワールドカップにのぞむ、23人の我らが日本代表はこのように決まりました。

彼らを信頼して、南アフリカでの成功を祈り応援したいと思います。

予備登録メンバーとしてあと7人が12日に追加発表されるはずですが、攻撃的MFとして石川直宏選手、FWとして平山相太選手の召集を個人的には強く希望します。

平山選手は前回述べたように、デコイとしてトップにおいて事実上のゼロトップシステムをやるのに欠かせない人材です。

ヨーロッパでは185cm以下のFWは普通ですし、それ以上身長がないとデコイの意味がありません。

石川選手は二列目の右サイドはもちろん、左サイドに置いても面白いと思います。

石川選手が相手のバイタルエリアを左サイドから中央へ切れこむようにドリブルして、岡崎選手や本田選手にラストパスするか自分で決めてしまう、あるいは中に切れこむ石川選手につられて相手の右サイドバックが中央へしぼったところで、こちらの左サイドバックにパスをしてサイドから崩すこともできるはずです。





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■代表メンバー発表せまる

 いよいよワールドカップに望む日本代表メンバーの発表が直前にせまってきました。

そこで各ポジションごとに今の日本代表に求められる人材を私なりに考えてみたいと思います。

(個人名を出している場合、現在プレーに差し支えるようなケガや病気がないことが前提です)


☆GK

GKについては安定感と経験で楢崎選手がリードしています。

控えを誰にするか、南アフリカへ連れて行くGKを二人にするか三人にするかがポイントでしょう。


☆DF

最近やや不安定なものの、センターバックは中澤選手と闘莉王選手が実績ではリードしています。

ですがこの二人ばかりを使ってきたためバックアップが手薄になっています。

現代サッカーでは一人の選手がさまざまなポジションをこなすマルチロール化が進んでいます。
オシム前監督も「ポリバレントな選手」を好んでいました。

しかしGK・FWとともにセンターバックは専門職だと思います。

岡田監督は、阿部選手や今野選手のような複数のポジションをこなせるユーティリティプレイヤーを好む傾向にありますが、「器用貧乏」なんて言ったりしますが日本のユーティリティプレイヤーはあるポジションで図抜けたものがないという傾向もあります。

W杯アジア予選メルボルンでのオーストラリア戦でセンターバックに入った阿部選手がケーヒルに力負けして二失点の原因となってしまいましたが、世界の強豪と対戦するのにセンターバックの控えをユーティリティプレイヤーで済まそうとするのは好ましくないと思います。

やはり世界を相手に戦えるセンターバックの本職を必要な分だけ呼ぶべきでしょう。

 サイドバックについては、日本サッカー界全体の傾向としてサイドバックの攻めあがりにあまりにも過度の期待をしすぎていて、そのことが最近の守備崩壊の一因になっていると思います。

2002年では左に攻撃的な小野選手を入れるかわりに右サイドには守備的な明神選手を入れて攻守のバランスをとっていました。

南アフリカでは日本よりも攻撃力で勝る対戦相手が多いですから、片方に攻撃的な選手を入れたらもう片方は守備的な選手でバランスをとったり、時には両サイドともに守備重視の選手を起用しなければならないケースもでてくると思います。


☆MF

日本は攻撃的MFの人材が豊富です。

しかしW杯では日本より戦力が高いチームの方が多いことを考えれば、これまでの岡田ジャパンのようにあれもこれもと欲張って中盤に攻撃的MFばかりをずらりと並べるのは、やはり守備の破綻につながりかねません。

特に二人のボランチには、センターバックの前の危険なスペース(バイタルエリア)をきっちりとケアできる選手が欠かせません。

最近インテルのカンビアッソとスタンコビッチを観る機会が多いのですが、勝ち点3が必要か1で十分かそのゲームが持つ意味や試合展開を読みながらきちんとリスクマネジメントできる本当に優れたボランチですね。

インテルの司令塔といえばオランダ代表のスナイデルですが、彼に限らず、世界レベルの選手はシュートの有効射程距離が日本人選手より長いです。

日本代表がスナイデルやトマソン、エトオにバイタルエリアでフリーで前を向かせたら大変なことになるでしょう。

2002年では戸田選手がセンターバックの前に張りついてバイタルエリアをしぼり、ボールを奪われたら相手の攻めの起点を最初につぶしにいくのも彼でした。

稲本選手はそれよりもやや攻撃的な役割でしたが、これもうまく攻守のバランスがとれていました。

南アフリカでは、稲本選手が守備的で長谷部選手がやや攻撃的な役割のダブルボランチというのも一案でしょう。

ただ稲本選手でさえもしばしばバイタルエリアを広く空けてしまうのと、パス展開力が少々不満なのでそこは要指導です。

最近元気がないように見える遠藤選手は二列目でポジション争いでしょうか。

 4-2-3-1というフォーメーションをとるなら二列目の選手は三人ということになりますが、二列目の選手には相手のバイタルエリアを上手く使って守備を崩せる選手が欲しいですね。

二列目の両サイドは相手守備陣が中央に固まっていればワイドに張って攻撃し、相手守備陣がサイドに寄れば、センターバックの前のスペースや逆サイドを使った攻撃ができる、そういう戦術眼も求められます。

もちろん後ろからボランチが攻めあがってきたら、必要に応じて二列目の近い選手がボランチまで下がってスペースを埋めるのはお約束です。


☆FW

FWに一番に求められるのは何と言っても得点力ですが、岡田監督は、FWと二列目に同じタイプを並べる傾向にあります。

身長があまり高くなくフィジカルは弱いが技術や敏捷性があるタイプで、岡崎・玉田・田中達・興梠・香川・大久保の各選手が代表です。

岡田監督はスペイン代表のクアトロフゴーネスをイメージしているのかもしれませんが、スペイン代表ほどバイタルエリアの崩し方が上手くなく、4月のセルビア戦のように4バック・4MFでブロックをつくるコンパクトなゾーンディフェンスに四苦八苦している状況です。

そのような守備戦術を崩して得点するためには、どのみちバイタルエリアの上手な使い方は指導していかなくてはなりませんが、やはり身長が高いFWが一人いると相手のコンパクトな布陣を間延びさせバイタルエリアを広げるのが楽になります。

身長が高いFWにあと1ヶ月でバイタルエリアでの有効な動き方を教えることはできますが、身長160cm台の選手をあと1ヶ月で190cmにすることはできません。

やはり最低一人は身長が高くフィジカルの強いFWが欠かせないと思います。

そうなると真っ先に思い浮かぶのはFC東京の平山選手ですが、Jリーグでのシュート決定率の低さが原因で最近さんざん監督さんに叱られているようですね。

ですが、外そうと思ってシュートするFWはいないはずですし、監督が叱ったからといって決定力があがるというものでもないでしょう。

叱られることで選手は自信を失い焦りも手伝って、ますますゴール欠乏症が悪化するだけではないですか。

コーチ陣でどうすればシュートが決まるかヒントを与えたり、直接問題点を指摘したりしてシュート練習させ、練習でも実戦でもシュートが決まったら素直に褒めて選手に自信をつけさせてやることの方が効果的のように思われます。

最悪ゴールは捨てても相手の陣形を間延びさせバイタルエリアを広げるのが役目と割りきってワントップに平山選手を起用し、二列目の本田・中村俊・松井選手あたりがバイタルエリアで前を向いて最後には相手DFの裏へ抜け出してゴールを奪うという戦術もアリかと個人的には考えています。

ともかく戦術的なオプションを広げるためにも、身長の高いFWが最低一人は必要だと思います。

 というわけで、W杯にのぞむ日本代表メンバーの発表に注目したいと思いますが、前回も言った通りサッカーは選手の積極性と勇気・前向きな考え方がまず重要なスポーツです。

「サッカー選手になった記念で、ワールドカップに行ければいいや」じゃなくて、日本代表に選ばれたすべての選手に「ワールドカップで絶対に勝つ。そのためならすべてを犠牲にして準備する」という強い気持ちを持って欲しいと思います。

あと1ヶ月で選手に積極性と勇気を持たせるような練習プログラムが必要でしょうし、もちろん戦術理解力ももっともっと高めないといけません。






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■日本代表に一番足りないもの

 今年日本代表の実質的な始動となったベネズエラ戦から先月のセルビア戦まで不調が続いています。

今年に入ってからの試合をずっと観てきて感じるのは、日本代表選手の非常に弱気で消極的な姿勢です。

シュートが打てる場面でも打たず、ボールを持った味方を周りの選手が立ち止まったまま見ているシーンが目立ちました。

監督から「サイド攻撃を」と言われればそればっかりになってしまって、サイドからペナルティエリア内に侵入してもシュートをせずにパスばっかり。

東アジア選手権の中国戦で「日本代表の選手はW杯まであと4ヶ月に迫った今さら、シュートから逃げて何を守ろうとしているのか不可解としかいいようがありません」と書いたとおりです。

(日本代表、消極性で自滅)

ところが大敗に終わったセルビア戦の後、中澤選手のコメントから代表選手たちが何を守ろうとしているのか、やっとわかりました。

それは「自分のポジション」です。

中澤選手はこう言っています。

メンバー選考にみんな恐怖を感じている。もっとみんなが思い切ってやらないといけなかった」 

(サンスポ記事)

プレーで何かミスしてワールドカップにおける自分のポジションを失いたくないためにボールにからむことから逃げたり、監督の指示とちょっとでも違うことをしてワールドカップメンバーから外されたら嫌なので、「サイド攻撃」と言われればそればっかりをやっていたと。

つまり日本代表の各選手にとって、試合に勝つことや岡田ジャパンの目標である「W杯4強進出」よりも、自分のポジションを守ることが一番大事だったわけです。

勝利することだけに集中して全力でプレーするのではなく、「自分のポジションを守ること」を何よりも優先させてプレーしていたんでは、試合に勝てないのはあたりまえですね。

「自分のポジションを守ること」を何よりも優先させてプレーした結果、最悪の内容で試合に負けるなら、守ろうとしていたはずのワールドカップにおける自分のポジションだって真っ先に失ってしまうかもしれないのに。

いつもこのブログでは、「消極的な安全策ほど危険な策はない」「サッカーは消極的な選手やチームが罰せられるスポーツ」だと言ってきました。

2010年W杯出場が決まった後、日本サッカー協会から「世界を驚かせる覚悟がある」というキャッチフレーズが発表され、今では早くも死語となりつつありますが、「W杯4強進出」を狙うチームにはありえないメンタリティだと思います。

選手たちの本音は、「南アフリカへ行って試合に勝つこと」ではなく「ワールドカップに参加すること」が本当の目標なのですから。

ものすごく消極的な考え方です。正直失望しました。

ワールドカップで優勝を狙っているオランダ、決勝トーナメント進出が目標のデンマークやカメルーンを相手にこれでは、試合をやる前から結果が見えたようなものです。

今年に入って、サポーターから激しいブーイングを浴びせられる試合が続いていますが、それも当然です。

代表サポーターが試合で見たいのは、「全力でやった結果が失敗ならしょうがないけれども、相手が強かろうが何だろうが日本代表がひたむきに勝利に向かってチャレンジしつづける姿勢」ではないでしょうか。少なくとも私ならそうです。

 ワールドベースボールクラシック(野球版ワールドカップ)で日本代表は大会二連覇を果たしましたが、野球というのは受身で消極的な傾向がある日本人にも向いているスポーツだと思います。

遅延行為でボークを取られてしまうからピッチャーはいつかボールを投げないといけませんし、ボールが投げられたら打者はストライク三球のうち一回はバットを振らないといけません。

バットに当たったボールがインフィールドに飛んだら一塁・二塁・三塁・本塁と順番に走らないといけませんし、打球が飛んできたらノーバウンドで捕らないかぎり野手は走者が向かっているベースへ送球しないといけません。

野球の監督さんの中には投手に何を投げさせるかベンチから捕手に一球一球サインを出す人さえいますが、野球というスポーツは選手が受身でも何とかなってしまう気がします。

もし選手が決められたプレーを拒否した場合、失敗の責任が誰にあるかはっきりしていますから、試合が始まって投手が第一球を投げた瞬間から、どんなに受身で消極的な選手でも否応なく動かないといけない、それが野球というスポーツの特徴といえるでしょう。

ところがサッカーというスポーツはそうはいきません。

ボールを持って孤立している味方を助けに行くか、足を止めて見殺しにするかは各選手の自由ですし、選手がボールにからまなかったからといって反則を取られるようなことはありません。

自分の前にゴールしかないのにシュートを打たずバックパスしてもやっぱり選手の自由ですし、自軍ゴールに敵のシュートが突き刺さるまで黙って見ていても反則にはなりません。

選手が次にどういうプレーをすべきか、ワンプレーごとに監督がサインを出すわけにもいきません。

サッカーは選手により大きな自由が与えられている分、選手の積極性・自主性が強く求められるスポーツだと言えます。

野球のようにピッチ上に「攻める時、ここを走れ」という意味のラインは引いてありません。

積極的にボールにからんでプレーするのも自由なら、ちんたら歩いて試合をサボったり失敗が怖くてプレーから逃げるのも自由。

二つのチームの能力が互角ならば、試合に勝つのは自主的・積極的にプレーする選手が多い方でしょう。

サッカーはいつもプレーの失敗を恐れているような弱気で消極的な人には向かないスポーツと言えます。

このブログでいつも「サッカーは消極的な選手やチームが罰せられるスポーツ」と言っているのはそういうことです。

 サガン鳥栖の監督である松本育夫氏は「日本人にはゾーンディフェンスは向かない」というのが持論だったと思いますが、それも同じことでしょう。

二人のDFが担当しているゾーンとゾーンのちょうど中間に敵選手が入ってくると、日本人の場合「相手のFWと競り負けて自分の責任になると嫌だから」ということで、DFが二人とも敵選手のマークを譲り合ってしまうことがよくあるために、どフリーになった相手に簡単にシュートを決められてしまう。

だったら始めから誰が敵のどの選手につくか強制的に決めてしまうマンツーマンにしてしまえば、受身で消極的な日本人でもちゃんと守れるだろうという意味だと思います。

現代サッカーにおいてマンツーマンをやるのはちょっとキツイと思いますが、松本氏が言いたいことはよくわかります。

 日本のサッカー選手とスペインやブラジルなど世界トップクラスの選手とで一番差がついているのは、プレーに対する積極性や自主性だと思います。

かつて日本代表監督だったフィリップ・トルシエ氏はしばしば選手をどついたりしてサッカー協会との関係が悪化しましたが、消極的ですぐ下を向いてしまいがちな日本人選手でもわざとどついて怒らせれば、さすがの日本人でも積極的に自己表現するようになるだろうというトルシエ氏なりの計算だったのではないでしょうか。

代表監督時代「日本の選手は自分の殻を破れ」とトルシエ氏がさかんに言っていましたが、私も岡田ジャパンの選手達に一番望むことは、弱気で消極的という自分の殻を破って欲しいということです。

個性と自己主張が特に激しいフランスからやってきた監督とプレーでなかなか積極的に自己表現できない日本人選手の組み合わせは激しい文化摩擦を引き起こしましたが、W杯ベスト16という日本サッカー史上最高の成績を残しました。

その点ジーコ監督は日本人に理解がありすぎたと思いますし、岡田さんは日本人そのものです。

 弱気で自信がない日本人と言えば2002年W杯ベスト16という日本代表の結果について、「自国開催だったから、あれは本物の成績ではない」と言う日本人がいることも私には本当に信じられません。

アルゼンチンにしろフランスにしろ、自国開催のW杯で初優勝することで自信をつけて真の強豪国になっていったのです。

自国開催だろうが何だろうがW杯で優勝したからこそ、「自分はW杯優勝国の選手だ。もうぶざまなプレーはできない」というプライドと責任感が生まれて、それが代表チームをもっと強くする。

アルゼンチン人やフランス人で「自国開催だったからあのW杯優勝はウソだ」なんて弱気なことを言っている人がいるとは思えません。

そんなことを言っているのは日本人だけじゃないでしょうか。

 ワールドカップイヤーになったとたん、試合に勝利するためにプレーするのではなくて、自分のポジションを守るためにプレーしてしまう岡田ジャパンの選手たち。

ワールドカップは勝つためにプレーするもので、サッカー選手の卒業旅行ではありません。

世界中どこでもスタジアムのゴール裏席からは放送禁止用語満載のチャントが起こるものですが、そうでなくとも岡田ジャパンには「お前ら、カーチャンのお腹の中にキ○タマ忘れてきたのか!」と叫びたくなります。

個人の技術やフィジカル能力、チーム戦術も大事ですが、日本のサッカー選手に一番足りないのはプレーに対する積極性と自信です。

積極性と強い自信があれば、日本人選手の技術の高さや俊敏性という長所がもっと生きるはず。

フィジカルの弱さという短所も、積極的な先手先手の当たりを心がけることで何とかなってしまうのではないでしょうか。

 荒削りながらも私がCSKAモスクワの本田選手に期待してしまうのは、岡田ジャパンのどの選手にもない日本人ばなれした積極性と自信を持っているからです。

負けた試合では「今日は相手にとって脅威になれなかった」というコメントを残すことからもわかるように、サッカー雑誌の四コマ漫画に書かれているみたいな、自分や相手を冷静に分析・評価できない単なる自惚れ屋ではないと思います。

むしろ世界で成功するためには本田選手ぐらい自信過剰ぎみでちょうどいいと思いますし、四コマ漫画のネタにされるほど日本人には珍しいタイプの選手というのはとても残念なことです。

成功するためには「根拠なき自信」というのも時には必要で、根拠のある自信が持てることしかやらないのであればその人間が大きく成長することはないでしょう。

日本代表のワールドカップ召集メンバー発表が直前に迫っていますが、誰が選ばれるにせよ選手一人一人が必死になって自分の殻を破り積極性と自信を身につけることができれば、現在のピンチを脱出して南アフリカでの成功につなげられるはずです。

南アフリカでは、失敗を恐れず試合に勝つために積極的にチャレンジする日本代表が見たい、そのことを今一番強く願っています。




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