■2009年03月

■バーレーン相手に苦しんだ勝利(その2)

前回の続きです。

 今回のバーレーン戦、最大の課題はやはり攻撃面。

ショートパスに人がどんどんからんでいく中盤の組み立ては、まあまあ良かったのですが、相手の最終ラインの前までくるとやはり攻撃がつまってしまい、なかなかシュートを打たずに攻めあぐねているうちに、前半30分すぎからはそれまで良かった中盤の組み立てまでリズムを失っておかしくなっていきました。

最終ラインまで来て攻撃がつまってしまう原因は、中央にしろサイドにしろドリブル突破に頼った単調な攻撃にこだわりすぎで、フィジカルの強いバーレーンの選手が体を寄せてくると、ことごとくボールを奪われていました。

なぜドリブル突破にあそこまでこだわったのでしょうか。

もしかしたらボールを大事にキープして、ドリブル突破で相手を完全に抜き去ってから完璧な状態で大事にシュートを打ちたい・サイドからクロスを大事にあげたいという気持ちがあったのかもしれません。

この前のエントリーでバーレーン戦は「大事に大事に守りにいく」試合ではないと書きましたが、それを攻撃でやってしまったようでした。

アタッキングサードに入ってからの攻撃、特にバイタルエリアの周辺では前向きな失敗が許される地域です。

ですから、思いきった決断でシュートやクロスをすることが大切であり、チャンスでシュートやクロスをためらってしまうことこそ最大の失敗と言えます。

 たとえばサイド攻撃なら、タテへのドリブル突破がうまくいかないと見たら相手SBを抜く前にアーリークロスをあげてしまうという攻撃オプションに切りかえる柔軟性がほしいところです。

(アーリークロスを使いづらい原因は、ゴール前にヘッドで飛び込む選手が少なすぎるという問題もあるでしょう。中村俊・遠藤はそもそも滅多にヘディングシュートを打ちませんし、玉田・大久保・田中達もここぞというときに中にいないことがあります)

できれば、味方からのパスをトラップせずにダイレクトで正確なクロスをあげ、相手のゴール前にいる敵選手にマークを確認する時間を与えない、そしてヘッドする味方は、敵選手の視界外からマークのギャップに入りこんでフリーでシュートすることで得点の可能性が高まります。(下図参照 クリックで拡大)

クロス

DFラインが後ろに引きすぎるのは良くないと言われます。

なぜかと言えば、引きすぎると相手はクロスの距離が短くてすみ、それだけ高い精度のクロスをあげやすくなって、ヘディングシュートから失点しやすくなるからです。

DFラインをゴール前にベタ引きにするアジアのチームが、W杯で通用しなくてもアジア予選の段階ならそこそこ成功してしまうのは、日本を含めたアジア各国はクロスの正確さが足りない、マークを外して正確にヘッドする技術が低いという悲しい現実を映し出しているのではないでしょうか。

ともかく、受けたパスをトラップしないでダイレクトのクロスを正確に入れたり、敵選手のマークを外してマーキングギャップでヘッドするには、もうワンランク上の高い技術が必要とされますので練習あるのみでしょう。

 中央からの攻撃の場合も、まるで日本の選手は「相手をドリブル突破してからでないとシュートを打ってはいけない」という自分ルールにしばられているかのようです。

そのせいか日本人選手が自信を持って打てるシュートレンジは、世界トップレベルの選手と比べて非常に短く、角度も狭い気がします。

(イメージ図・多少のゆがみはご愛嬌 クリックで拡大)

シュートレンジ

サッカーは点が取れないと勝てないスポーツなのですから、プレーの優先順位はチャンスがあれば自信を持ってまずシュート、それがどうしてもできない時に初めてパスやドリブルを選ぶという考え方を、ジュニア時代からみっちり体に叩きこんでおきたいところです。

しかし日本人選手の場合、ドリブルもパスもできなくなったので、やむにやまれずシュートするようなところがあり、それではまったく逆です。

たとえば相手をドリブルで抜ききらなくても、バイタルエリアでボールをもって前を向けたなら、フェイントで直前にいる敵CBをゆさぶってシュートコースを空けたところで、敵選手の前から積極的にミドルシュートというプレーをもっと使うことで、攻撃のオプションが増えます。(下図参照 クリックで拡大)

シュート

 また、ペナルティエリアに侵入してGKと1対1になってからシュートを打つときも、日本の選手は残念ながらほとんどパニック状態です。

実名をあげて申し訳ないのですが、日本人選手の決定力向上のため勘弁ねがいます。

この試合、田中達がニアにシュートを2本打ち、内田もミドルシュートをニアぎみに打ってバーに当てていました。

W杯最終予選アウェーのバーレーン戦でも、中村憲・長谷部の両選手がやはり連続でシュートをパーに当てていましたが、これらに共通するのはシュート直前ですっかり冷静さを失い、ともかく力任せにシュートを打っていてシュートコースをコントロールすることをぜんぜん考えていないように見えます。

シュートコースのセオリーはまずファーポスト側であり、ウォルコットがイングランド対クロアチア戦でハットトリックを決めたときの1・2本目のゴールがファーだったと思いますし、バルサのアンリやミランのパトなんかも、GKのポジションを冷静に見切ってファーに流し込むのが本当に上手いと思います。

シュートシーンにおける世界トップレベルの選手と日本選手との差は、技術や戦術・セオリーの知識はもちろんですが、メンタル面での差もまだまだ大きいなぁというのが実感です。

 中盤の組み立ては前半30分ぐらいまではまあ良かったですが、グラウンダーのショートパスが味方の背中を通ってつながらないシーンが数度あり、W杯決勝トーナメントに常時進出するレベルのチームではあまり見られないミスなので気になりました。(下図参照 クリックで拡大)

ミスパス

さらにFKなど止まったボールを蹴らせたら世界トップレベルの中村俊選手ですが、流れの中から中盤を組み立てていくのはどうも...。

パスを受けルックアップしてゆったりとドリブルしているうちに、フィジカルの強いバーレーン選手に体を寄せられ、あっさりボールを失うというシーンが2~3度あって、特に前半30分以降、流れの中からの攻撃のリズムを崩す原因の一つとなっていました。

セルティックでプレーする時は、もうちょっとシンプルにやっているように見えるのですが。

 私は岡田さんがかかげるW杯3位以上という目標が実現するところを是非見たいと思ってますし、できるものなら何か協力してあげたいところです。

しかし今回のバーレーン戦は、1-0という結果は良かったものの、W杯3位以上という目標を見据えた場合、試合の結果も内容もまだまだ世界3位レベルにほど遠いというのが正直なところでした。

W杯決勝トーナメントを勝ちぬいていける最低レベルは、昨秋のカタール戦における日本代表だと思うのですが、あの試合以来できていません。まぐれだったのでしょうか。

個人の技術・フィジカル能力やチームの戦術理解もさることながら、メンタル面での差がいぜんとして大きいです。

日本人選手はマジメ過ぎるのか、特にシュートやシュートの一つ前のプレーにおいて、遊び心と創造力を持ちつつ冷静な判断を下せるところまでいっていない状況が多いです。

岡田さんは試合後、良い内容だったとおっしゃっていましたが、認識が甘すぎるのではないでしょうか。

ともかく練習と実戦経験を積んで、ハードルをクリアしていくしかありません。

その意味で、負けても痛くもかゆくもないテストマッチではなく、精神的にプレッシャーのかかるW杯予選のような真剣勝負の場は貴重です。


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       2009.3.28 埼玉スタジアム2002


      日本  1  -  0  バーレーン


     中村俊 '47



     GK 楢崎       GK S.ジャファル

     DF 中澤       DF マルズーキ
       闘莉王        S.イッサ
       長友         M.フバイル
       内田         S.モハメド

     MF 中村俊      MF サルミーン
       遠藤         アブドルラフマン
       長谷部        ファタディ
      (橋本 76)      アーイシュ
                  (アブドルラティフ 90+)
     FW 玉田         A.オマル
       (松井 79)     (アブディ 75)
        大久保
        田中達      FW ジョン
       (岡崎 87)



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■バーレーン相手に苦しんだ勝利

 W杯アジア最終予選も折り返しとなるバーレーン戦が埼玉スタジアムで行われ、日本は苦しみながらも1-0で勝利しました。

 対戦相手のバーレーンはベルギーでプレーするFWジョン以外は、アラブ各国リーグと国内でプレーする選手でかためたチーム。

アジアカップ予選のバーレーン戦に負け、W杯予選ホームでオーストラリアに引き分けられた日本と、アジアカップ予選の日本戦とW杯予選アウェーのウズベキスタン戦で2連勝して波に乗るバーレーンとは現時点でほぼ互角、やや日本の方が実力で上回るかと戦力評価していました。

それをふまえればホームで絶対に勝たなければいけない試合であり、1-0で勝利という結果は順当であり良かったと思います。

中村俊選手のFKからのゴールは日本の神様が入れてくれた、まさにホームの利を生かした得点だったのではないでしょうか。

ボールがマルズーキ選手のすべりやすい(おっと失礼!)スキンヘッドに当たる角度がちょっとでも違っていたら、どうなっていたでしょう。

ジーコジャパン時代のサルミーン選手の決勝オウンゴールといい、W杯3次予選の内田選手のヘディングパスをバーレーンGKが目測を誤ってゴールにしてしまった件といい、埼玉スタジアムのメインスタンドから見て左側ゴールには幸運の神様が住んでいらっしゃるようです。

 ただ試合内容の方は、前半30分すぎまで攻守にわたって良かったのですが、1試合トータルとして考えるとあまり良くはありませんでした。

特に攻撃がおもわしくなく、セットプレーから先制するまでは、流れの中からバーレーン守備陣を決定的に崩せた場面はそれほどありません。

「予選は内容ではなく勝つもの」という人もいるでしょう。

確かに日本がW杯予選を突破するだけでいいならこれでOKですが、W杯で決勝トーナメントを勝ちぬいてベスト3以上という目標を達成したいなら、この結果と内容ではだめだと思います。

バーレーンレベルの相手ならば守備陣をズタズタに切り裂いて、4-0・5-0の勝利が欲しいところ。

代表というのはあまり練習やテストマッチの時間がとれません。

W杯決勝トーナメント進出のための数少ない修行の場としてアジア予選を位置づけ、「勝てば結果オーライ」ではなく、いつも自分たちに高いハードルを課して試合をやらないと、レベルアップしないまま、あっという間に本大会になってしまいます。

本番前のテストマッチ数試合でいきなり何段階もレベルアップして、日本がスペインやブラジルと互角に戦えるようになるとはちょっと思えません。

 それでは試合を振り返ります。

ホームの声援を受けて、前半立ちあがりから激しくプレスをかけてボールを奪うと、人とボールが良く動いてショートパスで中盤を組み立てていく日本のペース。

バーレーンはロングボールを前線へ放り込んでカウンターを狙うも、中澤・闘莉王の両CBを中心にはね返され、ほとんど攻め手が見つかりません。

4分、右サイドの崩しから抜け出した田中達選手がシュートするも、サイドネットでした。

16分、遠藤選手のFKは大きくバーの上を外れます。

25分、右CKから中澤がヘッドで狙うも、相手DFがからくもクリア。

日本が攻めあぐねているうちに流れがだんだん悪くなり、30分過ぎから試合は膠着状態。

 後半開始そうそうの2分、玉田選手がややラッキーな判定によりゴール前でFKを獲得。

中村俊の蹴ったボールは壁に入っていたマルズーキに当たってコースが変わり、そのままゴール右上へ吸い込まれます。これで待ちに待った日本の先制。

13分、中村俊のパスを受けた田中達が右サイドを突破、ニアにシュートするもGKがセーブ。

19分、玉田のパスからやはり右サイドを突破した内田が強烈なミドルを放つもバー直撃。

このあと両チームとも間延びし、日本も陣形が崩れて守備でバタバタする場面もありましたが、大事には至らず。

最後は、相手陣内深くでボールをキープする安全策で時間を消費し、試合終了のホイッスルを聞きました。

 つづいて試合内容をチェックしてみましょう。

守備面では、前半30分までプレスから面白いようにボールを奪え、とても良かったです。

後半そうそうに先制した後、バーレーンが前線に人数をかけるようになって間延びしましたが、日本もつられて間延びしてしまい、チーム陣形が崩れてだんだんとプレスがかかりにくくなってしまったのが残念です。

バーレーン選手のドリブルをディレイさせるだけで、ひたすら日本の選手がズルズル下がっていくのも、大事には至らなかったとはいえ、あまり良い形とは言えませんでした。

DFラインからFWまでをだいたい35m以内におさめておくことで、守備だけでなく攻撃も楽になるでしょう。

このあたりはピッチ上の選手で気づいて修正できたらと思います。

 最大の課題はやはり攻撃面でした。

そのくわしい分析は次回につづきます。



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■バーレーン戦にのぞむ日本代表メンバー発表

 28日に行われるW杯アジア最終予選のバーレーン戦にのぞむ日本代表メンバーが発表されました。


GK 楢崎 正剛(名古屋)
   都築 龍太(浦和)
   川島 永嗣(川崎)

DF 寺田 周平(川崎)
   中澤 佑二(横浜M)
   闘莉王  (浦和)
   駒野 友一(磐田)
   阿部 勇樹(浦和)
   長友 佑都(F東京)
   内田 篤人(鹿島)

MF 中村 俊輔(セルティック:スコットランド)
   橋本 英郎(G大阪)
   遠藤 保仁(G大阪)
   中村 憲剛(川崎)
   松井 大輔(サンテティエンヌ:フランス)
   今野 泰幸(F東京)
   長谷部 誠(ボルフスブルク:ドイツ)
   金崎 夢生(大分)
   香川 真司(C大阪)

FW 玉田 圭司(名古屋)
   大久保 嘉人(ボルフスブルク:ドイツ)
   田中 達也(浦和)
   矢野 貴章(新潟)
   岡崎 慎司(清水)


 発表されたメンバーをざっと見ますと、楢崎・阿部・矢野の各選手が戻ってきたのが目につきます。
また、若い金崎選手も選ばれました。

そのかわり巻選手が外れ、一応ケガが治っている川口選手も呼ばれなかったことについて、マスコミが「岡ちゃん非情!」と書きたてていますが、非情も何も、現時点で一番実力がある選手、実力が同じくらいなら調子の良いほうの選手を呼ぶというのはプロとして当たり前のことだと思います。

 対戦相手のバーレーンは前節、アウェーでウズベキスタンを破るなどかなり好調です。

他でもない、この前のアジアカップ予選で日本が負けたことで、バーレーンに自信を与え、調子づかせてしまったからですが。

おそらく今度の試合も「俺たちは日本にだって勝てるんだ」と勢いに乗ったまま、日本に乗り込んでくるのではないでしょうか。

 バーレーンには、アジアカップ2004の準決勝で延長勝ち、W杯ドイツ大会アジア最終予選では2勝していますが、この1年の間にW杯南アフリカ大会アジア3次予選とアジアカップ2011予選で2試合も負けています。

今度の試合はこちらが相手を受けて立つとか、今の有利な順位を維持するため大事に大事に守りにいくというものではなく、失われた日本のプライドを積極的に、是が非でも奪い返しにいくという試合だと思います。

(もちろん、積極果敢と無謀はちがいますけど)

 日本は早くW杯出場を決めて、強豪国とのテストマッチに専念したいという人もいるようですが、そういう甘い考えだと今度の試合で足元をすくわれるでしょう。

そもそもバーレーン相手に勝ったり負けたりを繰り返していては、W杯3位以上などとてもとても...

そのためにも、結果はもちろん内容も高いレベルで相手を圧倒するような試合がもとめられます。

 日本もようやく本格的なサッカーシーズンに入りました。

攻守にわたる連動性・組織力を早く昨秋のカタール戦のレベルまで戻し、ホームで結果も内容も充実した試合をやって、是非とも勝利とプライドを奪い返してほしいと思います。

当ブログ・カタール戦エントリー (1) (2)

勝利へのカギは、迷ってからパス、迷ってからパスという自信無さげなサッカーではなく、前にフリーの味方がいたらどんどんショートパスを回していき攻めの良いリズムをつくっていく、ボールを受けたらできるだけ前へ向きシュートをまず狙う、そして相手の守備隊形が整わないうちに攻めきってしまうことだと思います。



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■地のサッカー

 サッカー選手にはそれぞれ体に染みついたサッカースタイル、いうなれば「地のサッカー」みたいなものがあると思います。

スペインであれば、華麗なドリブルを交えた美しいパスサッカー。

ドイツなら、手堅い組織サッカーと絶対にあきらめない「ゲルマン魂」。

ブラジルなら、組織がないわけではありませんが、高い個の能力を前提として、その局面で感じ合った選手同士がからんで即興的に攻撃を創造していくサッカー。

特に、自分たちより強い相手との試合や負けている時など、苦しい状況であればあるほど、にわか仕込みの戦術なぞすっかり忘れ、たちまち「地のサッカー」が顔を出すというのが私の持論です。

 それでは日本の「地のサッカー」はどのようなものでしょうか?

私は、お正月にやっている高校サッカーのスタイルがそうだと思います。

日本代表やJリーグで活躍する選手の多くが、高校サッカーできびしい競争を勝ちぬいてきました。

今では違うスタイルの学校もボチボチ現れ始めていますが、高校サッカーのスタイルは、前線へ浮き球のロングボールを放り込む攻撃が主体です。


(クリックで拡大)

DFやボランチあたりから前線へ浮き球のロングボールを放り込み、FWがオフサイドラインの裏へ抜けそれを受けてシュート、

あるいは、ロングボールをFWなどがサイドのスペースで受けて基点をつくる、

上図には書いてありませんが、ロングボールを最前線のターゲットマンに当てて、味方にボールを落として攻めの基点にする、

というのが典型的な高校サッカースタイルではないでしょうか。

どれも、パスの出し手と受け手の二人だけがからむ単純で初歩的なものですし、日本人指導者が書いたサッカーの教科書にも、しばしばこうした攻撃方法がのっています。

 どうして高校サッカー界でこういうスタイルをとっているかといえば、高校野球で1アウトからでもバントして得点圏に走者を送るのと一緒で、一回でも負けたら終わりのトーナメント戦では、中盤で細かくつないだパスをカットされてカウンターから失点したくない、それが試合の勝敗を決める決勝点になるのが怖い、という消極的な考え方が強いからだと思います。

 それでは、こうした「日本の地のスタイル」が世界で通用するか?と言えば、残念ながら答えはNOでしょう。

浮き球のロングボールを多用する攻撃の最大の弱点は、パスを受ける地点がDF側に容易にわかってしまうということです。

浮き球のパスは必ず地球の引力に引かれて落下しますから、そこがパスを受ける地点です。

よってDFはボールが空中にある間に落下地点を予測し、当然そこへポジショニング修正をします。

そうなれば、よほど広いスペースでもないかぎり、DF視点で言いかえればDF側のポジション修正が間に合わないほど遠い場所でパスを受けない限り、パスを受ける味方とDF側との個人能力の勝負となり、それに負けた方がボールを失います。

つまり、浮き球のロングボールを多用する攻撃は、個の能力とくにフィジカル能力が相手より強くないと、多くの場合通用しません。

 高校サッカーのように、フィジカル能力であまり差がない日本人選手同士でこうしたスタイルをやっている分には問題はないでしょう。そして日本代表やJリーグで活躍する日本人選手は、こうした個の勝負で勝ち残ってきた選手たちです。

しかし、世界レベルで見た場合、日本人選手のフィジカル能力はあまり高い方ではありませんし、技術面でも南米選手にはまだ劣ります。

残念ながら浮き球のロングボールを多用する「日本の地のサッカー」は、世界に出ると行きづまってしまうのです。

 市立船橋高校の名監督・布啓一郎さんが、2004年ごろU-17日本代表の監督をやっていたことがありましたが、そこでやっていたのがまさしく「日本の地のサッカー」である高校サッカースタイルでした。

藤枝で行われたU-17アジア選手権の日本対北朝鮮戦のテレビ中継を当時見ましたが、正直こりゃだめだなと思いました。

日本の単調なロングボール攻撃は、フィジカルが強い北朝鮮DFにことごとく跳ね返されて攻めの糸口がみつからず、逆にソ連にルーツを持つ北朝鮮のパスサッカーにゲームを支配されて苦しい展開でした。

この試合は何とかドローに持ちこんだものの、続くタイ戦に敗れて結局グループリーグ敗退。有利な日本開催にもかかわらずFIFA U-17世界選手権大会の出場権を失ってしまいました。

 ジーコジャパンの場合、「日本人が自分の頭で考えて正解を導き出せば、すごい進歩になる」という方針のもと、当時のジーコ監督はほとんど自由放任主義だったので、ジーコジャパンはブラジルスタイルではなく、事実上、日本人の、日本人による、日本人のためのサッカーでした。

そしてワールドカップという厳しい試合において顔を出したのが、やはり「日本の地のサッカー」でした。

初戦のオーストラリア戦は、フィジカルが圧倒的に強い相手に浮き球のロングボールを多用する攻撃が通用せず、ほとんどの時間ゲームを支配されてしまいました。

交通事故のような相手GKのミスで先制したものの、試合終了間際にオーストラリアのパワープレーからダムが決壊するように日本は大敗しました。

当ブログ関連記事・オーストラリア戦・傾向と対策

 誤解のないように言えば、「日本の地のサッカー」を絶対にやってはいけないと言っているわけではありません。

前線へ浮き球のロングボールを放り込み、FWがオフサイドラインの裏へ抜けそれを受ける、といった攻撃はサッカーの基本と言えます。

問題なのは攻めが単調になってしまうことであり、ロングの放り込みが通用しない相手の場合、代わりの攻撃オプションが用意されていないことです。

浮き球のロングボールを放り込み、FWがオフサイドラインの裏へ抜けそれを受けるといった攻撃は、やる方にとっては簡単かつ初歩的なので、当然相手DFも一番警戒しています。

相手のレベルが高ければ高いほど、初歩的な攻撃は通用しなくなるでしょう。

 また、こうした攻撃ばかりやること自体が、別の攻撃オプションを用意できなくなる最大の原因となってしまうことも深刻な問題です。

浮き球のロングボールを前線へ放り込む攻撃ばかりをやる弊害を、パスを受ける方の選手から見ていくと、

1.FWがオフサイドラインの裏へ抜けてパスを受けようとする動きばかりをしてしまう。

2.パスの出し手が、浮き球のパスを出すなりドリブルで相手をかわすなり、個人で局面を打開するまでその場で待ってしまい、その間パスの受け手がプレーに関与しない「死に駒」となってしまう。

3.浮き球のパスは、パスの出し手と受け手を結ぶ直線上に敵選手がいても、敵選手の頭上を超えてパスを出すことができるので、パスの受け手が自分からポジショニング修正をしてグラウンダーのパスを受けよう、味方のボール保持者をサポートして複数のパスコースを用意してあげようとする習慣が身につかない。


 次にパスの出し手の面から見た弊害は、

1.パスの出し手は、ボールを受けたらルックアップしてオフサイドラインの裏へ抜け出そうとする味方を一生懸命探そうとするため、どうしてもボールの持ちすぎにつながりやすい。

そのため相手チームにマーク修正の時間を与えることになり、それから方針転換してグラウンダーのショートパスで相手を崩す攻撃をやろうとしても、もともとパスの受け手にボール保持者へのサポート意識が乏しいのでフリーの味方がいなくなっている。やはりロングの浮き球を前線に放り込むか、意味のない横パス・バックパスに逃げるしかなくなる。

このためパスの出し手は、浮き球のロングパスの精度を極限まで高めようとし、そのことが余計、浮き球のロングパス以外の攻撃オプションを持てない原因となっていく。

2.パスの出し手はパスをしたあとその場で足を止めて、パスの受け手のプレーを見てしまう。
これが習慣になってしまうと、浮き球のロングパスの場合はもちろんショートパスを出したときでもその場で足を止めてゲームウオッチャーになってしまい、ワンツーやオーバーラップのようにパスの受け手から再び自分がパスをもらって相手を崩しシュートするような、より高度な攻撃能力が身につかない。

3.浮き球のパスを相手DFの裏へ出す場合、オフサイドにならないように注意すること以外あまり制約がない。よって、様々な制約がある、複数の敵選手に囲まれた狭いスペースにグラウンダーのパスを出す場合に必要とされる、高度な判断力がなかなか身につかない。


以上のような理由から、浮き球のロングボール攻撃ばかりしていると、パスの出し手と受け手の二人だけでやるような初歩的なレベルのサッカーからなかなか脱出することができず、別の攻撃オプションを持つことができない原因ともなります。

人もボールも動いてスムーズに中盤の攻撃を組み立て、ショートパスに2人3人とからんで相手の最終ラインを崩していくような高度な攻撃をやるのも困難です。

こうしたサッカーではパスの出し手(使う方)とパスの受け手(使われる方)の仕事が固定化される傾向があり、中盤における攻守のサポート・チャンスメーク・ゴールゲットと、様々な仕事を高度なレベルでこなすポリバレントな選手が生まれにくいという問題点もあります。

 高校サッカーで長年こうしたスタイルが主流だった弊害はとても大きかったと思います。

日本のユース世代の強化がはかどっていない理由として、大切な時期に受験に時間をとられることなどがあげられていますが、高校で主流となっているサッカースタイルも原因なのではないでしょうか。

大人になってから、例えば西野監督率いるガンバ大阪やフィンケ監督率いる浦和に入団して、改めてショートパスのつなぎ方を勉強しなおすというのはとても非効率ですし、世界の強豪国と比べて遅すぎるのではないでしょうか。

スペインやブラジル、オランダなどの強豪国は、ユースチームでもA代表とほとんど同じスタイルのサッカー、大人のサッカーをしてくるのとは対照的です。

 オシム氏が種をまき、岡田さんが引き継いだ日本代表の「人とボールが動くサッカー」ですが、中盤の組み立てまでは良くても、アタッキングサードに侵入して敵ゴール前のいわゆるバイタルエリアまでくると攻撃のアイデアに乏しく、どうしても攻めがつまってしまうのは、自分たちの体に染みついた「日本の地のサッカー」が大きく影響していると思います。

日本のサッカーが世界で大きく飛躍するためには、もっとレベルの高いサッカーを、選手の体に染みついていて無意識にでもやることできる「日本の地のサッカー」にしていく必要があるでしょう。




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