■2007年09月

■川崎はぜんぜん悪くない

 アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を戦った川崎フロンターレが、Jリーグや日本サッカー協会から、激しく叩かれました。

ACLの過密日程のため、23日の柏戦で、川崎がメンバー8人を入れ替えて”温存”。等々力で行われるACL準々決勝第二戦に、備えさせました。

これに対しJリーグの犬飼専務理事は、川崎の武田社長に対して公衆の面前で怒鳴りつけ、川渕キャプテンも「8人も代えるのはファンをバカにしている」と川崎を痛罵しました。

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 結論から言いますが、川崎フロンターレのいったいどこが問題なんでしょうか?

そして、川渕キャプテンも犬飼専務理事も、勘違いもはなはだしく、いったい何様のつもりなんでしょうか。

 私は川崎のサポではありませんが、9/23日現在で、川崎はリーグ9位。
リーグ優勝はほぼ不可能でしょう。

しかし、ACL優勝の可能性は十分残っていたわけです。

川崎がACLに優勝して世界クラブ選手権に出られるのと、リーグ優勝とACL優勝、そのどちらも逃してしまうのと、どっちが良いかと言われれば、迷うことなくACL優勝のほうが良いと私なら答えます。

もちろんプロのクラブとしても、ACLで優勝できたほうが、知名度アップやファンの増加など、営業面でのプラスが計算できます。

過密日程のなか、ACLにもJリーグにもフルメンバーを出場させて、過労からACL敗退となるよりは、リーグの何試合かで主力を温存してでも、ACLで優勝を狙うのがマリーシアであり戦略というものでしょう。

川崎だってプロのクラブなんですから、何の理由もなくリーグ戦で主力を休ませれば、ファンの怒りを買って収入が減ることぐらい、わかっているでしょう。

それを過保護の教育ママよろしく、Jリーグと協会が、川崎にあれこれ言う必要はありません。

 これは私だけの考えではなくて、世界のプロクラブなら当たり前にやっていることです。

特に南米の強豪クラブになると、国内リーグ戦、コパ・リベルタドーレス、スーペルコッパ・リベルタドーレス(今は無くなりました)を掛け持ちしていて、週に三試合こなさないといけないなんてことは、当たり前にあったわけです。

で、国内リーグ優勝の可能性が低くなったチームは、国内リーグを控えで戦って、リベルタドーレスに戦力を集中してトヨタカップ出場を狙い、ヨーロッパのビッククラブに、自クラブの選手を輸出することをもくろむわけです。

そのお金でクラブを運営しつつ、将来性のある若者に投資するのが、南米のプロクラブです。

ヨーロッパの強豪クラブでも、国内のリーグ・カップ戦に加え、チャンピオンズリーグやUEFAカップを戦うわけですから、どの試合もフルメンバーが組めるというわけではありません。

 こうしたことは、プロなら当たり前の判断であり、川崎がやったことも、何ら非難されることではありません。

こうして見てくると、犬飼専務理事や川渕キャプテンの言動は、とてもプロとは言えないナイーブなもので、アマチュア丸出しの恥ずかしいものです。

犬飼専務理事は川崎の社長を怒鳴りつけた発言を撤回したようですが、撤回すれば良いというものではなくて、そもそも川崎を「ケシカラン」と怒鳴りつけてやろうという発想が、世界のプロサッカー界から見れば常識はずれなのです。

 もしそれでも「リーグもACLもベストメンバーで戦え」というのであれば、はじめからACLの前後一週間にリーグ戦を入れなければ良かったわけで、そういうリーグ戦の日程を組んだJリーグが悪かったわけです。

にもかかわらず川崎を怒鳴りつけるとは何様のつもりなのでしょう。

2006年のW杯も、今年のアジアカップも、直前までJリーグの試合をやっていて、ジーコジャパンが戦術理解を深める時間が取れなかったり、アジアカップ直前の清水戦で、浦和の闘莉王選手がケガをしてアジアカップに出られなかったりしたわけですが、Jリーグと日本サッカー協会の年間スケジュールのつくりかたは、まったく要領が悪いというか、何も考えていないと言わざるを得ません。

W杯やアジアカップがある年は、Jリーグの日程をずらして、代表が好成績を残せるよう配慮するような、要領の良さ、マネージメント能力が彼らにはありません。

それでいて、「オシムになって代表人気が落ちた」などとワケのわからないことを言う...

カズ以降のプロ世代が、協会やJリーグの幹部にならないとダメなのかもしれません。

日本サッカーがアマチュアだったころ現役だったおじいさんたちに、期待する方が無理なのかも。

 日本サッカー界の過密日程は、かなり問題だと思います。

個人的には、罰ゲームと陰口を言われているA3なんて、とっとと廃止すべきだと思いますし、リーグカップもあまり必要性を感じません。

いきすぎたカネもうけ主義で、無意味な大会を乱造するのではなくて、Jリーグ・天皇杯・ACLと、日本代表戦を車の両輪として、しっかりと充実させるべきではないでしょうか。

私は、各クラブに対して、いつもエラソーにふんぞり返ったJリーグや協会の姿勢がどうしても好きになれません。




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■日本、スイス相手に大金星

 日本時間で今日の早朝おこなわれた三大陸トーナメントの第二戦、対スイス戦は、4-3で日本の大逆転勝利に終わりました。

対戦相手のスイスは、ほとんどがドイツ・イングランド・イタリア・スペインなど欧州主要リーグでプレーする選手で構成されていて、ホームでならイタリア・フランス・オランダといった強豪にも勝つ能力は十分あるチームであると考えていました。

ドイツW杯予選や本大会でトルコやフランスと互角の勝負を繰り広げていますし。

(日本戦には、フライやギガックスといったドイツW杯で活躍した選手が出なかったのが残念でしたが)

日本との実力差を考えた場合、たとえばW杯行きの切符をかけてスイスとH&Aでガチンコの勝負をしたとしたら、アウェーはもちろん、ホームでもちょっと勝つのは難しいぐらいの差はあると思っていました。

それを、中立地のテストマッチとはいえ4-3で大逆転勝利の大金星という結果は、すばらしい成果です。

オーストリア遠征の前に、「二試合で勝ち点2以上取れればたいしたものだと思います」と言いましたが、勝ち点4も取ってしまいました。

ただ監督としては、試合後に課題を選手に指導するのが難しくなるかもしれません。 ”美しい勝利”が日本の問題点をお化粧で隠してしまう可能性があるからです。

 さて、試合をざっと振り返ってみましょう。

前半は、攻守に高度な組織力を見せるスイスのペース。

日本は相手を怖がってしまっているのか、オーストリア戦で見せたような鋭い組織的守備ができません。

前半9分、マニャンに右サイドを破られ、闘莉王選手が自分の手にボールを当てながらCKに何とか逃れます。

そこからゴール前右でスイスにFKを与えてしまい、これをマニャンに決められてスイス先制。

13分、またもやマニャンに右サイドをワンツーで破られて、ゴール前のクフォーにアーリークロス、クフォーのトラップが闘莉王の手に当たってしまい、今度はPKの判定。

これをクフォーが決めて、あっという間に0-2とされてしまいます。

24分に、またまたマニャンに右サイドの突破を許すも、中村俊選手が戻って必死の守備。

このあたりからスイスは勝利を確信したのか、流しモードへ。

31分に松井選手が切れこんでシュートするもバーの上。

36分、42分にもマニャンに突破を許し、オフサイドの判定で救われたり中澤選手が防いだりと、ヒヤヒヤの展開。 

ここまでマニャンの突破に日本の右サイドはボロボロに崩されており、3点目を取られていたら試合は終わっていたかもしれません。

 後半開始から、勝利を確信したらしいスイスは、他の選手のテストのためでしょうか、マニャンとマルガイラツを下げてしまいますが、特に、日本がまったく止められなかった攻撃のキーマンであるマニャンがいなくなったことで流れが大きく変わりました。

7分、左サイドを突破してペナルティエリア(PA)に侵入した松井が倒されPK獲得。これを中村俊が決めて1-2。

「2-0はサッカーでは一番危険な点差である」とは良く言われることですが、2-0で勝利を確信したチームが、いったん”流しモード”に入ってしまったら、モチベーションを立て直すことは本当に難しく、そこから1点でも返されれば、焦りからパニックにも似た状態となって、同点ゴールあるいは逆転ゴールを許してしまう可能性はかなり高くなります。

そしてそのとおりになってしまいました。

(U-20W杯・カナダ大会の日本対チェコ戦で、日本が同じような形になってしまいましたね)

前半の半ばから日本はある程度ボールを回せていましたが、それは「持たされている」ものであったのに対し、1点返してからの日本は、自分からボールが持てるようになりました。

22分、中村俊のFKから巻選手がヘッドで同点ゴールをねじ込みます。

32分、駒野選手のクロスを合わせようとした巻が引きずり倒されてPK獲得。
これを再び中村俊が決めて、ついに逆転。

35分、スイスはようやく必死の反撃、ヤキンのCKからジュールーが飛び込んで同点ゴール。

ノーガードの打ち合いのような試合に決着をつけたのは日本。
ロスタイム、山岸選手のクロスに中村憲選手がシュート、GKがよくセーブするも、こぼれを矢野選手が良くつめてゴール!これが決勝点となりました。

 それでは日本代表の試合内容を分析していきますが、この試合の結果に一番影響を与えたのはメンタル面だったと思います。スイスの敗因も同様です。

私は「根性が無いから試合に負けるんだ」みたいな非科学的な根性論には賛成しませんが、日本人選手の一番の弱点はメンタル面における消極性と自信の無さであり、それを解決できれば日本サッカーの問題の多くが解決されると言ってきました。

アジアカップでも露呈した、シュート・クロスなど勝負から逃げてしまうという問題も、根本の原因はそれです。

この試合0-2と追い込まれて後が無い局面で、松井がPA内で勝負を挑んでPKを獲得し、1点を取り返したことがチーム全体の自信と積極性を取り戻すきっかけとなりました。

そこから思い切ってクロスをあげる、シュートするといった「勝負から逃げない積極的な姿勢」がチームにあらわれ、これが大逆転につながったと思います。

日本がスイスより優れていた点が一つありました。
それは試合の最後まで走りきるスタミナです。

オーストリア戦でもそうでしたが、試合の後半、相手チームがバテてくる時間でも、日本の走力はあまり衰えませんでした。

これが「勝負から逃げない積極的な姿勢」を土台から支えました。
日本もスイスと同じようにバテていたら、あの大逆転劇は無かったかもしれません。

 これまでのオシムジャパンは、豊富な運動量でボールを支配してきました。

後は、「バイタルエリアで勝負を逃げず、ゴールを決める」という最後の1ピースがはまれば、攻撃のパズルは完成するところまできていました。

それがドタバタしながらも、いったん完成したのがスイス戦だったと言えるのではないでしょうか。

 ただ、手放しで喜ぶわけにはいきません。

これがテストマッチではなくて、W杯の本番であったなら、日本の右サイドをズタズタにし、スイスの攻撃のキーマンとなって、2得点にからんだマニャンを前半だけで下げてしまうようなことは無かったでしょうし、そうなれば、試合結果は全く違ったものになったかもしれません。

前半の立ち上がり、日本は”強豪スイス”をリスペクトしすぎてしまったのか、プレスに消極的で、オーストリア戦で見せてくれたような組織的守備が出来ませんでした。

日本がプレーに積極的になれたのは、2点を先行されて追い詰められてからで、このあたりは、アジアカップ準決勝のサウジ戦と同じような展開でした。

今回は追いつき、逆転できたから良かったですが、アジアカップのように追いつけないこともあり得るので、試合の最初から先手先手で積極的に勝負に行くということが、課題としてまだ残っていると思います。

スイスの攻守にわたる高い組織力は、日本がボールを回すにも守備でプレスをかけるにも、相当やっかいですが、前半は何とか0-0でしのぎ、後半、スイスがバテたところで点を取って1-0で勝つような試合ができるようになれば、W杯の本番でも日本はスイスと互角にやれるでしょう。

 ここで負けた相手を誉めるのはやりにくいのですが、スイス代表は世界でも最先端の組織戦術をもったチームだと思います。

メッシやロナウジーニョのような卓越したタレントはいませんが、蹴る・止める・ドリブルするの基礎がしっかり出来ていて穴の少ない、平均点の高い選手がそろい、それを高いレベルの組織戦術がまとめているというチームです。

このブログで述べている戦術を形にすれば、スイスがやっているような組織サッカーとなりますし、オシム監督がめざしているのも、スイスのような組織サッカーでは無いでしょうか。

世界で卓越した個を持たない日本代表にあったサッカーだと思います。

 前半25分までのスイスを録画などで良く見てほしいと思いますし、それ以後、楽勝ムードで流しに入ってしまったのが残念でしたが、

最終ラインを高く保ち、トップとバックラインをコンパクトにして、攻守いずれの場面でも、選手同士の距離が離れすぎず、適度なサポート距離を維持することの大切さを教えてくれます。

日本では「ボールを奪ったら味方同士が散らばれ」と指導されていると思いますが、私自身、今となってはWMシステムぐらい時代遅れのやり方だと思っています。

スイスは、守備ではゾーンで組織的にプレスをかけ、ボールを奪うとインサイドキックやワンツーといった基礎テクニックを中心に攻撃していました。

そういったスイスサッカーを代表する選手が、何度も述べているマニャンで、
中盤で自分の前方にフリーでいる選手がいれば、オートマチックにパスをして、自分は次のフリースペースへ走りこんでワンツーを狙い、サイドを突破したら、最初に出せるタイミングでクロスを上げていましたし、ゴール前の選手もそのタイミングで詰めていました。

特別なテクニックがあるわけではありませんが、チームの勢いを殺さない彼のダイナミックな動きと、考えるスピードの速さが、前半15分までで日本から2点を奪う原動力となりました。

日本のMF、中村俊・憲や遠藤選手は、ボールを持つとギアダウンしてどこへパスを出すか考え込んでしまいますし、両サイドバックも、サイドを突破したのにクロスを上げず、結局うしろへ戻してしまっています。

「下手な考え休むに似たり」と言いますが、1人がボールを長く持ってこねくり回してもなかなか得点になりませんし、現代サッカーで求められているプレーとは何か、マニャンのスタイルは本当に参考になると思います。

ボールをまたいだり、ヒールキックを使ったりといった”サーカスプレー”をしなくても、インサイドキックやワンツーのような基本プレーでも十分、相手を崩せるのだということを彼は証明してくれています。

 オシムの組織的ポゼッション・サッカーにおいて、攻撃のパズルの最後の1ピースは「勝負から逃げずゴールすること」だったのですが、スイス戦でようやくそれがはまった感じがしました。

アジアカップ以降、ピッチの上で起こっていることのうわっつらしか見えていない一部の解説者がオシム解任を求めていたようですが、カメルーン・オーストリア・スイスと対戦してきて、改めて日本代表がやろうとしていることの方向性が正しかったことが証明されたと思います。

もちろん、テストマッチとガチンコ勝負は違いますし、日本の組織力・個の力をもっとレベルの高いものにしていかなければなりませんが、欧州遠征の成果を素直に評価したいと思います。

これで欧州主要リーグに日本人選手が売れたり、強豪からテストマッチのオファーが日本にくれば、良いのですが。

 個人では、松井がマン・オブ・ザ・マッチでしょう。

巻や矢野もゴールによって自信をつけ、一皮も二皮もむけて欲しいと思います。

巻は「自分は脇役だから」なんて消極的なことを言っていてはダメです。「高原選手を抜くのは俺だ」ぐらいの目標をたてないと。

次回は、10月のエジプト戦あたりで更新予定です。

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2007.9.11  ヒュポ・アレナ(クラーゲンフルト)


  日本  4  -  3  スイス


 '52 中村俊(PK)   '11 マニャン
 '67 巻        '13 クフォー
 '78 中村俊(PK)   '80 ジュールー
 '90+ 矢野



GK 川口       GK ベナリオ

DF 駒野       DF マニャン
  闘莉王       (バルネッタ 46)
  加地         センデロス
  中澤         シュパイヒャー
             ベーラミ
MF 遠藤         フォン・ベルゲン
 (佐藤 87)     (エッギマン 88)
  中村俊
 (中村憲 90+)  MF マルガイラツ 
  鈴木        (ヤキン 46)
  松井         フッゲル
 (山岸 71)     (セレスティーニ 69)
  稲本         インラー
            (ジュールー 79) 
FW 巻
 (矢野 80)   FW フォンランテン
           (リヒトシュタイナー 72)
            クフォー 




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■日本、オーストリアと勝ちに等しいドロー

 7日夜(日本時間8日早朝)行われた、三大陸トーナメント初戦のオーストリア対日本は、0-0の引き分け、大会の特別ルールにより、直後にPK戦が行われ3-4でPK戦の方は落としてしまいました。

対戦相手のオーストリアを見るのは、98年のワールドカップ以来でした。

このときは、ケルンのポルスター、ブレーメンのヘルツォーク、ドルトムントのファイアージンガーがいたチームで、ここ10年のうちでは、オーストリアの黄金時代だったと言って良いと思いますが、今回見たオーストリアはその時よりもやや経験が浅いチームのように感じられました。

ナポリでプレーするガリクス、ブレーメンでプレーするハルニクらを除いて、国内組を中心した比較的若いチームだったと思います。

オーストリアは次回ユーロの共同開催国で予選免除されてますから、真剣勝負の実績はドイツW杯欧州予選までさかのぼらないといけません。

このときはホームでイングランドと2-2で引き分けていますし、最近のテスト・マッチでもチェコとホームで引き分けているようで、ホームでなら欧州のトップレベルのチームと互角に戦える力はあるわけです。

(イングランドが1位、ポーランドが2位でドイツ行き、オーストリアは3位で予選敗退)

そうしたことを考慮に入れると、日本としては引き分け、できれば点を取っての引き分けという結果が得られれば収穫だと考えていました。

よって0-0で引き分けという結果は、勝ちに等しい引き分けだったと思います。(実際に勝てれば、もっと良かったのですが)

あれがH&Aの一試合目だとすれば、日本のホームではオーストリアに勝つ確率は、かなり高いでしょう。

今回の結果に、日本は自信をもって良いと思います。

スタンドからのブーイングがすべてを物語っていました。

日本もオーストリアも、高い組織力を持っていたので、両チームの戦術と戦術のぶつかり合いは、さながらプロ同士のチェスの試合を見ているようで、私個人としては非常に見ごたえのあるものでした。

PK戦については、勝てれば良かったのですが、クジのようなものですから、結果については仕方ないでしょう。

以前にも言いましたが、日本にはPK戦負けと90分戦っての負けを区別する習慣があまりありませんが、それでは正しい評価ができないと思います。

 それでは試合の経過をおさらいしてみましょう。

試合の立ち上がりは、ホームの声援を背に受けて、オーストリアが押し込みましたが、日本も激しいプレスで対抗、オーストリアに自由にやらせませんでした。

日本の攻撃も、オーストリアの高いレベルの組織的守備によって、なかなかうまく行きません。

しかし、15分過ぎから、日本がいくぶんかボールを持てるようになり、22分、ゴール前の遠藤選手のFKがGKにはじかれたところを、田中達選手がシュート、惜しくもゴールポストに嫌われます。

前半ロスタイム、稲本選手のスルーパスに中村俊選手が反応して、丁寧にシュート、残念ながらGKにセーブされます。

 後半も日本がボールを支配しながら、思いのほかシュートが少ないという、アジアカップのような展開。

25分ごろから、オーストリアの足が止まり始め、いっそう日本が有利になるも、フィニッシュだけが決まらず、ドロー。

中村憲選手の惜しいミドルもあったんですが...

延長戦をやらずそのままPK戦という、ちょっと変わったレギュレーションで、”PK戦負け”で勝ち点1となりました。(たぶん、4チームの総当りリーグ戦ではなく、日本対チリ、スイス対オーストリアをやらない変則トーナメントのせいでしょう)

 それではいつものように試合内容を分析してみます。まず守備から。

守備に関しては、ほぼパーフェクトと言える内容だったのではないでしょうか。

試合の立ち上がりこそ、オーストリアにボールをかなり回されてしまいましたが、すぐに修正し、激しいプレスディフェンスで、試合の主導権を取り返すことができました。

これは試合の終わりまで衰えず、それがオーストリアを追い詰めて、相手のスタミナ切れを誘発させました。

闘莉王・中澤の両センターバックは、カメルーンの強力攻撃陣をストップしたわけですが、この試合でも強いところを見せてくれました。

このセンターバックコンビでドイツW杯に出場していたらどうなっていたかと考えてしまいます。

稲本-鈴木の両ボランチも安定していました。

特に稲本のガツガツ行く守備と、奪ってから攻撃の起点となる動きが良かったです。(心配なのはカードだけでしょうか)

 次に攻撃ですが、アジアカップの総括であげた、バイタルエリアでシュート・クロスの勝負を逃げないという課題が相変わらず克服できていません。

これについてはさんざん述べてきたので繰り返しませんが、いくらポゼッション・サッカーだからといっても、中盤でのやり方と相手ゴール前25mから先のいわゆるバイタルエリアでのやり方は違うというか、まったく逆です。

中盤では、チーム全体でボールを失わないよう、組織的にボールを回しますが、バイタルエリアでは、ゴールを奪うために勇気を持ってボールを”捨てなければ”いけません。

ボールを捨てなければ、絶対にゴールを奪うことはできませんし、中盤でボールを回す最終目的は、ゴールするためなのです。

選手側でその気持ちの切り替えが出来ていないために、「パスを回すためにパスを回すサッカー」になってしまっています。

バイタルエリアでボールを受けたらまずシュートを考え、それが出来ない場合に限ってパスという選択の優先順位を、頭ではなく体に覚えさせる練習が必要でしょう。

クロスも、パスを受けたらファーストタッチでクロスをあげるのが望ましいです。

最低でもツータッチ目でクロスをあげないと、クロスをあげるタイミングが無くなってしまいますし、相手のマークもなかなかズレてきません。

これに関連した話ですが、今回の遠征で、オーストリアは身長が高いからロングボールをトップに放り込んでくるのではないかという話が、マスコミから盛んに出ていたようです。

94年のW杯アメリカ大会欧州予選からオーストリアの試合を見ていますが、周辺のドイツやスイス・チェコのように、中盤を組織的につくって攻撃してくるのが彼らのスタイルで、前述のヘルツォークのように、すぐれた司令塔タイプの選手も輩出しています。

日本サッカー界やマスコミには、「身長が高い選手にはロングボールを放り込むべき」という変な決めつけがあって、珍しく身長の高いFWを持つチームが、ロングボールをFWに放り込んで、それをポストプレーと呼んでいる場合もありますが、こうしたことが何の疑問も無く行われているとしたら、日本が世界の強豪になる日は遠いでしょう。

身長が高い選手がそろっているオランダやドイツ、デンマークがそんなサッカーばかりしているでしょうか。

日本サッカー界に存在するこうした変な決めつけの裏返しとして、「身長の低い選手は、ヘッドでゴールできない」というものがあります。

確かに、身長の低い選手が不利ではありますが、ヘディング・シュートで大事なのは身長がすべてではありません。

むしろ、ゴール前にいる相手選手のマンツーマン・ディフェンスのギャップで、フリーでヘディング・シュートすることが重要であり、そのためにヘッドする選手が相手のマークを外すテクニックと、マンツーマン・ディフェンスのギャップに正確にボールを落とすキッカーの技術が大切なのです。

日本の場合、ヘッドする選手がマンツーマン・ディフェンスのギャップに走りこまずに、その場で立ち止まりながら垂直にジャンプしてヘッドしようとするから、身長の低さが不利になってくるわけで、ふわっとした山なりのゆっくりとしたクロスを使えば、余計身長の低さが不利となってきます。

そうではなくて、速くて鋭く曲がるクロスをマンツーマン・ディフェンスのギャップに正確に落とし、そこへ相手のマークを外した選手が走りこんでヘッドすれば、相手より身長で劣っていてもゴールできる確率はあがります。

アジアカップ準決勝で、187センチの中澤・177センチの阿部の間に入り込んだ、身長167センチのマレクにヘッドでゴールを決められてしまったのは、マレクの身長が高かったからではなく、彼のマークを外すテクニックが優れていたからです。

 日本代表の選手がサイドを突破しても、なかなかクロスを入れず、すぐバックパスしてしまうのは、「ゴール前に人が張っていない、身長の高い選手もいない」ということもあるのでしょうが、ユース時代からこういった戦術論の基礎が教えられていないこともあるのではないでしょうか。

ゴール前に人が張っていなくとも、速くて鋭く曲がるクロスをマンツーマン・ディフェンスのギャップに正確に落とし、そこへ相手のマークを外した選手が走りこんでヘッドするという、戦術の共通理解が日本代表に求められていると思います。

攻撃に関しては、中盤までの組み立ては、まずまずうまく行っています。
攻撃のパズルを完成させるためには、ゴールを奪うというピースをはめるだけでしょう。

オーストリアとのテストマッチは、結果・内容ともまずまず満足のできるものでした。

日本のサッカーが欧州の中堅チームにも十分通用したことは、自信になったのでないでしょうか。

後は、攻撃のパズルの最後のピースをはめるだけなのですが、それが完成すればアウェーでもオーストリアに勝てるようになるでしょうし、W杯のグループリーグ突破も見えてくると思います。

 最後に余談ですが、ヨーロッパの国は国歌斉唱のときにテープではなく生楽団を用意してくれるので大変気持ちが良いですね。

カメルーン戦のとき九石ドームで君が代を独唱された方、微妙に音程が狂っていたような気がするのですが、私個人としては、生楽団の吹奏だけで十分です。

あと、オーストリアの2ndユニフォーム、シャツ・パンツ・ソックスの順で、赤・白・赤だというのは聞いていましたが、見るのは初めてで、新鮮でした。

(ご存知だとは思いますが、1stはドイツと同じ白・黒・白です)

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 2007.9.7 ヒュポ・アレナ(クラーゲンフルト)


 オーストリア 0  -  0  日本
         4 PK 3



 GK ペイヤー       GK 川口

 DF フクス        DF 中澤
   ヒデン          闘莉王
   ガリクス         駒野
   プレドル        (今野 89)
   シュタントフェスト     加地
             
 MF アウフハウザー    MF 稲本
   ライトゲブ       (中村憲 71)
   メルツ          鈴木
  (リンツ 59)       遠藤
   ゾイメル         中村俊
  (ザルムッター 86)
              FW 田中達
 FW クルジッチ       (松井 71)
  (ハルニク 75)      矢野
  (プラガー 84)      (巻 75)




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