■2007年08月

■日本代表、カメルーンに我慢の勝利

 昨日、大分で行われたテストマッチ、日本対カメルーンは、押されながらも良く我慢した日本が2-0の勝利をあげました。

カメルーンは、バルセロナのエトオに代表されるように、スペイン・イングランド・ドイツ・フランスなど欧州主要リーグでプレーする選手ばかり。

実力的にはもちろんカメルーンの方が上で、日本のホームで引き分け、カメルーンのホームで日本の負け、ぐらいの差はあると想定していました。

そのカメルーンにホームとはいえ2-0、しかもこちらは海外組抜きでの勝利ですから、貴重な経験を積めたと思いますし、自信を持って良いでしょう。

 試合展開の方は、前半は日本とカメルーンがほぼ五分五分の展開。

20分すぎから、大久保選手の左サイドからの突破で、日本がリズムを引き寄せると、25分、左サイドのFKから遠藤選手が強くて速いボールを蹴り、ニアに飛びこんだ闘莉王選手がヘッドでフリック、それが見事にゴールイン! 日本が先制します。

ここからカメルーンがようやくエンジンがかかってきます。

27分にジョブに左サイドを抜かれ、シュートを許すも、ゴール前を通過。

31分、カメルーンのロングスローに駒野選手がかぶってしまい、中澤選手がなんとかクリアしたボールをマクンがシュート。これはバーの上を通過していきました。

後半は、カメルーンが一方的に日本を押し込む展開。

カメルーンはシュートやCKを雨あられとふらせますが、川口選手の固い守りとシュート精度がイマイチなため、同点に追いつくことができず。

43分、日本がようやくつかんだ右CKのチャンス。
中村憲選手のボールはクリアされますが、こぼれ球を山瀬選手が豪快ミドル!
これが決まって試合を決定づけました。

 次に試合内容を見ていきます。まず攻撃から。

この試合ではセットプレーからの攻撃が非常に効果的でした。

ここ半年ぐらい、セットプレーにおける遠藤のキックに、ますます磨きがかかっていると思います。

最近彼は、キーパーが出られそうで出られない場所へ、強くて速いボールを落とすキックを多めにしているような印象を受けますが、闘莉王の先制点を引き出したのも、このようなキックでした。

アジアカップ準決勝、サウジ戦の日本の一点目も、CKから遠藤が、キーパーが出られそうで出られない場所へ強くて速いボールを蹴り、これを中澤がヘッドで叩きこんだ形でしたが、これはCK・クロスのお手本としてサッカーの教科書に載せたいぐらいの、基本に忠実なきれいなプレーでした。
(ビデオで確認してもらうと良くわかります)

逆に中村俊選手は、セットプレーからふわっとした山なりのボールを多用していますが、どれもキックが長すぎで、ゴールラインから外へ出てしまうか、落とし場所がGKに近すぎてほとんどキャッチされています。

奇襲作戦として山なりのふわっとしたボールというのはアリだと思いますが、中村俊選手の場合、奇襲作戦ばっかりで基本プレーというものが無いので、まったく奇襲になっていません。

試合中、GKにほとんどキャッチされているのですから、少し工夫して欲しいものです。

 CKからのこぼれ球からゴールを決めた山瀬のポジショニングも良かったです。

CK・FKの時、ペナルティエリア前の”D”のエリア付近に、ボレーシュートがうまい選手を最低一人は配置しておくのは、戦術としてのお約束です。

山瀬のように、相手がクリアしたボールからゴールを狙うためです。

残念ながら日本サッカー界では、こうした基本戦術を実践しているチームが少ないようですが、基本に忠実にプレーすれば、山瀬のようにちゃんと”ごほうび”がもらえるというわけです。

 中盤の組み立てに関しては、前半こそ、まずまず上手くいっていましたが、後半はまったくボールを回せなくなってしまいました。

日本代表が3-5-2っぽくシステムを組みなおしたこともありますが、カメルーンが後半になって本気モードで、中盤のプレスをはじめたことが原因だと思います。

カメルーンはフィジカル能力で日本代表をかなり上回っていました。

そのため、日本代表が中盤でパス回しをしても、誰か一人が長い時間持ってしまうと、カメルーンの選手に体を寄せられ、フィジカルの強さでボールを奪われてしまっていました。

これが、いつもの組織的なボール回しが出来なかった最大の原因でしょう。

アジアカップ総括のエントリーで、「フィジカルの弱い選手は、いつもフリーでプレーすることが大事」と言いましたが、誰か一人でも持ちすぎてしまうと、フリーでプレーできなくなり、ボールを失ってしまうわけです。

そのためには、カメルーンのようなレベルの高いチームのプレスを上回るスピードで、こちらがポジショニングを修正し、チーム全体としての連動性をもっと高いレベルにしないと、パスがつながっていきません。

そうしたことが出来るようになれば、
今回のカメルーン戦でも、1点取った後、カメルーンの厳しいプレスをすばやいパス回しで日本がかわせるようになれば、W杯でベスト8、あるいはベスト4という成績が見えてくると思います。

この試合、サイドバックがクロスを上げるシーンは少なかったのですが、それでも数少ないクロスを上げるチャンスに、バックパスしてしまうクセが直っていません。

下の世代から、思い切りの良いサイドバックを抜擢してはどうでしょうか。

 守備に関しては、相当がんばったと思います。

アジアカップの総括で、4バック1ボランチでは、守備が苦しいと言いましたが、やっぱりオシム監督は修正してきました。

鈴木選手に加え、阿部選手もあげて、二人の守備的MFによるダブルボランチとしてきました。

闘莉王が戻ってきたことも大きく、守備が本当に固くなりました。
中澤-闘莉王は、アジア最強のセンターバックコンビの一つではないでしょうか。

 前半何分の出来事だったか忘れましたが、日本の左サイドをカメルーンの選手が突破してきて、まず駒野が相手にプレスをかけ、相手が駒野の左を抜きにかかったところを阿部が読んでボールを奪ったというシーンがありました。

阿部は、サウジのマレクに抜かれて決勝点を奪われたのですが、きっちりと修正してきたのはさすがでした。

ただ、チーム全体にこのような組織守備戦術が浸透しているようには見えなかったので、全員が出来るように練習を繰り返して欲しいと思います。

 守備の反省点があるとすれば、パスをつなぐことに夢中になりすぎるあまり、自陣深くで敵にパスをしてしまうシーンが多かったことです。

特に、カメルーンのFWがウヨウヨしている自軍ゴール前で、細かいパス回しで相手をかわそうとするシーンを見せられると、生きた心地がしません。

リスクをおかしてはいけない場所・時間では、簡単に前方へ蹴り出すことも必要だと思います。

 選手個人で見ると、前田・田中達・大久保の各選手が先発起用され、私も大変期待していました。(特に前田選手)

良い動きも見せていましたが、シュートシーンが少なすぎで、まだまだチームにフィットするには時間がかかりそうです。

特に大久保は、レフェリーがファールを取ってくれないと、厳しそうです。

今回、韓国から呼ばれたレフェリーは、Jリーグのレフェリーとは違って、フィジカルコンタクトで選手が倒れても、極力流していました。

そのせいか、大久保は思うようにプレーさせてもらえませんでした。
代表での生き残りのためには、何か対策が必要でしょう。

マン・オブ・ザ・マッチは、文句無く闘莉王でしょう。

中澤-闘莉王のコンビが相手では、カメルーンの強力攻撃陣もそう簡単には得点できないわけで、守備以外でも、おとなしくて控えめな選手が多い中、闘志むきだしでチームを奮い立たせ、得点源にもなる闘莉王の存在は、非常に大きいものがあります。

日本は、アジアカップ優勝を逃し、コンフェデで世界の強豪と対戦するチャンスまで失ってしまったのですが、アジアカップぎりぎりまで、過密日程でJリーグのゲームをやり、その結果、闘莉王は故障してアジアカップに出られなかった。

以前指摘したように、日本サッカー協会のトップの指導力に大きな疑問を抱かざるを得ません。

この問題に限らず、協会トップのいきすぎた金もうけ主義が、日本サッカー界全体の足を引っ張っていると思います。

 さて次回更新は、9月上旬のオーストリア遠征前後を予定しております。
特に楽しみなのは、スイスとのテストマッチです。

スイスは、2006W杯予選・本大会ともにフランスと同じ組に入り、直接対決でまったくの互角という成績を残しています。

どのくらい本気で来てくれるかわかりませんが、日本がスイスと引き分けられると、本当に良い経験になると思います。

アウェーのオーストリア戦も含めて、2試合で勝ち点2以上取れれば、たいしたものだと思います。


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  2007.8.22  九州石油ドーム(大分)  


  日本  2  -  0  カメルーン


 '25 闘莉王
'89 山瀬



GK 川口       GK  ハミドゥ

DF 闘莉王      DF ソング
  中澤         アトゥバ
  加地         マトゥク
  駒野         ビキー
 (今野 45)     (フォトゥシーヌ 53)

MF 阿部       MF ムバミ
  鈴木        (イドリス 45)
 (橋本 74)      マクン
  遠藤        (ヌゲモ 53)
 (中村憲 63)     ムビア
  大久保
 (山瀬 50)    FW ジョブ
             (アテバ 74)
FW 前田         ドゥアラ  
 (高松 59)      (ヌゴム・コメ 60)
  田中達        エトオ
 (佐藤 59)



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■アジアカップ総括(最終回)

 アジアカップ2007の総括、日本代表は何ができなかったのかについて、考察してきました。今日はその最終回です。

「シュート・クロスの決定的場面で勝負から逃げてしまった」「フィジカルで勝てなかった」に続く三点目として、「試合展開に応じた駆け引きができなかった」ということが指摘できるでしょう。

 これもずいぶん前から言われていることですか、日本代表は、常に一本調子で試合をしてしまいがちです。 常に攻めつづけていないと選手たちが不安を感じてしまうからでしょうか。

オシム監督がさずけた組織力で、チームとしてのボールキープ力が格段にアップしましたが、それだけにいっそう、相手の実力・試合展開・点差・時間帯など、ほとんどお構いなしに、いつも攻撃するために前がかり状態になってしまいます。

せめて相手の息の根を止める点をとってくれれば、良かったのかもしれませんが、決定的場面でシュートやクロスなど勝負から逃げてしまうために、それができませんでした。

そうこうしているうちに、前がかりになったところをつかれてカウンターから失点という場面がいくつかありました。

開幕ゲームとなったカタール戦のセバスチャンのFKと、UAE戦のカウンターからサイード・アルカスに奪われたゴールです。

 それには、FWからDFラインまでの間をコンパクトに保てないという理由もからんでいたと思います。

日本代表は昔からチームをコンパクトに保つことが苦手で、点を取りたいと焦るFWと二列目は、なるべく相手ゴールに近づきたいと思って前がかりになり、
失点が怖いDFラインは下がり気味となって、DFラインとボランチの間にポッカリと亀裂ができて、日本代表が”守備チーム”と”攻撃チーム”の二つに分裂してしまう現象がしばしば起こります。

今回のアジアカップでは時間帯に関係無く、チームがいつも前がかりぎみになっており、余計にボランチ1枚と4バックからなる”守備チーム”が、カウンターを食らいやすい状態となっていました。

酷暑という条件下では、最後までチームをコンパクトに保つというのは難しいことですが、これは非常に重要なことです。

4-2-2-2のシステムだとすると、セットプレーなどの例外を除いて、この4つのラインを一定に保てるよう、全体としてコンパクトになるよう、常に注意しなければなりません。

そして絶対に失点してはいけない時間帯では、DFライン+ボランチ2枚はあまり上がらずに(下がりすぎてもやられます)、両サイドもオーバーラップを控えるようにして、守備体勢を崩さないようにしなければなりません。

このあたりの駆け引きはサウジが非常に上手くて、3-2と日本をリードしてから、攻撃に出てくるのは前の3人くらいで、DFライン+ボランチはうかつに前へ出るようなことは止めて、絶対に守備体制を崩そうとしませんでした。

こうなると、日本が押し込んできますが、相手が前がかりになったことで、前に残っている3人によるカウンターがより効果的になってきます。

実際、サウジの鋭いカウンターによって、日本の反撃が思うようにいかなくなりました。

 チームのFWからDFラインまでを、ピッチのどのゾーンへもってくるかは、DFラインが決めるべきだと私は思うのですが、それだと自分のポジションがゴールから遠くなってしまう局面では、2トップ+攻撃的MF2人がどうしても焦ってしまうかもしれません。

しかし、日本代表がコンパクトさを保ち、こちらが程よく押し込まれている時というのは、相手もコンパクトさを保っているならば、相手はバックラインをかなり押し上げていることを意味します。

すると、相手のバックラインの裏に広大なスペースが生まれるわけです。

(逆に相手が間延びしたチームであれば、DFラインの前に広いスペースができているはずです)

そこを効果的に動いて、ワンツーとスルーパスを組み合わせて、オフサイドに注意しながら相手最終ラインの穴をつけば、前の4人だけであっても得点することはそんなに難しいことではありません。

日本の攻撃が一本調子で、あまりカウンターが得意でない原因は、日本サッカー界全体で、このことがよく理解されていないからではないでしょうか。

 反対に、攻撃時にDFラインを速やかに押し上げることも重要で、それによってボール保持者のサポートがしやすくなり、攻撃が楽になるでしょう。

敵がトップ1人を残している状態で、4バックがまるまる自陣に残っているのはムダです。

センターバック1人が敵のトップにマンツーマンでつき、もう一人がその後方からカバーすれば、2人でも守れるでしょう。(それでも自信が無いというならしょうがありませんが)

サウジ戦のマレクに決勝点を奪われたシーンでも、この基本が出来ておらず、
マレク1人に2人が同時にプレスをかけに行ったために、1回のフェイントで2人同時に抜かれてしまいました。

参考

マレクの突破を許し決勝点を奪われたシーンですが、阿部と中澤がマレクのドリブルに応対に行った時、マレクのフェイントで1度に2人とも左へ振られ、シュートを許してしまいました。

そういった場合は、まず阿部がマレクに応対し、中澤が阿部の数mうしろにポジショニングします。

それを確認してから、阿部がマレクにプレスをかけ、最悪抜かれても良いので相手のバランスを崩させ、中澤はそれまで動かずに、後ろからマレクが阿部の左右どちらへドリブル突破をしかけるかを見極め、

いざマレクが阿部を抜きに掛かってバランスを崩し、ボールを体から離した瞬間に、中澤がカバーしてボールを奪うようにすると、相手が個人技に優れた選手でも突破を防ぐことができると思います。

こうした組織的守備戦術はチーム全員ができるよう練習しておかなければなりません。



 システムの話が出たついでに言いますと、今の代表が使っている4-2-2-2のシステムですが、中村憲選手は守備が本職ではありませんし、前へ出ている時間も長いので、4-1-3-2が実質的なシステムでしょう。

これではあまりにも守備が手薄なのではないでしょうか。

実質ワン・ボランチの鈴木選手に負担がかかりすぎていると思います。

しかも、4バックの両サイドはフィジカルが弱く、セットプレーの時に不安です。

サウジ戦の先制点はセットプレーから加地選手が競り負けて、そのこぼれ球からゴールを奪われましたし、あの試合、どうもサウジ側はセットプレー時に、フィジカルの弱い加地・駒野両選手についている味方へボールを合わせようとしていた感じでした。

アジアカップ2007に限って言えば、両サイドバックはクロスやドリブルで勝負することを避け、あまり機能していませんでした。

今の状態では、守備の弱さに目をつぶってまで起用するメリットが感じられません。

これからも4バックで行くなら、多少攻撃には目をつぶっても、両サイドにもっと守備力が高い選手を起用して、中盤をダイヤモンド型にして鈴木選手の左右前方に張り出した2人のMFがサイド攻撃も担当する、

あるいは、中村俊・遠藤・中村憲の誰か1人を削って、守備が本職のボランチをもう一枚入れたほうが良いかもしれません。

別の案としては、中澤・闘莉王の両選手をストッパーにして、阿部選手をリベロにする3バックに変更するというのもあるでしょう。

アジアカップにおいて日本代表は、韓国以外、相手をゼロに抑えることはできませんでした。失点の場面において、代表の守備があまりにも軽い印象を受けます。

このまま現在の4バック・ワンボランチで守りつづけるのは、ちょっときついと思います。

 さらに言えば、カタール戦と韓国戦で採用されたワントップも、やはり機能しませんでした。ゴール前へ飛びこむ選手が少なくなって、ただでさえシュートで勝負する選手が少ないのに、余計にシュートが少なくなってしまいます。

これも再考の余地があるでしょう。

オシム監督がワントップに二度こだわったことについては疑問ですし、韓国戦の延長以降において、フレッシュな交代選手の投入が遅れたことについても、采配に?マークをつけざるを得ません。
 
 そして最後に指摘すべき点は、「基礎が出来ていなかった」ということがあげられます。

どのチームであっても、強豪との対戦・酷暑・連戦の疲労の蓄積・相手にリードされる展開、といった苦しい状況であればあるほど、良くも悪くも自分たちの体に染み込んだ”地のサッカー”が出てしまう、というのが私の持論です。

苦しい状況下では思考力が奪われて、新監督がやってきて授けた戦術などが吹っ飛んでしまって、子供の時からやっている、自分の体に染み込んだサッカーが顔を出すのではないかと思うのですが、それが一番よく現われたのが、サウジ戦の2-3とリードされてからと韓国戦だったと思います。

そこであらわになったのが、基礎力の欠如でした。

いちいちあげていくとキリがありませんが、前述の、1対2という有利な局面からマレクに決勝点を奪われたシーンも守備組織の基礎の欠如です。

攻撃面でも、フリーでタテパスを受けたら、まず前方へターンすることが最優先のはずですし、そうすればムダなパスが必要なくなって自分たちが楽になるのですが、はじめからバックパス100%と決めてつけてプレーしてしまっています。

これはパスを受ける時のボディシェイプが悪いからで、相手ゴールを背にして球を受けるからバックパス100%になってしまうのであって、マークがついているなら別としても、半身になって受ければ、前方が見えて、前へターンしやすくなるのです。

スペースにパスを出してやる時は、敵よりも味方が先に追いつけるように出してやるのが基本ですが、敵に近い方へパス出しする場面も多々ありました。

グラウンダーのパスと浮き球のパスの両方が出せる場面では、グラウンダーの方がより価値が高いということも、理解できているのでしょうか。

 こういうことは選手が悪いというよりは、日本のユース育成システムにどこか問題があるのではないでしょうか。

どうして基礎がおろそかになったまま、大人になってしまう選手が出てくるのか、育成システム全体から指導者のレベルまで洗いなおす必要があるでしょう。

世界の舞台では基礎は出来て当たり前で、その上で応用力がどれだけ素晴らしいかで、W杯やチャンピオンズリーグで活躍できるかどうかが決まります。

日本人選手がこういった大舞台で活躍できるかどうかは、まずどれだけ基礎力を固められるかにかかっていると思います。

参考記事・W杯ブラジル戦直後のエントリー

 さて、ずいぶんと厳しいことを言いましたが、私は現在のところはオシムジャパンの前途に楽観的な見通しを持っています。

以上、見てきたように、現在の日本サッカーが抱える問題点の多くは”個レベル”にあり、個レベルの弱点をオシムの組織力でカバーして勝利し、個人とチームの経験値を上げつつ、長期計画で個のレベルをアップさせていく、という戦略でいけば、日本サッカーは大きな果実を収穫できると考えます。

 かつての日本は、そういう方向性で強くなってきたのですが、それがどういうわけか中断してしまいました。

今はちょうど、2002年W杯直後に戻ったような状態と言えるでしょう。

 最後にオシムジャパンをサポートするべき日本サッカー協会についても触れておきたいのですが、アジアカップの、ほんの直前まで国内リーグをやっていたのは日本ぐらいのものじゃないでしょうか。

しかもアジアカップ直前の6月23日に開催された浦和対清水戦で、闘莉王選手が負傷、アジアカップを回避せざるをえませんでした。

アジアカップ三連覇を逃した、隠された理由として闘莉王選手の負傷・代表辞退をあげておきます。

ドイツW杯の時もそうでしたが、大きな国際大会のある年ぐらい、要領良く国内リーグのスケジュールを調整して代表をサポートできないのでしょうか。

日本代表の発展あってこそ、Jリーグが盛り上がりますし、Jリーグが盛り上がってこそ、良い選手が代表へと供給されるのです。

Jリーグ側がW杯やアジアカップに出場する代表のためにスケジュールをずらしても、ゆくゆくはJリーグ側への利益としてかえってくると思います。

ドイツW杯の時、ジーコ監督が組織力の整備にとりかかるのが遅かったため、日本代表は直前合宿とたくさんのテストマッチをみっちりやる必要があったと思います。

しかし、それをやらずにW杯で惨敗。
最近の代表人気の低落はそれが原因でしょう

アジアカップ2007で、その過ちが再び繰り返されたのではないでしょうか。

日本サッカー協会会長の指導力・マネージメント能力に疑問を抱かざるを得ません。


 次回更新は、カメルーンとのテストマッチ前後を予定しております。



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■アジアカップ総括(その3)

 「アジアカップ2007において、日本代表は何ができて何ができなかったのか」その総括の三回目です。

前回は「できなかったこと」として、シュートやクロスで勝負すべき時に勝負できなかった、選手個々のメンタルが弱かったということをお話しました。

「できなかったこと」の二点目としては、個々のレベルでフィジカルの勝負に勝つことができなかったということがあげられます。

白人中心のオーストラリア・白人と黒人その混血からなるアラブ諸国(サウジ・カタール・UAEなど)はもちろん、同じ黄色人種の韓国が相手であっても、多くの局面で日本はフィジカル・コンタクトで劣勢でした。

これも、オシムジャパンになって突然あらわれた問題ではなくて、日本サッカーがプロ化する以前からずっと引きずっている問題です。

 ところで、もし「技術は高いがフィジカルが弱いチーム」と、「技術が並でフィジカルが強いチーム」が戦ったとしたら、どっちが勝つと思いますか?

”匠(たくみ)の国”である日本の人は、高い技術にあこがれがあるので、「技術が高い方が勝つ」と答える人が多いのではないかと推測しますが、私の経験上、「技術は並でもフィジカルが強いチーム」の方が勝つ確率が高い気がします。

なぜならば、フィジカルの弱い選手がフィジカルの強い選手に体を寄せられると、どんなに上手い選手でもバランスを崩して、とたんにテクニックが並以下になってしまうからです。

よって、「技術は高いがフィジカルが弱いチーム」と「技術が並でフィジカルが強いチーム」の戦いが、「技術が並でフィジカルの弱いチーム」と「技術が並でフィジカルの強いチーム」との戦いに変化してしまいます。

こうなると、フィジカルの強い方がセットプレーからヘディング・シュートを叩きこんで、それを守りきって勝つ、といったことが起こりやすくなります。(ヘディングの競り合いではフィジカルの強い方が断然有利)

アジアカップ準々決勝のオーストラリア戦は、まさにそういう展開になりかけましたが、オーストラリアよりもフィジカルで劣る分、オシムジャパンは組織力で上回りましたので、90分戦って同点に持ちこむことができました。

ドイツW杯では、日本に組織力が無かったので、フィジカルの弱さを突かれてセットプレーから同点弾を食らい、がっくりしたところにメンタル面でのスキができて、逆転・ダメ押し弾を食らってしまいました。

(もちろんオーストラリアの技術が並だと言っているわけではありません。彼らは日本と同等以上の技術はあります)

技術で相手のフィジカルの強さを弱めることはできませんが、強いフィジカルは、相手の技術を弱めることができます。

足元の技術へのあこがれが非常に強い日本サッカー界で、このことに気づいている指導者・選手は案外少ないのではないでしょうか。
 
 フランスのジダンは、日本でも”マルセイユ・ルーレット”やキックの技術がたいへん注目されましたが、彼は身長も高くフィジカルも強いということは、あまり指摘されません。

(地味であまり注目されませんが、トラップの技術もジダンは世界一だと思います)

マラドーナも身長こそ165cmちょっとですが、横幅は非常にがっちりしていました。

彼らが世界的なプレーヤーになれたのは、フィジカルの強さが並以上あったので、弱いフィジカルが高い技術の足をひっぱるようなことが無かったことも大きいと思います。

 ところが日本の場合、高いテクニックを持つがフィジカルがあまり強くない、という選手がMFを中心にしばしば現れます。(例外は中田英選手でしょう)

現在の代表で言えば、中村俊・遠藤・中村憲の三選手がそれに当たると思います。

アジアカップの六試合を見てもベトナム戦を除いて、相手とのボディコンタクトでは劣勢でした。

テクニックは高いがフィジカルがあまり強く無い選手の場合、大切なのは相手に体を寄せられる前にプレーすること(シュート・パス・クロスなど)です。

つまり、常にフリーでプレーしていれば、こちらの技術の高さをフルに生かせるわけですが、こういう選手に限ってボールを持ちすぎて、相手に体を寄せられてバランスを崩されてから、ようやくパスを出す場面が非常に多いのです。

オシム監督の組織サッカーによって、パス回しは大変良くなったのですが、まだまだそんな場面が多々みられます。

特に中村俊選手は、判断が遅くて中盤の組み立てではほとんど機能していませんでした。

「自分より相手ゴールに近い味方選手がフリーでいたら、オートマチックにパスをはたいて、自分はその選手より前のフリー・スペースへ走りこむ」といった、シンプルなプレーを心がけるべきだと思います。

中盤の三選手はパスをもらうと、ダイレクトで前へはたけるタイミングでも、勝負を避けていったん後ろへ切り返すので、切り返した瞬間に敵選手が3~4人戻ってしまうというシーンもよく見られます。

戻ってきた敵選手を再び抜くのには、余計に体力を消耗します。

中盤の三選手だけでなく皆で、フィジカルが強くないという弱点を認識して、フリーでプレーする、そのために判断力の速さとシンプルなプレーを心がける必要があります。

こういったことも、日本が組織で相手を押し込んだ割には攻撃がつまってしまったことの原因だったと思います。

 当分日本代表は、組織力で個のフィジカルの弱さをカバーするとして、長期的な計画では、最低でも技術の足を引っ張らない程度にはフィジカルの強化をしなくてはいけません。

ただ、これは人種とか食生活だけの問題とは言えないのではないでしょうか。

Jクラブがアジア・チャンピオンズリーグでなかなか勝てないこととも通じることなのですが、日本の選手は、同じ黄色人種で食生活も決して劣っているとは思えない韓国・中国・北朝鮮の選手にも、フィジカルで劣勢なのです。

これは、Jリーグのレフェリーに問題があるのではないでしょうか。

代表にしろクラブにしろ、アジアでの戦いでは「レフェリーの不可解な判定」が日本の障害としてしばしば指摘されます。

逆を言えば、国内リーグのレフェリーの不可解な判定の中で、韓国・中国・北朝鮮の選手はもまれているわけで、Jなら絶対ファールをとってくれるような体と体のぶつかり合いも、アジアレベルは流されてしまうこともあるでしょう。

ファールをとってくれない以上、選手はフィジカルの強さを身につけなければ、上へあがっていくことはできません。

Jリーグの場合、ちょっとぶつかって倒れると、すぐファールを取ってくれます。世界で、ボディコンタクトから選手がもっとも保護されているリーグの一つ、それがJリーグだと思います。

こういった場合、選手はぶつかられて倒れずにがんばるよりも、倒れてファールをもらったほうが得します。

ちょっと触られていちいち倒れていたのでは、フィジカルの強い選手は育ちません。

これが、日本代表やJクラブが、アジアや世界での戦いでフィジカルに苦労する最大の原因ではないかと思います。

 サッカーは、ショルダーチャージなど、ボディコンタクトが認められているスポーツです。

「フェアなぶつかり合いならば、いちいちボディコンタクトでファールをとらずに流す」

日本の選手のフィジカル強化のためにも、Jリーグのレフェリング基準を変えるべきです。フェアプレーが強調されすぎていて、Jのレフェリングは過保護すぎると思います。

日本代表が、”フェアプレー賞コレクター”であることがその良い証拠でしょう。

 1994年にW杯で優勝するまでブラジルが世界でなかなか勝てない時期がありました。

フィジカルの強い欧州チームが、組織力・技術を高めてきたことも、その原因だったと思います。

反面、南米でもフィジカルの強いアルゼンチンが強豪へとのし上がっていったことも興味深い現象です。

ブラジルがなかなか勝てない時代、「欧州の審判は、ファールを取らなさ過ぎる」「FIFAはスライディング・タックルを禁止すべきだ」とブラジルの関係者がブーたれていたこともありました。

しかし、当時のブラジルはただブーたれていたわけではなく、”フィジコ”と呼ばれるフィジカルコーチを導入して、ブラジル人選手のフィジカル強化に力を入れました。

その結果が、94年以降の実績となってあらわれていると思います。




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■アジアカップ総括(その2)

 日本代表アジアカップ2007の戦いの総括、前回は何ができたのかについてチェックしました。

第二回目以降は、何ができなかったのかについてチェックします。

 オシム・ジャパンの特徴である、ショートパスで中盤を組み立てて、相手ゴール前25mから先のいわゆるバイタルエリアへボールを数多く運び、それによって得点チャンスを増やしていくというサッカーが、オーストラリア、サウジ、韓国といった”アジア”のトップレベルにも十分通用し、日本代表がほとんどのゲームで主導権を握ることができた、内容とともに4位という結果も出すことができました。

(最近、読者の不安をあおって、売上をアップしたいのか、本当にうろたえているのか知りませんが、一部マスコミから「こんどのW杯予選が不安」という声が上がっています。 サウジに一回負けただけで、オーストラリアや韓国と90分戦って互角以上だったという多くの人が目撃した事実が消えて無くなるとでも言うのでしょうか。 日本にはどうも自信が無さ過ぎる人が多いようです)

 ただ、バイタルエリアまでボールを数多くもっていくことには成功しましたが、バイタルエリア内での攻撃がうまく行きませんでした。

バイタルエリアまでボールをもっていく回数は多いのに、それがゴールへなかなか結びつきません。

それは、ゴールするために必要なシュートを打つチャンスが無かったということではなくて、シュートを打つことそれ自体を放棄してしまったことが原因でした。

ゴールを奪えないのでなくて、ゴールを奪おうとしないのです。

当たり前のことですが、ゴールするためにはシュートを打たなくてはなりません。 パスを百本つなげても、それだけでは一点にもなりません。

クロスについても同じことが言え、サイドを崩してクロスを入れたり、ドリブル突破できるタイミングなのに、無意味なバックパスに逃げてしまうことが非常に多かったです。

シュートを打てるのに打たず、クロスを上げられるのに上げない、後ろに下げるパス・パス・パスです。

これは組織に問題があるのではなくて、”個”に問題があるように思えます。

 決勝のイラク対サウジ戦をちらっと見ましたが、どの選手も打てるタイミングで積極果敢にシュートを打っていき、クロスもなるべく最初のタイミングで上げていました。

日本の選手のような迷いは見られず、積極的に勝負していました。

 どうして日本代表の選手はそうなってしまうのか、それはシュートが外れることを恐れ、消極的になってしまったからではないでしょうか。

自戒をこめて言いますが、日本人選手の一番の弱点が消極性と自信の無さであり、日本のサッカー選手・チームの問題点の多くはこれが原因です。

この大会全体を通しても、日本代表は相手から先手先手で点を取るということに消極的で、相手に追い込まれなければ、エンジンがかからないという法則があることに気がつきます。

追い込まれれば点を取るので、始めから点を取る能力が無いということでは無いと思うのですが。

開幕戦のカタール戦から、押し込む割にはなかなかシュートを打たず、ようやく先制点をあげるも、守備の消極性から失点しドローに終わりました。

追い込まれた日本は、ようやくエンジンがかかり、次のUAE戦で3-1と勝利。

首位となって余裕が出たベトナム戦ではやはり先制され、リードされてからエンジンがかかって4-1の逆転勝ち。

準々決勝のオーストラリア戦も、シュートをなかなか打たず相手に先制されてから、すぐ同点弾が飛び出すも、同点になってからは、相手をリードする点がとれません。

準決勝のサウジ戦でも、消極的な試合運び。
常に相手に先制され、追い込まれてからようやく積極的にゴールを奪いに行くという展開となりましたが、相手に三度追いつくことは、とうとうできませんでした。

どんなに強いチームでも、酷暑の中、相手に三度追いつくのは相当シンドイと思います。

シュートへの消極性。それが三連覇を逃した最大の原因でした。

3位決定戦でも、相手に退場者が出て余裕が持てる展開となると、かえってシュートから遠くなってしまうという悪いクセが出ます。結局PK戦にもちこまれての敗戦となりました。

 PKを外したことについて、その選手を責めてはいけないと思います。あれはクジのようなものです。GKがセーブできなかったことについても同様です。

ですが、シュートして得点することが仕事であるはずの攻撃的MFであるその選手が「内心PKを蹴りたくなかった」とコメントしたことについては、ちょっとショックでした。

「シュートをしてゴールする」というのは、サッカー選手にとって最大の喜びのひとつであるはずですが、日本人選手の多くにとって、シュートがいかに精神的負担になっているか、というひとつの証拠ではないかと考えます。

また、シュートが少ないなかで、日本の選手がようやく”決死の覚悟”でシュートを打つ時というのは、ほとんどパニック状態です。

始めからとんでもなくゴールのワクを外れていくシュートも少なくありません。

決定的瞬間でも冷静にシュートを打てるというのは、高原選手ぐらいでしょう。

 日本代表は、シュートを打つということについて非常に消極的です。 そして決死の覚悟でシュートを打つと決断したときは、多くの場合パニック状態になってしまいます。(シュート・シャイと呼ばれる)
 
これは、オシムジャパンになって初めてあらわれた問題ではなくて、ずっと以前からある問題です。

ドイツW杯でのクロアチア戦で、あるFWが決定的なシュートを外した場面がありました。(QBKという新語までできましたが)

私はその選手を「なんでシュートを外したんだ」と責めるつもりは毛頭ありません。

ただ、あの場面はやはりパニック状態だったと思いますし、今後の日本サッカーの発展のため、あえて取り上げます。

あの時、サイドからグラウンダーのクロスが入ってきて、インサイドキックでミートするだけでも十分ゴールできたはずですし、その選手はそれだけの技術を持っていました。

しかし、その選手はアウトにかけたシュートを選択し、そのシュートはクロアチアGKの股間を通過して外れていきました。

インサイドキックで広いゴールマウスに流し込むより、シュートをアウトにかけてゴールマウスよりはるかに狭いGKの股間を通すほうが、確率的によっぽど難しいのではないかと思うのですが、現実にそのようなことが起こってしまいました。

それは技術的な問題というより、冷静な判断力を失っていたというメンタルの問題だったと思います。

 決定力の問題は、ジーコジャパン以前からもたびたび言われてきたことです。

もし、日本代表のシュート決定力が、シュート10本に対し1ゴールだったとします。

日本の選手のシュート決定力をすぐさま二倍に引き上げるというのは非常に難しいことかもしれません。ユースの育成からはじめて何年もかかることでしょう。

しかし確率論から言って、シュートチャンスを二倍にすれば、ゴールも二倍に増える可能性があります。

つまりシュート10本につき2ゴールをあげられるようにするのではなくて、シュートを20本に増やせることができれば、シュート決定率はそのままでも倍の2ゴールあげられるということです。

それは、現在の日本代表でも不可能ではありませんし、実際にシュートチャンスは増えています。

オシム監督の、ショートパスで組織的に中盤を組み立て、ボール保持率を高めることでバイタルエリアへボールを数多く運び、それによってシュートチャンスを増やしていく、というサッカーを私が支持するもうひとつの理由です。

ジーコジャパン時代ですと、中盤の組織力が低いからボールを奪えない、よってバイタルエリアへボールをなかなか運べない、だからシュートチャンスが増えない、シュートチャンスが増えないから、高いとは言えない決定力もあって、なかなかゴールできない、という悪循環でした。

それがW杯での惨敗につながったと思います。

 オシムジャパンはこの一年で、ジーコジャパン時代から一段階ステップアップして、バイタルエリアへボールを何度も運んでいき、シュートチャンスを多くつくる、というところまできました。

この進歩は、はっきりと認識すべきです。

 にもかかかわらず、シュートチャンスでシュートしないのでは、せっかく組織でシュートチャンスを増やした意味がありません。

「シュートを増やすためにパスを回す」のではなくて、「パスを回すためにパスを回すサッカー」になってしまっています。

オシムジャパンがもう一段階ステップアップするためには、重点的にシュート練習に力を入れる必要があると思います。

例えば、ゴールの左右45度から、GKと一対一でシュートする練習を繰り返し、シュートチャンスに慣れることが重要です。

実戦ですと、ゴールから左右45度ぐらいになると、日本人選手の選択は90%パスになってしまう感じです。 残り10%のシュートも、ゴールマウスから大きく外れていくことが多いです。 

日本戦での決勝点となったサウジ・マレク選手のゴールは、角度があまり無いところから決まりましたが、彼のように、角度が無くても積極果敢にゴールを狙うようなタイプの選手は、現在の日本代表にあまりいません。

 日本の選手の場合、GKを見すぎてしまっていてゴールのワクを見ていない気がします。

最悪、相手GKにぶち当たっても良いので、まずシュートをゴールマウスの中に入れることを最優先にすべきです。

そして周りの選手は、GKがボールをこぼすことを予測して、それをプッシュするために必ずつめることが大事です。ボールがどの方向へ跳ね返るか、常に予測して動かなくてはなりません。

そうすればシュートを打つ選手に、「シュートをGKにわざと当てて、敵GKにゴールを”アシスト”させても良いや」ぐらいの冷静さが生まれるでしょう。

冷静にシュートが打てるようになれば、ゴール決定率もあがるといった、好循環を生み出せれば、大きいと思います。

敵GKを外すために、ゴールマウスまで外してしまうのではなく、シュートは出来るだけゴールマウス内に入れることを最優先させる、と心がけることで、ゴール決定率は違ってくると思うのですがどうでしょうか。

ちなみに、ゴール真正面以外からシュートを打つ場合の基本は、ゴールマウス内のファーポスト側に、グラウンダーのシュートを強めに打つことです。

GKは、腰より下のシュートのほうが対応が難しいですし、

ニアに打つと、シュートが強くてキャッチできない場合、GKはボールをナナメ後ろにはじき出してCKに逃げる事ができますが、

ファーに打った場合、ボールをナナメ後ろに出そうとするとオウンゴールの可能性があるので、どうしてもGKは前へボールをはじきます。

そうすると、味方がこぼれ球をプッシュする、セカンドシュートのチャンスができるのです。

 練習だけではなくて、観客が勇気を持ってシュートする選手を育てるということも重要だと思います。

プレミアリーグを見ていると、積極的にシュートした選手には、たとえそれが外れても、必ず大きな拍手が観客席から起こります。

お客さんのレベルの高さがそれだけでもわかるというものですが、Jリーグの場合ですと、シュートが外れた場合「あ~あ」という大きなため息だけが観客席から聞こえてくるのは、非常に残念です。

選手が勇気を持って積極的にシュートできるよう、シュートが外れてもJリーグの観客が大きな拍手で選手をサポートし、お客さんも積極的に勝負する選手を育てて欲しいと思います。

日本サッカー界全体が、リスクをおかしてチャレンジする選手が叩かれるのではなくて、賞賛される社会にならないといけません。

 また、勝負から逃げてしまうという意味では、クロスもそうでした。

アジアカップ後に、引いた相手をどう崩すかということが課題だと、何度も指摘されています。

引いた相手に対しては、スペースがありませんから、正確なクロスを頭にピンポイントで合わせるのが一番有効です。 これだと、必要最低限のスペースでシュートが打てます。

ところが、サイドを崩してクロスをそのまま上げるか、さらにドリブル突破して、えぐってから上げるかしかないのに、ムダなバックパスをしてサイドチェンジ、反対のサイドを突破して、やっぱりバックパスのような、ムダなパス回しが大変多かったです。

これだと、ようやくクロスを上げたときには、たいていゴール前の敵選手が準備をすっかり整えた状態になってしまっています。 いつもこのリズムでクロスを上げるために、相手もそのタイミングに慣れてしまい、なかなかマークがズレません。

中の選手がゴール前へなかなか飛びこまない(特にワントップの時)ということもあるのかもしれませんが、相手がポジション修正する前のなるべく早いタイミングで、できるだけ速く正確なクロスを上げることも必要です。

これも勝負に対する積極性の問題でしょう。

ゴール前でヘッドする選手も、その場でジャンプしてシュートするばかりではなくて、はじめはゆっくりと歩きながら、クロスやCK・FKのボールがゴール前へ飛んできたときにトップスピードで合わせるようにすると、相手のマークを外しやすくなります。

DFというのは、ゴール前を高速で移動する相手を一番警戒し、ゆっくり歩いている相手の警戒レベルは下がるものです。

セットプレーでもそうですが、日本の選手は多くの場合、最初からトップスピードでゴール前へ飛びこむので、DFをなかなか振り切れないように思えます。

 アジアカップ2007の日本代表は、組織力でシュートチャンスを多くつくるということには成功しました。

しかし個のレベルで問題を抱えており、相手から先手先手をとるため積極的にシュートやクロスをして勝負するということから逃げてしまう選手が多いという弱点が露呈しました。

私は、この弱点が無かったら、アジアカップの結果は大きく変わっていたと思います。

 2010年W杯など、日本代表がこの先世界で結果を出していくためには、この課題の解決は避けて通ることはできません。

代表やクラブで重点的に練習して欲しいと思いますし、積極的にシュートを打つ選手には大きな拍手で応えることで、観客も良い選手を育てて欲しいと思います。

つづく



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■アジアカップ総括

 アジアカップ2007は、イラクの初優勝で幕を閉じました。

およそ14年ぶりに強豪イラクの復活ですね。 オーストラリアを3-1で破ったときから注目していて、かなり上まで行くだろうとは思っていたのですが...

イラクは1986年にW杯に出てますし、”ドーハの悲劇”で有名な93年のアジア予選でも真のベストチームだったと思います。

フセイン大統領が「アメリカW杯に出場し、イラクの国旗をアメリカの大地に打ち立てて、やつらに恥をかかせろ」なんて言ったものですから、政治力によってつぶされてしまったのですが。

イラクの伝統的サッカースタイルは、同じアラブでも「引いて守ってカウンター」のサウジやカタールといった湾岸諸国とは違います。

攻守に組織力があり、きちんと中盤を創ってくる欧州の香りのするサッカーです。 戦争さえなければ、アジアのトップクラスであり続けたのではないでしょうか。

 前置きはこのあたりにして、今日からアジアカップの総括をやりたいと思います。そして何ができて、何ができなかったのかをチェックした上で、今後の日本代表の目指す方向性を考えてみたいと思います。

 まず日本代表のアジアカップ4位という結果からですが、W杯のアジア枠は4.5カ国ですから、この大会がアジア予選だったとしたら本大会出場決定となります。

準々決勝で、ドイツW杯ベスト16のオーストラリアとも90分戦って1-1という結果を残しています。

結果に関する限り、オシム監督は最低限のノルマを達成したといえるでしょう。

 次に試合内容について、何ができたのかということから見ていきます。

オシム・ジャパンの特徴は、ショートパスで中盤を組み立てて、ボールの支配権を握り続けることで、得点チャンスを増やしていくというサッカーです。

酷暑の東南アジアという条件下であったにもかかわらず、このサッカーが非常に機能しました。

開幕戦のカタール戦から準決勝のサウジ戦まで、日本がほとんどの時間でボールを支配し、試合の主導権を握り続けました。

11人対11人の状況で、W杯では押される一方だったオーストラリアが相手でも、オシムジャパンの組織サッカーは機能したと思います。

これは自信を持って良いことだと思いますし、長期的な視野にたって、このスタイルをねばり強く継続していく必要があります。

3位決定戦では、自分たちのサッカーを見失っていたようですが、それでもボール支配率では韓国を上回っていました。これは近年の日韓戦では無かったことでした。

 憶えている方はあまりいないかもしれませんが、2000年のアジアカップ・レバノン大会におけるトルシエジャパンも、ショートパスで中盤を組み立てて、ボールを圧倒的に支配するサッカーでした。

開幕戦で事実上の決勝戦と言われたサウジ戦に4-1でいきなり大勝すると、二戦目のウズベキスタン戦には8-1と攻撃力が大爆発。

余裕のグループリーグ突破が決まり、主力を休ませた第三戦はカタールと引き分けたものの、

準々決勝のイラク戦では4-1と相手をまったく問題にせず。

準決勝であたった中国を3-2と力でねじ伏せ、再度対決となったサウジには1-0で、日本が二度目の優勝を決めました。

アジアカップが16チーム参加になってから、決勝Tで相手をぜんぶ90分以内に仕留めて優勝したチーム、相手に一度も延長戦・PK戦に持ちこませず優勝したチームなぞ、前にも後にもトルシエジャパンしかありません。

アラブのマスコミが「日本製精密コンピューター」と呼んだ、すぐれた組織サッカーを持つトルシエジャパンは、まるで別の大陸からやってきた強さでした。

それが2002年W杯でのベスト16へとつながっていくわけです。

アジアカップ2007では、オシム監督の手によって「日本製精密コンピューター」が四年間の空白をへて復活をとげたと思います。

試合内容においても、私は合格点をつけます。

 協会が、どうしてそれまでうまくいっていた日本サッカーのスタイルをいじって、突然「個の自由」に方針転換したのか、まったく不可解としか言いようがありません。

2000年と比べると、2004年アジアカップは個の能力の高さで勝った、アップアップの優勝でした。

しかし、それが通用したのはアジアだったからで、W杯予選も含めて「監督の強運」がクローズアップされる中、「組織が無い」という根本的な問題がスルーされてしまいました。

2006年W杯では、頼みの”個の自由”でも組織力でも負けて、手も足も出ない完敗に終わりました。

 思い起こせば1992年のオフトジャパンで、オランダ流の組織サッカーが取り入れられて、アジアのトップクラスまで一気に上りつめました。

しかし、ブラジルから呼んだファルカンでつまずき、

加茂ジャパンでは、ゾーンプレスというヨーロッパ流組織サッカーを取り入れようとしましたが、消化不良に終わりました。

緊急リリーフの岡田さんをはさみ、

トルシエジャパンで、日本的な組織サッカーが一応の完成をみます。
それが2000年アジアカップ優勝、02年W杯ベスト16という結果につながりました。

しかし、またもやブラジルから呼んだジーコで四年間の空白と停滞を招き、06年のオシム就任から07年アジアカップへと至ったわけです。

協会が性懲りも無く、ジーコの次にトニーニョ・セレーゾを呼んだらどうしようかとヒヤヒヤしていましたが。

(82年W杯ブラジル代表の黄金の中盤はもちろん、ジーコ、ファルカン、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾ、ソクラテスはお医者さんをやっていてサッカー界から離れているはず)

「個の自由」といった耳に心地よい言葉に惑わされて、フラフラするのではなくて、勤勉で技術が高いという日本人の長所を生かした組織サッカーを日本のスタイルと位置付けて、この方針にしたがって、長期の強化戦略を実行するべきでしょう。

個と組織は、ゼロサムで両立しないものではありません。
個あっての組織ですし、組織あっての個です。

組織で勝ちながら、長期的には個の能力(経験値・フィジカル・テクニック・状況判断力)をあげていく。

これが一番有効な強化策ではないでしょうか。

イタリアにはイタリアの、ブラジルにはブラジルの、メキシコにはメキシコの、サウジにはサウジの、民族性や文化に根ざした、基本となるサッカースタイルというものがあって、それをベースにして現代サッカーにあうように改良が加えられているわけですが、

07年アジアカップで有効性が再確認できた、かつて「日本製精密コンピューター」として恐れられた組織サッカーを、日本のベースとなるサッカースタイルに据えるべきだと思います。

 さらに付け加えるならば、”日本スタイル”を、代表もクラブも、ユースから大人のチームまで、なるべくベースとして据え、それにそれぞれが工夫と応用を加えるべきではないでしょうか。

日本の場合、高校サッカーではA代表と正反対の、ロングボールの放り込み合戦のようなサッカーをやっていますが、これは非常に弊害が大きいと思います。

これでは、大人になってからやる組織サッカーに必要な基礎、つまりポジショニング能力や状況判断力が養われませんし、世界で通用するものでは無いでしょう。

日本のすべてのチームはサッカースタイルを全部同じにしろとは言いませんが、少なくともロングボールの放り込みサッカーだけは考え直すべきだと思います。

勝ちぬき戦がそうさせているなら、大会のやり方を変えるべきです。

 
 このエントリーでは「アジアカップ2007で、日本代表は何ができたのか」ということについて見てきました。

次回は、何ができなかったのかについて検証します。




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